2014-02-19

ディスレクシアは、音を聞いてから文字を見ると覚えやすい

2/14にオックスフォード大学が発表した小さな記事を訳しました。


・ディスレクシアは、目→耳、感覚→別の感覚へと注意力をシフトさせるのが困難
・音を聞いてから、対応する文字や単語を見ると、早く覚えられる
・アクションゲームは注意力を移動させ続ける必要があるため、読み書き能力を向上させる可能性がある
(具体的なゲーム名の記載はなし)


注意力を保持させるテレビゲームが、
ディスレクシアに役立つ可能性
原文→こちら


<ディスレクシアは、視覚から聴覚へと注意力をシフトさせるのが困難だ
オックスフォード大学の研究グループが発表した。>

アクションTVゲームは注意力の焦点を常に移動させ続ける必要があり、このことが読み書き能力を高める可能性があると、研究者たちが示唆している。ただし、まだ検証が必要だともしている。この研究結果はCurrent Biologyに発表された。

「誰かと会話をしていて、急に背後から名前を呼ばれたとする。この時、人の注意力は目の前の相手、つまり視覚から、後からする音へとシフトする。これが感覚間での注意力の移動だ。ディスレクシアの人は読み書き能力が高い人と比べて、視覚的刺激から聴覚的刺激へと注意力をシフトさせることが特に難しいことが分かった」と、オックスフォード大学実験心理学門、Vanessa Harrar博士は言う。
Harrar博士自身が子供の頃に読み書きに困難を抱えていたため、この研究には個人的に関心を持っているとも言う。「私自身はディスレクシアの診断を下されたことはなく、読み書きの困難は過去のものだ。昔は読むのが非常に遅く、スペルミスも大量にした。読むのが困難になればなるほど読むのを避けるようになり、そうしてクラスメートとの差が広がった。」

「今でもたいていの人より少し読むのが遅いが、それ以外の点では困難を克服した。今では毎日、一日中読み書きしなければならず、もう困難は感じない。私はラッキーだったと思うし、他の人も自身の困難の克服に必要な戦略やトレーニングを見つけ出せることを願っている」。


研究は、ディスレクシアの診断を正式に下された17人と、対照群として読み問題を抱えていない19人が参加して行われた。
参加者は、音が聞こえたとき、弱い光が点灯したとき、またはその両方を認識したときに、できるだけ素早くボタンを押すよう指示された。ボタンを押す速さを記録、分析した。
どの参加者も、同じ種類の刺激が繰り返された時(「点灯→点灯」「音→音」)が、反応が最も速かった。だが、ディスレクシアの人は「音→音」と比べて「点灯→音」の反応が0.35秒遅かった。なお対照群は同0.20秒遅くなるにとどまった。

博士は、さらに研究を進める必要があるとしているが、ディスレクシア用トレーニングプログラムはこの点を考慮に入れることを検討すべきだと提案する。
ディスレクシアが文字と音の関係を学ぶには、まず音を聞いてから、次に対応する文字や単語を見ると、より早く覚えられるかもしれないと考えている」(Harrar博士)。まず文字を見て、それから音を聞くという、従来の方法とは正反対だと博士は言う。

さらに同博士らは、読み書き能力を向上させる可能性のあるアプローチの一つとして、アクションTVゲームを提案する。
この考えには根拠がないわけではない。ディスレクシアは注意力、特に視覚的注意力を誘導する脳回路が関わっているとされる。2013年にはイタリアの研究グループが、注意力向上を念頭に選んだテレビゲームが、ディスレクシアの読み能力を高めた可能性があることを示した→※翻訳
今回のオックスフォード大学の結果はまた、ディスレクシアは注意の焦点を当てたり当て直したりする点に問題を抱えているとの仮説を支持するとともに、ディスレクシアは感覚間での注意力の移動に困難を抱えていると問題点を拡張している。

「先行研究で使われたテレビゲームに手を加えて多感覚的な要素を含めるようにして、メリットを比較するのも面白いかもしれない」(Dr. Harrar
「ディスレクシアのなかには、聴覚的欠陥がより明らかな人、視覚的欠陥が明らかな人、さらには多感覚的な問題が強い人もいる。長期的には、ディスレクシア用トレーニングプログラムを一人一人の子供に特有の感覚的欠陥にあわせてターゲット化できるようになりたい」。


~~~~

んであげながら目で追ってもらう」が有効だということですね。


2014-02-18

ジョリーフォニックスその5:非ディスレクシアとの習得の違いを目の当たりにする

今日は、ジョリーフォニックスの伝道師、山下かよこ先生が
直接子供にジョリーを教える様子を、見学することができました!
Yamatalk Englishさま、このような企画をほんとうにありがとうございます!

私が仕事で教えている生徒は大学受験生なので、
非ディスレクシア児童が英語を学ぶ様子を見るのは、今日が初めてでした。
ディスレクシアとはかなり違う・・・とても勉強になりました。


本日のセミナーに参加した子は未就学児が中心で、
そこに小5男子(うちの子)も、途中から混ぜていただきました。



①物語を読む、オトを教える
テキストは、←この本の教室用巨大バージョンを使っていました。
巨大というだけで引き込まれます。幼児にとっては等身大です。

このテキストは、1文字ずつ物語仕立てになっています。
この物語を日本語で話して聞かせ、
そのなかにletter soundを織り交ぜて、
さりげなくオトを教えてしまう山下先生。
例えば
「ヘビがあいさつしてるよ。でもちょっと恥ずかしがりやさんだから、sssとしか言えないんだって」というふうに。



日本語で教えているのですが、英語の音は正しく入れる、
その手腕にまず感動しました。



②セグメンティング
/s/というオトを教えたら、次に単語を言って聞かせ、
どこに/s/が入っているか言ってもらいます。
「snakeは最初、nestは中に、/s/の音があるね!」というふうに。
いわゆる「セグメンティング」ですね。

ディスレクシア的に、けっこう驚きました。
うちのやつは多分、これはそんなに簡単にはできません。
(初めての単語を読むときは、語や文全体の音のリズムをつかみ、
それから個々のオトへ、というような単語認識の仕方をしています)

しかし、年少さんで「nest」で/s/の音は2番目に来るよ!
jamで/a/の音は前にくっついてるよ!
とノリノリで即答していた子もいました。
ディスレクシアと非ディスレクシアではこうも違うのかと。。。
この差こそ、「ディスレクシアには音韻認識が欠けている」ということですね。

でもしかし、ジョリー歴半年だから言えます!
普通の子の何倍かの時間をかければ、
ディスレクシアでも「nestで/s/のオトは2番目に来る」と言えるようになる
(いま本人に来てもらい、できることを確認しました)

山下先生も「どこに/s/の音があるかを聞き分けられるようになるのが、
書けるようになるために、とっても重要なんです
とおっしゃってましたが、ほんとその通りです。
ディスレクシアである子が、オトの聞き分けにかなり苦労していることが、その証拠です。

では、ディスレクシアの子は、
オトを聞き分けられるようになれば、書けるようになるのでしょうか・・・?
そこはまだ、私には分かりません。



③文字を書く
山下先生は次にすぐ、文字を”書くこと”に移ります。
大きく空書き、小さく空書き、両手書きをしてから、
何人かに前に出てきてもらい、ホワイトボードに書いてもらっていました。
もちろん書けたら目一杯ほめます。
「読める・書けるのは楽しい!」という感情を、山下先生は巧みに引き出していきます。


書くことについては、
ディスレクシアと非ディスレクシアの違いがさらに多いと感じました。
うちの子は、かなり真面目にジョリーに取り組んでいると思いますが、
それでも、まだ鉛筆で文字は書きたがりません。

空書きはしています。
でも、最初のうちは、aなどに含まれる○(ループ)を円に書くのも難しく、
妙に縦長のものになっていました(斜め線がつらそうです)。

そろそろ鉛筆で字を書くことに移行しようかなと思うのですが、
タイミングが難しいです。


文字を書くのは難しいので、マグネットを使っています。
this iz a penはフォニックス綴りしてます。


対照的に、非ディスレクシアの子たちは、「書く!書く!!」とノリノリでした。
未就学児でも、大喜びでsやaを書いていました。
そういえば、知らない字が書けるようになるのは、大きな喜びだよね・・・
日々ディスレクシアの子だけを見ていると、忘れがちなことです。

でも。ディスレクシアであっても、
書けるようになるのは、非ディスレクシアと同じように嬉しいはず。
字が書ける喜びを前面に出す余裕はないとしても・・・
と信じたいです。



④ブレンディング
最後に、s・a・tのブレンディング指導のお手本も見ることができました。
s・a・tをだんだんくっつけ気味に言っていき(まさにブレンド)、誘導気味にsatと言わせていました。
これも、非ディスレクシアの未就学児はあっという間にブレンディングができていて、
ディスレクシアとの違いを感じさせました。
うちの場合、ブレンディングはかなり苦労しています。

でも、繰り返しになりますが、もう一度言いましょう。。
普通の子の何倍かの時間をかければ、
ディスレクシアでもブレンディングは少しずつできるようになると。


☆  ☆  ☆


子は、付属の本を一冊読み上げて(半分は暗誦して)、
山下先生にジョリー学習歴半年の成果を聞いて頂きました。
ゆっくりながら、文字を見て音を思い出すこともでき、
また、山下先生の前で「f・l・a・p」とブレンディングをしていました。


帰宅後、「緊張したよ~」と申してましたが、
母親以外の人の前でブレンディングが出来たことに、
シンセティック・フォニックス(ジョリー)の正しさを再確認できました!


今日感じたことのまとめ:
非ディスレクシアにジョリーで教えると、かなりあっという間に文字と音の対応を覚える。
(1回15分、週1回で定着するとのこと)
ディスレクシアだと、この何倍かの反復が必要。
(1回15分を何度も何度も復習して)
・非ディスレクシア、ディスレクシアとも、ジョリーで教えると、正確な発音で読める
授業のほとんどを日本語で行っても、英語の音も文字も正しく入る。
・非ディスレクシア/ディスレクシアの両方にとって、非常にスモールステップであり、かつポジティブ。「これを積み上げていけば、確かに未知の単語に遭遇しても、自力で発音できるだろうな」と予測できる。
・ブレンディングや空書きに困難を覚える時点で、ディスレクシアかも?と思ってその子を眺めることができるかもしれない。


関連記事
ジョリーフォニックスを試してみる・その1
ジョリーフォニックスその2・「音→動作→文字」の回路をつくる
口で言えればアルファベットも書ける?!
ジョリーフォニックスその4・例外を使って規則を定着させる





2014-02-13

里田まい「アメリか」と書いた理由…はきっとディスレクシアだから

コメントを書いて下さる方から、教えて頂きました!

里田まい「アメリか」と書いた理由

…過去には「田中将犬」も


 ・・・「田中と里田らを乗せたチャーター便は9日(日本時間10日)、米ニューヨークのケネディ国際空港に到着、これを紹介した日本のテレビの映像にチャーター機から大量の荷物が運び出され、その荷物には一つ一つ内容が記され「DVD」「NY帽子」などと書かれていた。そして「アメリか」と書かれていた箱があったことについて楽しくコメントした。

 「アメリか」と題したブログで「みんなからのコメントとか、友達からのメールで、引越しの段ボールが写ってたよー段ボールに『アメリか』って書いてあったーって聞いて」として「バレたwww」と明るく続けた。

 「なんか私、すぐ点をつける癖があって、結婚したすぐの頃、田中将大って書こうとしたら、田中将犬ってなっちゃってたことがあったな。ふと、その事を思い出しました」とほのぼのとつづった。」・・・


おお、これはまさに「野比のび犬」タイプの間違い(笑)




当ブログでは、のび太(と藤子・F・不二雄)はきっとディスレクシアと考えています。


里田まいさん、なんかいろいろ納得です。
おバカタレントで売っていたのに、料理でしっかり夫をサポートとか、
億万長者になったのに、ひょうひょうとしている天然ぶりとか。。

英語の文字では苦労するかもしれませんが、
きっと会話力はすぐに身につくことと思います!


関連記事

2014-02-10

「発達性ディスレクシア研究会」研修会にて、地道な訓練の必要性を再確認

「発達性ディスレクシア研究会」の研修会に行ってきました。

大雪で前夜出発の予定が狂い、朝4時半に家を出て始発ののぞみで大阪入りしました。何が私をそこまで突き動かすのか?!(笑)
でもそれよりはるかにすごいのは、何事もなかったかのように朝9時から充実した講義をされた宇野先生です(T T)。
聞けば土曜16時に市川から東京駅に向かったとのこと。
それは一番雪の激しい時間帯だったはず・・・。

今回は研修会なので、主に教員を対象に、ディスレクシアの定義・頻度・評価に関する、とても充実して良くまとまった講義と、「合理的配慮」に関する品川裕香さんによる講演が行われました。
品川さんは非常にパワフル、圧倒的情報量の機関銃トーク80分。途中からメモを取ることを諦めました(苦笑)。たくさん宿題をもらった気がします。本では各方面に気を配り、相当抑えて書いていらっしゃることを知りました。

以下、考えたことを書いてみます。


■ディスレクシアは音韻認知と視覚認知の障害である

日本語における発達性ディスレクシアの定義の説明がありました:
(宇野ら「小学生の読み書き計算スクリーニング検査」より)

「発達性ディスレクシアは、神経生物学的原因に起因する特異的障害である。
(↑生まれつきであり、育て方や環境ではない


その基本的特徴は、文字や単語の音読や書字に関する正確性や流暢性の困難さである。
(↑書字:綴り[オトを聞き、文字を思い浮かべる]+書くことを指す。
  流暢性:音読・書き始めるまでの所要時間と、書き終わるまでの時間の両方を指す。
  また、「流暢性の困難」には、「正確に書けるが時間がかかる」も含まれる)


こうした困難は、音韻認知や視覚認知などの障害により、全般的な知能水準から予測できないことがある。二次的に読む機会が少なくなる結果、語彙の発達や背景となる知識の増大を妨げることが少なくない。この障害は1999年に定義された文部科学省の学習障害の中核都考えられる。」
(↑欧米ではディスレクシアは音韻性障害とされるが、日本では音韻性+視覚認知性の困難の両方を持っているケースが90%を占め、一方のみは5%ずつに過ぎない。英語圏で言われていることをそのまま日本語世界に適用するのは無理がある。)

---
欧米ではディスレクシアは音韻性障害とされるが、日本では音韻性+視覚認知性の困難の両方を持っているケースが90%を占める
→抽象的な話になってしまうのですが、
これは人種による身体機能の差(「日本人にはイギリス人やアメリカ人より視覚認知力が弱い人が多い」)の話ではないと思うのです。
ということは、これは
「ディスレクシアの人は人種問わず同じ困難を脳に抱えているが、日本語は、そのなかでも視覚認知性の困難を引き出しやすい」
もっと言うと「英語圏のディスレクシアも、視覚認知と音韻認知の両方に関係する問題である。音の問題のほうが前面に出てくるが」
ということだろうと思います。

見ることと聞くことって、意外なところでつながっている可能性はないのでしょうか?

---
→もう一点。
傍で見ている親の感覚だと、日本語ディスレクシアはまず
「字が異常に苦手」という形で表れ、
音韻性の問題があることに意識が向きにくい気がします。
「うちの子は、問題を読んであげれば解けるので、聞くほうは問題ないです」
ということになりがちです。

実はうちの子も、かなり聞き間違いをしています。
実生活では単なる面白エピソードになってますが。
最近だと「アーメン」を「ラーメン?」、「あくびするとき手で押さえて」を「あくびすると千円あげる?」に。これを絶妙なタイミングで聞き返してくるので、ツボにはまったり激しくムカついたり(笑)

でも本当は、これらを単に面白い話として片付けずに、
「こういう聞き間違いを改善できれば読み書き能力にも良い影響がある」
と考えるべきなのかも・・・?






■地道な訓練は必要なのだ
1)
今回は、具体的な教え方の話はテーマ外だったのですが、
全体の話から、「少なくとも小学生のうちは、地道な読み書き訓練を徹底的に行うべきだ」というメッセージを私は受け取りました。
機器に逃げるのではなく(←厳しい言い方ですが)、毎日こつこつと基礎訓練を続けること。
もちろん、ディスレクシアに合った形であることが条件です。
そうすれば、仮に完璧に読み書きが流暢にならなくても、それなりに身につくはずで、
それこそが大人になって「あの頃頑張っておいてよかった」と思えることだろうと、そう信じます。

現実的には、これは家庭学習(+確保できるなら週1回程度の専門家による指導)になるでしょう。
全部外注しようとすると、通学の負担と金銭的負担が大変なことになりそうです。

2)
地道な訓練はいつ終わるのか?
知能の高い純粋ディスレクシアの場合、高校生の後半にもなれば、読み書きの苦手さをカバーする自分なりの読み方の方略を身につけつつあります(「隠れディスレクシア」)。
おそらく、中高時代のどこかで、「地道な訓練による読み書き能力の伸び」を、「読み書きの苦手さを文脈把握力でカバーすることでの読解力の伸び」が上回るのでしょう。
そのときが、地道な訓練の終わり時だと予想します。
現時点では、それがいつかはちょっとわかりません。
子(小5)と予備校で見る高3生の間であることだけは確かですが。


私の知る限り、「隠れディスレクシア」なら、大学受験の時点で、読み書きの苦手をカバーする方法を自分なりに身につけていることが多いです。
抜けが多かったり、雑だけど読むのがものすごく速かったり、逆にかなり遅かったり。文脈や予備知識を使って読みます。構文知識はしっかりしていることが多いです。
あまりに上手にカバーしていて、自分でも読み書きが苦手だという自覚がない場合もあります。

3)
大学受験を目の前に控えて、あるいは大学生になって、ようやく読み書きの苦手が明らかになった子に、どう対処すべきか?
まだまだ実践報告の少ない年代のようです。

「隠れディスレクシア」になれなかった子というのがいます。
高校生になって自分なりの読み方略を身につけていなかったり、読めないまま自信を失ったりしているケースです。読んだり書いたりするのが超絶に遅い(正確な場合も、正確でない場合もあります)、さらには書けないケースもあります。
「中堅高校や地方中堅国立大学にも、こういう子ってちょこちょこいるよね」という話も内輪で出ました。
「ディスレクシア」という言葉を使わずに、基本に戻ってたたき直すのが、遠回りに見えておそらくは一番本人のためになると思いますが、現実には本人に納得してもらうのがまず難しそうです・・・。


品川さんからは、字が読めないまま結婚・出産し、子供が小学校に入るも、電話でメモが取れずに連絡網が回せなかったり、学校からもらってくるお知らせが読めなかったりして、パニックに陥っている事例が紹介されました。
私は「大学入試さえクリアすれば、あとは直筆を封印し、性格や日々の行いを良くするとかして(笑)人にお願いする力を超絶に伸ばせばいい」と思っていたのですが、そうとも言い切れないようです。




#地道な訓練が必要とはいえ、先は長い・・・





2014-02-04

ディスレクシアの子にカタカナをどう教えるか?

もうすぐ小学校にあがる、ディスレクシアと思しきお子さんに、
ひらがなやカタカナをどうやって教えたらよいか?というご質問を頂きました。

うちは、そのくらいの頃はディスレクシアというものを知らなかったので、
小学校入学前は
「周りの子より字がずいぶんつたないし、自分から読まないけど、保育園に預けっぱなしでろくに勉強を見なかったせいかな」と反省し
(→ディスレクシアは保育園か幼稚園かとは関係ありません!

小1の頃は
「みんなきれいな字を書くな~、それにひきかえうちのやつは…」
と内心焦りはじめ、
小2の頃は
そろそろ真面目にやらないと本当に書けなくなるよ!
ごはんはちゃんと書けてからね
と罵倒しながら、夜遅くまで字の練習をさせていました。
(→×長時間拘束はディスレクシアにはつらすぎます)

10回書いて覚えられないなら20回、いや100回書きなさい
(→×ディスレクシアには鉛筆による反復は一番無意味!)

ママが2年生の頃はとっくに漢字が書けたのに、なんであんたは
(→他人や親や兄弟と比べるのもナンセンス
これについては、私のインナーチャイルド(笑)が「勉強だけが取り柄の昔の自分」を認めてほしがっていたためだと気づきました)

さっき書けたのに今書けないなんて、ふざけてんの?!」
(→これこそがディスレクシアです)

ディスレクシアに言ってはいけない、あらゆる罵詈雑言を浴びせました。
本当にごめんね・・・

小3でディスレクシアというものを知ったときに、
「あんたはずっと真面目にやってたんだね?!」とびっくりして言ったら、
”はっ!”とした顔をされ、
それからわあ~と泣きながら「ぼくはいつだってまじめだったよ・・・
と言われて、深く深く反省しました。

そういえば、最近書き取りしながら泣くことがなくなりました。

☆  ☆  ☆


前置きが非常に長くなりました。

もし、うちの子がいま小学校入学を目前に控えていたとしたら、カタカナをどう教えるだろうか?と考えてみました。



a)文字の形を言えるようにする。
漢字カードと同じ要領です。
フ、ノ、コ、からはじめて、「ア」は「フとノ」といった組み合わせで教えるような気がします。
文字の形が言えれば、何度も書き取りしなくても、定着できますので、
最後に1回、確認の意味で書いてもらえば、それでOKのはずです。

b)大きく空書き、尻文字、母親の手のひらや背中に書いてもらう
体を使って、大きく字を書いてもらいます。
新聞紙に大きくマジックで書いたり、ホワイトボードを使うのも、大きく書けるので良いです。
ディスレクシアは筆のほうが上手に書けると、教えてくれた人もいました。

c)文字の形を作る。
左右が混乱する字は、粘土やブロックで文字の形をつくってみると思います。
たとえば、「キ」は3画目に思いっきり傾斜をつけて作り、
左手でビー玉を持ち、左上から傾斜に沿って転がし、右手で受け止めさせて
左上から右下への傾斜を覚えさせるのも一案です。



普通の子の何倍かの手間がかかりますが、こつこつと続けることです。
短い時間(15分とか)でも、毎日やったほうが定着します。

字の訓練は非常に疲れるので、週末はお休みにすること、
という話も聞いたことがあります。



ここまで書いたところで、『読み書きが苦手な子どもへの<基礎>トレーニングワーク』を見てみました。


著者の村井先生によると、

これから小学校にあがるディスレクシアの子にお勧めです。


・カタカナが覚えにくい子は、
ひらがなで書かれたことばをカタカナに変換する練習を
・ななめ線の方向がわかりにくい場合は、マス目に数字を打ち、
方向を言語化して練習

やはり、「文字の形を言えるようにする」のがよさそうです。

☆  ☆  ☆

実は、うちの場合、いまでもカタカナは完璧というわけではありません。

むしろ、漢字のほうが定着しやすいようにさえ見えます。

「カタカナさえ満足に書けないなら、漢字はもっと大変に違いない」
という順番では、必ずしもないようです。


『読み書きが苦手な子どもへの<基礎>トレーニングワーク』から、いま書いてもらいました。
「バケツ」とかひどいもんです・・・
「ヨ」が思い出せず、「日の1画目がないやつだよ」と教えてあげました。


いま振り返るに、うちの場合は、より複雑な漢字を覚えるなかで、 
漢字の「部品」であるところのカタカナも、次第に覚えたように思います。
こんなところでもディスレクシアは「部分から全体へ」ではなく
「全体から部分へ」らしいです。

☆  ☆  ☆

道村先生がご自身のブログに、カタカナから小学校低学年の漢字を、(ディスレクシアとおぼしき高校生に)指導している様子を、具体的に書いていらっしゃいます。
スモールステップの様子がわかります。


カタカナから
1年漢字、その1
1年漢字、その2
2年漢字、その1


「1年漢字、その1」のなかで道村先生も書いておられますが、 「少しつまるところがあったが、その辺で手を打とう。」
つまり、だいたいできたら次に進むほうが、前のことができるようになるようです。


まとめると、

1)形を言葉で言えるといいかも
2)体を使って書くとよい
3)完璧を求めず、だいたいできたら次に進む
4)毎日短い時間でもコツコツと取り組む

5)出来なくても決して責めない



2014-02-03

【動画】ディスレクシアとは何か

7月に"What is dyslexia?"という動画に字幕を付けたのですが、
ようやくレビューと承認を受けることができました。
お力を貸してくださった方々、ありがとうございますm(_ _)m

ディスレクシアの何たるかをわかりやすく説明していて、お勧めです!



・ディスレクシアとは、言葉の見え方の問題ではなく音韻処理の障害。
 言葉を「操作する」部分に問題がある。
・5人に1人(!!)とも言われる。家族性であり、人によって出方や強弱はさまざま。
・普通の人と違い、読む時に右脳と前頭葉が盛んに活動するため、読んだ内容の処理に時間が多くかかるという「バグ」がある。
多感覚法で、音と文字のルールを集中的に教えることで、左脳を効率的に使えるように訓練可能。
・ディスレクシアは「脳の多様性」の観点から考えるべき。


ディスレクシアとは? ― ケリ・サンドマン=ハーリー

概説:
ディスレクシア(読字障害)は5人に1人に見られるとも言われますが、そのあらわれ方は人によって異なります。ディスレクシアによる言語処理の困難の度合いは一連のスペクトラム上に分布しており、「正常」や「欠陥」という分類にあてはまらない場合も多々あります。ケリ・サンドマン=ハーリーが、ディスレクシアを持つ脳の機能について改めて考え直すよう迫り、ヒトの脳の神経多様性を重要視すべきであると訴えます。




(右下の「YouTube」アイコンをクリックしてYouTubeの画面に飛ぶと、
その画面の右下で「字幕」から日本語を選択できます。)



私は、初めて見たとき
「多感覚法で訓練すれば読めるようになる」と言い切っているのが、印象に残りました。

最近私がずっと考えているのは、
ディスレクシアは、読み書きの障害のように見えるけど、
実は言葉のオトの理解、つまり聞いた音がきちんと(or迅速に)区別できない障害という側面が、
一般に思われているよりもずっと大きいのでは?ということなのですが、
この動画でも最初に
「ディスレクシアは音韻性の障害です」と言い切っているので改めて驚きました。
これについては次の機会に。