on dyslexia

ディスレクシアとは:

- 知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
-独創的で、対人能力が高い。
全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い場合が多い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説
- 家族性であり、遺伝による。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。

2017年、当ブログで分かったことをもとに、東京・新宿にディスレクシア英語塾「もじこ塾」を開設。以来、このブログももじこ塾の話題が中心になっています。

2019-07-17

「ディスレクシアが得意なこと」もじこ塾ver.

当ブログを作ったのは,「ディスレクシアの利点」という記事を読んで訳したくなったのがきっかけでした。
以来,この記事は私にとって,生徒を判断する基準になってきたのですが,どうやら当の生徒たちがディスレクシアの長所を知らないようなので,もじこ塾バージョンを作ってみました。
pdf版

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もじこ塾で見ていると,「狭い意味でのディスレクシア」と「広い意味でのディスレクシア」がいることに気づきます。
ADHDやASD由来でも,あるいは原因不明の他の発達特性によっても,読み書き困難は表れるようです。この人たちはもじこ塾的には,「広い意味でのディスレクシア」です。

一方,以下に示すような特質と,読み書き困難をあわせもつ生徒もいます。
こだわりはなく,多動も(ほとんど)なく,人当たりがよく,空気は抜群に読め,ルールの隙を突きたがり,そして字が苦手な一派です。
もじこ塾ではこうした生徒を狭い意味でのディスレクシア,つまり「純粋ディスレクシア」と呼んでいます。
もじこ塾は,純粋ディスレクシアのための塾であろうとしています。

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pdf版

ディスレクシアは自由と創意工夫を好み、場の空気が読める、戦略思考の強い人たち。
読み書きの苦労は特性の一面にすぎません。
得意な能力は、大きく分けて 4 つあります。


1.空間把握能力 
立体をリアルに想像し、頭のなかで操作する力。
◆表れ方 
・立体をリアルに想像し、頭のなかで自由自在に操作できる。
・レゴ、工作、プラモデルなどが好き 
◆この能力が裏目に出ると 
・文字が反転する(bとdなど) 
・ことばで表現するのが苦手 
◆適職 建築家、エンジニア、アート系 
もじこ塾での表れ方・・・立体図形を頭のなかで回すことも止めることもできる。少しの情報で位置関係がわかる。数学、物理、美術、ものづくり、絵や写真が得意。視野が広い。左右盲。文字情報を、書いてある順に処理するのが苦手。 
「ディスレクシアは絵で考える」。空間把握能力はディスレクシアの最大の特徴とよく言われ、理系科目や美術系が得意という形で現れます。一方、文字が反転するという形でも現れます。


2. 俯瞰 (ふかん)能力
大きな視点で物事をとらえ、全体像をつかむ力。
◆表れ方
・断片的な情報から、全体像を思い描く
・人が気付かない関係性を見抜く
・複数の視点から物事を眺める
・一つの専門におさまらず、複数分野にまたがって活躍する。普通とは異なる経歴
・つっかえながら読むが、内容理解は深い
◆この能力が裏目に出ると
・速さ正確さが求められるテストが苦手
・設問を深読みしすぎて意味を勘違いする
・順序立てて論じるのが苦手
◆適職 科学者、デザイナー、企画関係など
もじこ塾での表れ方・・・読めさえすれば内容はよくわかる。周りをよく見ており、空気を読んで行動する。話が飛躍する、時系列に沿わない。大局観がある。相手の立場に立てる(優しい、優柔不断)。単語の真ん中がもやもやする。
「ディスレクシアは全体像が見える」。この能力は、時空を超える壮大なスケールの洞察力として現れます。一方、細部(スペルなど)に注意が行きにくいようです。


3.物語理解能力
物事をストーリーとして理解し表現する力。

◆表れ方
・ストーリーとして、物事を理解し記憶する
・エピソード記憶が意味記憶より強い。抽象化せずに具体的なストーリーのまま理解する
・具体例やたとえ話を使った説明を好む
・少しの刺激で、記憶がリアルによみがえる
・固有名詞は覚えないが、昔の事をよく覚えている
◆この能力が裏目に出ると
・事実の丸暗記や抽象化が苦手
・問われたこと以外も答えてしまう
◆適職  作家、法律家、教師、営業関係
もじこ塾での表れ方・・・物語を使って暗記し、思い出す。できごとや雑学を生き生きと印象的に語る。登場人物の感情を想像できる。経験や体感を通じて学習する。短文は覚えられるが、単語を覚えるのは苦手。
※ディスレクシアはストーリーで物事を理解します。このため、ディスレクシアだと本人に初めて伝えるときには、適切な希望を持てるよう,苦手だけでなく得意についてのストーリーも示すべきです。



4. シミュレーション能力
変化する状況のなかで、的確に予測を立てる力。

◆表れ方
・規則性を見抜き、それをもとに予測する
・気ままな空想ではなく、正確な予測を目指す
・まず結論に至り、そこから逆算して考える
◆この能力が裏目に出ると
・スピードや効率は落ちる
・結論が見えるまで動き出せない
・端から見るとぼうっとしているため、学校ではこの能力を発揮しにくい
◆適職 エコノミスト、起業家
もじこ塾での表れ方・・・戦略思考:ルールの"きわ"を狙いたがる、ルールの隙を突きたがる。直観的。気が利く。物語の展開や結末を的確に予想できる。目標が決まると意志の強さ、行動力、粘り強さを発揮する。
「ディスレクシアはモチベーションで動く」。 やりたいことが決まれば、どんどん動ける人たちです。そのためには、ひとりで自由に考える時間をもつこと、自分の道は自分で決めること、そして自分の直観的判断を信じることが、何より大事です。



pdf版

6 件のコメント:

  1. 先日お世話になった◎の父です。
    この一覧は本当に素晴らしいです。
    自分が何となくやっていたことの理由がすごくよく分かりました。
    無いものだとと思っていた説明書がある日突然引き出しの奥から出てきたみたいな気分です。

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    1. ありがとうございます。お名前が入っていたので加工させていただきました。
      こちらこそ,お父様のお話しを伺い,苦労も本当に多かったと思いますが,ディスレクシアの能力を生かして現在お仕事をされていることに大変感銘を受けました。上の比喩もとてもディスレクシア的です!

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  2. 2013年の論文の要約ですが、やっぱりフォニックスは有効なのですね。そして最後の文で脳は変化するとも!


    Developmental dyslexia (DD) is a specific and persistent disability affecting the acquisition of written language. Prevalence is estimated to be between 5% and 17% of school-aged children; it therefore represents a major public health issue. Neurological in origin, its causes are unknown, although there is a clear genetic component. Diagnosis rests upon the use of standardized tests and tools to assess reading and spelling, as well as phonological skills. The importance of early diagnosis cannot be overemphasized and much current research is focusing on screening and prediction, particularly through use of objective imaging techniques (e.g., EEG/MEG), which have implicated cortical abnormalities in central auditory processing (Giraud et al., 2005, 2008). Remediation should be intensive, begin as early as possible, and be tailored to the individual. Phonics based treatments are most effective and several variants, incorporating temporal auditory, articulatory, or multisensory training exercises, have been developed or proposed. Clinical improvements in phonological skills and reading with such treatments have been shown to correlate with changes in the brains of dyslexic children in several functional imaging studies.

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    1. ありがとう,訳してみました。翻訳するのは久しぶりです:

      発達性ディスレクシアは書き言葉の獲得に影響を及ぼす,特異的かつ執拗な?障害である。発生率は推定で学齢期の子供の5~17%とされ,公衆衛生の主要課題のひとつと言える。発達性ディスレクシアの根本原因は神経学に属するものであり,その契機は不明であるものの,遺伝的要素が明らかに存在する。診断は標準化された検査ツールを用いた読み書き(スペル)のアセスメントによって行う。早期診断の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。現在の研究はスクリーニングと予測,とりわけ客観的な画像技術(例:EEG/MEG)に注目が集まっている。これらから大脳皮質における聴覚情報処理の異常(Giraud et al., 2005, 2008)が示唆される。レメディエーション(治療的な教育的介入)を集中的に,できる限り早期に開始し,個人にあわせた形で導入する必要がある。フォニックスをベースとした措置はきわめて効果的であり,temporal auditory(聴覚のうち特に時間的なもの),文節,多感覚に基づくトレーニング的練習が開発・提案されている。「音声学的スキルが向上する」「措置を受けながら読む」は,ディスレクシアの子供の脳の変化と関連していることが,fMRI等を用いた研究によって明らかにされている。

      10日後からIDAに行ってきます!いろいろ仕入れてきます,みずさんも元気でお過ごし下さいね。

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  3. こんにちはアーレン症候群で検索していて、こちらのブログにゆきあたりました。芦屋で芦屋こころとからだのクリニックを開業しております。春田と申します。私自身が文字が浮き上がって見えるタイプのアーレン症候群で相当勉学に苦労してきたのですが、ここに記されている特徴は自分そのもので大変興味深いと思いました。現在私は色彩応用医学というものを創設し統合医療をおこなっておりますが、この理論を構築できたのもここに書かれている利点のおかげだと思います。診療で不登校の児童など沢山診ています。また情報交換などさせていただけましたらと思いコメントさせていただきました。

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    1. アクセスありがとうございます。貴院HP、興味深く拝見いたしました。色彩応用医学は人が気付かない関連性に気付いた結果なのですね。
      ディスレクシアと色彩感覚は、それこそエビデンスはないのでしょうが、いろいろ関係はありそうです。まず、文字や数字に色がついて見えると話す共感覚の生徒が一定数います。また、もじこ塾でもアーレンレンズや光過敏の生徒は一定数います。そういった生徒ほど色彩感覚が鋭かったり、絵や映像表現に関心があったりします。字を読むのが苦しくなるほど視覚や色彩感覚が過敏なのでしょうか・・・
      こちらこそ、今後とも情報交換できれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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