2013-10-11

ディスレクシアは受刑者の41%?!/「彼をつぶさないで」

LD.orgのメルマガにこんな発言が。原文→こちら

「全人口の10人に1人がディスレクシア。
起業家の35%がディスレクシア。
そして受刑者の41%がディスレクシア」


!!

41%が本当かはさておき、
ディスレクシアさらには発達障害者と犯罪は、
きちんと考えなければならない、奥の深い問題だと思います。

発達障害=犯罪者、とするのはもちろん短絡的すぎます。
でも、発達の凹凸をポジティブに理解してもらえなかった子が
「自分には居場所がない」と感じたとき、
犯罪に走る展開もあることは、十分に心得ておかなければなりません。

ディスレクシア/発達障害と犯罪に関する本をまとめてみました・・・

『心からのごめんなさいへ』

まずはこの本でしょう。
少年院での矯正教育は、LD/発達障害児のソーシャルスキルトレーニングとして絶大な効果があった!
という話です。
読んだ当時、目からぼろぼろうろこが落ちました。

著者の品川裕香氏は、LDや発達障害という言葉を使うときは
「LDや発達障害のような症状を見せる子が」
(原文は「のような」に傍点つき)といった具合に、
発達障害イコール少年犯罪と決めつけないよう、
あるいは触法少年たちを発達障害だと決めつけないよう、
非常に注意しています。

私語禁止・スモールステップ・即時フィードバックなどの教育が、
少年達に絶大な効果を挙げていくこと、
さらには、矯正教育がLD研究の新たな可能性を拓いていくことなどが語られます。


『累犯障害者』

神奈川LD協会の研究会の販売コーナーで買いましたが、
ディスレクシアは出てきません。
でも、とても衝撃的な内容です。
日本の福祉政策がお役所仕事のため、本当に福祉を必要としている人を救えず、
結果、刑務所が知的障害者・精神障害者(そしておそらく発達障害者)の最終的な収容所となっている現実が暴かれます。

お役所は「でも制度はありますし」とは言うものの、
本当に困っている人はその制度では救われていない。
これは、現在の文科省教育におけるディスレクシアの子の扱いに重なります。




『朗読者』
とても美しくて哀しい話。ベストセラーになりました。
ネタばれになってしまうのであまり書けませんが、
主人公ハンナは「字が読めない」ことで、少年との恋を失い、刑務所に入り…と、人生を狂わされていきます。


☆  ☆  ☆

上の本に登場するほどは強烈でもないし、オチもないのですが、
このあたりのことについて、生徒を通して考えるところがあったので、書いてみます。


最近、いろいろ話している元教え子の大学生君がいます。
(※ディスレクシアではありません。)
非常に頭の回転が早く、語彙も豊富です。
この子が、とにかく落ち着きがない。人の言うことを聞かない。
演習中はずっとびんぼうゆすりをしてるし、
イライラしながら授業の場にいるのが伝わってくる、そんな子でした。
(のちにそれが、ニコチン依存のせいでもあると知るのですが。)

高校生とは思えないほど、思想系の本を読み込んでいました。
最難関大の現代文で出題されるような文章も、すでに自分で読んでいます。
でも、それが問題文という形になると、真正面からとらえることができません。
つい、斜に構えてしまったり、「この手の話題ならこういう結論に持っていくはず」と勝手に推測したり。自分の読みたいように読んでしまいます。
「本文に書かれていないことは答えない」「とっちらかった答案を書かない」という点で非常に苦労しました。


大学生になってから、自分のことを話してくれるようになりました。

「僕は指紋をとられてるので、まともな就職は無理っすよ」。
なんで警察の世話になったのかは、教えてくれません。
「先生、指紋をとられる時の気分って分かりますか?」

高校入試は素行不良で第一志望の某国立大付属に入れず、男子校に。
高校はあまりきちんと行かず。補導歴は複数回あり。
喫煙は13から。同時に軽犯罪を覚える。
小学校では教室にいられず、校庭で遊んでいた。
(ちなみに、高校は超有名エリート校、大学もそうです。
本人は否定するでしょうが、学歴スペックが彼を守っていることは確かです。)

「予備校に来て先生のクラスをとって、はじめてまともに英語の授業を受けましたよ。それまで授業なんか出てなかったから」
ありがとう、でも授業に出てもこっちの話なんか聞いてなかったでしょう…?
だから、どうしてもこっち(私)の意見を聞きたいと言ってくるまで、ほうっておこうと思って。
でも、「真正面から文章と向き合わないと」だけは、それだけは改めないと落ちると思ったので、言ったけどね。
と言うと、「その言葉はこたえましたよ。でも、そんなに一人ひとりに合わせてたんですね?」と驚かれ、
それから、いろいろ話してくれるようになりました。


本人の口から聞く本人の経歴は相当ワルです。
が、答案からはとても真摯で高潔な性格が見えて、
根っからの悪人とは到底思えません。


あくまで私の推測ですが、
彼は多動のあまり、犯罪やタバコに手を出したように見えます。

多動を外から厳しく抑えられたり、否定されたりすると、
鬱っぽくなる人もいますが(高校生の頃の私のように)、
犯罪に走る人もいる気がします。
理解されない辛さが自分の内側に向かうか、外側に向かうかが違うだけで、
根っこにある「自分の凹凸が周囲の大人に理解されない不満」は同じなのです。




そんな彼に、うちの子を会わせる機会がありました。
キミにはそんな一面があったの?とびっくりするような、
優しいお兄さんとして接してくれました。


帰り際に、こう言われました。
「字が読めないというから知的に問題があるのかと思ったら、違うじゃないですか。
僕と同じ匂いがしますね(笑)。彼をつぶさないで」



つぶさないで・・・?

結論は出ていないのですが、
以来、彼がそう言ったことの意味を、考え続けています。


2 件のコメント:

  1. 人間誰しもが(動物でもそうですが)ビックリ箱みたいなもんですよね。
    無理に押し込んでた蓋が取れたら飛び出してしまう。
    脆い物は大きさにあった器で包んであげないと壊れてしまう。
    発達障害の子は気持ちがストレートというか幼い頃のままというか、よく言えば純粋でもあります。

    うちの子も 虐めにあったせいも多分にあるかとは思いますが、
    否定されたり からかわれたりすると、ショックや怒りが大きく感じられてしまいます。
    命令も嫌いです。
    反抗期も加わってきてますが、「~した?」との問いには鬱陶しそうな返事をしますが、勉強でも
    「今聴いて解ったと思ってもすぐに忘れるんやからね。“そうか!”ってちゃんと『理解』できたらキミは覚えられるんやから」
    と言うと、ちょっと元気のある素直な返事が返ってきます。

    発達障害がない子でも同じでしょう(^^;
    理解してない人から否定される機会が多くなるという点が問題で…☆

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    1. あやめさんの包容力はさすがですね!
      うちは反抗期はこれから。つぶさないためにも、あやめさんの言い方を真似したいです。ありがとうございますm(__)m

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