ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2019-07-17

「ディスレクシアが得意なこと」もじこ塾ver.

当ブログを作ったのは,「ディスレクシアの利点」という記事を読んで訳したくなったのがきっかけでした。
以来,この記事は私にとって,生徒を判断する基準になってきたのですが,どうやら当の生徒たちがディスレクシアの長所を知らないようなので,もじこ塾バージョンを作ってみました。
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もじこ塾で見ていると,「狭い意味でのディスレクシア」と「広い意味でのディスレクシア」がいることに気づきます。
ADHDやASD由来でも,あるいは原因不明の他の発達特性によっても,読み書き困難は表れるようです。この人たちはもじこ塾的には,「広い意味でのディスレクシア」です。

一方,以下に示すような特質と,読み書き困難をあわせもつ生徒もいます。
こだわりはなく,多動も(ほとんど)なく,人当たりがよく,空気は抜群に読め,ルールの隙を突きたがり,そして字が苦手な一派です。
もじこ塾ではこうした生徒を狭い意味でのディスレクシア,つまり「純粋ディスレクシア」と呼んでいます。
もじこ塾は,純粋ディスレクシアのための塾であろうとしています。

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ディスレクシアは自由と創意工夫を好み、場の空気が読める、戦略思考の強い人たち。
読み書きの苦労は特性の一面にすぎません。
得意な能力は、大きく分けて 4 つあります。


1.空間把握能力 
立体をリアルに想像し、頭のなかで操作する力。
◆表れ方 
・立体をリアルに想像し、頭のなかで自由自在に操作できる。
・レゴ、工作、プラモデルなどが好き 
◆この能力が裏目に出ると 
・文字が反転する(bとdなど) 
・ことばで表現するのが苦手 
◆適職 建築家、エンジニア、アート系 
もじこ塾での表れ方・・・立体図形を頭のなかで回すことも止めることもできる。少しの情報で位置関係がわかる。数学、物理、美術、ものづくり、絵や写真が得意。視野が広い。左右盲。文字情報を、書いてある順に処理するのが苦手。 
「ディスレクシアは絵で考える」。空間把握能力はディスレクシアの最大の特徴とよく言われ、理系科目や美術系が得意という形で現れます。一方、文字が反転するという形でも現れます。


2. 俯瞰 (ふかん)能力
大きな視点で物事をとらえ、全体像をつかむ力。
◆表れ方
・断片的な情報から、全体像を思い描く
・人が気付かない関係性を見抜く
・複数の視点から物事を眺める
・一つの専門におさまらず、複数分野にまたがって活躍する。普通とは異なる経歴
・つっかえながら読むが、内容理解は深い
◆この能力が裏目に出ると
・速さ正確さが求められるテストが苦手
・設問を深読みしすぎて意味を勘違いする
・順序立てて論じるのが苦手
◆適職 科学者、デザイナー、企画関係など
もじこ塾での表れ方・・・読めさえすれば内容はよくわかる。周りをよく見ており、空気を読んで行動する。話が飛躍する、時系列に沿わない。大局観がある。相手の立場に立てる(優しい、優柔不断)。単語の真ん中がもやもやする。
「ディスレクシアは全体像が見える」。この能力は、時空を超える壮大なスケールの洞察力として現れます。一方、細部(スペルなど)に注意が行きにくいようです。


3.物語理解能力
物事をストーリーとして理解し表現する力。

◆表れ方
・ストーリーとして、物事を理解し記憶する
・エピソード記憶が意味記憶より強い。抽象化せずに具体的なストーリーのまま理解する
・具体例やたとえ話を使った説明を好む
・少しの刺激で、記憶がリアルによみがえる
・固有名詞は覚えないが、昔の事をよく覚えている
◆この能力が裏目に出ると
・事実の丸暗記や抽象化が苦手
・問われたこと以外も答えてしまう
◆適職  作家、法律家、教師、営業関係
もじこ塾での表れ方・・・物語を使って暗記し、思い出す。できごとや雑学を生き生きと印象的に語る。登場人物の感情を想像できる。経験や体感を通じて学習する。短文は覚えられるが、単語を覚えるのは苦手。
※ディスレクシアはストーリーで物事を理解します。このため、ディスレクシアだと本人に初めて伝えるときには、適切な希望を持てるよう,苦手だけでなく得意についてのストーリーも示すべきです。



4. シミュレーション能力
変化する状況のなかで、的確に予測を立てる力。

◆表れ方
・規則性を見抜き、それをもとに予測する
・気ままな空想ではなく、正確な予測を目指す
・まず結論に至り、そこから逆算して考える
◆この能力が裏目に出ると
・スピードや効率は落ちる
・結論が見えるまで動き出せない
・端から見るとぼうっとしているため、学校ではこの能力を発揮しにくい
◆適職 エコノミスト、起業家
もじこ塾での表れ方・・・戦略思考:ルールの"きわ"を狙いたがる、ルールの隙を突きたがる。直観的。気が利く。物語の展開や結末を的確に予想できる。目標が決まると意志の強さ、行動力、粘り強さを発揮する。
「ディスレクシアはモチベーションで動く」。 やりたいことが決まれば、どんどん動ける人たちです。そのためには、ひとりで自由に考える時間をもつこと、自分の道は自分で決めること、そして自分の直観的判断を信じることが、何より大事です。



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