ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2019-01-02

2018年を振り返って

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


もじこ塾は、南新宿に教室を構えてから、もうすぐ満二年を迎えます。
もじこともじこ塾の2018年を振り返ります:

◆1月
センター試験。
生徒のうち数人が、合理的配慮を受けて受験に臨みました。
合格体験記は大きな反響を呼びました。合格体験記を書いてくれた生徒たち    は、いまやもじこ塾に助言をくれたり、さらには助手となって活躍しています。

◆4月
授業日誌のブログを開設→
助手がたくさん書いてくれています。いつもありがとう~

改めてまとめて読み返すと、日々ディスレクシア的な気づきがあり、なかなか読み応えがあるじゃありませんか(自画自賛)。
もじこ以外の書き手はもちろん、登場人物はほぼ全員ディスレクシアです。こんな場はなかなかないですよね、みんなパイオニアです。

反響が特に大きかった記事:
  (アクセス数1位。朝日新聞の記者さんにお渡ししたメモです)
  (アクセス数3位。教師の目の前で音読訓練をする必要性について)
  (アクセス数5位。助手2名が、自分の中学時代のバトルについて書いてくれました)
  (答案をパソコンで入力する合理的配慮、合理的配慮のオペレーションの大変さ)


◆6月
16日、朝日新聞東京版に、もじこ塾が紹介されました→

記者さんは、とても誠実な若い方で、限られた紙面のなかで、こちらの言いたいことを最大限汲んでくださいました。

実は、掲載直後の反応は、身構えていたほどは全然ありませんでした。
新聞の反響はむしろ、じわじわと細く長く続くようです。ネット上に記事が残ることと関係があるかもしれません。
ディスレクシアを知らない知り合いから「新聞記事見ましたよ」と言われることが今も続いていて、改めて新聞のもつ拡散力とはどういうものかを知りました。
新聞は、ディスレクシアを知らない人に、まずはそういう人がいることを知ってもらうという「啓発」の部分では、非常に大きな力を持っているようです。

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また、この前日となる6月15日、アメリカのディスレクシア教育界のレジェンド、ダイアナ・ハンバリー・キング女史が永眠されました。
一昨年のIDAでは、ディスレクシア教育ひとすじ60年の経験が語られ、会場は感動の嵐でした。会場全員で90歳のハッピー・バースデーを歌いましたが、その半年後の訃報となりました。

もじこ塾で使っている筆記体練習本も、女史の手によるものです。
「Thank you so much!! My students love this book too (この本は日本のディスレクシアの生徒にも効果絶大です!)」と直接伝えたかった・・・



決して忘れないこと……目の前の生徒は、これまで失敗と失望のくり返しだったことを。“本気を出してない” “頭が悪い” “ケアレス”と言われたり、教師からバカにされたり、叱られたり、クラスでいじめにあったり…
あるいは,親切で理解があり,善意で接してくれる教師でも,読めるようにする方法は知らなかったかもしれない。
なのでその生徒は、「読めないのは自分が悪い」と思ってきた。
不思議なのは,それでもその生徒が,読みたい気持ちを失っていないこと,そして,あなたを信頼して「教えてほしい」と思っていること。
生徒には敬意をもって接しなさい。 
できるだけ早く、でも必要なだけ時間をかけて。
正しくやれば、ひとの人生を変えるという、栄誉が与えられます。
(Never Too Late! より翻訳)

「正しくやれば生徒の人生が変わる」、ディスレクシア教育はそのくらいインパクトがある・・・という言葉は、私の座右の銘になりました(T T)
と同時に、「正しくやる」とはどういうことか・・・試行錯誤中です。


◆9月
夏に書いた英作文の問題集が、発刊されました→
学校採用(高校を通じてしか買えない)、一般の書店では売っていません。

実はこの1年で4冊、このような問題集を書きました。
1年半くらい本当に1日も休みがなかったので、今頃になって少し疲れが出ています…
いろんなことが後手に回り、連絡が滞ったこと、申し訳ありません。

今年は各方面に失礼がないよう、連絡や返信をきちんとして、締切を守りたいです。


◆10月
1日、東京都で、合理的配慮を義務化する条例が制定されました→
つまり私立学校も、合理的配慮が義務になったのです。

もじこ塾には、合理的配慮を受けてこれから一般入試に臨む大学受験生がいます。
数年前と比べれば私立大学の対応はずいぶん親切になりました。ありがたいことです。
合理的配慮を申請しながら入試に挑む生徒たちは、本当にこの業界のパイオニアで、尊敬に値します。

もじこ塾にも合理的配慮のノウハウがかなり蓄積してきました。
合否がからむ問題のため、リアルタイムで紹介するのが難しいのですが、今の時点では・・・

「合理的配慮は実のところ、受験者本人の人格と、親の度量が問われている」
「"法律で義務化されたのだから、うちの子に[私に]合理的配慮を!!"と迫る戦闘員のようなスタイルは、まず成功しない」

・・・くらいのことは言えます。

欧米で生まれた「配慮」という概念を、社会的背景がまったく違う日本に導入することの難しさについて、普通の人でももっとわかるように議論を整理する必要があります。そんなことにも今年は挑戦してみたいです。


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10月末には、アメリカのディスレクシア学会、IDAに今年も行ってきました!
今年の最大の収穫は、音韻認識を教える教材に出会ったこと。
「ハリボーチャレンジ」と呼んで、日々試行錯誤中。すでにIDAから持ち帰った形から、だいぶ進化しました。
この教材を完成させたいです。そうすれば、ディスレクシア的困難がだいぶ克服できるはず・・・







ハリボーチャレンジについて詳しくは:

181031 新宿水曜②クラス(ハリボーチャレンジその1)
助手のピノコが、音韻・音節・抑揚について書いてくれました。

181106 りちょぱさん(ハリボーチャレンジの感想)
圧倒的に視覚優位のりちょぱさんが、ハリボーチャレンジの難しさについて書いてくれました。

181124 番外編:定型の高3にハリボーチャレンジ
もじこが出講する予備校で、ディスレクシアでない生徒にハリボーチャレンジを行ったときの様子です。

ハリボーチャレンジの方法を、勉強会で実演します。
ご興味のある方はぜひお越し下さい
中1ショック対策、保護者向け講習会


◆11月
もじこ塾の卒業生が、ふたたび朝日新聞の取材に応じました→
大学入試センターは受験者にヒアリングを行ってほしい、後に続く受験生たちによりよい合理的配慮を提供するために…というのは、合理的配慮を受けた生徒たち共通の願いです。


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もじこ塾はいま、高校受験と大学受験の直前期です。ラストスパート頑張りましょう!

2020年の学習指導要領改定によって、小学校で英語が必修化されると、このブログにも「英語 スペル 覚えられない」などで検索してくる人が大量発生すると予想されます。
予言しておきます・・・小学校で英語が必修化されたら、従来の方法ではまったく英語が覚えられない層が1~2割は出てくるはず。無用な苦しみを生徒に与えないよう、啓発が必要です。
小学校英語は(中学校も)、チャンツやハイテンションな会話だけでなく、フォニックス、音韻認識、純粋書字練習も必要です。

そして、いずれは中学受験にも英語が入ってくることでしょう。
中学受験界は学校よりも締め付けがはるかに厳しいので、子供がスペルを全く覚えられないことを悲観した親が、思いつめて傷害事件などを起こさないか、本当に心配です・・・
ディスレクシアには違うアプローチが必要なんだということを、中学受験界に一刻も早く伝えていかなくてはいけません。(これはもじこの範囲外なので、誰かやって下さい~)

また、大学入試も大きく変わろうとしています。
センター試験の英語廃止(それでいま英検がブームです)も大きな変更点となるでしょうが、それ以上に23区私大定員厳格化、それに伴う推薦入試比率の増加が明らかです。
大学受験業界は小学校以上に、動きが読めません。

そんなわけで、今年は嵐の前の静けさのような一年になりそうです。
今年は少し、ディスレクシア的発信に挑戦してみたいと思っています。
しかしながら、もじこ塾には生徒がいますので、まずは何よりも、生徒とともに進化していきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。