on dyslexia

ディスレクシアとは:

- 知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
-独創的で、対人能力が高い。
全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い場合が多い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説
- 家族性であり、遺伝による。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。

2017年、当ブログで分かったことをもとに、東京・新宿にディスレクシア英語塾「もじこ塾」を開設。以来、このブログももじこ塾の話題が中心になっています。

2019-01-02

2018年を振り返って

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


もじこ塾は、南新宿に教室を構えてから、もうすぐ満二年を迎えます。
もじこともじこ塾の2018年を振り返ります:

◆1月
センター試験。
生徒のうち数人が、合理的配慮を受けて受験に臨みました。
合格体験記は大きな反響を呼びました。合格体験記を書いてくれた生徒たち    は、いまやもじこ塾に助言をくれたり、さらには助手となって活躍しています。

◆4月
授業日誌のブログを開設→
助手がたくさん書いてくれています。いつもありがとう~

改めてまとめて読み返すと、日々ディスレクシア的な気づきがあり、なかなか読み応えがあるじゃありませんか(自画自賛)。
もじこ以外の書き手はもちろん、登場人物はほぼ全員ディスレクシアです。こんな場はなかなかないですよね、みんなパイオニアです。

反響が特に大きかった記事:
  (アクセス数1位。朝日新聞の記者さんにお渡ししたメモです)
  (アクセス数3位。教師の目の前で音読訓練をする必要性について)
  (アクセス数5位。助手2名が、自分の中学時代のバトルについて書いてくれました)
  (答案をパソコンで入力する合理的配慮、合理的配慮のオペレーションの大変さ)


◆6月
16日、朝日新聞東京版に、もじこ塾が紹介されました→

記者さんは、とても誠実な若い方で、限られた紙面のなかで、こちらの言いたいことを最大限汲んでくださいました。

実は、掲載直後の反応は、身構えていたほどは全然ありませんでした。
新聞の反響はむしろ、じわじわと細く長く続くようです。ネット上に記事が残ることと関係があるかもしれません。
ディスレクシアを知らない知り合いから「新聞記事見ましたよ」と言われることが今も続いていて、改めて新聞のもつ拡散力とはどういうものかを知りました。
新聞は、ディスレクシアを知らない人に、まずはそういう人がいることを知ってもらうという「啓発」の部分では、非常に大きな力を持っているようです。

~~~

また、この前日となる6月15日、アメリカのディスレクシア教育界のレジェンド、ダイアナ・ハンバリー・キング女史が永眠されました。
一昨年のIDAでは、ディスレクシア教育ひとすじ60年の経験が語られ、会場は感動の嵐でした。会場全員で90歳のハッピー・バースデーを歌いましたが、その半年後の訃報となりました。

もじこ塾で使っている筆記体練習本も、女史の手によるものです。
「Thank you so much!! My students love this book too (この本は日本のディスレクシアの生徒にも効果絶大です!)」と直接伝えたかった・・・



決して忘れないこと……目の前の生徒は、これまで失敗と失望のくり返しだったことを。“本気を出してない” “頭が悪い” “ケアレス”と言われたり、教師からバカにされたり、叱られたり、クラスでいじめにあったり…
あるいは,親切で理解があり,善意で接してくれる教師でも,読めるようにする方法は知らなかったかもしれない。
なのでその生徒は、「読めないのは自分が悪い」と思ってきた。
不思議なのは,それでもその生徒が,読みたい気持ちを失っていないこと,そして,あなたを信頼して「教えてほしい」と思っていること。
生徒には敬意をもって接しなさい。 
できるだけ早く、でも必要なだけ時間をかけて。
正しくやれば、ひとの人生を変えるという、栄誉が与えられます。
(Never Too Late! より翻訳)

「正しくやれば生徒の人生が変わる」、ディスレクシア教育はそのくらいインパクトがある・・・という言葉は、私の座右の銘になりました(T T)
と同時に、「正しくやる」とはどういうことか・・・試行錯誤中です。


◆9月
夏に書いた英作文の問題集が、発刊されました→
学校採用(高校を通じてしか買えない)、一般の書店では売っていません。

実はこの1年で4冊、このような問題集を書きました。
1年半くらい本当に1日も休みがなかったので、今頃になって少し疲れが出ています…
いろんなことが後手に回り、連絡が滞ったこと、申し訳ありません。

今年は各方面に失礼がないよう、連絡や返信をきちんとして、締切を守りたいです。


◆10月
1日、東京都で、合理的配慮を義務化する条例が制定されました→
つまり私立学校も、合理的配慮が義務になったのです。

もじこ塾には、合理的配慮を受けてこれから一般入試に臨む大学受験生がいます。
数年前と比べれば私立大学の対応はずいぶん親切になりました。ありがたいことです。
合理的配慮を申請しながら入試に挑む生徒たちは、本当にこの業界のパイオニアで、尊敬に値します。

もじこ塾にも合理的配慮のノウハウがかなり蓄積してきました。
合否がからむ問題のため、リアルタイムで紹介するのが難しいのですが、今の時点では・・・

「合理的配慮は実のところ、受験者本人の人格と、親の度量が問われている」
「"法律で義務化されたのだから、うちの子に[私に]合理的配慮を!!"と迫る戦闘員のようなスタイルは、まず成功しない」

・・・くらいのことは言えます。

欧米で生まれた「配慮」という概念を、社会的背景がまったく違う日本に導入することの難しさについて、普通の人でももっとわかるように議論を整理する必要があります。そんなことにも今年は挑戦してみたいです。


~~~

10月末には、アメリカのディスレクシア学会、IDAに今年も行ってきました!
今年の最大の収穫は、音韻認識を教える教材に出会ったこと。
「ハリボーチャレンジ」と呼んで、日々試行錯誤中。すでにIDAから持ち帰った形から、だいぶ進化しました。
この教材を完成させたいです。そうすれば、ディスレクシア的困難がだいぶ克服できるはず・・・







ハリボーチャレンジについて詳しくは:

181031 新宿水曜②クラス(ハリボーチャレンジその1)
助手のピノコが、音韻・音節・抑揚について書いてくれました。

181106 りちょぱさん(ハリボーチャレンジの感想)
圧倒的に視覚優位のりちょぱさんが、ハリボーチャレンジの難しさについて書いてくれました。

181124 番外編:定型の高3にハリボーチャレンジ
もじこが出講する予備校で、ディスレクシアでない生徒にハリボーチャレンジを行ったときの様子です。

ハリボーチャレンジの方法を、勉強会で実演します。
ご興味のある方はぜひお越し下さい
中1ショック対策、保護者向け講習会


◆11月
もじこ塾の卒業生が、ふたたび朝日新聞の取材に応じました→
大学入試センターは受験者にヒアリングを行ってほしい、後に続く受験生たちによりよい合理的配慮を提供するために…というのは、合理的配慮を受けた生徒たち共通の願いです。


~~~
もじこ塾はいま、高校受験と大学受験の直前期です。ラストスパート頑張りましょう!

2020年の学習指導要領改定によって、小学校で英語が必修化されると、このブログにも「英語 スペル 覚えられない」などで検索してくる人が大量発生すると予想されます。
予言しておきます・・・小学校で英語が必修化されたら、従来の方法ではまったく英語が覚えられない層が1~2割は出てくるはず。無用な苦しみを生徒に与えないよう、啓発が必要です。
小学校英語は(中学校も)、チャンツやハイテンションな会話だけでなく、フォニックス、音韻認識、純粋書字練習も必要です。

そして、いずれは中学受験にも英語が入ってくることでしょう。
中学受験界は学校よりも締め付けがはるかに厳しいので、子供がスペルを全く覚えられないことを悲観した親が、思いつめて傷害事件などを起こさないか、本当に心配です・・・
ディスレクシアには違うアプローチが必要なんだということを、中学受験界に一刻も早く伝えていかなくてはいけません。(これはもじこの範囲外なので、誰かやって下さい~)

また、大学入試も大きく変わろうとしています。
センター試験の英語廃止(それでいま英検がブームです)も大きな変更点となるでしょうが、それ以上に23区私大定員厳格化、それに伴う推薦入試比率の増加が明らかです。
大学受験業界は小学校以上に、動きが読めません。

そんなわけで、今年は嵐の前の静けさのような一年になりそうです。
今年は少し、ディスレクシア的発信に挑戦してみたいと思っています。
しかしながら、もじこ塾には生徒がいますので、まずは何よりも、生徒とともに進化していきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2018-12-05

IDA日記その3:「ディスレクシアは、社会全体を良くする価値観を体現すべき」


「ディスレクシアはマイノリティとして、社会全体を良くする価値観を体現すべき」

アメリカでは、囚人の7080%functionally illiterate(機能的に識字能力を持たない:ディスレクシアだけでなく、移民などの理由で読めない)とのこと。特に黒人でディスレクシアで、教育に救ってもらえないと、ドラッグや銃に手を出す確率が格段に高まるようです。
刑務所生活の末、40歳近くになってから?読み書きを学び、現在は「囚人コーチング」をしているという黒人男性の発表は、予想通り感動的でした。

~~

「小さい頃から兄弟のなかで自分だけ字が読めず、学校の授業についていけず、親からはバカだと言われ続けたので、自分はバカだとずっと信じてきた。

12歳の時、クラスで指名されて読めず、それが好きな女の子の前だったという屈辱的な経験をしたのをきっかけに、ドラッグの売人の道へ。

17で出所するも、読めないことは変わらないので、結局は自分の知っている唯一の世界である売人に戻ってしまった」

12歳で売人ですか。。。( ゚д゚)
でもそれ以外は,「読めなくても、書けなくても、勉強したい」と同じです。


講演語録
・「Reading saved my life. It feels good to decode
(読めることで人生を救われた。デコーディングするのはいい気分)
デコーディングするとは、文字をオトにすること、要は読むこと。
IDAに来ると、読字能力は貧困を断つために絶対に必要、だから何がなんでも読めるようになってもらう・・・という姿勢を改めて感じます。

・この人が40歳でやった訓練というのは、(1)徹底的な音韻認識の訓練、(2)フォニックス、(3)読むこと、そして(4)書くことの順らしいです。
毎日、2年ほど。まさにレメディエーションですね。

「彼らはずっとだまされてきたので、希望が必要。と同時に、エビデンスに基づく訓練も必要」。
教師は理解があることが不可欠ですが,それだけでは不十分です。

「Dyslexia has no colors. That’s the beauty」
(ディスレクシアは人種を超える。そこに美しさがある)
この手の発言に心揺さぶられてしまう私なのですが、それは会場も同じようです。
アメリカにおいて、知的階層に人種差別は存在しないことになっているようですが、実際には超えられない壁があって、心ある白人や黒人はすごく複雑な思いを抱いているらしいです。そのことを、このあとの質疑応答で目の当たりにしました。

・「有色人種の人が、もっと特別支援教育にたずさわる必要がある」
・・・ほんとにIDAには白人しかいないです。黒人は少ないですし、アジア系はほぼ皆無。この差はなんなのでしょう?

「ディスレクシアはマイノリティとして、社会的に正しい価値観を体現すべき」
かっこいい・・・(TT)
私ももじこ塾に来る生徒に対し、もし何かを望んでいいのなら、ディスレクシアとしての権利を主張するだけでなく、ディスレクシア以外の少数者に対しても寛容な心を持ってほしい・・・と常々思っています。



このあと質疑応答に入ると、白人の懺悔大会に。
超えられない人種の壁を感じました。。

・「子供が8歳でディスレクシアだと分かったので、専用の家庭教師と学校に行っている。数万ドルの投資*で、効果はあったが、以来罪悪感で眠れない()・・・この国には何万人と同じ境遇の子がいて、彼らは同じ助けを受けられないと思うと」。
→たぶんこの人は、NPOに多額の寄付をするか、自分で団体を立ち上げることになるんだと思います(@_@)
(*ディスレクシア専用学校の学費は,日本の私立医学部のイメージでよいかと)

・「行政でディスレクシア教育を提供しているが、予算の都合で8週間しか行えず、読めないまま送り出すことに、非常にもどかしさを感じる」
→「8週間でできることを、低く見積もってはならない」と諭されていました。私も自戒を込めてそう思います。2カ月ですよね。

・「自分の娘(白人)22歳で教師志望、それも刑務所でディスレクシア教育をしたいと言っているが、(言いにくそうに)刑務所とは白人の女の子が入っていって何かができる場所なのだろうか」
→お母さんの心配はよく分かります。白人の女の子がふらっと入っていて,相手になるところではないですよね,アメリカの刑務所というのは。

これに対してはイギリスから来たという、ジャネット・ジャクソン風のかっこいい若い黒人女性が「ディスレクシアであれば、人種に関係なく助けられたいと思うはず」と言っていました。

私の意見は・・・
「私も22歳でもじこ塾を作ることは絶対にできなかった。この年齢になったからこそできる指導がある。あなたの娘も、若い今だからできる指導をして、若さがなくなったら刑務所に戻ればいい」


以上をアメリカで書き,締め方がわからないまま放置して1ヵ月。。。

いま振り返り,この発表で特に印象的だったのは,
「ディスレクシア教育はcommon good(コモン・グッド)のために行うべきもの」

コモン・グッドとは,社会全体の利益ということ。
ディスレクシア教育というのは,「うちの子をどうにかして下さい!」ではなく,社会全体のためになるから行うものだ,という発想です。

日本の教育は個人の(または家族の)立身出世のためという部分が大きいと思いますが,
IDAで,そんな卑しい目的を持ちだしたら,恥ずかしくていられなくなりそうです。
アメリカのディスレクシア教育は,あくまでも社会を良くするためのものらしいです。

「コモン・グッドのための教育」という発想は,東アジア的価値観とちょっと違うということも,この一カ月間考え続けてわかってきました。
だからIDAには東洋人が極端に少ないのでしょう。
(100人超の聴衆のうち,東洋人は自分ひとりというケースが,IDAではけっこうありました。)

そして!東アジア的な立身出世的価値観と,合理的配慮は合わないのです。
この項続く(きっと)!

2018-10-29

IDA日記その2:レメディエーションとは、過酷なものらしい


無事に帰国しました~。リムジンバスの中でこれを書いています。

IDAの参加者たちはどうやら本当に、去年の宿題を持ち帰って生徒に試してみて、再び集結しているように見えました。
変化のスピードが速いです。

去年はResearch to Practice(「研究成果を授業にどう生かすか」)がキーワードでしたが、
今年は「音韻認識をどう教えるか」の発表が多かったです。

もちろん、フォニックス(音と文字の対応を教えること)それもシンセティック・フォニックスはすでに当たり前となっており、alphabetical phonics(アルファベット順に教えるフォニックス)は、旧時代の遺物としてたまに言及される程度です。

・「アコモデーション(配慮)とレメディエーション(読み書きの訓練)は、同時並行で行うべきもあちこちで指摘されていました。(assisted technology(IT機器の使用)の発表は少なめでした。)

これらの点について、私の結論を先に申しますと・・・

(1) 合理的配慮は、英米の学校制度や価値観の中でこそ、初めて理解できるもの
日本の受験生が合理的配慮を使う場合は、配慮の背景にある社会や価値観が日本とは違うことを理解して、その上で戦略的に使うべき。

(2) レメディエーションは、とても過酷なものらしい。
 そして、もじこ塾の一部の授業は、すでにレメディエーション化しているらしいΣ(゚Д゚)

合理的配慮については、近日中に改めて書くとして、ここではレメディエーションについてまとめてみます。
以下、かなり技術的に細かい内容です:

☆  ☆  ☆

・レメディエーションは、苦手にフォーカスして、パフォーマンスのギャップ(読み書き能力と知的能力との差)を埋めるために行うもの。

・以下が必要:
(1) Structured(体系的、構造的)
(2) Sequential(順を追って)
(3) Overlearning(反復的)
(4) Research-Based(科学的研究に基づく)
(5) Multisensory(多感覚)

(1) Structured(体系的、構造的)
  私はこれを「網羅的」と理解しました。英語の音はすべて教える必要があるし、中学文法にしても高校文法にしても極力、「これで全部だよ」というものを示しながら教える必要があるということでしょう。
  個人的には今回、ようやく腑に落ちた概念のひとつです。

(2) Sequential(順を追って)
  これは「前に教えた知識の上に、新たな知識を教えること」。
  例えば、-ir-erと同じ発音だと明示的に教えないうちは、-irが入った語を読ませてはならない、ということです。
 「この点は厳格に守りたいところだが、コントロールされていない文章に、生徒は学校で触れてしまう」とのことでした。日本でも事情は同じですね。

(3) Overlearning(反復的)
  反復が大事という意味です。オーバーワークが大事という意味ではありません^^;

(4) Research-based(研究成果に基づく)
  IDAではオートン・ギリンガムが神聖視されています。そんななか「彼らを北極星としつつも、最新の研究成果を取り入れて聖人を乗り越える必要がある」・・・という文脈で登場していました。
また「教師は、自分が習った方法を絶対だと思ってはならない」という意味や、Reading Wars(フォニックスvsホールワード派をめぐる議論。政治論争にまで発展)のような不毛な戦いが、再びあってはならないという意味もありそうです。

(5) Multisensory(多感覚)
  これはなかなか曲者な概念。人によって定義が違います。
「マルチセンサリーな音韻認識の教え方」という発表に行ってみるも、7色のマグネットを使うことだったり(その程度でもいいんですね)

それなら「犬に読み聞かせをする」ほうがよっぽど多感覚じゃないかと思ったり(この発表はものすごく期待していたのですが、普通というか予想の範囲内の内容でした)

読み書きを教えるのに、文字と音以外の手段を使うなら、とりあえずはすべてマルチセンサリーと名乗っていいようです。ううむ。

~~~

「オートン・ギリンガム法をアップデートする」というシンポジウムで、州立病院で行われているというレメディエーション・プログラムの授業内容が紹介されていました:

(1) handwriting(字を書く練習
(2)音韻認識 
(3)フォニックス/デコーディング 
(4)文法 
(5)コネクテッドテクスト(まとまった文章を読む)
(6)スペリング

なんと!中学生クラスの授業内容とほとんど同じじゃありませんかΣ(゚Д゚)
アクティビティの大まかな順番や、最初が筆記体で、最後にスペルを書かせる点まで同じ…!

この話をしながら、発表者は感極まって涙で声を詰まらせてしまい、場内は若干引いてました()
しかし私はそれで分かりました。このレメディエーションは相当に過酷なのだろうと。
なぜなら、もじこ塾の生徒も同じだから。本気で速読みや音読で生徒を追い込むと、かわいそうなくらいヘロヘロになるからです。
そこから、もじこ塾の中学生(と一部の大学受験生)の授業は、いつのまにレメディエーション化していたことが分かりました。

ちなみに、発表のレメディエーションは
5日、毎回1時間、対象は小27(1)1クラス45人、期間は2年間
とのことでした。
読み書き能力は大幅に向上し、しかも2年間のレメディエーション終了後、この教室を離れても、読み書き能力の向上は続くとのこと。

つまり、もじこ塾中学生クラスは、できれば週3回だと、理想のレメディエーションに一層近づくということですね・・・でもそこまで英語に割ける生徒はなかなかいないわけで・・・
5時間分をカバーする方法を考えてみたいです。その上で、2年間で卒業を目指せれば、理想的ですよね。

~~~  

その他:
visual lexicon(まるっとスペルを覚える単語の量)には限界がある
文章を丸暗記するのは、長期的には逆効果。音と文字の対応(フォニックス)を教える必要がある。
→日本の定期テスト対策で陥りがちですね。
・レターボックスに入る単語は、文字列の並びは順不同。(sawwasは区別されない)
サイトワードを初期に教えすぎると、脳内の音-文字の結びつきが弱くなり、字の入れ替わりが起こりやすくなる
→単語の丸暗記も有害だということですね。「まるっと覚えられる単語の量には限りがある」と合わせて、丸暗記の害は肝に銘じたいです。
・精度なくしてスピードはない(正確性が向上しなければ、関心がある内容しか読めない)
・音韻認識の訓練は、2年間のレメディエーションを通じて行う。はじめは明示的に、2年目は他のアクティビティに混ぜ込んで。


~~
バスは予定よりも早く目的地に到着しそうなので、取り急ぎアップします。
明日からは通常授業。まだ報告は続きます!

2018-10-28

IDA日記その1:音韻認識の熱狂に釘を刺される/筆記体の本の版元社長に直談判


ボストンからバスで2時間のカジノリゾートで、今年のIDAは開催されました。
ボストンは車越しの夜景だけでも素敵でした☆。でも夜明け前のバスターミナルあたりから素敵じゃない雰囲気に・・・そして予想通り、カジノリゾートの周辺は見事に何もありません。360度原野、ニューイングランドの秋の紅葉です。
カジノリゾートの中は退廃的な雰囲気です。妙にぎらぎらした老人とか、地味~な中国人夫婦とか、平日の昼間からなぜこんなところに?と言いたくなるあやしい人たちがうろうろしてます・・・

そんな会場の一角で開催されているIDA。こちらは見事に白人女性が95%を占めてます。会場の挙手を見ると、教師、ディスレクシア専用チューター[個別指導教師]、アドミニストレーター[行政担当者]が多いです。
参加者は2000人と昨年並より少し少なく、半分が初参加とのこと。
雰囲気はLD学会に近いです。教師の出すオーラって万国共通なんですね()

・どうやら、去年のレターボックスの講演はIDA的にもよほど衝撃だったらしく、今年の発表で去年のその発表に言及しているケースに2件遭遇しました。たぶんみなさん、私と同じように、この1年間はあの講演を宿題として持ち帰っていたわけですね・・・
残念ながら、今年のIDAの発表は、これまでのところ、去年ほどの根底的な衝撃はありません。もっと細かい、具体的な話で収穫が多いです。

◆音韻認識について
・読めるようになるためは、まず音韻認識(phonological awareness, phonemic awarenessなど、いくつかの言い方あり)の訓練を徹底すること、その上でフォニックス(音と文字の対応)を教えるべき・・・が、この12年で業界の共通認識になったようです。
Phonemic awarenessについての新刊も出ていましたし、教材も新しく出ていたので買ってみました。中1クラスで試してみたいです。

ガチャガチャのおまけみたいなものが、多感覚らしいです

音韻認識とは、「単語がいくつの音韻でできているかを、認識する能力」です。
たとえば、sat3つ、step4つ、star3(ar1つと数えるので)
shark3(shark)this3(this)third3つ、
there2つ、rain3つ、candyは5つの音韻からなります。

日本人からすると、「そこって1つにまとめるの?」という反論も出てきますね・・・
その通り。どの音をもって音韻とみなすかは言語によって異なるので、すでに別の音韻体系が確立している場合は、ある程度理詰めで理解する必要もあります。
音韻は人工的な概念なのです。

不思議なことに、定型だと45歳で母語の音韻認識は獲得されています
(stop4つのオトでできていて、t2番目だね!」と言えます)
一方、ディスレクシア(の多く)は音韻認識の発達が遅れますし、程度の差はありますが長期的・定期的・反復的・明示的な訓練をしないと定着しません(ひらたく言えば、毎日510分、訓練が必要です)

グッドニュースは、音韻認識の定着は、年齢が上がるにつれ短期間で定着する傾向が強いということです。
もじこ塾で見る限り、中学生は小学校低学年よりも音韻認識の定着は早いです。
また、音韻認識が定着するまで足踏みする必要はなくて、文法など先に進みながら音韻認識定着の練習を続けることもできます。このことに言及している発表もいくつかありました。


◆ディスレクシアの原因は音韻だけではない
筑波大の宇野先生とワイデル先生がシンポジウムを行ったので、最後だけですが顔を出しました。両先生と直接お話できる役得に預かりました(^^)。地球の裏側のカジノリゾートまで足を運んだかいがあったというもの。

宇野先生からは釘を刺されました。今の私にはとてもありがたかったです。

「アジア系言語のディスレクシアの出方は英語圏とは異なる。
IDAではディスレクシアはもっぱら音韻処理の障害とされているが、日本語ディスレクシアを見ればそうでないことは明らか。
音韻障害だけが原因のことは少なく、視覚認知障害、自動化の障害、それ以上にこれらの混合型が60%を占める。
そのことを英語圏のディスレクシア研究者はわかっていない」。

・・・本当にその通りです。
日本語のディスレクシア、特に漢字が覚えられないのは、形の認識の困難によるものです。ディスレクシア英語教育に意識が向きすぎて、ついそのことを忘れがちになっていました。
日本語(特に漢字の困難)からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは主に字の形をめぐる困難ですが、英語からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは音韻を認識し処理することの困難だと分かります。
日本のディスレクシアの生徒はほとんどの場合、この2種類の異なる困難に直面していて、その両方に対処しなくてはならない大変さがあります。


◆筆記体の本の版元社長に直談判
・筆記体の練習帳には本当に感動したので、お礼が言いたくて版元の社長さんの発表を聞きに行き、発表後、話をすることができました。
生徒の字をいくつか見せると、たいそう感動してくれました(TT)
「遠い日本の地でこの本がこんなに愛されていると知ったら、著者はきっと喜んだだろう。彼女は外国語として英語を学ぶ生徒のことを、とりわけ気にかけていたから」。






著者とは故Diana Hanbury King女史、ディスレクシア教育界のレジェンドのこと。
もう一年早かったら直接お礼が言えたのに、本当に残念でした。

「この本はすばらしいです!すごく効果があります。日本には同じものが本当にありません。わたし訳しますけど、日本で出版しませんか?」
と言ってみたところ、マシンガントークで
「超いいね!!僕はADDだから忘れちゃうんで、帰国後ここにメールしてくれるかな、Let’s see what we can do」とあっさりOKしてもらえました!

しかし社長はこっちもADHDだとは理解していない(原稿になかなか取りかかれないorz)

だからここに書いて宣言しておきます。
筆記体の本の日本語版を出すために、版元のOKはもらえました!日本語版を出したい!!

2018-10-23

今年もIDAに行ってきます!

なかなかここに書けず、申し訳ありません。ようやく一息つきました・・・。

昨年のIDAに行って以来、この1年のもじこ塾は、現地で聞いたことを思い出し、試しては微調整する・・・を繰り返しながら、変化を続けてきました。

現在、中学生の授業では、
・シンセティック・フォニックス
・筆記体
・音読
・ゲームによる息抜き
・文法演習
を扱っています。
1年前と比べたら、だいぶ変わりましたし、盛りだくさんになりました。

大学受験生のなかにも、高校や予備校とはかなり異なる授業を行っている生徒が何人かいます。
読む量を極限的に減らして解く方法を模索したり、徹底的な読字訓練を行ったり・・・

これらのほとんどは、日本ではどこに行っても勧められない、または、ディスレクシアに効果的と言われていても、具体的な効果や方法のわからないものでした。

例えば筆記体。
これは去年のIDAの、空き時間になんとなく聞いた発表で知り、その場では眉唾ものだ思ったのに、今ではもじこ塾の中学生にとって不可欠の教材となりました。
筆記体で書くことではじめて単語のスペルが覚えられた生徒もいますし、
PCでないと板書は無理と語るほど激しい書字困難にもかかわらず、筆記体の練習を始めると、「書けるようになると読めるようになった」と言う生徒もいます。



あるいは音読。
「フォニックスの次にすべきことは流暢性の獲得。そのためには時間を測って初見の文を読む練習を」という指摘を守って、中学生さらには一部の受験生にも、目の前で音読してもらっています。
これは、生徒によってはどろどろに疲れる厳しい課題で、生徒の疲れ具合を注意深く見極める必要があり、信頼関係がないと課せないものですが、今やこれも、もじこ塾に不可欠な訓練になりました。



このように、IDAの会場でなんとなく聞いたことが、ボディーブローのように効いてくる経験をして、やはり今年もアメリカまで行かないわけにはいかない、たとえ秋の受験生の授業を一週間休み(申し訳ありません)、自腹であっても( ;∀;)と思うようになりました。

もじこ塾でも最もディスレクシア度の強い部類の生徒たちは、もじこ塾の授業の効果や感想を、とても率直に教えてくれます。
「学年が上がるにつれて、追試にひっかからなくなった」
「教科書をはじめて読めた」
「フォニックスを教わった帰り道、街中の看板という看板から音が聞こえてきた」
「家族でよく行くレストランの名前が読めた」
「クラスで一人だけ答えられる問題があった」
「sinの筆記体が読めた」などなど・・・

そういった感想からこの方向性でおそらくいいのだと思う反面、常に授業に微調整を加え、進化させていく必要も日々感じています。
生徒は進化するのに同じ授業をしていたら、あっという間に効果が薄れてしまいます。

というわけで、いま私はボストン行きの飛行機の搭乗口でこれを書いています。
今年の会場はボストンから100マイル離れた、コネチカット州のネイティブアメリカンの土地にあるカジノリゾート(?!)。
去年のアトランタよりもたどりつくのがある意味困難かも(;'∀')。

今年はどんな話が聞けるのか、楽しみです!!乞うご期待!

2018-06-16

もじこ塾へのお問い合わせにつきまして

朝日新聞をご覧になって,当ブログにお越し下さった皆様へ

もじこ塾に関心を持って下さり,ありがとうございます。

もじこ塾はディスレクシア専用の英語塾です。

お問い合わせは以下にお願いします:
mojikojuku@gmail.com

もじこ塾には,電話,Twitter,Facebookはありません。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年6月16日
もじこ(成田 あゆみ)

[18/06/17追記]
多数のお問合せをいただき,ありがとうございます。

もじこ塾はブログから始まった塾です。
かなりの数の記事がありますが,ディスレクシアともじこ塾について知って頂くには,最新の記事10本ほどを読んでいただくとともに,以下をお読みいただけますと幸いです。

募集案内

お子さんがディスレクシアかどうか,判断するために
ディスレクシアのチェックテスト→
隠れディスレクシア→
ディスレクシアであることの利点→

より専門的な内容
LD学会での発表内容→
IDA(国際ディスレクシア協会)年次総会レポート→

授業について
日々の授業の様子はこちら→で毎日お知らせしています。
記事の写真はこの授業→のディクテーションのものです。

順次お返事してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018-06-15

もじこ塾についての記事が朝日新聞に掲載されます。

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もじこ塾は先日,朝日新聞の取材を受けました。
明日(6/16)の東京版朝刊,教育面「凹凸の輝く教育」という連載に登場します。

追記
記事はこちら→
(朝日新聞デジタル)



連載の目的は,特性のある子どもたちに特化した教育を行う各種教育機関を紹介すること。
と同時に,今回の記事の目的は,ディスレクシアについて広く世に知ってもらうことだと聞いています。

4月以来,この連載には,N高や東大先端研ROCKET,都立高校や通信制高校,大手塾など,この界隈での有名どころや,スタッフのたくさんいる塾や学校が登場しています。

そのようなそうそうたるラインナップに,講師ひとりの個人塾が加わるわけですが・・・
率直に申して,これからどのような反響がどれくらいあるのか,想像もつきません。

今回,取材要請を受けるべきか,かなり悩みました。もじこ塾のような一介の個人塾が朝日新聞に登場した場合,反響に対処できるのかどうか,まったく見当がつかないのが正直なところです。
問い合わせが殺到して,授業運営に支障が出るのではないか・・・
「ディスレクシアで大学受験するなんてありえない」と炎上するかも・・・
あるいは,すべては取り越し苦労かもしれません・・・
予備校講師歴20年,ネットでいろいろ言われた経験も普通の人よりはある方だと思いますが,今回ばかりはどんな反応があるのか,予想がつきません。

取材を受けるよう後押ししてくれたのは生徒たちです。ほとんどの生徒は紙面登場を喜び,もじこ塾のような場がもっと増えるべきだ,学校での英語の授業方法には不満があると言い,具体的な改善点を挙げてくれました。
ういった声を記者に伝え,学校の先生方に少しでもディスレクシアの認知度が高まればと思い,取材要請を受けることにいたしました。



今日も,もじこ塾では授業を行いました。
教室のなかは台風の目の中のように,何ひとつ変わりません。
ここには本当に得難い,信頼関係に基づく授業空間があると思っています。

この環境が今後も維持されることが,そして,学校でも,ディスレクシアについて知っている教師が増えることが,もじこ塾と生徒たちの願いです。