ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2017-05-03

4/30受験報告会

4月30日、もじこ塾から今春進学した生徒による、受験報告会を行いました。
お越し下さった皆様、ありがとうございました。

個人的な話が多かったので、それを抜かしてまとめると:

  • 合理的配慮申請には、診断書が必須である。
  • 合理的配慮申請は、準備が大変。親のサポートがないと難しい。
  • 学校で配慮を受けていなくても、申請は可能。
  • 申請する配慮の内容は、できるだけ具体的に言える必要がある。
  • 合理的配慮を、受ける選択もできるし、受けない選択もできる。
  • 配慮を受ける場合、"障害"を自分の中で受け入れる苦労と、進学後に何か不利益を被るかもしれないという心配がある一方、入試での点数が(かなり)上がるというメリットがある。
  • 「特にカミングアウトせず、支援を受けない」という自由もある。
  • 高校在学中からディスレクシアに気付いている場合、AO入試や推薦入試なども、視野に入れるべき。
  • 一般入試[=時間制限の厳しい、ペーパーテスト一発勝負]は、ディスレクシアにとっては、非常に厳しい戦い。


【皆様のご感想より】
◆子どもたちが自分と向き合い、歩み方をしっかりと、自分で決めようとしてる、これは本当にすばらしいことだと思いました。…

◆…大学入試に関して、又はそれ以外のことについても具体的で、実感を持って発表して頂き、その大変さや対策がよく伝わりました。発表者さんおふたりの学習に対する姿勢や、後進の方に対してサポートしたいという尊い気持ちが本当に貴重で、今日、おふたりの生き方を拝見できたことも、大きな力を頂いたと感じます。

◆…どんな質問にも真摯にお答えいただくみなさまに本当に感動しました。話の本質をとらえる能力はものすごく高いのでは。すばらしいです。

→私も、生徒たちが受験を総括する様子が、実に感慨深かったです。
皆さまが熱心に聞き入る様子そのものが、2人の力になったと思います。
ありがとうございます。

◆…ディスレクシア・LDというものへの配慮は難しいのだなと思いました。お二人ともディスレクシアについては今後はカミングアウトするつもりがないということが印象的でした。「そういう自由も認めたい」というもじこ先生のコメントもいいなーと思いました。あと「ハッピー」ということが大切というのが目からウロコでした。…

→受験報告会で言おうと思ってて、言い忘れたのですが、
ディスレクシアというのは元来、勝手に工夫したり、決まり事の裏をかいたりするのが大好きな人種です。なので、がちがちに道を決めて「さあ!黙って従いなさい」と言われるのは、ものすごく嫌がるはず。「こういう制度がある、使うも使わないも好きにしなさい」と工夫の余地を残すのが、ディスレクシアを動かすコツだと思います^^。

◆…お二人とも、大変優秀であっても、大学受験がいかに厳しいかわかりました。
子どもは小学校の頃からスピードが遅いというのが悩みなのですが、解決してません。本日、当事者の方から「時間的配慮が助かる」と聞いて、子どもの悩みも深刻なのがわかりました。

→教室で見ていると、ディスレクシアには「速いけどちょいちょい間違う」タイプと、「正しいけど遅い」タイプ、(さらには「遅く、かつ間違う」という、より一層大変なタイプ)がいます。できる部分をまず認めてから、できない部分は地道に反復すること。意識を高くもって場数を踏むことが、大切だと思っています。

◆…お二人の、学歴がほしい・・・という切々な思いが伝わってきて、学歴社会を思い知らされました。中1息子がいますが、本人にしっかり、将来について考えさせる所から始めたいです。…将来、まだ色々な道もある事、英語を使わないで受験できる事、技術を身に付ける道もある事、等、選択肢が広がりました。

→「実技系や専門学校のなかには、英語が受験科目に含まれない場合がある」という話です。とても少ないですが・・・

◆点字受験の合理的配慮は30年以上の歴史があるので、現在は当事者や家族が奔走しなくてもいいシステムが出来上がっている。入試センター事業部の中にそういう部署が出来ているが、初期の頃はその体制を作るのに学校や関係団体は大変だった。
発達障害(LD、ディスレクシア含)は一律の合理的配慮事項として明確化できるかどうかわからないが、そういうシステムを作ることを国or文科省などへ公的に働きかける手段はないかを模索したらよいと思う。今回のもじこさんたちの動きが先駆者なんですね。視覚障害の世界にもそういう先駆者がいました。

→道村先生。ありがとうございます。
先生の上のご発言は、会に深みを与えて下さりました。
おっしゃる通り、LDの大学受験は、点字受験の合理的配慮から、学ぶべきことがたくさんありそうです。
また「どうしても出来ないことというのはある。それを認めた上で、自立した大人になるために、絶対に習得しなければならないことは何か/学校に何を求めるか」という姿勢は、視覚障害の世界のほうがはるかに進んでいます。

一方で、LDは外見上はわからない特性です。また、文字重視の近代社会ゆえに、この特性が"障害"と呼ばれている面もあります。
こうしたことが、一枚岩となって公的機関に働きかけることを、難しくしているかもしれません。

もじこは当分は一介の英語講師であり続ける予定なので、公的機関に声をあげる部分は、これをお読みの方々にぜひお願いしたいです!
できる人ができることから、です。。

◆もじこ塾では「いたって普通の学習をやっている」といわれたことにびっくりしました。目指すところが点数だけではないのだと知りました。もっと深い所も聞いてみたいと思いました。実際の状況など・・・

→「もじこ塾では至って普通のことをしている」こんな言葉が出たことに、自分自身、びっくりしています。
でも、生徒の顔を思い浮かべたら、きっと「普通のことをしている」と言うような気がしたのです。「ただひたすら、読む(書く)練習をしています」と。
しかしながら、「ただひたすら、読む(書く)練習をしています」は、世間一般の"普通"とはかけ離れているかもしれません。ため込む前に、少しずつここで披露していきたいです。