ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2016-01-16

学校に合理的配慮をお願いするための資料[案]

子の中学に合理的配慮をお願いしてきました!
いや~授業よりも緊張しました~(笑)。
でも、原稿を作り、練習して臨んだかいあって、
ディスレクシアとは何かを、まずまずきちんと説明できた気がします。
私も、衝動にまかせて発言し撃沈していた頃(→ADHD)より成長しました(笑)

どなたかの参考になるかもと思い、以下の内容のパワポを置いておきます

(firestorageのリンクが開きます)

(google driveのリンクが開きます)


同じ内容を、ブログの本文にも貼ってあります。

◆内容は以下の3部構成です:
・ディスレクシアとは何か(このブログの上に書いてある内容を改変)
・合理的配慮に関する法律の条文(コピペ)
・アメリカでの合理的配慮の例(NASAの教材の翻訳)

どうぞ自由に改変してお使い下さい。たたき台になると思います。
ただし、当ブログともじこは、使用に伴う責任は負いません。

法律の部分は、逐一読み上げる必要はないと思います。
こういうものを根拠にしているぞというハッタリになろうかと。

◆このほか、WISCの結果と、
子のこれまでの経緯と現状を原稿にして持っていきました。

◆具体的なお願い内容は、合理的配慮の精神に照らすと
「特性を踏まえた上で、これから少しずつ先生方と本人で相談して、
互いに一番良い方法を探っていけるとありがたいです。
家庭でもできる限りサポートします」
と言うにとどまるような気がします。
具体的に何をしてほしいとは、ほとんど言っていません。

◆言って響いた気がした言葉は以下の通りです。
ブログに来る方から教えてもらったことがほんとに多いです。
ありがとうございます!!

(1)ディスレクシアは、まだまだ日本では知られていません。
(「先生方が知らないのは当たり前ですよ~」という雰囲気を作る)

(2)アメリカの話で、起業家の3人に1人はディスレクシアですが、
一方、読み書きできない囚人の40%がディスレクシアとの統計もあるそうです。
昨今の、テロ組織に入ってしまう先進国の若者にも、
ディスレクシアゆえに学校で疎外感を感じて…というケースがあると思います。
(起業家と犯罪者をセットで示す)

(3)私の育児の目標は、うちの子を納税者にすることです。

(4)合理的配慮というのは、分かりやすい訳語ではないですが、
要は、合理的とは「先生方や学校側にとって、無理のない範囲」という意味です。

(5)こんな自由な私立で合理的配慮などという言葉を出すのは、
大学入試で合理的配慮が受けられる可能性があるからです。
特にこの子たちが入試を迎える2020年には、センター試験も大きく変わります。
(合理的配慮=子がまっとうな進路に進める可能性アップ
=学校にとってもwin-win、とアピール)

◆パワポの内容:


ディスレクシアとは、知的には問題なく、学習の機会が与えられているにもかかわらず、読み書き能力だけが低いことを言います。「読み書きのLD(学習障害)」です。
欧米では人口の10%がそうだというのが通説です。
数年前に、文科相が小中学校の先生に対し「あなたのクラスには学習障害の子はいますか」と問う形で行った調査では、日本の小中学生の6.5%が学習障害という結果が出ました。
しかし、英語が始まる中学になるまで分からないケースもあるため、実際にはもっと多いと言われています。
40人学級なら、クラスに4人が学習障害ということになります。

人口の10人に1人がディスレクシアで、起業家の3人に1人がディスレクシアと、アメリカではよく言われます。
20世紀の主な発明はほぼすべて、ディスレクシアの人によるものと言っても過言ではありません。
その一方で、アメリカでは犯罪者に読み書きできない人が多く、その4割がディスレクシアという統計もあるそうです。
最近の欧米のテロにおいても、ホームグロウンテロリスト(移民の子がテロリストになること)は読み書き能力が低いことが明らかになっています。
学校で疎外された経験から、社会や国に敵意を抱くようになるのは、想像にかたくありません。
こうした人たちのなかにも、ディスレクシアは少なくないはずです。
そこで欧米では、国の安全保障のためにも、ディスレクシアにも読み書きを教える取り組みが進んでいます。

文科省が発表した、合理的配慮に関する指針です。
出典:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1364725.htm
合理的配慮は、来年度から施行される「障害者差別解消法」で提唱される概念です。
これは、国連の障害者権利条約にあわせて制定されたもので、学校における合理的配慮の不提供の禁止が、公立学校では法的義務、私立学校では努力目標になるそうです。

合理的配慮は、「必ずこれをしなければならない」というものはなく、個別的かつ柔軟に、また学校側にとって無理のない範囲で行うものだと書かれています。

全文は→
合理的配慮の具体例です。
これらはあくまで例であり、必ずこれをしなければならないということではないようです。
ただし、これに類する配慮を、本人と先生方との話し合いのうえ、お願いできればと思います。
上にあるように、入試でも合理的配慮が求められるようになります。



これからは、入試でも合理的配慮が求められるようになります。センター試験ではすでに、配慮申請をすれば試験時間の1.3倍の延長や別室受験が認められます。
こうした配慮を大学入試で申請する場合に備え、在学中に合理的配慮を受けてきたという実績をぜひとも頂きたいのです。


合理的配慮の例として、アメリカのNASAが作っている教材の例を示します。
NASAでは中学理科の教材を作っており、その中でディスレクシアへの配慮として、上のようなことを行っているそうです。
状況は異なりますが、日本の学校でできる配慮の例として、参考にできる部分があるかと思います。





どうぞご自由に改変してお使い下さい。


繰り返しになりますが、当ブログともじこは、使用に伴う責任は負いません。
成功を祈ります!

2016-01-02

2015年に書いたアクセスの多かった記事+その後

あけましておめでとうございます。
昨年も当ブログに多くの方にお越し頂き、ありがとうございました。
こんなつたない場所でもそれなりに色々ありましたが、
ここに来て下さる方と建設的な議論ができたことが、とてもありがたいです。

昨年は結局のところ、記事が大幅に減ってしまいました。
何をどう書くのが良いのか、ちょっと迷いの時期に入っているかもしれません。
コメントにお返しする文章力すら時々欠けておりまして…どうかお見逃しを。

リアルでのディスレクシア活動は、さらに盛んに行っています。
今年もいくつかのディスレクシア的プロジェクトを予定しています。
数年越しのものもあり、今年こそは形にしたいです。

何より今年は新年度から、LDの生徒をめぐる法律が大きく変わります。
合理的配慮を学校に訴えていくことが、親的には大きなテーマになりそうです。

今年も当ブログがディスレクシアの有意義な話ができる場になったら嬉しいです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


昨年書いた記事でアクセス数が多かったもの、Top 3と番外です。

第1位
村上春樹、LDを告白!
昨年書いた記事で一番アクセス数が多いのはこれでした。意外や意外。
村上春樹がノーベル賞受賞スピーチで「僕はディスレクシアです」と告白し、
全世界(日本の学校教師含む)にディスレクシアの認知が一気に進む
・・・のが私の夢です(笑)

第2位
プログレスでディスレクシアに英語を教える(1)プログレスのディスレクシア的長所
ミッション系進学校を中心に使われている「プログレス」という教科書は
音声が充実しているので、ディスレクシアに向いている、という内容。

子はその後もゆっくりですが、プログレスで英語の勉強を続けています。
いずれもじこ塾を開業したときは、プログレスで教えたいです(笑)

第3位
LD学会にて:道村式漢字カードの長所、ジョリーの浸透度
記事よりもコメントがすごいことになりました。
(当ブログの昨年の傾向でしたが。ありがとうございます)

そのなかで、私が立てたディスレクシアの仮説:

●ディスレクシアは、音と文字の結びつきに問題を抱えている。
 この点は全ディスレクシアに共通である。

●ディスレクシアは、読むのは「視読
(文字を音に変換せず、文字から直接意味を想起する読み方)
聞くのは「言語の相対音感
(「あ」という単独の音を聞いて「あ」と特定できない[言語の絶対音感がない]
他の音とのコントラストによってことばの音を把握している)
を優先的に用いている。

●ディスレクシアは次の2つのタイプに分けることができる。
1)漢字に問題のないディスレクシア。
このタイプは、相対音感把握力よりも視読力に多く頼っている
(これには、視読力がぶっちぎりに高い場合から、
相対音感力よりもましという程度までが含まれるでしょう)

2)漢字から問題が出るディスレクシア。
このタイプは、視読力よりも相対音感把握力に多く頼っている
(これには、相対音感力が圧倒的に高い場合から、
視読力よりもましという程度までが含まれるでしょう)

●1)のうち、視読力がぶっちぎりに高い人は、隠れディスレクシアになる。

●視読力、相対音感把握力の絶対的な高さ低さと、
両者の「頼りがい」の差によって、ディスレクシアの出方が異なる。

けっこういい線行っている気がするのですが、どうでしょう・・・。
今年はこの説をさらに検証していきたいです。

番外
ディスレクシアは英語構文・文法よりも英単語が苦手らしい
2014年9月の記事なのですが、
2015年に入って「ディスレクシア 英単語」で検索すると上位に出るようになり
アクセス数が増えた記事です。

この記事の主人公、浪人生コスモ君の個別指導の軌跡はこちら→

ディスレクシアにとって英単語は、本当に覚えにくいようです。
ディスレクシア的には、単語は言葉の単位として少々小さすぎる
ディスレクシア的には単語は文脈から取り出すことで意味を特定できることも、
コスモ君合格後に改めて知りました。
単語だけ見せて意味を問うような確認テストは、課してはいけなかったのです。
反省。

コスモ君は大学でオーケストラに入り、毎日楽しくやっているようです。
大学には発達支援室があり、定期的に相談に行き、
授業ではサポートを受けているようです。
中学でも高校でも受けられなかったものをついに・・・

先日、彼が楽器を演奏するところを初めて見ることができました。
その様子は水を得た魚というか、野原に放たれた犬と言いますか(笑)
ひょうひょうとしているのは同じですが、自由で生き生きとしていて、
読み書きする姿とは、非常~に大きなギャップがありました。

「1年前の、よれよれになりながら過去問を読んでいた彼に
『大丈夫、第一志望は…だけど、ちゃんと良いようになるから』
と教えてあげたい」と思うと、音楽とあいまって感無量でした(ノД`)
打ち込めるものがあるディスレクシアは強い、
それに好きなように取り組める環境を用意する(たどりつく)のが大事だと
改めて感じた夜でした。