2015-12-28

漢検5級合格まであと38点/教師のエンパシー

いろんなお返事が遅れておりまして申し訳ありません。
年の瀬、みなさまいかがお過ごしですか。

子は2学期の成績もさんざんでした。特にノート提出が酷評されています。
どうやら、学校にディスレクシアのことを訴えるべき時が来たようです。
台本作りに時間をとられそうな冬休みです。

☆  ☆  ☆

10月に受験した漢検5級(小6相当)の結果が返ってきました。
家庭教師君とゆるく対策してきましたが、力及ばずでした・・・

「合格まであと38点です」

大問別正解率はこんな感じ:

「読み」だけは満点なのですが、「書き」が…

やはり苦手は「書き取り」と、
1つの漢字に複数の読み方がある」ことを問う問題(音と訓)
同じ読み方をする複数の漢字」(同じ読みの漢字)です。

こうした問題が苦手なのは、英語での苦労の仕方を考えると想定範囲内です。
英語でも、同じ綴りに複数の読み方がある点には、激しく混乱しています。

語彙力を問う問題(「四字熟語」「対義語・類義語」)の正答率も低いです。
本人は「自分は語彙力がある」と言っていますが( ̄0 ̄。
これは、文脈のない状態で語彙だけを取り出されても答えられないのと、
読書をしないせいで、抽象語の語彙力が年齢並みより少し低いのでしょう。

~ ~ ~

小学校時代から、進歩(?)した部分もあります。
中1の漢字約100個を、4回×2ずつ書くという冬休みの宿題:


時間があるときは、横で道村式漢字カードの方法で部品を言ってやるのですが、
たいていは、一人で手本を見て書いています(→進歩!)
そんなことも、小学校の頃はできませんでした…。

たくさん書けば疲れるのも相変わらずですが、
小学校の頃より持久力がつきました。これも進歩でしょう。

何より、「どのみち覚えられないけど、宿題だから割り切って書く」
という妥協が、できるようになりました(苦笑)


小3の頃の字。「反対」がいつのまにか「反村」になる
☆  ☆  ☆

小学校のディスレクシア漢字学習について、入ってきた情報を書いておきます。

漢字九九
当ブログ一押しの道村式漢字カードでは(でも)覚えられない子がいると
かねてから情報が寄せられていました。
どうやら、ストーリーを使うと記憶しやすい子というのがいて
そのような子たちには、道村式では対処しきれないようです
(道村先生ご本人は、ストーリーのストックを大量に持っていて、
それを道村式カードに口頭で加えていくようなのですが)

漢字一つひとつ成り立ちをストーリー仕立てにした教材としては
「漢字九九」というものがあるようです。
アマゾンでは旧版がユーズドで売られており、
現在は別支援の漢字教材」という名前で学研のサイトで販売しているようです。

漢字を覚えるのにストーリーが必要というお子さんには、効果があるとのこと。
1~6年までそろっています。
お値段がちょっと張りますが・・・


「読み書きが苦手な子どもへの〈漢字〉支援ワーク」
iPad用アプリが出たようです→
小1~3のディスレクシアには、きっと役に立ちます


☆  ☆  ☆

最近、日本ディスレクシア協会の研究会に出ています
(当ブログの左下にリンクがあります。漢字九九は、この研究会で聞きました)
そこで、通級指導の先生による、心打たれる事例報告を聞きました。

ディスレクシアの男子小学生に、多感覚式で漢字を入れるということで、
竹ひごで漢字を作ったり(しなり具合と折れ具合がちょうど良いとのこと)、
料理好きなので、特に覚えられない漢字はクッキーにして焼いたとのこと。
ものすごく時間も手間もかかりますが、定着率も意欲も上がったそうです。

いい話(T T)~。とはいえ、これは
「ディスレクシアは漢字をクッキーにすると良い」という話ではない
と思ってます。

この発表を聞いているだけでも、この先生からは
「それがだめならこれはどうだ?」という〈引き出しを多くする努力〉、
「一緒にこの大変な山を登っていこう」という〈寄り添おうとする努力〉が
ひしひしと感じられました。
力のある教師が、歩けない生徒のところまで下りて、
あらゆる装備と励ましを使って、一緒に一歩ずつ山を登って行くような。
こういう姿勢を「エンパシー」と言うのでしょう。
クッキーの話は、エンパシーのあるディスレクシア指導の事例だと思います。

この子どもは大きくなったら料理人になりたいそうなのですが、
5年もしたら、クッキーで作った漢字の多くを忘れてしまうかもしれない。
料理人になる頃には、「焼型」も「衛生」も「冷蔵庫」も書けなくなっているかもしれません。

でもきっと、「小学校の頃、自分のためにここまでしてくれた先生がいた」
という記憶が彼の中にずっと残って、
彼の料理修業の道を支えるような気がします。
こういう記憶は、成長期の人にとって、とても大事なものだと思います。

そういう記憶と比べたら、「冷蔵庫」という字を正確に書くなんて小さなこと…
という姿勢が、書き取りを課す教師の側には欲しいものです。

一方、この子どもに対しては、
「漢字はディスレクシアにとって終わりがない山道だけど、
その山道があったからエンパシーのある大人に出会えて、ほんとによかったね」
などと、逆説的なことを考えたりしました。

エンパシーのある教師。これが私の2016年のテーマのようです。

2015-12-08

第3回単語テスト/英検はディスレクシアの子に自信をつけさせるのに有効である

抜き打ち単語テストの結果。


pとqが逆
本人は「わかってても、書くのは無理」と思っています。

たしかに、口頭で問う形式なら、もっと取れたでしょう。

しかし、そもそも単語テストという形式がディスレクシアには厳しいようです。
ディスレクシアにとって、日→英の単語テストには何重もの困難があるようです。

1. "単語"は、ディスレクシア的には意味単位として細かすぎる

前にコメントで高校生の方から指摘があった通りです→

単語は、単体というより
動詞+目的語(ask a question)、
形容詞+名詞(a quiet room)、
動詞+前置詞句(walk in the park)
などのような、少し大きなかたまりで覚えているようで、
単語1つ(askだけ、inだけ)を問うて、その意味を想起させるのは
難しいことのようです。
「そう、あれ・・・あれだよ・・・」的な状況が続きます。

教えると「そうそう!それ。分かってたんだよ」と言うので、
見ようによってはお調子者と言うか、
「なら自分で正解を言いなよ」と言いたくなります。
きっと学校ではそう見えているに違いありません。危険だ(- -;)


単語を「V+O」や「形+名」のかたまりで覚える単語帳としては、
「英単語ピーナツ」シリーズという大定番がすでにあります。
中学生で使えるかは未知数ですが・・・



2. 具体物より、抽象概念を表す語のほうが覚えづらい。

イメージしづらい語は覚えづらいということのようです。
alwaysやsometimesはなかなか覚えづらく、
arrive at the airportやwait for the busは覚えやすいようです。
きっと「空港到着」「バス待ち」の絵が頭の中に浮かんでいるのでしょう。
(こうして書いてみても、日本語なら1語で言えることが、
英語では単語が細かく分かれています)


3. 英単語を音読すること(デコーディング)の困難について。

私は、英語は音にできないと解読不能だと思っています。
仮に間違った発音でも、ある語を見たら常に同じ音を頭の中で鳴らせないと
英語は読めません。
この「字を見て音を想起する」ことを、専門用語でデコーディングと言います。
de-codingとは「暗号を解読する」という意味です。

#というか、
#各種研究では「読む=頭の中で音を鳴らす」ことだと当然視されていますが
#漢字は必ずしもそうでもありません。
#漢字は「頭の中で音にしなくても意味が分かる境地」があり得るのです。
#だからこそ「英語は音にしないと意味がわからない。この点が日本語と違う」
#ことを改めて確認する必要があるようです。
#そして、ディスレクシアで上の境地を極めることで漢字を読んでいると、
#中1ショックが激しく出てしまうようです。

話を戻すと、ディスレクシア的には、英語というのは
文字を見て頭の中で音を鳴らすことから逃げられない点で(も)
日本語よりはるかにやっかいな言語です。

ただし。
ディスレクシアは、ある単語を見て、苦労して音にできた瞬間に、
「ああ、あれね」という感じで、同時にすとんと意味も分かります。

ディスレクシアの子が英語を読むときは、
とつとつだとしても、驚くほど正しい発音で単語を読みます。
非ディスレクシアはかわいそうなほど、ことごとく間違った発音で単語を覚えているケースもあるのとは対照的です。

ディスレクシアにとっては、正しく読める語だけが意味と結びつくと言えます。

なので、ディスレクシア英語教育では、
音読が英語力強化トレーニングとして、非常に大事になってくると思います。

誰かに横についてもらい、
正しく読めているか確認してもらいながら読むのが良いと思います。



4. 英単語を書くこと(エンコーディング)の最強な困難について。

さて、そうして正しく英文や英語が読めるようになっても、
それを英語の文字に書き起こすのは、
ディスレクシアには、本当に、ほんっと~~に、大変なことです。
(音を文字にすることを、encoding(暗号化)と言います)

上の単語テストには、エンコーディングの苦労の跡が多々あると言えます;;




子が漢字に苦労していた時代は、
「漢字ってディスレクシアにとってなんたる負担(怒)」
と私も思っていました。

でも、漢字は一つひとつの字にもパーツにも、意味があるという点で、
ディスレクシア的には、英語よりはましな文字とさえ言えます。

英語は、26の文字それ自体に意味はなく、音としても頼りなく
(日本語の「っ」「ゃ」みたいなものです)、
また、読み方に例外が多々存在します
(英単語の30%は規則から外れていると言われます。
中1単語に至っては70%が規則から外れているでしょう)。
音と文字の結びつけが困難なディスレクシアという人種にとって、
とりわけ難度の高い言語です。

ならば、せめて、そんな鬼畜な言語を文字先行で学ばせることだけは、
ディスレクシアの子には避けないといけません。
やはり、ディスレクシア英語学習は聞く→言う→読む→書く
の順であるべきでしょう。

☆  ☆  ☆

しかし、これだけ英語に苦労しているにもかかわらず、
子は、自分は英語では落ちこぼれていない、
学校のやり方と今は合わないだけと思っています( ̄0 ̄。
どうやら英検5級に合格したことが、自信となっているようです。

英検はディスレクシアの子に自信をつけさせるのに有効だということは、
中一ショックを一足先に克服された方から教えていただきました
(さるお方さま、この場を借りて御礼申し上げます)
広汎性発達障害の診断を受けているそのお子さんは、中一ショックを受けて
さっそくジョリーをアプリで試したところ、とても性に合い、
1学期の期末でV字回復を成し遂げたとのこと。
特に「トリッキーワード」(不規則な綴り)という表現がぴたっとはまったそうです。
(ちなみにこの方、ジョリー歴はアプリだけだそうです)

その後、中1の秋に英検5級、続いて4級に合格し、
今では「自分は英語はできる」と自信を持って取り組んでいるとのことでした。

英検は、リスニングの比重が大きく、かつ選択式で記述がないので、
ディスレクシアでも合格しやすい。
英検に合格すれば、学校の先生も一目置くし、本人にも非常に自信になる。
だから、ディスレクシアが英検を利用しない手はない・・・
と教えて頂きました。

いい話だ~(´Д`)と思う反面、
「アルファベットが書けるようになるのに1年以上かかったうちのやつが
英検を自信材料に使うなんて無理でしょう・・・」
と、この話を伺った時は思いました。

しかし、リスニングが満点なら、筆記は5割以下でも合格できるのが英検です。
はたして、さるお方の予言は的中し、子はリスニングはほぼ満点で合格。
そのことは学校の先生の子への態度を変えたようで
「最近、先生が授業中にやたらこっちを見てくるんだよ」と言っています。
そして、そのことが大いに励みとなっているようです。

そんなこんなの期末1週間前、格闘は続きます・・・