ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。
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2025-05-02

もじこ塾だより,by笠野紺さん(6)

5月はもじこ塾が勝手に「ディスレクシア啓発月間」と題して、発信活動を強化する月です。
なぜなら、単語テストが壊滅的にできない人がたくさん検索して、もじこ塾にたどりついて下さる時期なので・・・
そのタイミングで、ディスレクシアの存在を知ってもらいたいのです。

今年は、これまで書きかけてそのままになっていた記事を、蔵出ししていく予定です。
まずは、紺さんが昔描いてくれたマンガが出てきました・・・!紺さんごめんなさい。
8年くらい前のものですが、いま読んでもとっても新しい。



もじこ塾だより、by笠野紺さん
その(1)  その(2)
  
その(3)  その(4)
   
その(5)


2024-05-27

オンライン講座『ディスレクシア英語教授法』見逃し配信を無料公開します

 




コロナ期間中に、もじこ塾では『ディスレクシア英語教授法』のオンライン講座を行いました。

内容的には今もまったく古びていないのですが、
当時はオンラインで授業を行うことに慣れておらず、最初の10分間が未収録だったり、途中で回線が切れてその後かなり動揺していたりして、見逃し配信の販売については申し訳ないとずっと思っておりました。

でもその間にも、こちらをご覧になりたいというお問い合わせを時々受けることがありましたので、このたび、この動画を無料で公開することにしました。
必要な方に、ご活用頂けると幸いです。

また、もじこ塾で使っている教材もこの講座にあわせて整理しました。
こちらも近日中に、ダウンロードで販売する予定です。
noteから有料ダウンロードできます→


よろしくお願いします!

~~~~~~~~~~~
(当時のご案内を転載)

もじこ塾でディスレクシアの中学生に実践している、フォニックス指導法を教えます。

英語だけ極端に苦手な生徒は、ディスレクシア(読み書き困難、読字障害)かもしれません。
ディスレクシアの生徒には、学校の方法とはまったく異なる英語学習へのアプローチが不可欠であり、また効果的です。
ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」では10年以上にわたり、実践研究にアメリカのディスレクシア英語指導法を加えながら、日本のディスレクシア中高生に効果的な英語指導法を作り上げてきました。
このオンラインセミナーでは、その方法を凝縮してお伝えします。
教室で使っている自作教材も提供。教室やご家庭でそのまま使えます。

●内容
1日目
1) ディスレクシアにとってフォニックス指導は不可欠
2) フォニックス:「英語の44の音」の教え方
3) フォニックスを使って単語を読む:「ブレンディング」の教え方
4) フォニックスを使って単語を書く:「音韻認識」の教え方




2日目
5) フォニックスを使って長い単語を読む:「音節」の教え方
6) 長い単語を読み、意味を覚えやすく:「語源とスペルの法則」の教え方
7) 単語を文へと発展させる:「文法」の教え方
8) フォニックスを、学校の英語の授業にどうつなげるか



[追記]
以下はリンク先(note)で有料ダウンロードできます。よろしければぜひご活用ください。

講義資料→

フォニックスビンゴ30本→

全教材(講義資料、ビンゴ、書字練習帳、フォニックス表、など)→



2022-09-24

フォント・スイッチ・プロジェクトに登場!(1)無料ダウンロード教材について

UDデジタル教科書体の生みの親、(株)モリサワの高田裕美さんに取材を受け、

このたび、フォント・スイッチ・プロジェクトのサイトに記事がアップされました→ 

とても懐かしい取材でした……高田さんと私は長年の戦友なのです。

詳しくは記事を読んでいただくとして、

当ブログには、記事に書ききれなかったことを書いていきます。

今回は、付録であるダウンロード可能な教材について。

これが無料でいいの?!というハイクオリティなものに仕上がりました!!

(教材ダウンロードはこちら→)


★  ★  ★


もじこ塾でもおなじみ「UDデジタル教科書体」。教材の日本語は、すべてこのフォントを使用しています。

そのアルファベット版である「UD Digikyo Latin」(UDデジキョウ・ラテン)が、少し前にリリースされました。

このフォントの良さを、少しでも多くの人に知ってもらうこと・・・

  • フォントを変えることで、生徒の混乱や疲労感を減らすことができる。
  • フォントを変えるだけで読みやすさがだいぶ変わる生徒も、なかにはいる。

が、記事の目的です。


そこで、微力ながらお役に立てるのならと、もじこ塾の代表的教材を、UD Digikyo Latinで提供することに。

教材無料ダウンロードの運びとなりました。


しかも!

単にフォントを変更しただけでなく、内容もパワーアップ!!

高田さんはフォントデザイナー界のトップランナーですが、フォニックスに関しては当たり前ですが専門外で。

そんな彼女の素朴な疑問は、学習者の疑問そのもの。

そのむちゃぶり(笑)に答えることで、いま一番ディスレクシア・フレンドリーなフォントによる、ディスレクシア・フレンドリーなフォニックス教材ができました!

たとえばこちら・・・


◆進化した点、その1:フォニックス表がUD Digikyo Latinで登場!


(このフォニックス表は、こちらからダウンロード可能です→)

これまで公開していたフォニックス表をもとに、フォント面でいろいろ微調整しました。

加えて、いくつかの単語も見直しました。

単語選びはなかなか大変なんです。詳しくはその2で。


改訂作業中・・・





◆進化した点、その2:フラッシュカード登場!

フラッシュカードはフォニックス指導の必須アイテム。
だのに、もじこ塾では、フォニックス表を拡大してプリントアウトし、文字ごとに切ってラミネートしたものをずっと使っていました(苦笑)。

今回、はじめてフラッシュカードを作りました!



とてもあたたかみのある雰囲気!
これはおすすめ!



・・・しかし、大変なのははここから。
高田さんから
「裏面に単語を載せたい。できれば1つではなく複数」という要望が。きゃ~

この単語選びには、とて~も厳しい条件があることは、分かってました。
ディスレクシア的なフォニックスの教え方のルールに従うなら既習の文字しか使えないのです。

既習の文字だけから単語を構成する」は、ディスレクシアにフォニックスを教えるにあたり(本当は非ディスレクシアにと教えるにあたっても)、とても大切なこと。
段階的に教えるためにも、生徒の心をくじかないためにも、必要なことです。

そのうえ、日本で英語を学ぶ小5くらいから中学生に適した単語・・・
子供っぽくない、イメージしやすい、ネガティブでない、できれば知的関心にヒットする、という条件を満たす必要があります。
使える文字に制約があるなかでこの条件もとなると、これがなかなか難しいのです。

今回、既習のに含まれる文字しか使えないというルールのもと、単語を選びました。
そうしてできたのがこちら!



これは親切!!
「satipncke」という字の読み方を教えたら、それらのカードに書かれている単語を読むことができます。  (topだけ間違えて入れてしまいましたが。。)

それ以外にも、単語の配列、音素の数や配列など、工夫がいっぱい。
もじこ塾でのフォニックス指導経験を惜しげなく詰め込みました。
生徒に読ませてみれば、その効果を実感できるはず・・・!

いま日本で流通しているフォニックス教材は、aに対してはapple、oに対してはorangeを使うのが定番です。検定教科書もそうなってます。
しかし、どちらもフォニックスワードではないので、ディスレクシア的には読めません・・・
その部分を改善したという点で、かな~りディスレクシア・フレンドリーです。

ぜひご活用いただきたい!


さらに!なんと!
フラッシュカードがアニメーションに!
近日中に、音声もつける予定です!


(このパワポは、こちらからダウンロードできます→)





◆進化した点、その3:ブレンディングの動画!

フォニックスは、「フォニックス表を覚えればおしまい」ではありません。
教えなければならないことは、他にもいくつかあります。

その一つが「ブレンディング」の指導と練習。
一つひとつの文字をつなげて読むことです。

この部分も、ディスレクシアには明示的に教える必要がありますし、
生徒によっては、ブレンディングができるようになるまで、相当の反復練習が必要です。

そんな「ブレンディング」とは何か。
今回、説明動画を作りました。
高田さんがアニメーションを作ってくれました。
そうそう、こういうことです!ありがとう~~


(音が出ます)


ブレンディングが何かわかったら、フォニックスビンゴで練習しましょう。
リンク先に5パターン用意。6人の教室でそのまま使えます。


使い方も、できるだけ書いてみました。


(印刷用のバージョンは、こちらからダウンロードできます→)


★  ★  ★

高田さん自ら、これらの教材の編集作業を、全部手がけてくれました。
プロのデザイナーの手にかかれるとは、なんとありがたいことでしょう。
こうして、これが無料でいいの?というハイクオリティなものができました!

・・・いいんです。もじこ塾の設立目的は社会変革だから( ̄ー ̄)。

UDフォントの存在、そしてフォニックスの重要性が、ひとりでも多くの英語を教える立場の人に、伝わることを願っています。



高田さんからは
「satipn~という配列には意味があるの?」といったツッコミもありました。
そうですよね。。satipnにはたしかに意味があります。このあたりのことは次回。

記事へのリンク→ 

最後に・・・
フォント・スイッチ・プロジェクトの記事拡散のために、もじこ塾はついにツイッターを始めました!→
よろしくお願いします!

2022-08-17

工学部ディスレクシア3名、英語との向き合い方の記録

さまざまな工学を志すディスレクシア3名の、英語との三者三様の戦い方、向き合い方の記録です。

あがく、回避する、配慮を受ける、ツールを使う、訓練する、、
さまざまな方法があり、それぞれに尊い、という話です。


---

​ 4月×日 ​

関西の​高専※から大学三年次編入※​で工学部に入学、上京してきたM君が、もじこ塾に入りたいのことで、面談に訪れました。

そこに、同じく三年次編入を目指してもじこ塾に復帰した高専2年のS君、
​もじこ塾の卒業生で助手をしている​情報工学科3年のN君が加わり、
教室内はさながら「工学部ディスレクシアの宴」に

​※高専:高等専門学校。5年制で、工学系にシフトした専門教育を行っている。早くから工学系の才能を示すディスレクシアにおすすめの進路のひとつです。

三年次編入高専を卒業後、大学(主に工学部)の三年生に編入すること。ほとんどの国公立大学が高専からの三年次編入を受け入れている。三年次編入の試験科目は大学によって異なるが一般入試は理系科目と英語、推薦入試なら面接だけの場合も。

M君「ここまでずっと、英語を避けてきました」


M君は、これまで一度も英語で入試を戦うことないまま、国立大学の3年生になりました。
高専は推薦入試で突破したそうで、英語はなし。
大学三年次編入は、試験に英語が課される大学もありますが、M君は英語のない推薦入試を選んだそう
これまで受けた2回の入試とも、面接だけでクリアしてきました。

「でも、院試や就職には、英語資格の要件があります。
できることなら、本当は留学もしてみたい」。
 
M君は自分がディスレクシアと知っていたものの、高専では自分と同じような人を見たことがないと言います。
ディスレクシアで大学に進学した人、まして理系で戦っている人は見たことがないと。
 
S君のように、自己紹介で「自分はディスレクシアです」と言う人や、
N君のように何年も読み訓練を続けている大学生を見て、非常に驚いていました。
 
3人とも苦労のポイントは同じなようで、最初から意気投合。
SN君は臆面なく「自分は勉強が好き」「この道に行きたい」と言うので、
「自分は就職したかったが、親が大学に行けと」と話すM君は驚いていましたが・・・

いやいや、M君こそ努力の人。
それこそありえないほどの努力を重ねないと、ここまでは来れなかったはず。
 
その証拠に、M君はS君に、
3年次編入にはクラスで上位1割をキープせなあかん」
3年次編入は大変やで~」
と繰り返していました。
 
高専のクラスで上位1割をキープすること、しかも英語が足を引っ張る状態でそのポジションをキープするためには、人の何倍も努力が必要だったことでしょう。
 
 

M

『他教科はできるけど、英語だけやる気にならないんか』とずっと言われてきた。

英語にはどの科目よりも苦労してきたのに」

 
同じことは、ほかの理系ディスレクシアからも、ときどき聞きます。
 
理系科目はよくできて、発言もたくさんするのに、英語になると急に発言もしないし、課題も出さない。
理系科目と英語で、授業態度のギャップが激しすぎる。
どうやら、英語だけやる気がないらしい。
・・・と、周りから見られているのです。
 
本人の認識は、周囲の見方とは、まったく違います。
なぜ自分だけが周りのように読めないのかわからず、発言する余裕などあるはずがない。
必死にあがき、かつそれを悟られないように隠す。
その様子がなぜか「やる気がない」と周囲には映るのです。
 
はっきり言いませんでしたが、この苦しさは相当のものだったと思います。
 

    ☆  ☆
 
S君は、小学校のころから特性理解を進めてきた、合理的配慮のパイオニアです。
区立中と交渉し、​授業中のノートテイクにパソコン使用を認めてもらいました。
中学の後半は、定期試験にもパソコンを使用しました。
 
彼の場合は、戦わざるを得ないほど、読字困難も大きいものでした。
三角形ABCの「ABC」という文字を見るだけでも吐き気が出るほど、一時は文字を読むことがつらい時期もありました。

高専に進んでからも、英語の授業の後半は、保健室で休むことがあるそうです。
 
もじこ塾には、新中1の春休みから来ています。
このためフォニックスは完璧に知っているのですが、英語の文字を見ると吐き気がするレベルの困難となると、知識の定着はなかなか大変です。

うっかり負荷をかけすぎると、文字通り寝込んでしまうので、ペース配分などを慎重に見極める必要があります。
 
「今も、体調が悪い日は、文字が揺れて見えてきて、気持ち悪くなります。
頭痛や腹痛、だるさや眠気はずっとあります。
今後もずっとこうなのかと不安です」
 
彼にとって、英語を読むことはこれほどまでに激しい身体症状を伴う、本当に苦しい行為です。
 
それなのにS君は、
「英語には興味があります。なんなら読める同級生よりも関心はあると思う。
文法や語源がわかると楽しい。できるようになりたい」
と言うのです。

評定を上げて三年次編入に備えたい、それ以上に、知的好奇心ゆえに英語を知りたいと言います。
 
大学ではロボット工学やAIを学び、いずれはディスレクシアの読み困難を支援するデバイスを開発したいとのこと。
その利他的な心に、頭が下がります。
 
中学では模範的学生として表彰​。
高専でも、英語の時間に倒れたら、​​周りが肩を貸してくれるそう
(2回ほど本当に借りました」)
​​
辛い時に周りに支えてもらえるのは、ひたむきな学問欲と、圧倒的な人徳のなせるわざ。
彼を知る誰もが、その頑張りを文句なしに認めています。
 
高専1年の途中から、定期試験で、英語を追試の日程に行うという合理的配慮を受けるようになりました。
英語の試験を受けると、精根尽き果てて頭が働かなくなり、その後の試験をまともに受けられなかった彼にとって、この配慮はとても効果的だったそう。
おかげで、数学や物理で実力を出せるようになりました。
(なお、現在は手書きで答案を書いているそうです。)




    
 
十代後半を「高専」という、工学部を先取りするような環境で過ごした2人に対し、高認​※​というルートを経たN君にとって、大学受験は孤独との闘いでした。
高認:高等学校卒業程度認定試験。かつて「大検」と呼ばれていたもの。高卒と同等の資格を得ることができます。

6の授業中、机の下で両手に二進法を覚えさせていたという彼は、数の申し子。
しかし当時から、漢字の書き取りは苦手だったそう。
そして中学で英語が始まって1年ほどたつと、「クラスの音読競争でぶっちぎりに遅かった」などの困難が表面化したそうです。
 
単語が覚えられないし、それ以前に単語を読めない・・・
そんな状態で中3に入り、授業で長文を扱うようになると、英語の成績は急降下。
そのまま高校入試となり、おそらくは燃え尽きて、高1の夏休み明けから不登校に。

その後、情報工学に目覚めて再始動、​​もじこ塾とS台予備学校に通い、現役で大学生になりました。
 
CPUの開発をしたいという一念だけで受験生活を走り抜けましたが、英語を読む際のつらさ、英語が足を引っ張るつらさ、そして同年代の友人との何気ない交流がないつらさは、相当のものでした。
 
30分も英語を読み続けると、急に激しいめまいがするようで、それ以上は文字を見ても意味をとることはできません。
(didbigと読んだこともありました。)
その苦しそうな様子は、いたたまれないものがありました。
 
センター試験の英語は、200点中90点。半分もとれませんでした。
(ちなみに物理と数学2科目も90[100点満点])
第一志望は、英語が超長文のこともあり不合格で、今の大学に入学。
 
でも入学後の様子はそれはハッピーで、受験生時代にどれほどの厳しさに耐えていたか、よくわかります。
 
​大学の勉強が今は楽しくてたまらない彼ですが、情報工学の世界に進みたい以上、仕事で英語を使うこと、さらには英語資格の要件からは逃げられないと言います。
 
「英語で苦労するってわかってるのに、それでも情報工学をやりたいんや?」
M君に問われて、静かに
「うん、そうなんだ」と答えていたのが印象的でした。


 
N君​の英語の読字能力は、大学入試時点では、戦えるレベルにはなりませんでした。
なにしろ、センター試験の長文1本を、全部読むことができないのです。

しかし、たいへん驚くべきことに、​​大学入学後も、彼の英語の読み能力は少しずつ向上​しました。

英語の授業はずっと続き、論文はDeepL※を使って読み、プログラミング言語は英語。
英語を毎日使っているというのも、大きいようです。
DeepL:機械翻訳アプリ。Google翻訳をはるかに上回る、驚くほど自然な訳文が生成されます。

​これに加えて、授業の助手に入り、中1の生徒たちと一緒にフォニックスの最初の一歩から復習できたことが、思いのほか効果的だったようです。

30分読むと限界が来るのは受験生時代と変わらないようですが、30分で読める量は大幅に増えました。
 
目標をもって地道な基礎訓練を続ければ、20歳を過ぎても、読字能力はまだまだ成長を続けるらしい。
・・・そのことを私は、N君から知りました。
 
彼を見ていると、S君もM君も、正しい訓練をすれば、ちょっとずつ英語が読めるようになるだろうと、信じることができます。
 
     ☆   ☆
 
三人が「ですよね」「わかるわ~」とディスレクシアあるあるトークを繰り広げるなか、私は胸がいっぱいでした。
この人たちに英語を読ませるというのは、イルカを陸に引き揚げて「さあ走りなさい」「なんで走れないの?」と言うようなもの。
無理を要求して苦しめています。
 
この人たちは、海に放てば、ものすごく生き生きと泳げるのです。
私は残念ながら海の中の様子がわからないので、彼らの泳力のすごさを完全に知ることはできません。
でも、この人たちは海では非常に高い能力を発揮できるというリスペクトの気持ちをもって接することは、非常に大事だと思っています。
英語に向き合う時の彼らは、本来の姿ではまったくないのだと。
 
海に放てば抜群に泳げる​​人たちを​​むりやり​​陸で競わせようとするのが、昨今の英語要件です。
理系だと大学や大学院、さらには就職や昇進において、英語資格の点数が要求されるらしいのです。
 
この人たちに英語の試験という関門を課すのは、才能ある理系の人たちが出てくる道を閉ざすことであり、社会的に大変な損失です。

また、身も心も削って頑張った末に、仮に英語資格の関門を突破したとしても、本来活躍できる分野に割ける時間を英語に割いたことによる損失、「英語だけやる気のない人」と言われ続けることによる精神的苦痛・・・を考えると、こういう人たちに英語資格の点数という形で要件を課すことは、ものすごく大きなダメージを与えます。
 
もし私にものすごくお金があったら、学校を作りたいです。
その学校は全教科そろっていて、ディスレクシアの生徒たち英語で苦しむことなく、のびのびと関心を追求する環境がそろっている
一方、理系の世界は英語が必須である以上、毎日こつこつと読み訓練も続ける・・・
 
工学部ディスレクシアたちが、ポジティブな自己認識をまっすぐ持ったまま、心も体も壊さずに成長できる。
そんなルートが確保されていてほしいと、切に願います。


※イラストは、もじこ塾の教材の絵をすべて描いてくれている紺さんによるものです。

2022-04-08

総合型選抜(AO入試)の合格体験記「なんとかなると油断できない自分に対する自信のなさが、良い方向に出た」

受験報告会→に登壇してくれたさえちゃん。

合格後すぐに、以下の合格体験記を書いてくれていました。

☆  ☆  ☆

さえちゃんは高1の夏休みに、もじこ塾のフォニックス講座を受けに来ました。

フォニックス講座を受けてくれた人の多くは「!英語を読むってこういうことか∑( ̄0 ̄;」と多かれ少なかれ衝撃を受けた様子を見せるのですが、さえちゃんにはピンときている様子がありませんでした。

引き続きもじこ塾に来るようになってからも、反応は鈍く、みんなとの会話にも加わらず、中1レベルのごく基本的な単語を覚えるにも苦労していました。

印象が一変したのは、はじめて小論文を書いてもらったときです。

Σ( ゚Д゚)!!なかなか深い内容を書くではありませんか!

英語の授業の様子とはあまりにも、あまりにも別人なので、本当に驚きました。

ディスレクシアの生徒を英語だけで判断してはいけないとは知っていましたが、その最も劇的な事例でした。フォニックスの定着にも非常に苦労している、最重度のディスレクシアと言っていいでしょう。

あるいは、日本語は大丈夫ですが英語にだけきわめて強くディスレクシアが出ているという点で、最重度の隠れディスレクシアと言っていいかもしれません。

☆  ☆  ☆

そこから、小論対策に切り替えて1年半。集団討論の内容を踏まえて小論文を書くという、かなりプレッシャーの強い、しかも高倍率の総合型選抜を、見事突破しました。

大学選びの動機は「今の環境を変えたい、とにかく大学というものに行きたい」(-_-||)。家から近い大学・学部のなかから、まずまず興味が持てて、かつ評定や試験科目が自分に合っているところを選び、そこから志望理由を考えていきました。

この順番は、もじこ塾的にはかなりレアです。「やりたいテーマ」が「大学に行くこと」そのものというケースは…(苦笑)。しかし、大学進学へのさえちゃんの情熱はかなりのものでした。

☆ ☆ ☆

さえちゃんのことは、さえパパを抜きにしては語れません。

男手ひとつでさえちゃんを育てたお父さんも、話を伺うと相当のディスレクシア。やはり英語が苦手で、大学はW大以下すべて不合格、滑り止めで入った二部(夜間)から猛勉強して一部(昼間)に転籍。就職した某大手IT企業ではトップ営業マンとなり、今でも売りまくっているので、とっくに役職についていい年齢にもかかわらず、いまだに実働部隊にいる(ご本人いわく「『躍る大捜査線』のいかりや長介のポジション」。低い腰で「努力できることだけが取り柄です」と言われると、ただ頭が下がります…。一方、お母さんはADHD?いわゆる"片付けられない女"のようです。

ですので、さえちゃんの高校生活は、料理はじめ家事全般を当番でこなしながらでした。受験生になっても料理当番をこなしていたようです。えらい・・・!

このようによく働き、タフで真面目で、ちょっとADDっぽく、そして音韻性の困難はかなりありそうです。

突然の物音に「わあっ!」とすごく驚いたり、こちらの話を聞いていないように見えたり、、

そんなこともあり、本人いわく自己肯定感は低め。大学進学率3割、休み明けごとに生徒が減っていくような高校に通っていたら、そうなるのかもしれません。

しかし、「とにかく環境を変えたい」という動機だけでここまで頑張れるのですから・・・さえちゃんもお父さんと同じ、ありえないほどの努力の鬼です!

そんなさえちゃんの合格体験記です:

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・都立高校卒、都内女子大教育福祉学科 合格(総合型選抜)


Q:もじこ塾をどうやって知ったか。入塾の決め手は?

高校受験で英語を1番勉強したのにも関わらず、結局全くといっていいほど伸びませんでした。さすがにおかしい、病気だろっと親に言い訳を探す気持ちで探したら、本当にディスレクシアだと判明しました。そのことを話し、私はもう大学受験は無理だと伝えました。そしたら親が「ディスレクシア専用の塾がある」ともじこ塾を探してきてくれたので、もう少しだけ英語を頑張ろうと思ったことが入塾の決め手です。

 

Q:他の塾との兼ね合いは。英語はもじこ塾以外でも勉強したか?

最初は二教科受験をしようと考えていたので、日本史は3年の10月まで、国語は2年の終わりまでやってました。最初は総合型選抜ではなく二教科受験を目指してたので。

英語は高校に入る前まではやってましたが、もじこ塾に入ってからはやってません。元々通ってた塾の先生に「ディスレクシアという英語の病気?らしい」と伝えたら、納得されたのを覚えてます。高校受験の時はご迷惑をおかけしました。

 ※note参照。ディスレクシア的には、AOと決めたらAOだけに振り切るべきだと何度も言っていたのですが、さえちゃんは他の塾では「一般入試をあきらめてはだめ」と言われていたそうで、なかなかAO一本に絞りませんでした。合格したからいいのですが。


Q:もじこ塾で勉強したり話したりしたなかで、特に印象に残っていることは?

特に印象に残っているというか、いいなと思う点は質問のしやすさです。本当に基礎的な英語が何度聞いても覚えられず、何度も同じ質問をするのですが、先生からまた?まだ覚えないの?と言われたことが記憶にないのです。なので気軽に何度も質問できます。そんなこと?と思う人もいるかもしれないですが、何度も聞いた後に、またかよなどと呆れられ、申し訳なくなってきてしまうことが学校で多々あります。なので何度でも根気強く教えてくれ、質問のしやすい環境であるところが、もじこ塾で一番いいなと思っています。

※覚えたいのに覚えられずに苦しんでいるのは、傍で見ていてよくわかりますので、「また?」とは私には言えません。でも、自分でも「何度も同じ質問をしている」という自覚があったのは初耳でした(゚Д゚)

 

Q:入塾を考えている人へ、もじこ塾はどんなところと説明するか?

自分の悩みを理解してくれる場所だと説明すると思います。ディスレクシア専用の塾ですから、他の大人に相談したら笑われることも親身になって聞いてもらえます。ディスレクシア的な理解されない部分に理解してもらえるのは心が軽くなり、どんな進路に進むにしろ役に立つと思いますし。

 

Q:ディスレクシア的に、大学入試や受験勉強において特に注意するべきことはあるか?

早めに後悔のない進路を決めることですね。単純に、ディスレクシアは正攻法でいけなかったり、そもそも人より覚えが悪かったりするので。後は、ほとんどの受験方法で漢字が書ける必要があるので、時間がある人は早めにやっておいたほうがいいと思います。

 

Q:自分がディスレクシアだと知ってどう思ったか? 現在はそのことをどう捉えているか?

知った時はホッとした気持ちと、努力してもどうにもならないじゃんという絶望感の半々だったと思います。

また今でも「ディスレクシアじゃなければなぁ」と思うことが沢山あります。特に英語の時間は、真面目にやった後にできないと半泣きになる癖がついており、心が折れかけてます。正論を言われるのが嫌なように、自分ができないことを改めて知らされるのは嫌なものです。来世は普通に生まれたいです。

※さえちゃんのディスレクシア的プラス面は、これから発揮されてくると思いますよ。お父さん譲りの対人能力など。


Q:もじこ塾に来て,英語は読めるようになりましたか?(正直,どのくらい英語ができますか。)

本当に少しだけだけど、マシになっていると思います。00.2になったくらいですが。伸び代しか感じないのでこれから頑張ります

※がんばりましょう。ちなみにさえちゃんは、音韻認識がとても、とても弱いです。突然の物音にびっくりしやすい、人の話を聞いていないと思われることが多い、など。

 

Q:中学のときの英語力について語ってください。

ローマ字、be動詞を覚えていないレベル。今もたいしてレベル変わらないのは内緒🤫

この文章を書いてから3ヶ月、だいぶ定着が進みました!

彼女のディスレクシアは本当に重度で、いまだにフォニックスが定着していません。なので大学の単位をとるために、AO入試合格後から、もじこ塾で英語の勉強をいちから始めました。プレッシャーから解放されたせいか、年齢のせいか、前よりも定着率は良いです。できないなりに読字訓練に臨む様子は本当に尊いです。

 

Q:都立高入試をどうやって戦いましたか。

受験方法は都立高校の一般受験です。この時はまだディスレクシアの存在を知らなかったので、英語に勉強時間を全振りしていた覚えがあります。秋あたりの模擬試験で英語の成績は全く成果が実らなかったため、もう第一志望の高校は無理だろうと、今の高校を受験しました。今の高校は名前さえ書ければ誰でも入れます。後、本当にあの時は勉強が苦痛で、英語の塾の一回の授業で二回ぐらいトイレに逃げてました。2時間くらい英単語を書かされ1問も正解しなかった時の先生の顔は怖すぎてトラウマもんです。仲は良かったんですけどね。

 ※ディスレクシアは「何度も書いて覚える」ができない人が非常に多いです。


●大学入試について

Q:合格の決め手、勝因は何だと思いますか?

最後まで油断しないで勉強したことだと思います。下手に自分に自信を持てていなかったからこそ、不安を潰すために少しでも努力しておこうと思えました。なんとかなると油断できない自分に対する自信のなさが良い方向に出たと、今は考えています。

※もじこ塾の純粋ディスレクシア勢は異口同音に、「なんとかなる/誰かがなんとかしてくれると思ったことはない」と言いますね。これが例えばADHDだと「なんとかなるっしょ」と言うので、個人的にはこの発言は純粋ディスレクシアのリトマス試験紙のように感じます。

 

Q:新型コロナウイルス感染について

私がコロナにかかったのは8月の後半です。私は総合型選抜で受験しようと考えていたため、9月の初めにはエントリーシートを提出しなければいけませんでした。しかし自分がコロナにかかるとは全く考えていなかったので、まだエントリーシートの清書と学校に提出する作業が残っていました。結局清書は先生にやり方などを教えて貰い、誤字などが少しありましたが提出できる状態にできました。

しかし問題は、学校にエントリーシートを提出することです(学校の先生の署名が必要でした)。私たち家族は全員濃厚接触者であり、外出禁止です。そんな人間が高校に行けるわけありません。なので、もじこ先生にわざわざ取りに来て貰い、学校に届けてもらい、なんとか提出まで漕ぎ着けました。あの時はありがとうございました。

このようなことがあり、私は三週間ほど勉強を休まざるをえませんでした。なかなか調子が戻らず、苦労した覚えがあります。新しい変異株も出ていますので、早め早めの行動を心がけ、身体に気をつけ受験に挑んで下さい。

※デルタ株急拡大の頃の話です。あとは清書を残すだけという段になって本人の発熱、お父さんの入院と、あっという間に大変な状況に。zoomで指示を出しながら、なんとか清書と提出までこぎつけました。大学出願とコロナ感染が重なるなんて、彼女の人生でもそうそうないピンチだったのでは。お役に立ててよかったです。

 

Q:総合型選抜で大変だったことは。

色々大変だったことはありますが、大きく分けて二つあります。

一つ目は、試験の詳しい内容を知らなかったことです。大学の入試要項には、試験時間などは書いてありましたが、どんなお題が出るかは全く書かれていませんでした。そのため私は、教育福祉学科を受験したので、福祉系のお題で小論文を書いていました。しかし本番間近になって、高校から去年の受験問題を教えてもらいました。(すると、準備していた傾向は見当違いであることが判明しました・・・)受験する学校などあらかじめ伝えていても、そういったことを教えてもらえないのはどうなのかなと、今でも思います。総合型選抜を受ける人は、あらかじめ先生に大学の問題のことなどを聞きに行くことをお勧めします。

二つ目は、漢字が書けないことです。私はかなり漢字が苦手で、高一の頃反省文を学校に提出した際には、「小学生みたいな文章だな」と担任の先生に言われたほどです。とにかく文章の中に平仮名が多く、たまに書いてある漢字も誤字でしたみたいなことが平気で起こっていました。なので自分の文章でよく使う漢字だけは出来るだけ覚え、覚えてない場合は言い回しを変えたりなどして対策を練りました。本番でも完璧とは言えませんが、全く直らなかった訳でもありません。かなり漢字が苦手な私でも見れるレベルまで持っていけたので、練習さえすれば直せる部分だと思います。

※漢字が書けないは明らかに言い過ぎで「たまに間違う」・・・400字原稿用紙に2~3ヶ所間違いがある程度です。清書した志望理由書でも、「生徒」が「生従」になってました。でも、コロナで9度の熱を出し、親御さんは入院してしまったなか、ようやく清書した原稿を「直せ」と言うことはできませんでした。

 

Q:総合型選抜に振り切ってよかったことは。

小論文の時間を普通の人より多く取れたことだと思います。普通、小論文をやる時は片手間で勉強するので。

※夏休みは週2回、出願から試験直前までは週3回通塾し、時間をはかって小論文を書く練習を行いました。

 

Q:ディスレクシア的に、総合型選抜で注意することはありますか?

文章が説明不足にならないよう、気をつけることです。

私は、頭で考えるのは好きではあったのですが、言葉で説明するのが得意ではありませんでした。言葉が飛び飛びになり、説明不足なことが多かったです。私の中では説明として終わってるつもりでも、相手にはなんとなくしか伝わらないことが多々ありました。大人の場合は何となく理解してくれますが、小論文の場合は減点されてしまうので、子供に説明するつもりぐらいで書くようにしました。この能力は普段の会話やLINETwitterなど様々な所で影響があるので、心当たりある人は気をつけた方が、小論文以外の日常生活でも役に立つと思います。

※ディスレクシアの人は、発想力はすごく豊かで、話し言葉では超絶な議論ができるのに、なぜかそれを紙に書く段になると、話していたことの数分の一しか紙に落とし込めない、ずいぶん単純化した話しか書けない人がかなりいます。話せる内容と書ける内容を近づけるためには、書き言葉を習得する必要がありますし、文章を書く訓練が必要です。この点は1年半ほどかけて試行錯誤を続けました。

 

Q:ディスレクシア的に、総合型選抜はおすすめですか?

間違いなく私は勧めます。

一般の塾などで話を聞いてると、総合型選抜を本腰を入れてやる人は案外少ないからです。大学受験の場合、総合型選抜で受かったらラッキーで、一般受験が本命の人が多いです。ディスレクシアは英語がある以上、一般受験は受けられない定めなので、比較的同じ土俵で戦える小論文はかなりいいと思います。

ただ、小論文は答えがなく、自分がどのレベルにいるのか分かりにくいのが難点です。文章力が上がったと言われても、周りがどの程度できるか分からないので、常に不安がつきまといます。本来自己肯定感が低いタイプの人には向いてないのかなと私は考えています。総合型選抜勧めはしますけど自分は二度とやりたく無いです。

※ディスレクシアのなかでも言語能力が高い人には、総合型選抜は本当におすすめです。彼女も出願の1カ月前に届いたWISCの結果では、「言語理解」が突出して高く(最も低かった「記号」と14(!!)も差があり)、「やっぱり」という感じでした。

 

Q:もじこ塾に通っている生徒に、激励のことばを。

私たちディスレクシアは選択肢が人より狭く、物事をやるにも人より時間がかかります。自分で納得し、最善を尽くせるなという道を人より早めに見つけ、それに向かって頑張って下さい

※ほんとそうです!早めに決めて、労力をそこに全振りすることは、ディスレクシアの進路選択においてとっても大事です!


Q:将来の夢を1行でどうぞ。

普通の人になりたいです。マイナスからゼロに性格も能力も全て

※そんな・・・。でも、合格報告会でも「さえちゃんの『普通になりたい』発言に心揺さぶられました」というコメントがかなりありました(ノД`)。

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最後は宣伝を失礼します。

さえちゃんはNHKの取材にも協力。

「問題」「間題」はさえちゃんが書きました


もじこ塾では、ディスレクシアの高1~高3を対象に、総合型選抜対策(志望理由書・小論文・面接対策)を行っています。高1から高3の春までは少人数クラス(定員6人)、高3のゴールデンウィーク頃以降は個別指導となります。ご興味のある方はこちらからお問い合わせ下さい→

2020-06-01

合格体験記「もし治せると言われても、ディスレクシアのままでいると思います」

合格体験記を2本お送りします。

1本目は、授業日誌のブログに2年間、振り返りを書き続けてくれた時雨くん。
(過去記事→)
コロナによる制約が次第に厳しくなるなか、ぎりぎり行われた後期入試で大学生になりました。
もじこ塾に初めて来た日から1ミリもぶれることなく、情報工学の道に進みます。

~~

時雨くんは過度激動。子供でいるのに向かない人です。
親も扱いに困るほど精神的自立が早く、知的にも早熟。
見た目も、下手すれば20代後半に見えます
(大学に合格して、だいぶ若返りましたが(笑))。

ディスレクシアとしては、左右盲が強いタイプ。これは俯瞰能力の裏返しらしいです。
おそらく音韻の苦労もあるものの(中学の合唱コンクールで「歌うな」と言われるほど重度の音痴)、圧倒的な量の雑学や論理的思考力でカバーしています。
空間認識、俯瞰能力、ストーリー的理解、戦略思考といった「ディスレクシアの得意なこと」→をすべて強力に示しています。

高校入学後、不登校から半年間のひきこもり期を経て、もじこ塾に来ました。
不登校は学校への期待の大きさの裏返しであり、空気は読めますし対人能力は高いです。
過度激動らしく、問題用紙を前にすれば猛烈さを発揮し、何か意見を求めれば、考え込んだ末に重く鋭い一言を言い放ちます。

~~

もし、ディスレクシアを「自分の知的水準で読めないこと」と定義するなら、時雨くんは最重度のディスレクシア、あるいは最重度の隠れディスレクシア→でしょう。
圧倒的な知的体力があり、数学と物理は最難関大レベルで戦えるのに対し、英語は1語をデコーディングするにも苦労しています。
そんな調子で40分も英語を読めば脳が電池切れになり、それ以上はまったく読めなくなります。

そして、単語を解読できても、その意味を覚えるのも思い出すのにも、さらに苦労しています。
わたしは時雨くんを通して、日本のディスレクシアが英語を学ぶ場合、最後かつ最大の難関は、単語の意味を覚えられないことなのだと、痛いほど実感しました。
この問題が克服されることはなく、むしろ顕在化した2年間でした。

時雨くんはおそらく今も、読んで分かる語彙は、中学英語に毛が生えた程度だと思います。
英検2級も落ちましたし、センター英語も結局は100点に届きませんでした。
でも、彼の名誉のために言うと、彼は英語が使えないかというと、全然そんなことはないのです。

その英語的な成長曲線は、どこまでも想定外の連続でした。詳しくはのちほど・・・

前置きが長くなりました。時雨くん、最後の授業日誌です:


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時雨くんの合格体験記

・国公立大 情報工学系学部 後期日程 現役合格
・公立中出身。高校受験し進学校に進むも、高1夏休み明けより不登校。
高2夏に高認合格


Q. コロナの影響で、前例のない新生活の始まりになったと思います。 大学新入生としての近況を教えて下さい。(4月中旬) いまは主に何をしていますか?何が大変ですか?何をしたいですか? 大学から自宅課題が出ているので、それをこなしつつ、自分でも予習を進めています。 各種登録の手順が書面だけで届くが、説明しながらが前提だった資料なので、読むべき順番が分からなかったり、知らない単語がでてきたりと読み解くのが大変です。 入学後の楽しみだった実験科目がしたいです。 高卒認定出身だと、どんなに基礎的な実験もやったことがないので楽しみにしていましたが、疫病対策の重要性は理解しているつもりなので学校の再開後に期待しています。 →「高認したことの唯一の後悔は、実験ができなかったこと。問題を解いて知っているが触ったことがないもの、漢字は知っているが実際には見たことのない色がたくさんある。それらを見てみたい」とも言っています。



Q. 大学入試対策として、「自分は去年することができたが、今年はコロナの影響でできないだろう」と思うことは何ですか?
現役生だと理科を春~初冬で1回転させるので、1か月ずれると、12月以降の全体像を理解したうえでの演習が足りなくなりそうです。


→4月中旬時点での答えです。ほんとに、今年の大学入試はどうなるのでしょう…


~~~

Q:もじこ塾をどうやって知ったか。入塾の決め手は。
もじこ塾のことは、以前通っていた兄から聞きました。
勉強から一時期離れていたころに、勉強を再開するにあたって苦手教科は誰かに教わらなければと思ったのが入塾の決め手です。

→時雨くんは本人、兄、両親、祖父に至るまでディスレクシア。
ここまでそろっている家系は、もじこ塾内でもなかなかいません。


Q:他の予備校との兼ね合いは。英語はもじこ塾以外でも勉強したか?
数学、物理、化学は、駿台に週1回3時間ずつ、夜に通っていました。
アカデミックな授業は、気に入った先生と出会えれば、公式をただ暗記したりと何が何だか分かりもせずに問題を解くことが最小限まで抑えられるので、理系にとっては楽しいと思います。(受験の近道ではないかもだけど)

英語は、予備校はおろか、高校入試以降はすべてもじこ塾で教わりました。
過去のブログにも載っていますが、文法も発音も読解もすべてです。
逆に言えば他を知らないので比較したことが書けません(笑)。

→時雨くんとの授業は、予備校や高校の授業とはまったく違うものでした。
授業日誌のブログにも書いてきましたが、ここで総括しておきます:

時雨くんとは、最後の授業まで、四技能すべてを扱いました。
20年以上受験指導してきて、直前期までスピーキングの練習をした生徒は、時雨くんが初めてです。
しかしこれはおそらく効果的でした。
ディスレクシア的には、スピーキング力あっての読み書き能力らしいです。

受験対策という意味では、捨てた分野もありました
(文法四択問題:inやatのような小さな単語を文脈抜きで正しく読むのは無理)
(リスニング:時雨くんの場合、選択肢の文章を読むのが遅すぎてついていけない)
それ以外、つまり構文解析、和訳、説明問題、英訳に取り組みました。

授業のハイライトは、なんといっても「読字訓練」→
時雨くんとの読字訓練は、言葉で言い表せないくらい、地道で過酷なものでした。
ものすごく疲れますし、一歩間違うと目まいや頭痛などの身体症状が出たりします。
うっかり負荷をかけすぎて限界を超えてしまったときは、見てていたたまれませんでした( TДT)。

そんな調子なので、長文問題を1問まるまる全部読んだことは、一度もありませんでした。

しかし。
前期入試の長文は「今までで一番読めた」、
後期入試に至っては「全部読めて、意味もとれた」と言うのです・・・
。゜。゜(ノД`)゜。゜。

読字訓練は、すごく過酷で、しかも結果が数字に出ないことも多い。
でも、ここ一番で読字訓練の成果がどう現れるかは、本当にその時になってみないと分からない
・・・と、最後の最後に知りました。

読字訓練はこの上なく過酷でしたが、効果はあったようです。


Q:入塾を考えている人へ、もじこ塾はどんなところと説明するか?
もじこ塾では、個別の授業で分からないところをその場で聞きながら、志望校の傾向を意識して進めます。
自分はもじこ塾以外で個別で教わったことはありませんが、苦手科目の中でも自分が得意な部分や苦手な部分を個別だと教えてもらえるし、得意な部分で苦手をカバーする方法も使えるようになりました。
もじこ塾は、凸凹を理解しその活用法を一緒に模索してくれる塾だと思います。

→もじこ塾を完璧に定義してくれてありがとう・・・!
これからも、そういう塾であるよう、頑張ります。


Q:もじこ塾で勉強したり話したりしたなかで、特に印象に残っていることは?
一番はやはり英作です。
受験学年になる前は自由英作文を添削してもらったことがありますし、受験勉強としては和文英訳を添削してもらい、書いた内容が伝わるようになっていくのは、英語の勉強をしてきた中でも一番楽しかった勉強でした。

→時雨くんは単語量は中学レベルですが構文知識は大学受験レベルなので、英語のなかでは英作文が得意でした。
ディスレクシアはスペルミスがすごく多いので(これは撲滅不能と、アメリカでも言っています)、英作文を得意にできたのは、当初予定からは想定外でした。


Q:ディスレクシア的に、大学入試や受験勉強において特に注意するべきことはあるか?
大学入試では多くの勉強法があり紹介されているものを見かけますが、当然他人と同じことをしても受かるとは限りません。
むしろ、自分にあった勉強法を模索することが、どうせ入学1年後には忘れてしまう入試勉強の意味だと思っています。

自分の場合、知識はなぜを大切にすることです。
使える公式は白紙に導出過程を書けるようにするために、思い出せないときはヒントを見ながらでも、証明を裏紙に書くようにしていました。

→英語だけでなく、理系科目の公式などの暗記も苦手としていた時雨くん。
「本当に重要なものだけ覚えて、あとはその場で導出している」と、よく言っていました→


書くことも苦手とするディスレクシアですが、同時に順序を先に考えて行動するタイプの人には、誘導にのらなければならないマークよりも、白紙解答用紙に自分の考えた順序で書く記述式の方が解きやすいかもしれません。
完答する問題は大抵、問題文を読んだ時点で解く過程が想像できた問題ですから、よく言われる「本番では解ける問題から解く」ためには、普段から解答の先読みを意識して問題演習を重ねていくと、限られた時間で最大の点数がだせると思います。

→「マーク式の数学は誘導に乗らないといけないので苦手」は、他の生徒も言っています。


Q:自分がディスレクシアだと知ってどう思ったか? 現在はそのことをどう捉えているか?
自分が周りの同年代の子達と何か違うとは思っていたが、そこに名前がついただけだと思っています。
個性の一つとして認知してもらえれば十分だし、理系としての素質もディスレクシアをもとにしていると思えば、英語ができないのはその"代償"で、もし治せると言われてもディスレクシアのままでいると思います

→(ノД`)゜。
これが負け惜しみでないことは、彼の言う"理系としての素質"を知れば明らかです:

「人は僕を英語ができなくてかわいそうと思うかもしれないけど、僕は物理ができない人をかわいそうと思ってますから。
僕には世の中の現象が物理的に見えるたいていのものの力線が見える。
歩いていても、階段を上っても、首を動かしたり腕を曲げたりしても、解剖学的なことはわからないが、刻々と変化する力の方向が物理現象としてすべてわかる。
ガラスに映っている蛍光灯の反射が感覚として分かるし、海に行けば壁にあたった波を見て自由端反射も分かる」

・・・(゚Д゚)・・・

その一方で、
「自分がコンピューターサイエンスの世界でひとかどの人物になった暁には、世間に向けて"自分はディスレクシアなんだ、英語を読むのに本当に苦労してるんだ"と堂々とカミングアウトしたい」
と、涙を流したこともありました。
(自分語りすると涙が出るのは、過度激動の特徴だと思います。)


Q:合理的配慮について。入試で配慮を受けたか。大学に入って受ける予定か。その理由は?
端的に言えば受けなかったし、今後も受けないと思います。
診断が出ないだろうというのもあるし、テストでは大多数の人と同じように扱われていいと思っているからです。

→実はここまで言い切るまでに、一山ありました。
高認合格後、やはり英語が大変そうなので、配慮入試を検討してもいいかもという話になり、検査を受けに行きました。
でも「それだけ(日本語が)読めるなら、診断は出ないだろう」と検査の段階で言われたのです。

その後、志望大学が配慮入試を行っていないらしいことを、入学試験の部屋割表から推測し、「『この入試問題をこの時間内に解ける人に来てもらいたい』というメッセージなのだ」という結論に至ったのでした。
しかし、結局はセンター試験を別室受験することに成功します。というのも、、

しかし、今回の受験では、センター試験の国語の時間中に口から声が漏れていると注意を受け、気にしながら解いたが、3~4回目の注意の後、別室に移動するよう言われました。その際、移動にかかった時間は補償してくれたし、その後の試験も1人で受けられたので、ラッキーだったと思っています。

→模試のときも、独り言やジェスチャーがものすごく大きいので、一緒に模試を受けていた人から「どこを解いているかわかる」「発熱体」とからかわれるほどでした。
しかし強制連行(本人談)されるとは(笑)。今となっては笑い話ですね。


Q:高認について。
高認から現役で大学に合格するというのはとても険しい道だったと思いますが、それでもその道を選びたいという人に対し、アドバイスをお願いします。

・高認合格まで
自分が高認を楽に合格できたのは、高校受験を高いレベルでこなし、中学校の範囲の勉強は一通り頭に入っていたからだと思います。
高認最大の難しさは、2日間で英語、数学、国語(現代文、古文、漢文)、世界史、日本史or地理、公民、理科(基礎付き3つor「科学と人間生活(旧理科1)」と基礎付き1つ)と多くのテストを一気に受けなければならない点です。
それぞれのテストは、1年半後に大学入試を受けるつもりの人にとって難しいものではありませんが、社会科も理科も3つというのは受験ではありえませんから、しっかりと準備をして臨む必要があります。
高校入試で高得点を狙っていた人なら、現代文、英語、地理、公民、「科学と人間生活」は過去問を数回解けばできますが、そうでなければ学校に通い、授業と毎回範囲の区切られた定期テストを受ける方が楽でしょう。

→ほんとそうですね。時雨くんの経験から、「中堅以下の高校に在籍しているなら、高認よりも高校で単位を取るほうが、高卒の資格は楽に取れる」と私も生徒に言うようになりました。


・高認合格後
予備校では、高認に合格していると既卒用のクラスにも入れるし、年齢通りのクラスにも入れる場合がほとんどです。自分は、予備校の現役クラスに通いました。

図書館で自習している時には、友達と来て休憩中にはお喋りしている人をよく見かけますが、基本一人で勉強することになります。
また自習の時間が、既卒として予備校に通っている人、高校に通っている人よりも多くなるので、それぞれの単元をよりじっくり勉強できますから、突き詰めて勉強する気持ちがあればむしろ勉強自体はしやすいくらいかもしれません。好きな教科ばかりやってしまいがちにはなりますが。

しかし、問題は気持ちの方で、1年間24時間受験勉強のことを考え続けると大変疲れてしまいます。なので、適度な息抜きになる趣味は必要でしょう。
また、大学にいってしたいことがないと、普通は周りの雰囲気に流されて勉強椅子に座ってられても、その「周り」も「雰囲気」もないので、受験勉強そのものから逃げる選択をしたくなったときに戻れなくなるかもしれません。

→時雨くんは、「CPUの開発にたずさわりたい」という非常に明確な目標があるので、受験勉強から逃げたくなったことはないと思います。
それでも、孤独で単調な日々にあって、心身の調子を保つのは、楽ではありませんでした。
そもそも、なぜ高校に行けなくなったのかも、ずっと言語化できないままの受験生活でした。

これについては、この合格体験記を書いてもらった後に5時間(!!)聞き取りをして、ようやく私の中では腑に落ちました。
・・・おそらく、高校受験で燃え尽きたのではないかと思います。

時雨くんのことですから、それはそれは猛烈に英語に取り組んだことは、想像に難くありません。

「中2までは点数も評定も取っていたし、英語は得意科目だと思っていた。
だが中3に入り長文が登場し、内容の類推がきかなくなると、急速に不得意科目になっていった」

「クラスで音読競争をすると、自分よりもテストの点数が低い人達にもぶっちぎりで負けた。教師が、自分が読み終わっていないことに気付かずに授業を終えてしまうほど遅かった」

「"読めない"と訴えても、どの教師も"音読しなさい"としか言わない。でもそのためには、すべての単語を電子辞書に入れて発音させないと読めない。ひとつの段落を読むのにどれだけ時間がかかるのかと」

・・・なぜか他の生徒はどんどん読めるようになるのに、自分はまったく読めない。
そのときの焦りと混乱は、どれほどだったかと思います(T T)。

時雨くんが自身をディスレクシアだと知ったのは、高校に入学した頃です。
もし、もっと早く知っていたら、ひょっとしたら英語の取り組み方も変わっていて、高校入試で燃え尽きず、違う3年間があったかもしれません。

でも、もし高校に行っていたら、コンピュータ・サイエンスの世界で必要な英語を読む力を身に着けることは、おそらく不可能だったことでしょう。

いま振り返ると、よくぞ生きてこの精神的難局をくぐり抜けたと思います。
それくらい過酷な日々でした。

~~~

最後はなかなかカッコいいので、コメントを入れずにお送りします:

Q:もじこ塾に通っている生徒に、激励のことばを。
大学受験はもちろん楽なことではありませんから、その辛さを乗り越えるための自分自身の目標があることが大切だと思います。

その目標にたどり着くために、努力出来るところは努力で、そうできない所は工夫を凝らして乗り越えてください。


Q:もう英語から逃げたいと思わなかったか?

逃げて良いならいつでも逃げます。
単語を覚えるのは苦手だし、せっかくフォニックスを覚えても例外だらけだし、口馴染みのある単語すら書くのが難しいうえに、アクセント問題なんて先生に口に出せていると言われても、どこがアクセントなのか結局いまいち分かりませんでしたし。
が、自分が情報工学を突き詰めたい以上、英語は確実に必要なツールです。
そこを秤にかけたときに、英語から逃げる選択をすることはないと思います。


Q:将来の夢を1行でどうぞ
CPUの性能があがり、加速した先の世界が見てみたいです。

~~~

将来の夢を1行で言えるくらい目標が明確でないと、ディスレクシア的読字訓練に耐えることはできない。・・・時雨くんから学んだことのひとつです。

「『なぜ英語を勉強するのか?』という問いに対し『こういう目標があって、そのために必要だから』と明確に答えられる人だけが、厳しい読字訓練に耐えることができる」

「目標があり、そこにたどりつく途中に英語というハードルがあるなら、腹をくくって英語をやるのみだが、それがないなら、英語をやる必要はないし、たぶん無理だろう」

という話は何度も出ました。

私もこの点には全面的に同意します。
もじこ塾で勉強したい大学受験生には、将来の目標を1行で言えるようにしてほしいです。

~~~

最後に、過度激動の先輩として、この場を借りて一言:
過度激動的には、自分の凹凸を飼い慣らすことが、人生の大きなテーマだと思います。
時雨くんほどの突き抜け方をしている人となると、凹凸を飼い慣らすのは大変なことでしょう。その課題に正面から向き合った数年間だったんですよね。
過度激動は年をとるほど知識、経験、対人関係、激情のバランスがとれてきて、若いころのほうが大変だったと、自分を振り返って思います。
できればその才能は、自分のためだけでなく、他者のため…社会変革に使うことを模索したほうがいいです。それが結局のところ、自分を救うことにつながります。

この先も英語から逃げなければ、時雨くんの読字脳はまだ進化を続けることでしょう。
コンピュータ・サイエンティストとなった時雨くんが感動的なカミングアウトをする日が、今から楽しみです^^

その時にもじこ塾を、時雨くんの母校(?!)として言及してもらえるよう、私は引き続きこの塾を育てていきます。