2014-09-28

ディスレクシア指導においては、「好きなこと」を突破口にするのが非常に大事らしい

最近、アクセス数から察するに、当ブログはディスレクシア小学生の指導よりもディスレクシア大学受験生の指導情報を求めて来られる方が多いようです。ありがとうございます。
コスモ君(仮名)の指導内容について記事にすることは、当ブログをご覧になってご相談を頂いたご両親から「ディスレクシア指導のためになるなら」とご了承を頂いています。この場をお借りして改めてご両親に感謝申し上げます。
ご本人にも了承を得ています。しかし、「親子喧嘩の種になることは書かないでほしい」とも言われています。
受験生の気持ちを何より尊重したいので、当ブログに書くのは本人のモチベーションアップが主目的であること、特に、合格するまでは限定的な内容しか書けないことを、なにとぞご了承下さい。


☆  ☆  ☆


と、お断りした上で、ひっくり返るほど驚いたことについて今回は書きます。

ディスレクシア指導では、「好きなこと」を使うのが、とても効果的
という話です。


前々から、ディスレクシア指導には「興味のある分野」を利用することが非常に大事、とは聞いていました。

LD学会だったと思いますが、
興味のある音源を使ってリスニングの練習をするとよい
(ハリーポッターが好きなら、そのCDを何度も聞くなど)
キャリア(興味のあること)に関係する分野の語彙なら、すとんと入ることも少なくない
という指摘がありました。


名著『The Dyslexic Advantage』にも、
「ディスレクシア学習ではモチベーションが大きなカギになる」
とあったように記憶しています。
が、見つけることができず…近い内容をを引用します。

ディスレクシアの生徒には、その子専用にデザインされた、弱みを減らすことと強みを伸ばすことに同程度の時間をあてるアプローチが必要だ。読み書きの練習に加えて、本人が興味を持つことについて教えてくれるような教育環境が必要である。(p214)

☆  ☆  ☆

そんなことが頭にあったので、コスモ君に単語を覚えてもらうため、
速読英単語と同じ形のものを、彼が興味のある分野の文章で作ってみました。

彼が熱く語ってくれる分野は、彼も内容を熟知しており、
しかも質が良く、専門的すぎない内容の英文が手に入る分野です。

100語ほどの文章を、受験向けに単語を少し書き換えたり、
先週覚えられなかった単語を混ぜてみたりして、単語暗記用の文章を作りました。

冒頭の理由から、ここでそれをお見せすることはできません。。

しかし、単語テストをしてみたら、私も本人もびっくり!
コスモ君は抽象的な形容詞が特に覚えにくいのですが、
available、unfortunate、experimentalを、覚えることができたのです!
思い出す速度も、これまで駿台のテキストの単語を覚えてもらっていた時よりかなり速い、というか瞬時に出てきます。
好きな分野のパワー、恐るべし!


驚きはそれだけではないのです。
今回、この文章を送るときに、コスモ君には
「英単語を見て、日本語を言えるようにしてきてね」と伝えてありました。
しかし彼は、英文をノートに写し、覚えるべき単語をハイライトして、
自主的に全訳までつけてきたのです!!
それどころか、質問まで用意してきました!!
しかもその質問というのが、
With few resources availableのwithは主節にどういう意味でつながっているか(独立分詞構文の付帯状況以外の意味)という、
普通なら偏差値60あたりで出てくる質問なのです・・・
モチベーションの力はすごいです!

☆  ☆  ☆

英語の学習段階というのは、一般に、
1) を読んで、正しい音を出せる
2)を読んで、正しく発音でき、意味が分かる
3) を読んで、正しく構文を把握し、意味が分かる
4) 文章を読んで、正しく文脈を把握し、意味が分かる

という順に、段階を踏んで、高度化していくと考えられています。
後に行くほど難しいと考えられており、
特に、3)ができても、4)がなかなか出来ない受験生は多いものです。


しかし、ディスレクシアにおいては、
1)2)が非常に困難で、
3)は、1)2)に比べたらはるかに苦労が少なく、
4)は、3)が完了した段階で、同時に完了している。

よって、3)や4)が分かっている文章を使い、1)2)を強化することが可能。

ということのようです。

1)2)があまりに困難だと、
「この段階でこんなに読めないなんてお先真っ暗」
と絶望的になりかけますが(うちの子は今まさに1)で1年経過)
ここを抜けたら、その先の苦労はだいぶ少ないのだから!
と希望を持ってよいようです。
1)2)に教える側が辛抱強くつきあい、本人を絶望させないことが大切と感じます。


☆  ☆  ☆

これはいいと思った私は、コスモ君との別れ際に
「しばらく××の文章で単語帳を作るから、みっちり覚えてきてね。
単語を覚えたら、過去問もずいぶん読めるようになると思うよ」
と言ったところ、彼は思ってもみないことを言いました:

「××の文章と、××でない文章の、2本お願いします。
訳はつけないで下さい。ついそっちばかり読んじゃうから(笑)。
××でない文章も、覚えられると思います」

!!!
つまり、××が「突破口」となって、彼は何かをつかんだのだと思います。
覚えてみようというモチベーションが湧いたのかもしれませんし、
こういう風にしたら覚えられるという方法をつかんだのかもしれません。

実はわたくし、昨年の時点で、
「興味のある分野の単語なら覚えられる」という話を聞いたときには、
「ディスレクシアならまあそうかも。
でも、そういうスタンスだと、入試に必要な単語は覚えられないのでは?
残念ながら、入試対策には応用できないでしょう」と思っていました。

しかし!どうやら、興味のある分野は突破口、ひとつのステップであり、
そこから興味の劣る分野の単語暗記にも、広がっていけるようなのです。

来週までに50個の単語を覚えてくることになっているのですが、
どれくらい単語を覚えてきてくれるか、とても楽しみです!


ノートを見開きで1つの大きなページとして使用。
これは斬新で効果的!
でも、「ノートは自分の脳にインプットするための道具なんだから、
きれいに書くのが大変なら、無理することはないよ」と伝えました

~おまけ~

今週はもう一つ、驚くべきことがありました。
当ブログでも「ディスレクシアの利点」「隠れディスレクシア」など、何度も紹介している、The Dyslexic Advantageの著者から、メールが来たのです!

ジャック・ホーナー教授の講演動画につけた字幕を見つけて連絡してくれました)

「「隠れディスレクシア」の記事は日本で大変反響がある、たぶん日本語ディスレクシアが英語を学ぶときに遭遇する問題を言い当てているから」と返事したら「日本のディスレクシアについてもっと教えて」と言われました(!)。
アメリカ西海岸の人らしく、とてもオープンでフラットで、パワーをもらいました。
そして、私がディスレクシア探究の旅において徹底的に前向きでいられる原動力の「The Dyslexic Advantage」を、必ずや翻訳して皆様にも読んで(聞いて)頂きたい!という思いを新たにしました。

2014-09-23

道村式漢字カードで勉強して1年。大きな成果と、漢字学習の次なる課題

道村式漢字カードで漢字の勉強をするようになって、1年たちました。
(これまでのことは→こちら
道村先生、本当にありがとうございます!

このカードに出会ったおかげで初めて、
漢字以外の勉強にも手が回るようになったのです。
それまでは、漢字練習に家庭学習の時間と労力を全て注いでいました…
国語学習=漢字練習であっていいはずがないと思いながら。

結局うちは、5年と6年のカードだけ、しっかり取り組んでいます。
2~4年生のカードは少し復習しましたが、
2年生から戻って積み上げることは、結局していません。

現在は、学校より少しだけ先取りする形で、
毎日2つの新しい漢字を、道村式漢字カードを使って学んでいます。
先取りはお勧めです!
学校での漢字学習に(心理的に)ついていけるようになります。

新しい漢字は
1日目:
(1)おもて面の漢字を見ながら、「部品」(おもて面の下)を言えるようにする
(2)カードを見ずに、「タイトル」(裏面)を聞いて「部品」が言えるようにする
(3)1回だけ、ホワイトボードに書く

2日目以降:
(1)「タイトル」を見て、書けるか試す

という方法で使っています。

裏面の下には、同音の漢字が書いてありますが、
ディスレクシア的には、そこまで手が回りません。。。

「タイトル」を見て、書けるか試す。
まず今日の分の新しい漢字を2つ覚えてから、
2学期のこれまで学んだカードをトランプの神経衰弱のように全部並べて、
好きなものから順に書いてもらいます。
出題順番をこっちが決めると「げ~無理~」と言います。
正しく書けたものと書けなかったものを分けて、
書けなかったものだけ部品を言ってもらってからもう一度書く。

学校で漢字テストがあるまでは、その漢字の反復練習を続ける。

というサイクルが完成しました。

カードがない時代はどうやって新出漢字の勉強をしていたか、
もはや思い出せないほどです!



予備校でも言うことですが、サイクル化は大事です。
(サイクル:学習事項を定着させるまでの具体的な手順。
上の場合は「先取り・授業・反復・テスト」)
学習のサイクルが完成し、それを淡々と回す状態になると、
定着度は格段に上がります。

道村式カードは、一人ひとりの苦手にあわせてサイクル化しやすい点も
大きな長所だと感じます。



サイクルの見直し時は、
・定着度が落ちてきた時、
・本人が手応えを感じていない時、などです。

・節目で結果を出せた時(テストなど)
は、サイクルを見直し、ちょっと負荷を上げることを検討できるチャンスです。

本当にサイクル化できれば、進歩の実感も含まれているはずなので、
おのずと、ある程度の成果は出ると思うのですが、
・まだ成果が出ていない時
というのは、別のことをする前に、むしろサイクルの強化に励むべきと思います。

サイクル強化の方法は、
毎日決まった時間に取り組む、
復習と新出事項の両方を取り入れる、
5分から始めて少しずつ増やしていく、、、あたりでしょうか。

あと、疲れているように見えたら「よくがんばったね」と言って、
その日はぱっとやめるのも大事だと思います。
予備校でもそうですが、難しい問題に取り組んだときは
生徒をねぎらったらぱっと終わりにして、生徒があっけに取られるくらいが良いのです(笑)。
その方が、長い目で見ると、サイクルを崩さないことになります。

(ディスレクシアだと、「書けるようになるまで夕食はおあずけ!」と何時間も反復しているケースがあると思いますが、[うちも2年生の頃はやってました]、この方法での反復は効果がないばかりか、トラウマにしかなりません。
1回だけ書くのを1週間、2週間と続けるべきです。)

そうして臨んだ1学期のまとめテストは、なかなか頑張りました:




しかし、これには後日談がありまして。。

本人は「ついに自分も通知表の国語の『書く』で『できる』、
あわよくば『よくできる』がもらえる」 (0゚・∀・) と思ったようなのですが、
残念ながら1学期も「もう少し」でした。

(よく読むと評価基準が「文章全体の構成を考えて書く」なのでした。
彼は書き取り以上に、作文が大の苦手です)

このことがよほどこたえたようで、
夏休みの最後の日、子は通知表に2学期の決意を書きながら、涙を流しました:




☆  ☆  ☆

最近は、漢字カード以外の漢字学習にも挑戦しています。

最初は、教えて頂いたサイト→の読み・書き問題を使っていました。
良い問題がそろってます。

が、私が紙の管理にストレスを感じる(←ADHD)ので、
今は市販の問題集を使っています。

出題範囲が「これまで習った漢字全部」だと、正解率はがくっと落ちます。
これをどうやって上げていくかが、次なる課題です。



(1)まず書き取りの正解を子に示し、その読みをしてもらう。
(2)しばらく漢字を眺めてもらった後、正解を隠して、書き取りに挑戦。

(ちなみに、この字は家庭教師君が最大の気合で書いたもの)

その後、(0)自力で書けるものは書いてもらってから、
残りについて(1)(2)をするようになりました。


突然、ある音読みを示されて、その読み方の漢字をいくつか思い出すのは
非常に難しいことのようです。
隠れディスレクシア」にも、まったく同じことが書いてあります:
毎週一回のスペリングテストでも(そのために一生懸命勉強して)人並みの成績がとれる場合さえある。だがこうした子たちに対し記憶から語を呼び起こしてスペルしてもらうと、基本的には常に、驚くほど激しく間違う。

「ゼンアクのアクはアクニンのアクだよ」と言ってもぴんと来ず、
「ワルイだよ」と言うと、ようやく「ああ!」となります。

現状では、とにかく毎日、短時間の反復によって、
書ける熟語を一つひとつ増やしていくしかない状況です。。


☆  ☆  ☆

道村先生も書いていらっしゃいますが→こちら
漢字は訓読みよりも、音読みのほうが、定着しづらいようです。
道村先生はこの原因として、現在の国語の教科書が、
訓読みと音読みを初出時に一緒に教えない、
場合によっては何学年も離れて教えることにあるとして、
音読みと訓読みをセットで同時に教えるべき、と言っておられます。

まったくその通りです。ルールの後出しはよくありません。

漢字の音読みには数々の例外があるとはいえ、
「まずはこの読み方を」というのを1つ教えることで、
学習者の負担を大きく減らせます。
(この考え方は、ジョリーフォニックスにも共通しています)。

またディスレクシア的には、音読みが難しいのは、
訓読みのほうが、その漢字の意味と、密接に結びついているから
というのもあると思います。

例えば、「危」は「あぶない」という意味なので、「あぶな・い」は覚えやすい。
一方、「き」は、抽象度が高いので、ちょっと覚えにくくなります。

とはいえ、道村式カードは、この点にも配慮があるのが素晴らしい。
裏面には、すべての漢字の「タイトル」
(その漢字の訓読みと、代表的な音読みを含む熟語)
が載っています。
ここが単なる「音読み」ではなく、「熟語」になっている点がポイントです。
「キ」だと抽象的ですが、「危険」になっていれば、だいぶ具体的なイメージがわきやすくなります。
(しかも「漢字のタイトル」には、同音異義語がひとつもないそうです!
それについては→こちら


うちは、個々の漢字の意味のうち、音読みしかない漢字については、
漢字の「タイトル」をベースにして、教えるようにしています。


☆  ☆  ☆

以下は意味不明なおまけです。

一応、子供にも聞いてみました。
母「音読みと訓読み、どっちが簡単?」
子「訓読み!!!」
母「どうしてか言える?」
子「えっとね~・・・」

なんでも、訓読みはほわほわしてるので入っていきやすく、
音読みはがっちりしてるそうです( ゚д゚)???

「あぶな」はほわほわしてて、「き」はがっちりしてる、のだそうです?




☆道村式漢字カードは、こちらから買えます→
一般の書店では取り扱いがありません。



2014-09-20

ハイパーレクシアの3つのタイプ

前記事、ハイパーレクシアでADHDな私が本当に「読める」ようになるまでに、ハイパーレクシア的に大変興味深いコメントを頂きました。 
ハイパーレクシアの人がどのように育つか、いくつものケースを知っています。ディスレクシアより少ないはずなのですが、集まるところには集まってしまうのです。ディスレクシア以上に、幼児期だけ発見しやすく、大きくなるとわからない人が多いです。案外大きくなると本はあまり読まない人もいます。
もじ子さんのいう、幼児期神童扱いされ、あるときスランプに陥る、という意味も、よくわかります。様々なタイプがいて、様々な経緯をたどっていました。他の障害らしきものを併せ持っている人も多いですし。 
解決策としては、もじこさんのされている通り、頭の中で映像化する能力を育てることが重要なのだろうと私も思っています。具体的にいうと、文字に関係ない、会話や状況などの音声からの理解力や対人能力、映像の観察力、想像力、などを意識して強化することが、ハイパーレクシアの行き詰りからの脱出の道なのでは、と思います。事前に仕入れた知識を使って推測読みをするディスレクシアの読み解決方法に似ていて、これも、もじこさんのお話の通りですね。 
幼児期や学生時代、ディスレクシアもハイパーレクシアも、文字に過剰に偏った教育をいろんな意味でしがち、強要されがちだと思いますが、彼らがより自由に生きるためには文に関係ない学びが必要だと思っています。現代社会を生きるために文字の教育も絶対に必要だとは思いますが

バーバモジャさんの観察は相変わらず鋭すぎます!

「頭の中で映像化する能力」は、そういう風に訳したらほめられたので、意識してそう訳すようにし、気がついたら普通に読む時もそうなっていたという感じなのです。
なんでこの方法にたどりついたのかは自分でもわかりません。
食うための必要から試行錯誤していたら、たまたま発見したかもしれません。

ディスレクシアに関連してひとつ思うのは、
ハイパーレクシアにしてもディスレクシアにしても、学齢期だけでなく、成人後に認知方法ががらっと変わることがあるんだ、ということです。もちろん、ディスレクシアが急にハイパーレクシアになるということではないのですが・・・でも、「40歳の時に急に霧が晴れるように字が読めるようになった」と私に言うディスレクシアの知り合いもいて。。

だから(飛躍してますが)自分に関しても、子供に関しても、決めつけはよくないですよね。


☆  ☆  ☆


前回の記事を書くために読んだ、アメリカのハイパーレクシアの記事を、訳しました。
ハイパーレクシアは自閉症との関係で、3つのタイプに分かれるようです。

著者のDarold A. Treffert氏は、アメリカにおけるハイパーレクシア(と自閉症)の権威とのこと。なんでもカナー博士から直接自閉症について学んだとか。

訳しておいてなんですが、やっぱりディスレクシアの方が探求しがいがあるかも(笑)


☆  ☆  ☆

ハイパーレクシアの3つのタイプ
原文→こちらこちらからの抄訳です。

・単に早い時期から読めるタイプ(I型)。やがて周囲に追いつかれる
・自閉症スペクトラム障害に伴う突出した能力としてのハイパーレクシア(II型)。
・自閉症と誤診されたハイパーレクシア(III型)。12歳で突出した読み能力とともに自閉症の症状のいくつかを示すため、自閉症と診断されるが、その後社交性を発達させ、自閉症は誤診だと判断される。


2014-09-17

ハイパーレクシアでADHDな私が本当に「読める」ようになるまで

子がディスレクシアだと気付いたのとほぼ同時に知ったのが、
私のような人を「ハイパーレクシア」と言うらしい、ということでした。

ハイパーレクシアはディスレクシアとは逆に、非常に幼い頃から字が読めることを言います。
子のディスレクシアをめぐる旅は、私のハイパーレクシアからの立ち直りの旅を総括することでもありました。
そうです、結論から言うと、ハイパーレクシアを「克服」したからこそ、私は本当の意味で読めるようになったのです(!)

以下、5~6行ほど"自慢"にお付き合い下さい。

私は幼稚園の年少(2年保育)に入る時点で、漢字交じりの日記を書いていました。
その後、年長でブルガリアに渡り、そこでは半年で年齢相応の英語を身に付けただけでなく、誰にも教わらずにキリル文字(ロシアの文字)も読めるようになりました。帰国後、小5で英検2級を取得。
こんな調子なので、小学校ではもちろん神童扱いでした(笑)。

以上で自慢終わり。

しかし、小学校では落ち着きのない言動(←ADHD)のせいもあって孤立。
さらには中学、高校と進むにつれ、唯一のプライドの源だった読み能力についても、周囲がどんどん追いついてくるのが分かりました。
読み能力というのは、一生、他人より秀でているものではなく、やがて追いつかれるものです。このあたりがスポーツや音楽、芸術に秀でた場合と違う点です。
親や教師や友人から向けられる「もじこって、もっと賢いと思ってた」という目は、年々自己否定を深めていくのに十分でした。
大学は英語力の最後の貯金で入ってしまいましたが、入学後は「周りの人のほうが読めてる、なぜだ…」と焦りを感じることがさらに増えました。
でも、誰にも相談できません、というか、何が起きているのか全然分かりませんでした。

今なら分かります。当時の私は、読んでいたのではなく、文字を解読していたに過ぎなかったのだと。
読む内容が年齢とともに深くなるにつれ、また、勉強が読む以外のことも含むようになるにつれ、解読だけでは足りなくなってきたのです。

一方で、当時の「字を読みたい」という気持ちは強迫的なものでした。
何か活字がないと電車に乗れない(退屈で死にそうだから←このあたりはADHDっぽい)ので、かばんの中にはいつも本がどっさり入ってました。うっかり忘れると、活字を調達するまで電車に乗れません。
読むものがないと、薬の説明書きの紙や、お菓子の箱に書いてある原料名の小さな字を必死になって読んでました(笑)

とにかく乱読していましたが、実は、当時読んだもののことを、ほとんど覚えていないのです。
あんなに強迫的に読んでいたのに・・・



そんなこんなで、いろいろあって徹底的に行き詰まったのが26歳の時。
どん底の中で転身を決意して翻訳者になったのですが、その頃、大きな変化が2つありました。

1つは、英語の構文をようやく理解したことです。25歳になっていました。

もう一つは、これがいつ起きたのかが定かではないのですが、読み方が根底から変化したことです。
読むのがだいぶ遅くなる一方、読んだ内容をすべて映像化するようになりました。
これができるようになってはじめて、私は職業翻訳者になることができました(小学校前半の帰国英語のおかげでは断じてありません)。

いま、私にとって「翻訳する」とは、「英文を映像化して、それを日本語で説明していく」という作業のことです。この映像は、他人に言うとびっくりされるくらい、細かく見えています。
映像がしっかり見えることが私にはすごく大事で、それができない文章は、仕事でも趣味の読書でもまともに読めません。実はほとんどの翻訳物は映像が見えないので、人の訳したものはあまり読みません(笑)。

20代半ば、ようやく私は「解読する」ことから「読む」ことへと転換できたようです。



☆  ☆  ☆

この「映像化する」という読み方が、実はディスレクシアの読み方と同じらしいと知ったのは、「ディスレクシアのインスピレーション」という文章を訳している時でした。
この出典の本によると、ディスレクシアは映像思考型人間、文章を頭の中で映像化して理解しているのだそうです。

ディスレクシアとハイパーレクシアは、案外近いところにあると、以来思っています。

子供びいきの負け惜しみではないと思うのですが、
ハイパーレクシアとディスレクシア、どちらか選べるとしたら、ディスレクシアのほうがいいと思います。
「むかし神童、いま凡人」は、等身大の自分にたどりつくまでがけっこう大変ですが、ディスレクシアは凡人以下からのスタート。つらいですが、人として器が大きくなれる気がします。

それと、早熟よりも遅咲きのほうが、年齢を重ねることに希望が持てます。
もちろん、どんな花もその花ならではの見頃があるとはいえ。
高校・大学の頃の私は、年を取ることが恐怖でした。「この調子で年々落ちこぼれていったら老後は絶望的だな・・・」と。

今は発達の凹凸が年齢とともに変化することが分かったので、年を取るのが非常に楽しみです(笑)ちなみに、文字の解読は今も大好きで、未知の外国語を見ると字を解読したくなります。
年取って暇なら、アラビア語あたりを勉強してみたいと真剣に思ってます(笑)とはいえ、当面の興味は自分のことよりも、字が読めない・書けない人たちに傾いてますが。

現代日本では「文字が読める能力」が過大評価されているので、それが変なプライドになってしまうと、鼻持ちならない奴になりかねません。そうすると人生が全然楽しくない(笑)
それくらい、ディスレクシアを通して見える人生や社会は、面白いんですよね…

☆  ☆  ☆

などということを、中島敦「文字禍」を読んで考えました。
教えて下さったH先輩!ありがとうございます!

漢学者の家に生まれた中島敦が、なぜ字が読めることによって失われるもののことをこんなにも印象的に描き出せるか、不思議です。

私が読めるようになった過程は、空の青さがわかるようになった過程だと思いたいです。



2014-09-15

黒柳徹子の直筆/「私ってLDだったの?」より

昨夜、テレビで黒柳徹子の特集をなんとなく見ていたら、突然直筆が出てきたので、あわてて画面を撮影しました。

黒柳徹子は「自分はLDだ」と本のなかで言っています。

昨日の番組ではLDとか発達障害という言葉は一切出ず。
ただ、「収録の準備の仕方もユニーク」と言っていました。
そこで出てきた直筆がこちらです・・・



読めない字を書くのはLDだからか、年を取って手がいまいち動かないからか、
崩した字を書く世代だからか、もはやよく分かりません(笑)
収録の際も、局が用意した台本をそのまま使うことはなく、
小さなスケッチブックにポイントをすべて手書きする、とのこと。
たぶん、もらった台本では頭に入らないのでしょう。



LD的視点からは、次の点が印象に残りました:

・「昔のことを非常に細かいところまで覚えている」と野際陽子の証言
(→長期記憶が優れている)
・情景が目に浮かぶような、生き生きとした語り口。
・「わたくしは好奇心が旺盛。それが年を取っても元気な秘訣」

昨日の黒柳徹子は、さすがに年を取って滑舌がちょっと悪くなったかな…という印象は否めませんでしたが、好奇心はまったく衰えていないようです。
個人的には、その点が一番LDっぽいと思いました。
私の知るLDな老人も、このまったく衰えない好奇心によって、通常の高齢者との知識量、発想の若々しさ、頭の回転の速さ、ひいては交友の広さ、行動力、運動量の差は開くばかりです。




そういえばと、昔、ディスレクシアについて知ったばかりの頃に読んだ
『小さいときから考えてきたこと』を開いてみました。

これによれば、黒柳さん本人は自分のことをADHDと思っているようです。
残念ながら(?!)ディスレクシアではないようで。。


この中の「私ってLDだったの?」という文章は、何度読んでも泣けます…
以下に一部を引用します。
これを読んでぐっと来た方は、ぜひこのエッセイの全文を読んでほしいです!
黒柳さんの大きな愛と切なさに、心が洗われます(T T)


…私がテレビを見て涙したのは、テレビに映っているLDといわれている子どもたちが、小さかったころの私のように見えたことだった。どんなに落ち着きがなく走り回って先生に注意されても、職員室が大好きで、どんどん中に入っていって、先生の机のところで一人で勉強している子供も、いた。私もそうだった。テレビで紹介された学校では、もう、そうなったら一対一で、そこで教えるのだと言っていた。そうすると子供も落ち着いてきて、集中して勉強するという。 
わたしが涙を流したもう一つの理由は、結局、小林校長先生は、LDなんてことを知らなかったのに、LDだったかもしれない私に完璧に適した教育をして下さったことがハッキリしたからだった。まず、私のクラスは九人だった。席は決まっていなくて、好きなところに座ってよかった。そして、朝学校に行くと、1日にある時間割の全部科目の問題が黒板に書いてあって、好きなのからやってよかった。だから、結果的には自習であり、分からなくなると先生のところに行って聞くので、だいたい先生と一対一で勉強することになった。先生にとっても、一人一人の生徒が、どんなことに興味を持っているのかとか、どんなことが苦手だとか、子供の性格についても細かく知ることができたに違いない。ポリオとか、障害をもっている子が何人もいたけれど、校長先生はいつも、「手を貸してあげなさい」とか「助けてあげなさい」とはおっしゃらなくて「一緒だよ、みんな一緒にやるんだよ」としか言わなかった。 
だから私たちは何でも一緒にやったから、当然いじめなんか、なかった。そして校長先生は、あとで分かったことだけど、どの子にも自信をつけるような言葉をかけていた。私には一日に何度も「君は本当はいい子なんだよ」と言い続けてくださった。私はいい子なんだと思っていたけど、大人になって思い出したら、「本当は」というのがついていたことに気がついた。でも、先生の言葉は私の一生を決定してくれたくらい、私にはありがたい言葉だった。私はこの言葉で、勝手にいい子だと思い、先生を信頼し自信をもって大人になれた。 
こういう、いつも校長先生に守られている、と安心できる学校。おもしろいことを、私たちより先に校長先生が考えついて楽しませてくれた学校。どんなに走り回っても、「もっとやっていいよ」と言ってくれた学校。自分たちの登る自分用の木があった学校。話下手な子も何とか少しずつ話ができるようになったお弁当の後のお話タイムがあった学校。講堂の床が大きな黒板で私たちはどんな大きな絵でも白墨で床に寝そべってかいてよかった学校。その子の持っている個性をできるだけ早く見つけて周りの大人や環境で、その芽が摘まれないように大切に育てようという校長先生の教育は、そのままLDを持った子供にも当てはまるのではないかと、テレビを見ていて私は大きな衝撃を受けた。 
『窓ぎわのトットちゃん』の本が、今LDを子供を持つお母さんたちに読まれています、とか、私に小学校の時の話をしてください、という方々は、すでにそのことを発見していたのだろうということが分かった。…
(「私ってLDだったの?」『小さいときから考えてきたこと (新潮文庫) 』所収、p124-126)


2014-09-13

ディスレクシアは英語構文・文法よりも英単語が苦手らしい

ディスレクシアな生徒の持つ「切なさ」をアップしてから、たくさんの感想を非公開で頂きました。
私が書いている以上のことを教えて頂き、心から感謝しています。また、ディスレクシアの母が大変な努力と苦労をしていると知り、案じています。
ともにがんばりましょう!順次お返事してまいりますので、いましばらくお待ち頂ければ幸いです。

応援を頂いた浪人生君は今後「コスモ君」(仮名)と呼びます。
(お父様お母様、お許し下さい)
先日、こんな会話がありました・・・
:(英文を読みながら、集中力が切れそうになるのを必死で耐えている)
「燃えろ、俺の何か!」
:「がんばれ!で、何が燃えるの?」
:「…コスモ」

☆  ☆  ☆

コスモ君とは現在、私が予備校で使っているプリントとS台のテキスト(の一部)を使い、主に構文確認を行っています。
これは3~6行の短い文を、SVOや係り方を厳密にとりながら精読することです。
構文をしっかりとって読むのは、予備校業界では伊藤和夫以来のメジャーな教え方ですが、高校ではオーラル重視になって以来、すたれつつあるようです。(特に最近の都立高校では、トップ校ほど多読主義の傾向があり、構文はまず教えていません)
しかし、構文がしっかり入ると、多読よりも短時間で英語力のしっかりした土台ができるので、日本で英語を学ぶなら絶対に避けて通れないはずなのですが。。。



コスモ君は当初、非常に基本的な構文知識もごまかしていました。
このこと自体は、ディスレクシアかどうかに関係なく、予備校に来るほとんどの受験生が最初はそうなので、驚きはありません。

驚いたのは5~6回教えてからです。
構文を教えたあと、普通の子は、それを新たな文章に適用する点に、一番苦労します。
特に悪いクセがついていると、構文の定着をはかるのは、なかなか難しかったりします。
しかし、コスモ君は、そこにはまったく苦労がなく、一度教えれば正確に運用できるのです(!)

彼が一番苦労しているのは、単語が覚えられないことです。
この部分は、普通の子ももちろん大変ですが、彼の苦労はその比ではありません。

思い起こせば、私が知る歴代のディスレクシアの大学受験生たちも全員、構文把握は人並み以上に正確にできました。
しかし、考えてみれば、これまたほぼ全員、異口同音に
「単語が覚えられないんですが、どうすればいいのでしょうか」
と相談してきました。

でる単の単語テスト50問だけで、30分以上かかった生徒もいました。
(当時はディスレクシアだと知らず。とにかく思い出すのに時間がかかっていました。
そして今、ブレンディングに苦労するうちの子の様子が、この生徒にそっくりです)

どうやら、ディスレクシアだと英単語を覚えるのに苦労するらしいとは、言えるようです。

受験英語において単語は「単語帳を自分で作るなり買うなりして自習してね」と、生徒の努力に任せている分野です。私も普通の授業では、よほど間違いやすい単語以外はあまり言及しません(時間がないから)。
ディスレクシアに英語を教える場合は、普通の子と違い、単語を覚える部分にこそ、サポートが必要なようです。
一方、普通の子が苦労する構文・文法方面については、普通の子よりも理解も定着も圧倒的に早いです。



それを裏付けるように、コスモ君の衝撃発言。
「えっ?僕が一番ましなのは構文ですよ?
単語を覚えるのががいやになると、文法問題に逃げてます(笑)」

「なんで構文がわかるかって?
××語(小学生のときに滞在していた外国の現地語、話者人口数千万人の非印欧語)がちょっとできるからかも?当時は市場で値切るくらいはできた。よく考えたら××語もSVOという形になってる。いま先生と話しててそうだと気づいたけど(笑)。××語はもちろん耳で覚えました」

このように、コスモの名にふさわしい、宇宙人のように独創的な子です(!)。

抜群の耳を持っている彼に、単語を入れる方法は、何かないでしょうか・・・?


☆  ☆  ☆

dyslexia vocabulary buildingで検索して英語のサイトを読むと、ディスレクシアの子に(母語としての)英単語を教える方法として、以下が挙げられています:

1)文脈の中で覚える

2)接頭辞・接尾辞の知識を使って覚える

3)辞書やシソーラスを使い、語源や発音、語義などを説明する

4)辞書の、単語読み上げ機能を使う

5)同義語、反対語とセットで覚える

6)授業以外の場で、同じ単語に何度も触れる機会をつくる
(教室での会話に混ぜるなど)

6)以外はすべて、すでに日本の大学受験産業に導入されてますってば
ヽ(`д´;)ノ 
受験英語をなめんなよ(笑)

何か、多感覚的な英単語記憶法はないものか・・・?
道村式漢字カードのように、普通とは別のアプローチで単語を覚えるような方法・・・

☆  ☆  ☆

残念ながら、まだ耳をうまく使った単語記憶法には、たどりついていません。誰か知っていたらぜひ教えて下さい!

いまコスモ君に試していることを、書いてみます。

1) 鉛筆は一切持たせない。


普通なら板書することを、直接ノートに書いてあげるイメージ。
書く負担を減らし、その分の労力を覚える方に回す
普通の個別指導なら、教師は裏紙に書き、生徒はそれを写すと思いますが、コスモ君には指導中、1文字も書かせません。
普通なら板書をノートに書き写すところは、私が直接彼のノートに書き込んでます。
(ディスレクシアでも、こちらが書くのを見ててもらいながら説明を受けるのは有用です。ただ、一度説明に使った後の教師の字を、書き写すのが大変なのです)

また、前にも書きましたが、コスモ君は全訳を書くのではなく、自分の声で訳を録音しています。

ここに、ノートテイカー録音機器を使うという、英米の大学にあるというディスレクシア対応が整いました!
授業のストレスは非常に減ったと思います。
次は単語の定着度をどう上げていくかです。


2) google画像検索で、単語の画像を見せる。
structure
すごくいい画像がたくさん出てくる時と、そうでもない時があります。


3) 意味が似た単語、形が似た単語に、積極的に言及する。




existから、本人が言うままに、exit、distinguish、disappearに話を広げてみました。

ディスレクシアの人は、「(意味や形が)似た単語」ごとにグループ分けして、単語を覚えているように伺えます。
なので例えば、existを見てコスモ君が「exitは…」と言い出したので、積極的に脱線して、その解説をしました。そこからexistに似た意味?の単語としてdistinguish、同じdisがつく単語としてdisappearへと話が広がりました。

これでexist(とexit、distinguish、disappear)は(きっと)定着したのですが、脱線が多くて、こちらが「これくらい理解できているならこれくらい進むだろう」と当初想定しているほど進まないのが、悩みといえば悩みです。
それとも、これは脱線ではなく、構文確認のほうが脱線なのかも・・・

うちの子(小6)も、似た意味の単語をグループ分けして覚えています。
最近の間違い:



nestを見てegg、frogを見てpond、turtleを見てdinosaur、
wingを見てbirdと言い間違えました(笑)

特筆すべきは、frogを見てflogとか、fragとか、「fなんとか…」とは、決して言わないことです。

コトバの最小単位が音韻(fとかrとか)ではなくて、「frog」という音のかたまり、さらに言うと、「池のもろもろ」らしいです。

これをお読みの、ディスレクシアで英語を使っている方、「自分はこうやって英単語を覚えた」というのがあったら、ぜひ教えて下さい!!


2014-09-09

ディスレクシア(発達障害)改善のため、腸の常在菌を育ててみる

最近、「常在菌」がマイブームです。

常在菌とは、人の腸や肌に住んでいる菌のことです。
常在菌のおかげで、腸も肌も健康が保たれていること、
常在菌を殺してしまうことで現代人のさまざまな不健康が起こっている
ことが、ここ10年くらいでようやく分かってきたそうです。

肌の常在菌についての本:

『肌断食』(2013年)
今年一番衝撃的だった本(ディスレクシアとは直接関係ないですが)
クレンジングやクリーム、下地や日焼け止めが肌荒れの根源、
常在菌を殺さないためには「スキンケアは一切しない」のが一番、
ということを証明した1年間の実践。
これは本当に効く!!私の周囲でも肌断食する人が続出中です!

『肌の悩みがすべて消えるたった1つの方法』(2012年)
『肌断食』を勧めた医師による本。
肌断食と常在菌のことが詳しく分かります。


『人体常在菌のはなし』(2003年)
肌と腸、両方の常在菌を網羅する、入門の1冊。
それにしても、10年も前に常在菌のことは一般書レベルで知られていたなんて…



いや~、ディスレクシアとは直接関係ないのですが、肌断食は衝撃的!
今まで顔面にあれだけ投資してきたのは何だったのかと。

「肌の常在菌を気にすれば肌は変わる」と知ってからというもの、
腸の常在菌を気にすれば、やっぱりディスレクシアにも効果ありかも・・・
と思い始めています。

なんで「やっぱり」なのかは→こちら(腸とADHDの関係)
                 →こちら(腸と自閉症の関係)


腸に良い食品についての本:

『「酵素」の謎』
腸と脳がダイレクトにつながっていること、
腸には酵素が必要なこと、
酵素は低速ジューサーでジュースを作るのが良いこと、
を教えてくれた本。実践して1年たちました!
効果のほどは不明ですが、気分はいいです。

『炭水化物が人類を滅ぼす』
「糖質(炭水化物)はヒトが本来食べる必要のない嗜好品である」
だからこそおいしく感じるし、人心を掌握する道具にもなったと、
医学から人類史まで視野に入れながら、糖質制限を説く一冊。
すごく面白かったです。しかし意志の弱い私には糖質制限は難しく


『発達障害の子どもが変わる食事』
この話題について、現在日本で出ている唯一の本かも。
グルテン除去食(→こちら)やカゼイン除去について書かれています。

以下に、ディスレクシアに良い腸内菌叢を作る!という長い記事を訳しました。
自閉症に焦点をあてた記事ですが、ディスレクシアも少し出てきます。


2014-09-08

ディスレクシアな生徒の持つ「切なさ」

今回は、なかなかまとまらず、無意味に長くなってしまいました。。

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ディスレクシアで大学受験生くらいの年齢になると、
特に男子は多かれ少なかれ、独特の「切なさ」というか、憂いというか、
影とも暗さとも、深さとも表現できる何かを持つようになる気がします。

もともとディスレクシアだとそういう気質があるのかもしれませんし、
報われない経験を重ねるうちに、切なさが備わるのかもしれません。

例えば。
「僕は単語を覚えるのが超苦手」と言って、
浪人生君(ディスレクシア+ADHD)がこんな話をしてくれました:


小学校は日本人学校だったので、英語の小テストがあった。
特に、英単語が虫食い状態になっていて、字を埋めていくのが超苦手で。
(クモの絵を見せてsp_ _ _ rの空所を埋めるような問題)
こんなのできるわけないと思っていたら、周りはどんどん答えていくので
「えっ?えっ?(゚Д゚≡゚Д゚)」と思ったのが、英単語を覚えるのが苦手と思った最初の体験。
このときは、外国歴が長いやつに丸投げして、その場をしのいだ。

(be motivated to...は「やる気になる」という意味だと言ったときに)
それは僕がダダ下がりなものですね(笑)
僕は教師に折られっぱなしですよ。
高校の授業は意味が分からないから寝てる、そうするともっと意味が分からなくなるのループ。
今思うと、高1高2で予備校の集団授業を受けたかった。
予備校で先取りできれば、高校の授業を理解できたかもしれない。
話がうまい授業なら、聞けばだいたいのことは分かるから。

高校では2人だけ、いい先生がいた。
一人は最後まで「君のことが心配だ」と言っていた。
今は遠くに赴任してしまったけど。
もう一人は「君はやればできる」とずっと言ってくれた。
この先生もいまは別の高校に行った。

・゚・(ノД`;)・゚・

こういうことを淡々と話すので、こっちが泣きそうです。
彼の学校生活は常に
「なんで自分だけ分からないの?」「何をすればいいの?」
という思いとともにあったわけですが、
そんな風には一言も言いません。そこが切ないというか、つらいです。。

模試の数字だけ見ると・・・ですが、
二言三言話せば、聡明であることはすぐ分かる彼。
聡明なだけに、自分がどういう評価を受けているか、重々分かっています。
賢いのにそれを正しく外に向けて示せない様子は、
カギがすごく固くて開かない宝箱のようです。

私はその宝箱を、どうにかして必ず開けてみせましょう(泣)


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彼は親御さんとの対立についても話してくれます。
(ご両親の名誉のために申しますと、
大学受験生なら、ディスレクシアであるなしに関係なく、
ある程度の親子対立がある方が、むしろまっとうだと思います。
たいていの受験生は最大の悩みに「親の口出しがうざい」を挙げますが、
よくよく話を聞いてみると
「親の生き方を肯定したい」「親を喜ばせたい」「親にほめられたい」と
「親の口出しがうざい」の間で悩んでいる場合がほとんどです。
彼の場合も例外ではありません。)

「S台の授業の雑談で講師が言っていたんですけど、
『模試の成績を見て親がいろいろ言ってきても気にするな』と…」

受験生相手の雑談ネタとしては実は定番なのですが、
彼の口から聞くと考えさせられます。

予備校講師としては、
模試というのは返却日から1ヶ月前の、特定の母集団の中での、
実際の志望校とは異なる出題形式の問題を解いた結果なので、
総合偏差値はそんなに気にしなくていいと分かってます。

でも、私は親でもあるので、
親が自分の子を他人と比較したものを突き付けられたら、
非常にヘコむということも、よく分かるのです。

つい先日も、子供の保護者会で久しぶりに小学校に行き、
「うちの子はけっこう字が書けるようになったと思ってたけど
普通の小6はこんなにしっかりした字が書けるんだorz」
と掲示物に思い知らされて、がっくりして帰ってきたところです。

世のディスレクシア児の母は、子供の良い面に目を向けることで
ポジティブな態度を保っていると思いますが
それでも時々、うっかり人と比べてしまうと、
できなさが目について、なんかもうがっくりしてしまう。。。
のは私だけではないと思います。
これに、他の保護者からの無言のさげすみや、
担任からの心ない一言が加わると、
ディスレクシアの親御さんは、疲れ切ってしまうと思います。
(当ブログにお越しの方々からも「闇の中」という形容がよく聞かれます)

本人のほうが苦労していると分かってるのですが、
やり場のないこの閉塞感…

予備校講師としては、生徒の言い分もよく分かりますし、
親が模試の成績にがっくりするのも、痛いほど分かります。

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私自身はディスレクシアな子を持つ親としての閉塞感を、
完全に乗り越えたわけではありません。

ただ、生徒から力をもらっていて、それに救われているのは事実です。
特にディスレクシアの子はすごく大きな力を、教える側に与えてくれます。

その理由をここ数日考えていたのですが、整理しきれず…

ディスレクシアというのは独特の観察力があり、
物事の本質を突く発言をしょっちゅうするので
そういう生徒の発言に接して感動が大きい、という面はあります。

また、ディスレクシアの子は、
「周りは理解しているのに自分だけ置いていかれている」という思いを
日々、嫌というほど経験していることもあり、
分かったときの「!」がひときわ大きい、というのもあります。

「切なさ」も関係している気がします。

英語のペーパーテストというのはディスレクシアにとって、
二重三重な苦手さのなかで戦わなければならない、最悪に不利な戦いです。
そんな子たちが、自分の苦手で勝負しなければならないと分かっていて、
それでもなお辛抱強く読み書きする様子は、見ていて胸を打ちます。
ディスレクシアの大学受験生は、えてして大変な努力家です。

そんな彼ら彼女らの努力に応えようとするうちに、
閉塞感はどこかに吹っ飛び、不思議と力が湧いてくるのです。

私の予備校講師的能力を一番育ててくれたのは、凹凸のある生徒たち、
特にディスレクシアの生徒たちでした。
そして今は彼ら彼女らから、ディスレクシアの母として必要な力をもらっています。
みんな、ありがとう(泣)



職業的教師でない人も、
教師の視点をもってディスレクシアなわが子に接することで、
親的な閉塞感を乗り越えられる・・・かもしれません。



2014-09-01

「中一ショックはきっと克服できる」の続き

「中1ショック」への反応:中1のディスレクシアの子に英語の字をどうやって教えるか?
へのコメントを頂きましたが、お名前が入っていたので、
そこだけ消してここに再掲します。
中一ショックを受けた方に、ぜひ読んで頂きたい内容です!

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こんばんは。
ブログを拝見して、皆さんからの質問に丁寧に答えてらっしゃるんだろうなあ、と感心しております。
覚えてらっしゃいますか、7月の上旬にジョリーフォニックスについて質問をさせていただいた九州の××です。
今日はお礼のメールを送らせていただきます。
こちらのブログからジョリーフォニックスのことを知り、自宅から通える範囲のジョリーフォニックスを教えている英語の先生のところで子供への教え方を習い、夏休みの間、自転車操業で42音を教えました。(完全におぼえきれてないですけど)
教科書はトリッキーワードだらけですし、まだまだ読めない部分も多いですが、でも、少し読めるようになってるんです!
どの単語を見ても、想像もつかない!!!って言っていたのに。
もちろん、I, you,am,are を未だにはっきり覚えていないなど、中1の一学期、この4つの単語はすべての文に使うよ!
って頻度で出てくるのに、覚えていない恐ろしさはあります。
(他にもきりがないくらいありますが)
でも、一行どころか一単語も読めなかったのに、一つ一つフォニックスの音を確認して読んでいる姿は、感動します。
大袈裟ですかね(笑)
普通の子の数倍の努力が必要といいますが、私はつねづね数十倍といっても足りないのでは?
と思っています。でも、真っ暗闇に少し光が見えた気がして私も息子も前向きな気分になれます。
もじこさんが与えてくれた情報と実践記録から私は勇気をもらいました。
こんなに頑張ってる人が、いるんだ!
わたしにも出来る!!
と、思い、頑張れました。
もじこさんのおかげです。本当にありがとうございます。
私も後悔や迷いがまだまだ消えませんがこれからも息子の理解の手助けになれるよう頑張ります。
もじこさん、お子さんと一緒に頑張ってください。
ブログ、ずっと楽しみにしてます。

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もちろん覚えておりますです。
大袈裟ではないですよ(T T)読んでるだけでうるっと来てます(泣き笑い)
ジョリーに出会えて本当によかったですね!
九州でジョリーを教えている人に直接教えを受けることができたのも、ラッキーでしたね。
私も仲間を得て力づけられています。お互い頑張りましょう!

夏休みの山下先生のジョリーのセミナーでは、
上とまったく同じことを言っていた方が何人かいました。
自転車操業でも、中学に入ってからでも、
ジョリーを使えば英語で落ちこぼれずに済むのだと、
10人に1人いるというディスレクシアの子に、ぜひ知ってほしい!

トリッキーワードがなかなか入らない苦労、よく分かります。。
うちも「えっ?1行上にareって書いてあるよね?」
と目が点になることは、しょっちゅうです。。
叱っても無意味なのはもちろんですが、笑ってもいけないようで、
要するに読みに詰まっても大げさに反応してはならず、
さりげなく読み方を教えるのが、一番ありがたいらしいです
(家庭教師君[→弱いディスレクシア]がうちの子にそうしてるのを見て実感しました)

何百回とyou areという表現を見聞きするうちにyou areを覚えれば、
you areが読めるようになるのかも・・・?と今は考えてます。
「読む」という点では邪道ですが、戦略的とも言えます。

文字というのは本来、その音とはまったく無関係な記号。
もし、音を通常の人よりはるかに高次元で認識できる人たちがいたら、
その人たちにとって、現在使われている文字は
『なんでこの音を、こんな意味不明の記号に落とし込むのだ?』
と、まったく理解出来ないに違いない
と、峯松先生がおっしゃっていました。
そのときは弾丸トークに何も返せなかったのですが、
何十回areやweを見ても、初めて見るように首をひねっている子を見ると、
もしかしたらこの子は、常人が理解出来ない次元で、areを見ているのかも・・・と思うこともあります。


語と語の間にスペースを入れられない場合は、
「フィンガースペース」を入れるとよいそうです(by山下先生)

rainもsnailもディクテーションできますが、
文字にするのがすごく、すごくつらい
※写真の向きが変ですみません・・・




1行書いたらぐったりしてます。
胸のあたりを押さえて「ここがむずむずして苦しい」とも。

多感覚英語学習ツールとしてのスマホ

夏休みもようやく終わり、ここに戻ってくることができました。。

いろいろたまっていることを書いていきたいです。

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最近、スマホを英語学習に取り入れてます。
スマホは使いようによっては、効果絶大の多感覚学習ツールですね!
以下、ディスレクシア的な学習効果を実感している3つの方法を書いてみますが、これ以外にもまだまだ使い道がありそうです。


1) 自分が音読した内容を自分で聞く。

スマホの録画・再生機能を使う方法です。

英語での発信能力を高める一番効果的な学習方法は、
自分で読んだ内容を録音して自分で聞くこと
と、中村俊先生に教えていただき、試したところ・・・

これは、ディスレクシア的には
ただ単に音読した場合よりも、音の定着が非常に良くなる
という効果があります!おすすめです。

まず、録画すると緊張感をもって読むのが、定着に役立つようです。
(↑効果その1)

次の日に、録画を再生しながら、言ってもらいます。



スマホの画面に映したテキストを見ながら、
自分の声にあわせて読んでいるところ。

録音よりスムーズに読もうとするなか、定着率がさらに上がります。
(↑効果その2)




2) 自分の発音をチェックする。

「ウィズダム英和辞典」アプリとスマホ内蔵の音声入力機能を使って、
自分の発音をチェックする方法です。
ウィズダム英和辞典のアプリ:
Androidは→こちら、iPhone/iPadは→こちら

「音声入力機能を使ってスマホの辞書アプリを引く」というのは
翻訳者や通訳の知り合いから
「間違って覚えている単語の発音があらわになる、マゾなw辞書引き方法」
と勧められていて、私も半年ほど前から時々使っていました。


そしてこの方法、ディスレクシア英語学習的には、
正しい発音が体感でき、定着も良くなる、一石二鳥の方法です!

特に、音声入力の認識率を競争すると、がぜん燃えてきます(笑)



「live」とスマホに向かって言っているところ。


1発でliveと認識してもらうことができましたv

liveとleaveは違うことを、ゲーム感覚で体感できます。


こちらはroadの認識競争。
roadが上から何番目に出てくるかを競います。このときは私の負け(笑)

認識したあとは、ウィズダム英和辞典アプリが開きます。

こちらはAndroid版『ウィズダム英和辞典アプリ』の画面。
再生ボタン(青いアイコン)をタップすると、roadの音声を聞けます。

音声入力機能の認識精度を高めるには、Androidの場合は

設定→言語と入力→音声検索→言語で「English」を選択

で、音声入力の言語を「英語」に設定しなければなりません。

これをすると、日本語での音声入力の精度が落ちるのですが・・・
でも、それを補って余りあるほどの学習効果があります!



3) 録音機能をノート代わりに使う。

これは、ディスレクシアの浪人生の個別指導で使っている方法です。
スマホの録音機能を使います(録画でも可)

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彼はディスレクシアなので、英語のことを考えながら日本語を書くのは
普通の生徒以上にとても大変なのではないか・・・と推測しました。

そこで、普通の子なら英文解釈ができたら、訳を書いてもらうところを、
彼には訳を録音してもらうことにしました。


この生徒はiPod touchとガラケーの2台使い。
iPod touchに録音しています。

録音と英文を使って復習し、
英文を見て「この文はこういうことを言っている」
というのがはっきりわかるようになったら、
初めて訳を書いてもらいます。
この順番は、道村式漢字カードとまったく同じです。

一度復習して、英文解釈が完全にできるようになってから、
初めて訳を書いてもらいます。
従来の「英文解釈ができたらすぐに答案を書く」だと
ディスレクシアの子は字を書くことでいっぱいいっぱいになって、
英文の理解にまで頭が回らなくなるようです。
英文解釈を完成した後に答案を書くようにすれば、
英文の理解に集中できるので、ちゃんと英文の知識が定着します。

塾や高校でも、字を書くのがつらい子には、
スマホの録音録画機能の使用を許可してあげるべきだ・・・
と実感しています。
ディスレクシアというのは字の負担を減らし、内容理解に集中させれば、
あっという間に内容を理解できる子たちです。
とにかく、「字にするのは最後」がポイントです。

何を録音・録画すべきかは、教師の誘導が必要でしょう。
録音・録画は、だらだらすると、むしろ逆効果なので。



ディスレクシア浪人生君とのことについては、これからも書いていきます・・・