2022-10-01

NY市長、市内すべての公立校でディスレクシア検査/指導/研修を宣言

Mayor Adams Announces Comprehensive Approach to Supporting Students with Dyslexia(アダムスNY市長、ディスレクシアの生徒への包括的支援策を発表)



「NY市という世界最大の公教育システムで、K~12(幼稚園~高3)をの公立校の全生徒を対象に、ディスレクシアの検査と訓練を実施」市長が公約に掲げて当選

というニュースが5月にありました。
記者発表の動画から、発表内容をまとめました(KUさんご紹介ありがとうございます)

~~~

読むことに困難のあるすべての生徒(ディスレクシア含む)を対象に、
「進歩的な、社会正義に基づく教育モデル」に基づく、包括的な介入を行う。

包括的な介入とは・・・
  • 年3回、スクリーニングを実施(K~12)。
  • このスクリーニングに何度もひっかかった生徒は、詳しく検査。
  • 取り出された生徒はオートン・ギリンガムベースのプログラムを受ける。
  • dxに関する教員研修を行うなど、教員をサポート。
  • dx専用教育を行う学校を、各学区に1校設ける。

具体的には・・・

・【全員に検査】

at-riskな生徒を特定:今年(2022年)9月より年3回、実証済みの短いリテラシー・スクリーニングを全員に実施。


・【詳しい検査】

他の生徒よりも顕著に低い成績を何度もとった生徒を取り出し、ディスレクシアのリスクを評価する専用のスクリーニングを行う。


しかし、リスクのある生徒を特定するだけでは不十分。こうした生徒を、通っている学校でフルサポートできることが必要。そこで・・・


・【専用指導、教員研修】

長年この問題にたずさわってきたfamily literacyとps125が、今年の秋から直接指導の専用プログラムを実施。

「深い(deep)」ディスレクシアの生徒に対し、学習への包括的介入を行う。

あわせて教員研修も行う。


【他の学校に知見を広げる】

・上記プログラムで得た知見を市内の全公立校で共有し、読み教育を改善していく。


【週4指導を行う学校を各学区に】

・直ちに追加プログラムを実施。2023年秋までに、ディスレクシア専用教育を行う学校を、各学区に1校設置。

・80の小学校と80の中学に校内チームを設置。このチームは校内で週4回、少人数の介入を実施。そのために、教職員のサポートと研修も行う。


【フォニックス】

・全校に対し、フォニックスベースのリテラシーカリキュラムへの移行を要請。


【その他】

・それほど"深い"介入を必要としない生徒への対処方法に関する教員研修も実施。

・ディスレクシア専用作業部会を設置。
また、一般市民、リテラシーの専門家、公立校の教職員・生徒・保護者からなる諮問委員会を設置。


質疑応答
※低学年だけでなく、高校や大学でディスレクシアと判明する人の多さを考慮し、できるだけ上の学年にも広げたい。また刑務所内でも検査を行う。刑務所に入るきっかけとなった行動を繰り返さないためにも(39:44)。

※研修は、全教科の教員が対象。読むことに直接関わらない教科も含め。

※フォニックス・ベースのプログラムとは、オートン・ギリンガムをもとにしたものを指す(47:33)

その他、印象に残った表現:
・(市長、「もしも、このプログラムをご自身が子供の頃に受けられていたら?」の問いに)
今ごろ、市長ではなく大統領になってたかもね(笑)それはともかく…母は小3までの教育しか受けていなかったので、自分が学校で読めず苦しんでいても、途方に暮れるだけで何もできなかった。子供が苦しんでいるのに見ているだけしかできない、その母の様子は今でもトラウマ。これは仲間に対してもそう。読めずに学校を中退し、そのまま道を誤っていった仲間もいた。ディスレクシアは心の傷の問題でもある。

・検査は何百ドルもするので、黒人やヒスパニック系には払えない。
・(これに対しては「私の息子はディスレクシアと診断されたあと、専用の学校に行かせて読めるようになった。これを州内のすべての子供に広げたいのです」と感極まる保護者代表(白人)も登壇。)
・受刑者の3分の1は簡単な書面も読めない。
・人口の20%はディスレクシアだが、5%しか特定できていない。15%を救うためのプログラム。
・読み能力を獲得できれば収入を得られるし、犯罪から刑務所送りとは無縁の人生を送れる。

この政策の実現に寄与した、保護者代表、支援者代表、などが出てきてスピーチする1時間。
こういう時のアメリカ人のスピーチは、本当に感動的です・・・(TT)

ディスレクシア教育とは、全員を読めるようにすることであり、
これは社会正義の問題である・・・というのが、
アメリカの行政がディスレクシア問題を語る際の、日本との大きな違いかもしれません。
「安心して暮らせる地域社会を作るには、読めない人を減らすことが本当に大事で、みんなで取り組まなくてはならない課題なんだ」という姿勢が、ひしひしと感じられます。

ディスレクシア的にハッピーな世界を作る戦いは、本当にリレーですね。
本人はもちろんですが、研究者、教育現場、保護者、支援者、そして行政。
それぞれが自分のことばかりではなく、他人のこと、次世代のことを考える。
リレーの前後の人に感謝しながら、自分の持ち場でできる変化を起こす。
そうやって、社会変革はちょっとずつ可能なんだなと感じます。

最後に・・・
来年、世界ディスレクシア会議(world dyslexia assembly)を主催し、NY市の成果を報告する」と言ってます!
行きたい・・・(・∀・)

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