2016-10-06

ディスレクシアだとIQが実際より低めに出る

ディスレクシアとIQは無関係」という古い記事を読んだ方から、ディスレクシアとIQの関係についてご質問を受けました。
その方にお答えするために読んだものを、訳しておきます。

とても勉強になる記事なのですが、すごく微妙な話題であることも重々承知しています。。ので、こんな注意書きを最初に書くことをお許し下さい:
もじこは知能検査の専門家ではありません。この記事をきっかけとする個別の相談に答えることはもじこの能力を超えており、お受けしかねます。あらかじめご了承下さい。

内容:
・ディスレクシアの場合、WISCのFSIQ(フルスケールIQ)よりも「GIA」(言語理解と知覚推理の平均)の方が、その子の知能を適切に反映している
・ディスレクシアだと、IQが本来の知的能力より低く出る

「隠れディスレクシア」のdyslexic advantageのサイトからの抄訳です。

ギフテッドかつディスレクシアの子を念頭においた記事ですが、
どんなディスレクシアの子にもあてはまる気がします。

なお、ディスレクシアのIQ(FSIQ)については、
「知的障害に区分されるかどうかの瀬戸際にいない限りは、
そこまで細かい数字にとらわれる必要はない」
というのが当ブログの見解です。

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①原文→
ディスレクシア児においては、FSIQよりもGAI(General Abilities Index:一般能力指標)のほうが、高次の論理的思考力の指標として信頼が置ける可能性がある 

FSIQはVCI(言語理解)、PRI(知覚推理)、WMI(ワーキングメモリ)、PSI(処理速度)の4区分の合計から構成されている。
このため、この4区分をすべて合計するFSIQよりも、言語理解と知覚推理のみの合計であるGAI(一般能力指標)が、高次の論理的思考力すなわち知能の推定値としてはより正確である可能性が高い。
GAIはFSIQに相当するものである。当クリニック(訳注:Dyslexic Advantageのエイデ夫妻が開業しているディスレクシア専門クリニック)の典型的なプロフィールは、VCI(言語理解)とPRI(知覚推理)の合計スコアが平均以上、WMI(ワーキングメモリ)が平均または平均よりやや下、PSI(処理速度)がさらに低い、というものだ。
この結果、GAIを使用しないことは、ギフテッドプログラムから除外され能力を過小評価される生徒が出てくるなどの、不適切な展開につながる可能性がある。
(訳注:日本版WISC-IVについて、同じ内容が、ここまではっきりとではないですが、書かれています→)


IQスコアは完璧ではない  

どんなテストも、すべての能力を評価できるわけではないこと、また疲れ、不安、完璧主義などの理由から、検査結果が不正確になる可能性があることを、認識しておくべきだ。話し始めるのが遅い子供は、IQテストの言語に関する項目で本来より低い成績になるだろう。答えが短すぎて、解答に対しフルスコアがもらえない可能性がある。
幼いディスレクシアの子で、反転が多く起きたり、処理速度が大幅に遅かったりする場合も、反転によるミスや時間のロスゆえに、知覚推理のスコアが能力より低く出る。
それでもなお、IQテストと達成度の両方を見ることが黄金律だと、私たちは考える。
ディスレクシアの科学的研究と教育研究の両方とも、ディスレクシアは能力と達成度が乖離していることを研究のベースとしてきた。
IQテストを行うことには、欠点よりも利点の方が多い。スコアがその子の知識を適切に反映していないように見受けられた場合は、少し待って、一定期間を置いてからの再検査を検討すべきだ。
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原文→
ディスレクシア/ディスグラフィア(書字障害)はIQスコアに影響を及ぼすか

結論から言うと答えは「イエス」だ。
児童向け検査の精度に影響を及ぼす要素はたくさんある。生徒の性格(完璧主義、内向的)、話し言葉の流暢さ、忍耐強さ/立ち直りの力、言葉の正確さなど、さまざまな要素が、検査点数に知的能力がどの程度正しく反映されるかに影響を与える。
だがIQテストは、検査の種類によって長所と短所がある。
(訳注:このあと、WISC-Vなど、日本には入っていない検査の比較の話が続くので省略)。
ギフテッドでディスレクシアの場合、GAIを専門家にチェックしてもらうことも重要だ。なぜなら、全検査(FSIQ)だけでは、高度な概念把握力や論理的思考力を表さないからだ。
GAIがFSIQに等しいと見なせるのは、ディスレクシアに起因する各スコアの大きな乖離がみられる場合である。
WISC-Vでは、GAIを構成する4つのスコアは、言語理解(類似・単語)、非言語理解(積木模様・絵の概念・figure weights)である。
重要なことに、GAIは、記号探し、コーディング(書かれた記号を写す)、コーディング(聴覚ワーキングメモリとシークエンシング)を含まない。
このことは、FSIQを児童の論理的思考力・概念的能力・知識の土台の正確な推定とするためには、重要な要件である。
ディスレクシア/ディスグラフィアとも、コーディング、記号探し、符号のスコアが低く出ることに関係している
当クリニックに来るギフテッドでディスレクシアの生徒の典型的なプロフィールは、言語理解が最も高く、続いて非言語理解が高いというものだ。
ワーキングメモリは、幼い頃は(同年齢と比べて)弱いが、成長とともに平均の範囲に落ち着く傾向がある。
圧倒的に低いのは処理速度で、このことは通常、その子がディスグラフィアも持つことを意味する。
(中略)我々の実践においては、下位検査間の差が20~25ポイント以上あることを、中~重度の「特異的学習障害」つまり読字障害、書字障害、算数障害(どの下位検査に差があるかによって異なる)の指標と考える。
保護者は、ディスレクシアのFSIQが低くなることを認識しておく必要がある。
というのも、もしGAIがギフテッドプログラムのカットオフ条件なら、その生徒は適切な配慮を受けた上でギフテッドプログラムに入るのが、最適な配置である可能性もあるからだ。
☆  ☆  ☆
かつて知的障害者の施設で栄養士として働いていたという方から、
「思えばその施設には、しろうとが見ても『明らかに、あなたはここにいるべきではないでしょう』という、知的に問題のない人が何人かいた。
あれはディスレクシアだったかもしれない」
という話を聞いたことがあります(ノД`)
この記事を訳してここに置いておくのは、 そういう誤診が今後断じてあってはならない、という思いからです。

しつこいですが、
この記事を出すことが、お子さんのWISCやIQの数値への一喜一憂を助長しないことを願っています。

4 件のコメント:

  1. もじこさま
    素晴らしい記事をありがとうございます!
    内容が難しくて私の頭では全部理解できません。が、知的障害とディスレクシアは全く違う。だけどもIQテストの結果、ディスレクシアの症状が足を引っ張り、知的障害と判断されてしまう事が日本ではあると言う事だと思います。
    何も知的障害が悪いわけでもありませんが、要は間違った診断でその人の人生が変わってしまう事が何より怖いです。
    お医者様が知的障害と判断したらやはり、信憑性がありますよね。周りや本人もそれに気づかずに間違った進路を進んでしまうのでは無いかと思うます。
    きっとその様な方いるのではないのでしょうか⁉︎
    もじこさまが投稿された記事の様に、ディスレクシアとIQは無関係と言う認識があるお医者さんは日本にいないのでしょうか?
    ディスレクシアと言う言葉が少しずつ浸透して来ている中、けれどもまだまだ理解はされていない様に感じます。もじこさまの記事最後に知的障害の方の施設で働く栄養士さんの話、、。とても胸が痛みました。
    誤診、絶対にあってはならない事です。
    私はそう言った間違った認識を変えたいと強く願っている一人です。

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  2. 今さら出てきて申し訳ありません。

    知的障害とディスレクシアは全く違う。だけどもIQテストの結果、ディスレクシアの症状が足を引っ張り、知的障害と判断されてしまう事が日本ではある

    はい、上の記事が言っていることは、そういうことだと思います!

    特に、音韻認識が非常に弱くて、インプットもアウトプットにも誤解や遅れが生じやすい子は、知的障害だと誤解されることが多いのではないかなと推測しています。

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  3. こんばんは。
    私も高3の9月頃の模試まで寝落ちしていました。頭がぼやーっとしてきて、気づいたら時間がなくなっていたというのは多々ありました。ディスレクシアだと自覚し始めた頃から、もっと言うと視写をし始めたころから寝落ちは減っていた気がします。

    センターであれば、長文やった後には文法を挟んで頭が疲れないようにしていました。

    睡眠時間はかなり長いです。9時間は普通に寝てしまいます…
    夢を見ない(正確には覚えていない)のがほとんどです。
    あと糖分がないと動けないです。

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  4. みずさんこんにちは。
    視写が寝落ちに効いたんですね!みずさんには本当に視写が効果的だったんですね。よかったです。
    視写が向いている人とあまり向いていない人がいますね。。

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