この記事は、IDAによるディスレクシアの新定義のシンポジウムをまとめたものです。
その1(新定義と試訳)→★
その2(用語解説その1)→★
以下はその3です。
6. language and literacy support before and during the early years of education is particularly effective.
(就学前および就学初期の数年間における言語とリテラシーに関するサポートは、特に効果的である)Xで特に大きな反響を呼んだのがこの部分。一部繰り返しになりますが、ここにまとめておきます。
before and during the early years of education
この部分の構文について。「andは文法的に似たもの同士を結ぶ」という並列関係の法則が発動しますので、
beforeとduringが並列関係にあり、両方ともearly years of educationにつながっています。
before the early years of education(教育の初期の数年間の前)
and
during the early years of education(教育の初期の数年の間)
つまり、「就学前および就学後の最初の数年間」と言っているわけですね。
「就学前にサポートを行う」という文言が「超早期介入」と言い換えられ、強い印象を与えたようです。
before the early years of education(教育の初期の数年間の前)
and
during the early years of education(教育の初期の数年の間)
つまり、「就学前および就学後の最初の数年間」と言っているわけですね。
「就学前にサポートを行う」という文言が「超早期介入」と言い換えられ、強い印象を与えたようです。
定型の子もほとんど文字を知らないはずの幼少期に、「この子はディスレクシアかも」と見抜いて何かを行う。それによって読み書き困難を軽減もしくは防止できたとしたら・・・
しかし!ここは「就学前に読み訓練を行う」とは言っていないことに注意が必要です。
そもそも原文には「介入」(intervention)の文字はありません。
就学前後に行うと効果的とされているのは、language and literacy supportです。
就学前後に行うと効果的とされているのは、language and literacy supportです。
これも先ほど同様、languageとliteracyが並列関係にあるため、
「言語のサポートとリテラシーのサポート」となります。
リテラシーとは何か・・・いろんな意味で使われている単語ですが、私は
リテラシーとは何か・・・いろんな意味で使われている単語ですが、私は
「読み書きそろばん」と言ったときの「読み書き」をイメージしてもらえると良いのかなと思います。read to learn(読むことを通じて知識を得る)ができる力、という感じです。
「言語とリテラシーのサポート」とは、私の考えでは
「言語とリテラシーのサポート」とは、私の考えでは
○話し言葉を充実させる
(会話をいっぱいしたり、言葉遊びをしたりすることで、語彙力や音韻認識を向上させる)
○読み聞かせを日常的に行う
(もじこ塾に来る方の多くが効果的だったと語るのがこれ。書き言葉を聞くことの意味は、とても大きいようです)
○視覚化されたことばが身近にあり(本、字幕)、それらが面白くて役に立つと思える経験を積ませる
(文字に関心を持つことが、文字を読むことにつながる、、はず)
○自分の話が伝わったという経験を積ませる
(話し言葉や言語全般への信頼感を育てる)
そして、
○大人は子どもに話しかけるとき、助詞をできるだけ省略しないようにする(その2参照)
を言っているのだろうと思います。
「早くから文字を教え込む」という意味ではないと思います。
(なお、こういった経験のなかで文字に関心を示さなかった場合に、ディスレクシアを疑ってもいいかもしれません。)
☆ ☆ ☆
定義に話を戻すと、
定義に話を戻すと、
この部分は、ハーバード大学の脳科学者、Nadine Gaab(ナディーン・ガーブ)博士が強くプッシュしたから採用されたそうです。
ガーブ博士は、IDAでは真っ赤なパンツスーツでさっそうと登壇してこの部分を力説し、「ナディーンのおかげでこの文言が入った。ありがとう」と言われていました。
実は彼女、この登壇のわずか5日前に、日本のLD学会にも登壇されました。
IDAでは大ホールを満席にできるスーパースターですが、LD学会の聴衆は20人くらい。。ナディーン姐さんに申し訳なかったです。でも姐さんは意に介さず、講演は手抜きなし、私を含む聴衆の質問にも明快に答えてくれて、かっこよかったです。
LD学会の講演内容が、新定義のこの部分と重なるので、少し紹介しておきます。
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超早期介入はもじこ塾の範囲外のテーマなので、他の方にぜひ推進してほしいです。
でも、くれぐれも、子どもの心を大事にしたものをお願いしたいです。
ガーブ博士は、IDAでは真っ赤なパンツスーツでさっそうと登壇してこの部分を力説し、「ナディーンのおかげでこの文言が入った。ありがとう」と言われていました。
実は彼女、この登壇のわずか5日前に、日本のLD学会にも登壇されました。
IDAでは大ホールを満席にできるスーパースターですが、LD学会の聴衆は20人くらい。。ナディーン姐さんに申し訳なかったです。でも姐さんは意に介さず、講演は手抜きなし、私を含む聴衆の質問にも明快に答えてくれて、かっこよかったです。
LD学会の講演内容が、新定義のこの部分と重なるので、少し紹介しておきます。
・「ディスレクシアのパラドックス」。介入に最も適した時期を過ぎてから、ディスレクシアだと気づかれることが多いことを指す。
・4歳頃、脳の変化により、読むことの発達上のタスクが、話し言葉の獲得から音と文字の対応へとシフトする。この時期が介入に最適。
・4歳までは、文字指導ではなく、話し言葉の発達こそが読み能力の発達を支配している。
・家族にディスレクシアがいると、ディスレクシアのリスクは上昇する。だが遺伝子検査は意味がない。ディスレクシアは複雑で多因子的(multifactorial)であり、環境要因が遺伝的要因に影響を与えるので
・つい数週間前に発表した内容だが、早くも生後18ヶ月で、読み困難を引き起こす脳の変化がみられることがわかった。ここから、wait-to-fail(失敗を待つ)、すなわち問題が見えてから対処するのではなく、全員にスクリーニングを行い予防的介入を行う可能性が見えてくる。これは、18ヶ月で読み困難がすでに現れているという意味ではありません、18ヶ月はまだ話し始めたくらいです。それにしても、その頃にすでに脳の変化が現れているとは。。
・幼い脳は可塑性が高いので、幼い時期の介入には有意に効果がある
・「待てばやがて読めるようになる」ということは、ディスレクシアにはない・ディスレクシアはIQとは無関係。視覚の問題ではない。読み能力が発達していると期待される年齢よりもかなり前から識別可能である。
超早期介入はもじこ塾の範囲外のテーマなので、他の方にぜひ推進してほしいです。
でも、くれぐれも、子どもの心を大事にしたものをお願いしたいです。
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