2016-05-16

第1回「読み書き困難の子への英語の教え方をシェアする指導者の会」を行いました。

先日、「読み書き困難の子への英語の教え方をシェアする指導者の会」
の第1回を行いました。
お越し下さった方、ありがとうございました。
不手際も多く、また、一人一人にきちんとご挨拶できず、
申し訳ありませんでした。

この会は、3月のUD研究会の終了後、参加者同士で話しているなかで
「英語講師と、こういう話をする機会はなかなかない。
こういう場を定期的に持てないだろうか」
という声があがって、立ち上げたものです。
ありがたいご高説を学ぶというよりも、
発表者の議論を出発点にして参加者で議論し、
ディスレクシアや発達障害の子にやさしい(=すべての子にやさしい)
英語教育を模索していこうという主旨の会です。

今回は、勉強したいという保護者の方も、全体の4分の1ほど来られました。
私自身、これまでいろんな研究会や学会に潜入してきて
「お母さん必死ですね( ´,_ゝ`)プッ」という目には何度も遭っているので
熱心な保護者をできれば排除したくないのです。
この業界、専門職の保護者(教師、医師、薬剤師など)が不思議と多いですし、
そうでなくても、力のある保護者は、教える側に働きかける力を持っています。

保護者の方には、
「"自分の子をどうにかしたい"を超えた所で、積極的な発言をお願いします」
と申しました。

集まった指導者の方も、保護者との協力は不可欠というスタンスでした。
率直で建設的な議論ができたことを、嬉しく思います。

「さらに具体的な教え方のノウハウを知りたい」という声もありました。
次に発表する方々、よろしくお願いしますね~
(次回は9月上旬に行います。詳細は後日告知します)

記憶に残っている主なことばをご紹介します。

◆「グレーゾーンの子」の存在。
記念すべき最初の発表は、大手の英語教室で児童英語講師をされている方。
「発達障害ではないか」と未就学段階で気付いた子に、
親に言うことなく、どう対処したか/対処できなかったかという話でした。

私も予備校で、本人にさえ「キミはディスレクシアだね」などとは言わずに
対応を変えているので、よく分かります。
こうした話は、実践報告や学会の研究発表では、表に出てきづらいものです。
それだけに「グレーゾーンの子に、それと指摘せずに配慮する」
という教師側の心構えは、大事と思いました。


以下は、私が話したことです。

◆ジョリーをアレンジすること
ジョリーフォニックスは、現地の未就学児~を対象に作られたパッケージ。
日本のディスレクシア中学生に使う場合は、アレンジしたほうが効果的。

ディスレクシアであっても、年齢が上がるほど、1回にできる量が多くなる。
中2なら1回に10字程度、高校生なら20字以上。
一覧を使って全体像を見せるべき(「英語の字はたったこれだけだよ」と)。

生徒に刺さる多感覚も、幼児と中学生では変わってくるのは当然。

例えばアクションは、うちの実験台(小5男ディスレクシア)には徹底的に教え、
つい最近までスペルが分からないときはアクションをヒントにしていたが、
中1で「アクションは子供っぽくて恥ずかしい」と言う子もいる。
ませてくる年頃になると、アクションは難しくなるらしい
(「左脳で英語を学ぶようになる頃が境界線」と指摘を頂きました)。

もじこ塾春期講習では、
「教師の発音と、生徒の発音を、交互にiPadで録画したもの」を作り、
それを再生して言えるようにすることを、宿題にした。
自分の声を自分で聞くことは、記憶定着効果が抜群な多感覚。
また、教師の発音と生徒の発音が交互に入っているのを聞くことで、
修正しやすいという効果もある。

◆日本のディスレクシア中学生とフォニックス
海外ではフォニックス不要論もあるようだが、
それは、母語として英語を使っている環境での主張であることを認識すべき。
また、フォニックスにはアナリティック
(←現在日本のフォニックス最大派閥である松香式はこちら)
と、後発のシンセティック(←ジョリーはこちら)の2種類がある。
フォニックスの議論をするときは、
どちらのフォニックスの話をしているのか、注意する必要がある。

外国語として英語を学ぶ場合、音と文字の対応
(アルファベットの各文字を、どのような音に対応しているか)を教えるべき。
特に、ディスレクシアだと、音と文字の対応に自力で気付けないので、
教える必要がある。

フォニックスは英語学習の長いはしごの、最初の1段にすぎない。
フォニックス後も、おそらくは大学受験の英語まで、
ディスレクシアには普通とは異なるアプローチが必要になる。
しかしながら、thisをなんと読むか、
中3の1月まで分からないディスレクシアもいるほどなのだから、
ディスレクシア的にはフォニックスは不可欠。


◆聞く→話す→読む→書く




日本にいる普通の人(非ディスレクシア)の英語力は、
「読む」力が一番大きく、
それとほぼ同じくらい、「書く」力があり(※単なる書字能力)
それから一回り小さく「聞く」力があり、
さらに二回りくらい小さな「話す」能力がある。

教育方法としても、「読む」の円を大きくすることに主眼がおかれている。
字が得意な子は、「読む」から外国語に入ることができ、
「読む」が大きくなると、「書く」もおのずと大きくなる。

だが、ディスレクシアの英語力は、「聞く」が一番大きく、
それとほぼ同じくらい「話す」能力がある。
その半分くらいの大きさの「読む」円があり、
そのさらに2割くらいの大きさの「書く」円がある。

ディスレクシア英語教育は、大きい円から順にアプローチすべき。
つまり、「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」の順に。
1)「聞く→話す」で文法力をどこまで伸ばせるか
2) 「話す」力に、「読む」力をどこまで近づけられるか
3)「読む」力に、「書く」力をどこまで近づけられるか
が、ポイントになる。

なお、「聞く」ときも、文字を見せながら。
文字を見せながら読んであげるのが「聞く」、
文字を自力で読んでもらうのが「読む」こと。

#という話をしたところ、
#「外国に行ったときの英語の学び方は、右ですよね」
#「四技能の学習方法は右であるべきだ」
#「右の円の外側に、「英語を遊ぶ」という円を描きたい(=モチベーションの円ですね)」
#などの感想を頂きました。

◆bとdは、ディスレクシア的には最後まで鬼門
「bとdの区別をどう教えるか」という話が出ました。
ベッドの絵を描くとか、ボールとバットのアクションとか、色々出ましたが、
予備校講師的には、bとdは、ディスレクシアなら最後の最後まで間違う
と言いたい!

butとdotを、年間で5回も読み間違えて、
読解に詰まって気絶しそうになったり、設問を間違えて頭を抱えたりして、
それでもW大に合格したりするのが、ディスレクシアです。

「bとdの区別ができなかったら、先に進めないよ!」
と、bとdだけの猛特訓をするのではなく、
何度でも、さらっと「あ、これbutだよ」と指摘するにとどめる
(↑こちらのテンションはできるだけ地味に。大げさに指摘しない、笑わない)
ほうが、この件に関しては効果的だと思ってます。

5 件のコメント:

  1. 素晴らしい総括で敬服致します。全国の先生方,ぜひ,通常発達ではない,日本のあちこちにいるディスレクシアや発達障害の子どもたちの特性を知って,ご指導ください。特性をつかめば,イライラしまくることはありません。

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    1. ほめすぎですって^^。すべての普通学級に、通常発達でない子が必ず一定数いるという認識が大切ですよね。

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  2. 保護者の立場から参加させて頂きました。
    先生方の本音って普段なかなかお聞きする事ができないので今回の会ではそのほんの一部を垣間見る貴重な時間となりました。
    この様な子どもの成長を真剣に信じ研究されている先生方がいらっしゃる事にまだまだ日本も捨てたもんじゃないと…。

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  3. sayuri
    英語教室で、フォニクスを教えていますが、bとd、pとqは、子どもたちにとって、困りだねのようです。
    小さい頃は、理解していたのに、大きくなってから、間違えるようになる子もいたりして、、、、?
     そこで、ある小学校で、英語を教えているネイティブの先生がこんなことを教えてくれたそうです。
     親指を立てて、手を握り指を上にすると、左がb,右がd
    親指を下にすると、左がp,右がq!生徒たちは、迷った時は
    指を使い、確認しながら書いています。
     ネイティブの子どもたちも、b,d,p,qに悩んだりするのでしょうか~?

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  4. 初めまして、2年前に娘が数学恐怖症で辿り着いたところがこちらでした。
    その後、反復練習で高校の関数などは克服したようですが、やはりケアレスミスが多いです。この英語にしても、とてもあてはまり、聞くことが何より英語の中では得意なので英語は歌で覚えていく方が多いと本人は認識しています。そこをヒントに、息抜きに1時間ほど歌を歌わせることで数学の勉強のいらいらを押さえています。鏡文字はないし、英単語も覚えられますので、グレーゾーンなのかなと思いながらそのままにしています。
    私は児童英語を教えて居るのですが、娘よりも生徒さんの方がとても気に掛かり、このような指導者の会で自分のなかなか指導し切れていないところを学びたいと思いました。英語教育ユニバーサルデザイン研究会でも3月にもじこ先生の講演があるとのこと知りましたが、その日にどうしてもいけなくて残念です。お忙しいでしょうが、このような会があれば是非参加したいです。

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