ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2021-12-30

OG(オートン・ギリンガム)日記!#4 音節の区切り方:rabbit / tiger / camel

●ディスレクシア英語教育の金字塔、オートン・ギリンガム法。アメリカのディスレクシア専用校が主催する教授法研修(週1回、全15回)を現在、もじこはオンラインで受講中。授業報告のシリーズです。


12/30も朝6時から授業!予備校の冬期講習もここまではw

クリスマスで1週休みだったのですが、この休み期間中に、担当講師の方を含め3~4人の方がコロナにかかったそう(゚Д゚)オミクロン株は彼の地で猛威を振るっているようですね。「Ayumi, have you got covid?」とさらっと聞かれてびっくり。新宿は帰省する人で混んでいますが、オミクロン株は今のところ、テレビの中のことでしかありません。

本日はアセスメントと、音節の分け方について。


◆アセスメント

生徒の読み能力をはかるためにアセスメントを行う。初対面の生徒に使うほか、生徒の進捗をはかるためにも使う。まったく同一のアセスメントを経時的に使うことで、本人比での進歩をはかることができる。

OGではGallistel Ellis Test of Codingを使用。

これはかなり難しい単語も入っているので、英語力をはかるにはおすすめかも。しかし、今は手に入らないようです・・・


◆音節の分け方

復習:音節のタイプを教えるのは、母音の読み方を教えるため。そのくらい、母音の読み方は難しい。以下の6つのルールがある。

音節を区切るときは、スラッシュではなく、音節ごとにスラー(loop, scoop)をつける。


1)rabbit 型

例:rab-bit

cvc / cvcに分けられるもの。vとvのあいだにcが2つあるとき、cとcの間で分け、最初のvを短母音で読む

magnet, laptop, trafficなど。

長くなると、fantastic, atlantic, establish, membership, carpenterなども。


2)tiger 型

最初のvの直後で分け,最初の母音はopen syllableにする(=母音を名前読みする)

remote open

virus human moment basic

 


3) camel 型 

camelを cvc  vcと分け,最初の母音をclosedで読む(=短母音で読む)


panic solid rapid

credit profit level


どうやって単語がtigerかcamelかを区別するか?

→最初にtigerを試し,だめならcamel。tigerのほうが多いから


4) ostrich 型

vcccv    vccccv の区切り方。

母音の間に子音がたくさんあったら,trial and errorで分けてみる

★このとき,blendsやdigraphは一緒にしておくのがポイント。


このあとさらにマイナーなルールもありましたが、煩雑すぎるので略。


~感想~

今回とても感じたのは、OGを学ぶアメリカ人児童は、小学校低学年であっても耳から入っている生活語彙がたくさんあり、その上でOGを行っているということ。日本にいて英語を学んでいると、やはり母語話者と比べて圧倒的に語彙が少ないですし、音から入っている語彙はさらに少ない。そのなかでOGを取り入れるとなると、ルールに沿った単語、沿っていない単語、沿っていないが重要な超基本語(youとかheも含む)を緻密にコントロールして教えていく必要がある・・・と思いました。

OGは日本ではむしろ、ある程度耳から単語を知っている高校生や大学生に効くかもしれません(0゚・∀・)それならもじこ塾にたくさんいますが!

OGの厳しさは、日本の漢字教育に似ています。やはり日本の漢字教育は洗練を極めています。配当が綿密に決められ、明示的・反復的・体系的に教えられ・・・ディスレクシアに英単語を教えるなら、このくらい綿密に順番を考える必要があるのでしょう。

一方ですぐに気付く大きな違いは、OGには「何度も書いて覚える」という発想は皆無なこと。フォニックスと音韻認識を徹底させれば、聞いてわかる単語は文字に落としこめるはずだという考え方が完全に徹底しています。

2021-12-23

『ディスレクシアだから大丈夫!』原著者あいさつ、Dr. Fumiko Hoeft先生による刊行記念講演を無料公開しました!

『ディスレクシアだから大丈夫!視点を変えると見えてくる特異性と才能』
多くの方に読んで頂いているようで、本当にありがとうございます。

もうすぐ、電子書籍版が出版されるとの連絡が入っています。
文字だとつらい方々は、もう少しだけお待ちください・・・!




amazonにも渾身のレビューが!ぜひご一読を。
(上の本の画像をクリックすると飛べます)


◆◆

『ディスレクシアだから大丈夫!』の原著者からご快諾を頂き、日本語版刊行記念あいさつを無料公開する運びとなりました。
本の内容を端的に紹介しておられますので、内容を簡単に知りたいという人はぜひご覧ください。
もじこは名前を呼んでもらえて感無量です。
吹替版と字幕版があります。共訳者の辻さんがご家族で大活躍。









刊行記念イベントの基調講演を行ったDr. Fumiko Hoeft先生も、公開をご快諾下さいました。
日本とアメリカを行き来しながら成長し、今はアメリカで第一線の脳科学者として、ディスレクシア研究にもたずさわるフミコ先生。IDAでもスーパーシャープなのにお茶目で、実際的でもある発表内容に、アメリカ人の聴衆のみなさんはハートをわしづかみされていました。
基調講演は、ディスレクシアに必要なのはレジリエンス(立ち直る心)という、とても元気をもらえる内容です!









ぜひお楽しみ下さい!


2021-12-16

OG(オートン・ギリンガム)日記!(3)(1回のレッスン構成、6種類の音節)

今日も5時起き! 勉強になりました!

フォニックスのフラッシュカードを読むところからスタート。意外と読めない受講者続出。やっぱりネイティブにも難しいんですね・・・


●1回のレッスンの順番

理想は週5回、1回45分~60分。1対1または少人数グループで。とはいえ、ここで教える内容は教室での一斉指導にも役立つ。

OGでは字や音の導入はどうやらアルファベット順。しかし生徒の年齢に応じて変えてよい。ESLならなおさら。

と同時に、生徒が難しいと感じているもの、前回の授業で扱ったもの、また母音連続が難しいので、それを必ず入れるとよい。

ショートの母音のみアクションつき。

1)筆記体を書く

準備運動、ウォームアップ

2)字を見て言う

(23)

何枚かのフラッシュカードを教師が見せ、生徒は文字の音と名前を言います。

OGではアルファベットの名前も言わせてます。

3)音を聞いて書く

(2~3分)

/e/と読む字は?」と教師が聞き、生徒は聞いた音をおうむ返ししてから、ホワイトボードや砂に書く。

教師「アイと読む字は?」

生徒「アイ」と言いながら、i, i_e, ighと書く。

 

※同音異綴りも全部!毎回!言わせるようです(@ @)「これは厳しいですが、ディスレクシアにとっては本当に強力」とのこと。

4)ドリル

(23)

音韻認識、文法、音節など、ちょっとしたアクティビティ。

5)1語だけを読む(15)

レッスンの山場。

2)3)で扱った音の入っている単語を読む練習。

 

6)1語だけを書く(3)

5)で扱った単語をスペルする練習。

 

7)センテンス/フレーズを読む、書く

5)で扱った単語が含まれる文を音読してもらう(数文)

 

教師が読み上げ、生徒は全文おうむ返ししてから書く(1)

8)新出事項

(510) 

新しい音などを教える

9)読みもの

(10)

単語をコントロールすること。ここまでの授業で扱った音素/文字を扱う。

10)ライティング

 

一番クリエイティブな部分。小学校低学年なら日記的なことを言ってもらい、書いてもらう。年齢並みの構文(文構造)、語彙を教えるパート。ここではスペルミスは直さず,生徒のアイデアを重視する

11)おさらい

新出事項の確認

注意事項

・その日ごとに明確なテーマがあり、そのテーマが1回の授業を貫くように。

※これは毎回の教材準備がまじで大変!でも、この教材をゆるやかにでも体系化したら、本当の意味で読み訓練の教材ができることでしょう。

・だいたいの典型的な順番は決まっているが、生徒の進み、苦労している部分、前回やったこと、複数のスペリングがあるもの、を中心に毎回微調整。

※一人の生徒でうまくいっていたものが、次の生徒ではうまくいかないのは自然なこと。前の生徒に対し取りこぼしがあったとか目配り不十分だったということではない。OGは生徒にあわせて微調整し、作り替えるもの。

※もじこ塾の中学生の授業とわりと同じ構成ですが、衝撃なのはフォニックスの定義ですね。専門用語を使うと、ダイグラフや同音異綴りもフォニックスの一部という認識のようです。

ea、igh、cという字の2つの読み方(hard cとsoft c)、/k/と読める3つの字(c, k, ck)を、言わせ書かせます。それも毎回。

フォニックス講座で「a」と書いたフラッシュカードを見せて「この2つの読み方を言ってごらん」と言うと、生徒はぐったりするので(ものすごく疲れます)、してはならないことだと思ってましたが、そんなことはないとは。。。ちょっと試してみます。

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◆6種類の音節(6 syllable types)


「これを全米の教室で教えるだけで、生徒は劇的に読めるようになるはず」と言ってました。あまり教えられていないことらしいです。

音節の種類を知るのは,母音の読み方を知るため。

クローズド(closed)

1つの母音+1つ以上の子音によって、母音が閉じる。

母音をショートで読む

 

 

 

cat, dog, pin, stepなど

オープン(open)

母音で終わる音節。この母音はロングで読む                                           

 

 

hi, so, ka ...

※ローマ字とたたずまいが同じなのに、まったく読み方が異なる!!これは大変。

マジックe

語末のeを読まず、直前の母音字をロングで読む

a_e, e_e, i_e, o_e, u_e,

※e_eは短い単語の例が少ない

make, time, hope, cute

母音連続(vowel teams)

2つまたは3(igh)の母音字が組み合わさって、1つの読み方になるもの。

 

ai, ea, ee, oa, oo, ighなど

sail room  team  night

 

rつき母音(r-controlled)

母音字+rrがつくと母音字が変わる。「クローズド」と混同しやすい

er, ir, ur, ar, or

erirurは同じ読み方。

(6)子音+le

 

スペリング的に最も鬼畜(brutal)

子音+le

bubble, candle, puzzle, little

6種類の音節をソートするアクティビティ→ 

※くしくも高3の生徒と、音節の理解が長い単語のデコーディングに役立つのではと試行錯誤している最中なので、この分類はとても参考になりました。音節はどうやら1つの文字の読み方と同じくらい、デコーディングに重要な要素のようであり,また純粋ディスレクシアの多くが非常に苦労するポイントです。この表は音節を体系的・明示的に教える手がかりになりそうです。



◆教材を作る/探すのに便利なサイト

wheel of names (ホイール型ツール)→

Word Wall→

パワポで作るようなアクティビティを作れるツール。ほかの人が作成したアクティビティが大量にアップされているのも便利そう。

Teachers Pay Teachers→

「先生が先生に払う」。教師が作ったプリントをプチプラで売買するサイト。フォニックスをはじめさまざまなプリントが大量にあります。英語のみ。日本版を誰か作ってほしいです!



2021-12-09

OG(オートン・ギリンガム)日記!(2)(音と文字にまつわる基本用語の確認)

 オートン・ギリンガム講座、第2回です!今日も5時起き!(笑)


オープニングは「ディスレクシアとは何か」を視聴(TED動画、字幕つき)→


今日は音声学の授業でした。私は内職で日本語の言い方を確認しながら。


英語の子音について→

英語の母音について→



★印象的だったポイント:

・音声学の知識は、生徒に教える必要はないが、教師には必要。生徒の問題点を特定しやすいし、生徒が間違った音を出しているときに「前歯の裏に舌をあてて」などと言葉でガイドしやすい。破裂音・摩擦音・鼻音、唇をはじく、下唇を軽くかんで、前歯の裏に舌をあてて、舌を前歯の生え際に、などと瞬時に指摘できるように。

・「舌はどこにある?」(Where is your tongue?)は強力な質問。新しい文字や音を教えるときは、この問いに戻るべき。

・/e/と/i/、/o/と/u/は耳で聞いての区別が難しいので、口の形をしっかり見せて明示的に。

・「/r/と/er/の差がわかりません」と私が正直に申告したら「/r/は必ず前にwの音をつけて。put a growl、"犬のうなり声(唇を丸めながら)を前につけて"と生徒には言うとよい/er/はgrowlがつかないのが正しい」と言われました。先生も受講者のみなさんも私の発音を聞いて「違う、それは/r/じゃなくて/er/だ」と瞬時に指摘してくれました。どうやら本当に/er/と/r/は違う音らしいです。。

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★基本用語の確認

アルファベット(alphabet)

広くは、ある言語が使っている文字の全体(を慣習的な順序で並べたもの)

狭くは、ラテン文字の字母表。各文字が原則として1つの音素を表す「音素文字」の一種。

 

ローマ字

日本語の音をラテン文字で表したもの。

 

デコーディング(decoding)

単語を、綴りに対応させて音にすること。

 

エンコーディング(encoding)

音に対応させてスペルすること。デコーディングの逆。

 

音素(phoneme)

英語の音の最小単位。1文字が対応することも、複数の文字が対応することもある

 

書記素(grapheme)

音素に対応する文字。1文字のことも、複数のこともある。

 

形態素(morpheme)

英語の意味の最小単位。接頭辞・語根・接尾辞はそれぞれ形態素。

 

音節(syllable)

単語またはその一部で、母音を1つ含む音のまとまり。

 

接辞(affix)

接頭辞および接尾辞。

 

構文(syntax)

英語の文における語順、単語の配列。

 

意味論(semantics)

単語や文の意味。

 

語用論(pragmatics)

実際の場面におけることばの使われ方。


母音(vowel)

口を開き、何にもブロックされずに(uninterrupted)出る音(舌、唇、歯に妨げられずに出る音)。日本語の母音は「あ・い・う・え・お」の5つ、英語は14以上。


子音(consonant)

唇・舌・歯によって構音がブロックまたは影響を受けるような音。無声音と有声音がある。

 

後頭葉(occipital temporal)

ことばの視覚的シンボルを受け取る脳部位

 

ブローカ野(Broca’s Area)

ことばの音・音韻処理をつかさどる脳部位

 

ウェルニッケ野(Wernicke’s Area)

ことばの意味をつかさどる脳部位。フォニックスで書くと/ver・n・keez/

 

オートン博士(Dr. Samuel Orton)

ディスレクシアの父として知られる脳科学者。特異的学習障害の概念を作った。遺伝的な問題だが、教育で解決する問題だと見抜いていた。




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単語に含まれる「音の数」の教え方

・音素の数は「フィンガー・タッピング」で生徒に示す。(出典)


※フィンガー・タッピングは利き手でないほうの手で行う。利き手はスペルを書くために使うので。

※このとき音節は、人差し指~小指を全部まとめて親指につけて表現。

※音節はjaw drop(母音を言うときにあごが下がる)がわかりやすいです。出典



2021-12-02

OG(オートン・ギリンガム)日記!(1)(OGの7つの原則、ダイアナ先生の名言)

 今日から、オートン・ギリンガム講習に参加しています!

アメリカで行われているトレーニングに、週1回半年間、zoomで参加することになりました。

『ディスレクシアだから大丈夫!』にもおすすめとして登場しているオートン・ギリンガム。ずっと気になる存在でした。オンラインで講座を行ってくれるのはコロナ時代のありがたい進化ですね。

備忘録的に、ここに書いていこうと思います!

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オートン・ギリンガム(OG)とは、ディスレクシアを対象とした英語の読み訓練のアプローチです。オートンは(ディスレクシアをアメリカで初めて提唱した眼科医、アナ・ギリンガムはオートンの同志のスーパーティーチャーで、ディスレクシア用の読み訓練をゼロから考案した人です。OGは今でもアメリカのディスレクシア教育の最も有効なアプローチに数えられています。IDAも当初は「オートン・ソサエティ」として出発しました。

私が参加しているのは、Diana Hanbury Kingが創設したKildonan(キルドナン)というディスレクシア専用学校の主催するトレーニング。

学校自体は資金繰りに失敗して2019年に閉校になった(泣)ようですが、創設者の遺志を受け継いで、サマーキャンプと教師訓練だけは続いているようです。


今日は、OGの7つの原則を習いました:

オートン・ギリンガムの7つの原則

1. 多感覚(視覚・聴覚・運動・触覚)

2. 明示的

3. 言語化して説明する

4. 体系的、順番に積み重ねていく

5. よく観察し、生徒の様子に応じて微調整を加える

6. ルールを網羅的に(?)(cognitiveiのスペル方法はi, i-e, igh, yであると教えること)

7. 生徒の心をくじかない:すでに教えた音素だけを扱って授業をし、生徒が習っていない字を読めない書けないのは教師の責任とする。生徒には明示的に教えたことしか説明させない

・・・教師のとるすべての行動に、これ()が反映されていなくてはならない。

OGは固定化されたという意味での「プログラム」ではなく、生徒に応じて個別に変更可能なものという意味で「アプローチ」である。


●OGの名教師、ダイアナ・ハンバリー・キング

ディスレクシア教育の祖であるアナ・ギリンガムから直接学び、ディスレクシア教師として多大な影響を与えた故・ダイアナ・ハンバリー・キングの言葉。(部分訳)

~~~

ディスレクシアの生徒に読み方を教えること、特に一対一で教えることは、教えるなかでも最もハードルが高く、最も厳しいものです。

教師はまず、言語について非常に高度な知識を持っていなくてはいけません。英語は非常に複雑な言語であり、その膨大な語彙はゲルマン語、ラテン語、古典ギリシャ語などに由来しており、それによって単語の作りも音も違います。・・・

アナ・ギリンガムはいつも、教師の話し方はクリアでなければならないとの信念を持っていました・・・私はここに、よくコントロールされた心地よい声を、教師の資産として付け加えます。教師の声は楽器であり、常にチューニングされていなくてはいけません。

読書量の豊富な教師だけが、生徒が熱中できるような完璧にちょうど良い本を、どんなレベルの生徒に対しても選ぶスキルがあるのです。教師は文構造と文法を理解しなくてはいけません。

おそらく教師にとって最も重要なのは、観察力です。生徒がしていることを緻密に把握しなくてはいけません。・・・

ディスレクシア脳の仕組み・・・タイミングや区切りの感覚も重要です。・・・教師は創意工夫の心をもって、授業戦略や教材作りに取り組まなくてはなりません。生徒が何かを理解できない方法はさまざまであり、教師はそれを上回る数の説明方法の手札を持っていなくてはなりません。

最後に……最良の教師とは、情熱のある教師です。教えるということ以外に人生を賭けたいことがない人達です。目の前の生徒に完璧に波長を合わせるとき、時がしばし止まります。


~~~

自己紹介で「英語のほうが日本語よりもディスレクシア的にははるかに難しい言語なのだ」と言ったら驚かれました。例によってアジア系の参加者はもじこだけですが(というか、海外組は私だけですが)、日本代表として楽しんできます!

2021-11-15

『ディスレクシアだから大丈夫!』ディスレクシアでも読みやすい工夫がいっぱい!(2)

 『ディスレクシアだから大丈夫!』おかげさまで増刷決定!

ありがとうございます!

一人でも多くの方に、読んで頂きたいです!


刊行イベントも感動のなか終了しました^^
ご参加くださった方々、ありがとうございました。

現在、見逃し配信を販売中です→
12月以降、原著者のあいさつと、Fumiko Hoeft先生の基調講演部分は無料公開します。

~~~

前回、本書がUDデジタル教科書体をフォントに採用しているため、読みやすいとお伝えしました。
それ以外にも日本語版には、読みやすくするための工夫がいっぱいです!

2) イラストがいっぱい!

原著は1枚もイラストがなく、文字がみっちり詰まっているのですが、
日本語版はイラストが50枚ほど?採用されています。
イラストがあったほうが、ディスレクシア的には断然、イメージがわきやすいので。

担当したのは、藤堂さんの前著『ディスレクシアでも大丈夫』でもお願いした方。
ディスレクシアのことをよくわかっておられる、ほんわかしたかわいいタッチで描いて頂きました!

このイラストは、
このイラストは、原著者から「ディスレクシアの人の笑顔が足りない」と指摘を受けて書き直し、さらに校了直前に吹き出しのなかの絵が本文の内容と違うことに気づいてさらに書き直し・・・特に苦労の多かった1枚です。Oさんお手数おかけしました

3) 日本向けの情報が満載の「コラム」!
日本語版だけの企画として、日本のディスレクシアをめぐる現状について、7本のコラムを収録しています。
  • ディスレクシアは障害?
  • ステレス・ディスレクシア(隠れディスレクシア)
  • アコモデーション(合理的配慮)について
  • 漢字の覚え方
  • オートン・ギリンガム法とは
  • ICTリソースについて
  • 受験環境の違い

大半は藤堂さんが書きました。さすが業界の重鎮、そのアンテナは幅広く知識は豊富で、それらをぎゅっと濃縮して紹介。1つのコラムごとに2時間のセミナーができるくらい、有用な情報が満載です!

もじこは、「受験環境の違い」の半分を担当しました。
いまはAO入試の割合が増えてきている…といった話です。
これについて、さらに詳しく知りたい方は、ぜひnoteをご覧下さい→

4) 電子書籍版も販売予定!
本書の中にも書きましたが、
翻訳書の電子書籍は利幅がとても少ないらしいのですが、今回は読者がディスレクシアだからということで、出版社が特別に動いてくれることになっています。
金子書房さんありがとうございます!

5)平易な訳語
原著は、フランクな口調で書かれていますが、脳科学や科学研究の話も出てきますので、一般書としてはやや難しめだと思います。ブルーバックスあたりの位置づけでしょうか。かための文体や難しめの訳語を選んで、専門書っぽく訳すことも可能です。
でも、この本はディスレクシアの子をもつ保護者にも読んでほしい、読者は専門家に限定したくないとの思いから、極力平易な訳にしましょうね・・・と、辻さんと最初に決めました。
「ですます調」で訳しましたし、訳語で迷った場合は、極力かみ砕くように心がけました。
読みやすくなっているといいのですが。
特に、辻さんの文体は愛情いっぱいです!


訳語についてのおまけ
いくつかの訳語選択については、助手や生徒たちの意見がかなり取り入れられています。
機会があったら、このときのやりとりを紹介したいです。
彼らのディスレクシア感覚は、想像以上に超絶でした・・・!







2021-10-18

『ディスレクシアだから大丈夫!』ディスレクシアでも読みやすい工夫がいっぱい!(1)

ディスレクシアが得意なこと」のもとになっている本の日本語版が、ついに刊行!



もじこ塾でも、生徒に対し読むよう、そして親に読んでもらうよう、プッシュしています。


「えー、私でも読めるかな…」と気にしている様子の生徒に対し、

先にゲラで読んだ助手が「読みやすいから、たぶん大丈夫」とプッシュしていたのが嬉しかったです(TT)

実際、日本語版は読みやすい工夫がいっぱいなのです!


1) 1冊まるごと、UDデジタル教科書体



ディスレクシア・フレンドリーなフォント、UDデジタル教科書体→

実は、もじこ塾とUDデジタル教科書体は、というか、もじことこのフォントの生みの親の高田さんは、ディスレクシア・ジャーニーを共に歩んできた戦友なんです。

アルファベットと違い、日本語は数千もの漢字があるため、フォントをデザインするのは何年もかかる大変なプロジェクト。加えて、読みやすいだけでなく、小学生が見て字形のお手本にできるフォントにするという独特の難しさが……そういう苦労話を地元のファミレスで飲みながら(笑)現在進行形でずっと聞いてきた間柄でした。

そういう縁もあり、もじこ塾の教材やパンフレットの日本語部分は、すべてこのフォントで作っています。

生徒からも「疲れにくい」「読みやすい」「あたたかみがある」と好評です。


いまや、LD教育界でUDデジタル教科書体を知らない人は"もぐり"と言えるほど、標準化したこのフォントですが、

今回、本をまるごと一冊、UDデジタル教科書体で組むことができました!

行間も詰めず、ディスレクシアに必要なだけ、ゆったりとってあります。

その分、ページ数も増え、本の価格も上がりましたが(TT)、

ディスレクシアでも読みやすいフォントで本を作れたことが、本当に嬉しいです!!

このことが出版界で話題になってほしい!

金子書房の決断にも感謝!

本を手に取って下さった方による、紙面の感想もぜひ聞きたいです!


詳しい目次→ 

2021-10-05

「ディスレクシアの得意なこと」の翻訳本刊行!(3)(推薦文、オンラインイベントのお知らせ)

もじこ塾の原点、「The Dyslexic Advantage」の日本語版が、10月中旬に刊行されます!

詳しい目次→ 


先週、ようやく原稿が印刷所に入りました・・・!

校了してからというもの、抜け殻のようになっています(苦笑)

授業があるので、なんとかなっていますが。

~~~

もじこ塾が、ブログから始まったことを知る人も、少なくなりました。

同じ著者による「隠れディスレクシア」の頃から当ブログに来てくれていて、

この文章によって人生が変わったといっても過言ではなく、

そしてもじこ塾以前のもじこを知る人と言えばこの方・・・

助手の紺さんこと、笠野紺さんをおいてほかにはおりません。

紺さんに、この本のゲラを読んでもらいました。

~~~~~~~

この本は素晴らしいです。


私がいままで読んできたディスレクシア本の中ではずば抜けて、

内容が実践的だし、経験則的だし、科学的でもあると感じました。


この本は「ディスレクシアとはどういう人か」という謎に、色んな視点から迫っていきます。


いままで自分が見てきたディスレクシア書籍は、

「読者に当事者もいることを想定してない…?」と感じることは多かったです。


(その辛さは体感でもう知ってるしな〜。もっと建設的な話というか、

 発展や希望のもてる話とか、明るい内容も欲しいな〜)と思ってました。


私自身、ディスレクシアの感覚がとても好きなのです。もちろん苦労も多いけど。

極めてフェアな視点をもつこの本が、日本語でも読める日が来るなんて嬉しいです。

フラットな気持ちに戻れるような優しい希望を感じます。


もし私の友人に当事者かもって感じる相手がいたとして、勧めたい本第一号がこの本です。

ぜひ当事者に読んでいただきたいです。


~~~~~~~

ほんとに、当事者に明るい希望をもたらす一冊です!

◆「ディスレクシアだから大丈夫!」刊行記念トークイベントのお知らせ

刊行を記念して今週土曜、オンラインイベントを行います!




お申し込みはこちらから→




2021-10-03

笠野紺さんより、当ブログの昔ばなしを・・・

当ブログの最初の頃からの読者で、いまではもじこ塾の助手をしてくれている、
笠野紺さんに、ゲラを読んでもらいました。


詳しい目次→  


笠野紺です。

「ディスレクシアだから大丈夫」のゲラを読ませていただきまして。
今回はブログでの思い出話も交えつつ、おすすめする理由も書いていこうと思います。


私が隠れディスレクシアの記事へコメントしたのが、
もじこさんと、このブログ交流の始まりです。
あの頃の私は、世間的には精神病患者でして。薬も一種類、毎日3回飲んでました。
障害者枠の就労支援制度を使って、一般のパン屋でのアルバイト(週4、4h)と、
授産施設の商品を売るお店の店番(月1)を掛け持ちして働きつつ、
趣味の創作活動もしてました。

記事のコメント後に、
ディスレクシア・アドバンテージの作者さんの励ましになればということで、
絵を描かせていただきまして。
それがもじこさんとメールを交わすようになった最初のきっかけだと記憶しています。



精神病の誤診を疑ってて、あと昔からの自分の謎について知りたくて
発達系の記事を漁っていたころ、隠れディスレクシアの記事に出会ったんですよね。
その記事が、一番自分に近いことを書いていて感銘を受けたのでした。

ディスレクシアの経験談でよく見る王道は
・漢字が書けない。
・親が気づく。
・学校(教師)とバトルする。

…等々ですけれど、このどれもが私の子供時代には起きていません。
隠れディスレクシアの記事に出会えていなければ、
私は私の中にあるディスレクシアを正しく認識・自覚できずに、
さらに年月を重ねる可能性が、大いにあったと思います。



・小学生のときは悪い成績は取らない。
・学年が上がるにつれ失敗と失望のスパイラルになっていく。
・欠点といえる程度には欠けているが、支援が必要とまでは言いにくい。
・親や教師に気づかれない。

……これが私の実体験かつ、隠れディスレクシアを自称する理由になります。(′v`)




この本はディスレクシアの4つの強みについて書かれています。
事例を交えて強みを説明してくれています。
文章の雰囲気は淡々としていて簡潔で。
いい意味で私情が少ない(?)というか。私にはとても読みやすい文章でした。

強みの代償(トレードオフ)として、読み書き困難がある。
強みが裏目にでるとこうなります、という感じで弱みを紹介されてます。
読み書き困難へのフォローも載っていますが、英語圏でのフォローの仕方なので
日本で活かすには工夫が前提かな〜という印象でした。

それよりも!!
ディスレクシアの長所についてガンガン書いてる書籍は、
私はこの本が初めてだと思いますし、そこにとても大きな価値を感じています。
前向きな自覚・告知がしたいので、嬉しいです。
この本は自分の両親分も買って「これ読んで〜〜!!」って言って渡す予定です。
なにしろ私は、親に気づかれなかった勢ですので〜〜!!(′▽`)


どの国でも、ディスレクシアを主に研究してるのは
医療(脳・発達・言語系?)分野の人たちで、
だから研究対象=疾患・障害という名前を付けがちなんだろうな、
そんな想像も、してはいるんですけど、
「地位も学もあるだろう立場の人から、自分の日常感覚を障害って言われ続けてごらんよ。鬱まっしぐらだよ?」
とも思っていましたから。経験上。
この本の登場を、ずっとずっと待っていました!
原著者さんも研究者(お医者さん)です。そこがもう画期的。



もじこさんは長年、この本の翻訳をだしたいって、ずっとおっしゃっていました。
てぷさんも交えて、三人で話したりもしましたよね!懐かしい〜。(′▽`)
もじこ塾が始まる前から、その意欲を伺っていた私にとっても、
ついに本がでるんだ、日本語で読めるんだ〜〜!と、感無量です。


発行おめでとうございます。そして、ありがとうございます!

見本刷りが届きました!感動~

重い話を明るく書いてくれてありがとう~
もじこがずっと「ポジティブなディスレクシア観」の根拠にしてきた本を、
ようやく読んでもらえて、感慨深いです!

2021-09-22

『学びに凸凹のある子が輝くデジタル時代の教育支援ガイド』に、もじこ塾が掲載されています



『学びに凸凹のある子が輝くデジタル時代の教育支援ガイド-
子ども・保護者・教師からの100の提言』
学研プラス・刊
1,700円×税


何年か前、もじこ塾は朝日新聞の取材を受け、東京版の「凹凸の輝く教育」という連載に掲載されました→
この連載が、1冊の本になりました。

これは読み応えがありそうです!
目次を見ているだけでわくわくします。
ディスレクシアに適したツールや学校がたくさん。
何より、いま現在の配慮の内容の最先端が網羅されています。

自身の勉強のためにも、
また学校の先生に「合理的配慮について知ってください」と渡すのにも、ぴったりだと思います!


2021-09-19

「ディスレクシアの得意なこと」の翻訳本刊行!(2)(推薦文)

もじこ塾の原点の一冊、「The Dyslexic Advantage」の日本語版が、10月中旬に刊行されます!



~~~

ディスレクシアの助手にゲラを読んでもらい、わかりにくい箇所はないか、ディスレクシア感覚と違うところはないか、チェックしてもらっています。
(今週末が最後のヤマです・・・)

この2人に感想を書いてもらいました。
日本語版の最初の読者による、本書の推薦文です!


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◆推薦のことば その①

この本は凄いです!
僕はこの本を読んで、自分の頭の中を80%くらい当てられているような感覚になりました。

具体例が多く、
「同じ感覚だな〜」
と思いながら読んでいると、
「これは普通の人の感覚とは違います」
と後から書かれていることが多く、その度に
「自分と他の人は違うのか」
と驚かされながら読んでいました。

なぜそのように考えるのかということも科学的に書かれていて、
改善の仕方などを考える種となるような本だと感じました。

この本を読んだあとに気をつけなければいけないのは、自分や自分の子供が本当にディスレクシアなのかをしっかり考えることだと思います。
なぜなら、この本を読むと、ディスレクシアに憧れてしまう人が出てくるのではないかと感じたからです!
ぜひ、読んで頂けると、才能の芽を摘んでしまうような事にならないのではないかと思います!
~~
「これからは、自分のことを知ってほしいときに、この本を渡せばいいですね」
「自分の内面が暴かれているので、なんだか恥ずかしいくらい」

とも言っていました。

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◆推薦のことば その②

この本の「Mの強さ」、「Iの強さ」の章を読みました。
(「Mの強さ」:空間把握能力、
「Iの強さ」:俯瞰能力、もしくは相互関係性把握能力)

「Mの強さ」については、
自分が日常的に行っていること、
読んでみて行うことができたものばかりで、

言語化された説明として今まで見てきたどの説明よりも的確に、空間把握能力の何たるかを伝えられていたと思います。

「Iの強さ」では、自分が無意識に行っていたものが、特性の一部として紹介されていました。
知っている情報と新たに知った情報を組み合わせているメカニズムが説明されていて、
自分の日常会話のときの頭の使い方が言語化されていたことに驚きました。

ディスレクシア特性の強みの側面でまだ使い切れていない部分を探したい方、
それを持った人と何かをしてみたい人にオススメです。

~~
「これは自分のことを言っていると感じる?」と聞いたところ、
「なかなか当たっています」と言ってくれました。
それ以上に、読後、すがすがしい顔をしていたのが印象的でした。

~~~
本書は300ページとかなりボリュームがありますが、ディスレクシアでも読めます!
(いずれ電子書籍化も予定しています!)

ディスレクシア本人に、ぜひとも読んで頂きたいです!!
自己認識が変わります。


2021-09-12

「ディスレクシアが得意なこと」の翻訳本が出版されます!(1)

ついに!!
当ブログの原点と言える「The Dyslexic Advantage」の、翻訳本が出版されます!
金子書房

詳しい目次→

~~~

このブログの本当に最初のほうにある翻訳記事:


のもとになっているのは、Eide(アイディ)医師夫妻のThe Dyslexic Advantageという本です。

ディスレクシアとは、脳の配線の違いであり、数々の優位性につながる特性である。
読み書き困難は、ディスレクシアの特性が裏目に出たものにすぎない。

・・・という、ほかのどこでも言っていない内容です。


この本から発展して、もじこ塾ができたと言っても過言ではありません。
「ディスレクシアが得意なこと」にあるディスレクシアの姿は、常に、もじこ塾の大前提にありました。

そんな、もじこともじこ塾の原点とも言える本が、ついに、ついに翻訳出版されます!!

もじこの人生を変えた一冊と言っても、過言ではありません。

そして、ディスレクシアの本人や家族にとって、人生を変える一冊になると、自信をもっておすすめします!

~~~

刊行まであと1ヶ月となりましたが、現在、授業以外のすべての時間をこの本のゲラチェックに捧げています(泣き笑い)

もじこ塾には受験生を含む生徒もたくさんいて、ゲラもあって、文字通り目が回る忙しさですが、幸せでもあります。。

しばらく、新刊情報を続けます。乞ご期待!

最新情報はこちらで:

2021-06-16

ナツさんの高校生活の記「あなたはディスレクシアよ、と言われた時、正直嬉しかったんだと思います。」

もじこ塾は超進学校の生徒もいるのですが、そうでない高校の生徒もいます。

昨年、ずっと授業日誌を書いてくれたナツさんもその一人→
この春、都立高校を卒業し、調理師学校に進学しました。

そんな彼女が合格体験記と言いますか、中高でどのように苦労してきたかを大いに語ってくれました。

ナツさんは大柄で(背は170cm、靴は25cm)、いつも「づがれだ~」と言いつつも体力があり、きりっと眼光鋭く、声はよく通り、雰囲気や話し方はとってもパワフル。
誤解を恐れずに言えば、超進学校にいそうな雰囲気の女子です。

英語の覚えられなさという点では、かなり重度のディスレクシアと考えられます。
でも本当に聡明なのです!そのことは、このあとの文章を読めば一目瞭然です。

ご両親が自営業(それも、締切のある激務な職種です)のため、親御さんが仕事に追われる姿を目の当たりにしてきました。
大家族で、子どもたちが家事を手伝うのは当然という家庭環境。ナツさんも親御さんをよく気遣いますし、家事も料理もし、生活能力は高く、年齢以上に大人びて見えます。

なので、ナツさんの将来に対する考え方も「食っていくため」と非常~に現実的です。
先日も「専門学校の同級生の、就職に対する考え方が甘ちゃんすぎる!」と怒ってましたが、それはきっとナツさんの家庭環境が、仕事の厳しさを目の当たりにできるものだから・・・
そりゃあ、たいていの同級生は甘ちゃんに見えるかなと・・・

そんな、お金を稼ぐことの厳しさを骨の髄まで知っている、ナツさんの体験記です:


都内区立中~都立高校(農業系)卒、
都内の調理師専門学校に在学中

Q:もじこ塾をどうやって知ったか。入塾の決め手は。
 私がもじこ塾を知ったきっかけは、高校の英語の先生が勧めてくれたのが初めですね。
話は長くなりますが、高校入る前から英語が本当にダメで、ローマ字なんかはからっきしでしたね。高校になんとか合格したのはいいものの、先生や環境が変わったからといって出来るはずもなく、高校1年生の間はずっと赤点でした。授業をないがしろにしているわけではなかったのに、まったく理解出来ないことから先生にも心配されて、2年生の春にまずディスレクシアでは?と教えてもらい、それからいくつかディスレクシアの人が通う塾を紹介してもらったのですが、ほとんどは中学生までが対象だったり、通うには少し距離があるなどといった問題がありました。それを英語の先生に話したところ、先生が見学に行ったことがあるというもじこ塾を紹介されました。

ナツさんの当時の担任の先生は、もじこ塾が朝日新聞に掲載されたときに、何人か見学に来られた先生がたの一人です。この先生は「もじこ塾のやり方が効果的なのはわかった、でも40人学級で取り入れるのは無理。。」と肩を落として帰って行かれ、申し訳なく思ったのですが、このような形で広がりました。


正直自分が本当にディスレクシアかも分からなかったので、お試しかつ相談ができる機会があるもじこ塾は、その時の自分には最適でした

 通おうと決めたのは、体験授業を行ってからですね。今まではどういった勉強方法をしなきゃいけないのかが全くわからずに学習していたので、フォニックス表を用いての勉強で少し分かるという気持ちになっただけでも進歩だと思ったので、通うことにしました。

ナツさんはちょっと気難しいところがあって、集団クラスの見学に来たのですが、結局は個別で通うことになりました。(ちなみに、もじこ塾は高2から個別で来ることができます)。
この気難しさの理由は、のちほど明らかに・・・



Q:他の予備校との兼ね合いは。英語はもじこ塾以外でも勉強したか?
 そもそも予備校には通ったことがありません。小学生の頃に塾に通っていたことがあるのですが、その際先生と環境が合わず、3ヶ所ほど試して向いていないなと思いました。
1ヶ所目は先生が一人いて、学校のような席位置になっていたのですが、プリントを淡々と進めていき、終わったら前に持って行くという方法で、分からないところが多すぎる私としては、とてもやりにくい環境でした。

2ヶ所目は少人数制の塾で、多くても4人でした。けれど、先生の教え方と先生の性格が合わなかったんですよね。努力はしたんですよ?1年程は我慢できたんですけどね(⌒-⌒; )

3ヶ所目はM義塾ですね。環境としてはそこそこ良かったんですが、すでに勉強自体がす〜〜ごく嫌いだったので、先生とお喋りしてなんとかして逃げてましたねww
親には悪いことをしたなと思います。結局そこも1年経たないでやめた気がします。

 結果が今に繋がっているのでなんとも言えませんが。中学生までの間は英語の勉強をしたことがありませんでしたね。高校に入ってからは少しだけ単語帳を開いたりなどはしましたが、身についてはいません。基本自習が出来ないんですよ。一人で勉強できないので、そばで説明してくれる人がいないと理解につながらないので意味ないんですよね。なので、基本はもじこでの勉強が全てです。

自習ができない、つまり自力では英語がまったく身につかない・・・
ディスレクシアが授業としての英語に出会ったときの、典型的な反応のひとつです。


Q:入塾を考えている人へ、もじこ塾はどんなところと説明するか?
 自分の勉強方法を教えてくれる場所ですかね。
自分のペースで進められるので、分からなくなってもすぐ確認できるのがいいです!少人数制の授業でも他に人がいると聞きにくいですから。人間誰しも恥はかきたくないので、他人がいる環境での不得意な勉強はしにくいと私は思っています友達の教え方で理解できる人は、それは不得意科目じゃないですね。勉強してないだけです。友達や先生の説明で理解が難しい科目が、本当の不得意科目です。この文章を読んで当てはまるかもとなる場合は、もじこ、もといディスレクシアの塾を検討する価値があると思います。

「友達の教え方で理解できるなら、それは不得意科目じゃない」
「友達や先生の説明で理解が難しい科目が、本当の不得意科目です。」
名言です!

Q:もじこ塾で勉強したり話したりしたなかで、特に印象に残っていることは?
 先生が英語を読む前に読めた時ですね。読めなくても英語の勉強はできます(できません!)が、今まで全く読めていなかったのが、読めるようになったと言う事実が嬉しかったです。少しでも理解できるようになれたと思うだけで、英語に対する意識が変わりました。

特に、と言われると思いつかないんですが、英語以外にも進路について相談に乗ってもらいましたね。正直進路についてはあまり考えないようにしていたので、先生に雑談のように相談したのがきっかけで、今の進路に決まりました。2年生の夏の時点で大方決めなければいけなかったのですが、全く決まっておらず、方向性が決まっているだけだったので困ったものですよ。そんな中で相談をしたところ、いくつか学校をピックアップしてもらえ、そこから選びましたね。学校の先生に相談することも考えたんですが、正直担任は自分で決めなさい派だったので相談しにくかったんですよ。なんなら、嫌われてた説がありますからw。

調理師学校に行きたいと相談を受けましたので、この業界に詳しい人に質問して、いくつか良い専門学校を紹介してもらいました。今年は特にコロナの影響で、学校説明会が軒並みオンライン化したため、高3生にとって学校情報を手に入れるのは大変なことでした・・・

 
余談ですが、先生がすごく褒め上手なのでそれだけでも勉強に少しだけやる気が出ましたね。他の子は分かりませんが、自分やる事しっかりやってるんじゃって気持ちになりますねw
もじこはほめ上手なんですね(*^^*)。ありがとう~


Q:ディスレクシア的に、大学入試や受験勉強において特に注意するべきことはあるか?
 1つのことに集中することですね。アレもコレもと手を出したところで、全て中途半端に終わってしまいます。色々なことに手は出せたから、ギリギリなんとかなるでしょ…という考えになりますが、結果は決してついてきてはくれません。一つ一つ進めることが出来ればその時こそ結果はついてきてくれると思います。ちな、実体験ですね。なにか一つ秀でているだけで、安心感や気持ちのありようがすごく変わると思います。

本当にその通り!
アレもコレもと手を出してはいけない。「可能性を広げたい」と手を広げるのはディスレクシアの道ではない。
「これ」と決めたらそこに体力と気力を全集中して、それで突き抜ける。それこそがディスレクシアの正しい道・・・と、私も常日頃から、いろんな人たちに言ってます。


あとは、日々の生活態度なんかは大事ですね。最近はコロナの影響によって面談などを極力少なくする傾向があったため、書類のみの判断になってしまうと今までの生活態度などが影響してきます。私はとりあえず授業にはしっかりと参加し、遅刻もしないことだけは常に意識していました。成績ももちろん大切ですが、生活面や人間関係といった面にも意識を持っていくことはとても大だと思いました。

ナツさんはいつも疲れていて、「学校に行きたくない~」と文句たらたらでしたが、実は皆勤だったとは!
「高校に友達なんて2人しかいない」とも言っていましたが、学校での生活態度を良くする努力を怠らなかったとは。本当にえらいです!



Q:自分がディスレクシアだと知ってどう思ったか? 現在はそのことをどう捉えているか?
 はじめは、英語の先生に言われて、そういったものがあるんだな〜としか思わず、あっても自分は違うんだろうなと思っていました。

誤解がないようにいっておくと、ディスレクシアだったらもっと辛い思いをしていてもおかしくないから、自分は違うんだろうなと思っていました。
ディスレクシアの質問テスト→を受けてみて実際にあなたはディスレクシアよ、と言われた時、正直嬉しかったんだと思います。

自分は周りと頭の出来が違うから、努力が足りないから。ずっとそう思いながら生きてきました。
自慢じゃありませんが、見た目と会話をすると大抵は頭のいい子に勘違いされます。
子供の頃はそれが嬉しかったんですが、成長するにつれその眼差しや期待の眼差しがとても辛かった。向こうが勝手に期待して落胆するだけなのにとても悪いことをしている気分になりましたよね。いつしか、頭が悪いことをどうやって隠したらいいんだろうと、そればかり考えていた時期もあります。

。゚(゚´Д`゚)゜
わたしもナツさんに初対面のとき「ちょっと話せば賢いとすぐわかる」と言いました!
ごめんなさい。。でも、誤解したとは今も思ってません!!

ナツさんは全然頭は悪くない。字があまりに読めないせいで授業が理解できないしテストで点がとれないだけであって、その状態を「頭が悪い」と言うほうが誤解ですよね。

でも学校も、そして本人も、そこを勘違いするのです。。。

字が読めないのは、頭が悪いからではありません!


徐々に人と関わることが嫌になっていき、極力関わらないようにしました。
(これが気難しさの理由ですね。そしてこの手の気難しい印象が前に出ているディスレクシアの人は、程度の差はあれけっこういると、ナツさんを通じて気づきました。
本当は対人能力が高い人たちなのに、いろいろあって人嫌いになってるんですね。。)

話が長くなりましたが、今までの自分は仕方のないことだったんだと思うと、嬉しいと同時に開放感までありましたよね。




今では、そこそこディスレクシアについての知識もあるので、自分の特化しているところをうまく利用して生きていければと思っています。
それが正解です!



Q:もじこ塾に来て,英語は読めるようになりましたか?(正直,どのくらい英語ができますか。)
 読めるか、読めないかで言ったら、読めるようになりました!まだまだ読めないものは多いですが、通う前に比べたら断然読めるようになりましたね。
英語がどれくらい出来るようになったかと聞かれたら、まだまだなんですけどね。なんとなく読めて、なんとなく意味が分かるものは増えました。
読めるようになった時に意味も一緒に覚えれたら良かったんですけど、そこまで私の頭は良く出来てませんでしたね。
なので、一般の高校生のレベルが10ならもともと1ぐらいで、今なら盛って6〜7ある気がします。
↑いや、そんなにはないと思います…(TT)
ターゲット(単語集)の単語10項目ほどのスペルと意味を覚えるのに小一時間かかるほど、彼女のディスレクシアは重度なので。
でも、「明日テストなのでこの範囲を覚えなきゃ」となったときの集中力はものすごいものがありました。


[追記]と書いたら本人から「確かに盛りました、でもこの書き方はちょっと」「それに単語以外の勉強もしましたよね!」とお叱りを受けました(--;)。うまく書けなくてごめんなさい。
読み訓練を教える側としては、どれくらい読めるようになったかも大事ですけど、それ以上に、このつらい訓練に向き合うことに、尊さを感じてしまうんですよね。。100読めたらそりゃあすばらしいですけど、それよりも0だった人が1読めるようになったときの衝撃とか、読んでて限界を超えてしまったときの苦しさとか、そういうことに向き合ったという事実のほうが、本当にえらいと思うんです。
どれだけ大変なことに向き合ったのか、その一端を紹介するために、上のような書き方になりました。




ナツさんの学校は調理実習などのレポートが多く、しかも全部手書きで、ナツさんはよく「明日までに書かなきゃ~」とどろどろに疲れながら帰っていきました。

でも、もじこ塾に来て1年たった高3の1学期には「成績優秀者です!」と通知表に書いてもらえるほど成績が改善。
進路は指定校推薦で、校長面接と書類だけで決まりました。



ここからは、なかなか驚きの内容が語られます・・・
英語的にはかなり重度なディスレクシアのナツさんを通して描かれる、高校受験事情について。

Q:中学のときの英語力について語ってください。
 ローマ字がやっと分かるぐらいでしたね。中学生の頃は、隣の人とペアを組んで会話の練習があったので苦痛でした。正直wasとかwereとかなんだっこれ状態で、読めないし、意味もわからない状態でした。英文なんてローマ字読みするしかなくてヤバイの一言しか出ませんからね?
中学では授業が嫌すぎて、数回ですが保健室なんかに逃げて、参加してませんでしたから。

ナツさんは中学時代、誇張抜きでほぼまったく英語が読めなかったと推測されます。
(ちなみに、高校に入ってからフォニックスを教えた後も、完全に自動化するには至りませんでした)


Q:都立高入試をどうやって戦いましたか。
 少し長くなりますが、そもそも一般試験の単願だったんですよ。私立の推薦も候補にはあったのですが、あと0.3?ぐらい足りなくてお金も掛かるからということで、単願にしたんですね。全体的に勉強ができないので、ものすごい賭けでした。
なのではじめに英語は捨ててましたよねw 手を付けるだけで時間の無駄だと思いましたから。
「英語は捨てた」は本人に確認したところ、言葉のあやではなく、本当に無勉、放置したそうです(@@)

そこからは、少しでも可能性のある数学と国語をメインに勉強しました。
ちなみにVもぎは1回だけ受けたんですが、なんと判定はEでした(たぶん)。驚きびっくりでしたね。

勉強方法は今までの一般試験を黙々とやることですね。合計25回分ぐらいのテストをやりました。分からなかった所は、後日先生にしっかりと教えてもらい、もう一度でてきた際に解けるぐらいの理解度になるように頑張りました。


25回分終わったところで、最初の1回目のものを時間も測って受け直すことで、現状の力量がわかりましたね。これを数学と国語でやりました。
国語は漢字を捨てて、文章問題を中心に頑張りました。

ナツさんのキャラでこれだけ猛烈な勉強をしていたら、ものすごくがむしゃらに勉強している人に見えると思うんですが。
ほんと、学校の先生方に対し、「相当努力しているようなのにできない人については、ディスレクシアを疑うべき」ということを知ってほしいです。

と同時に、英語を捨てても入れる都立高校はあることを、改めて知りました。。。
そのこと自体は「まあ、そうですよね」という感じなのですが、この年月の間にディスレクシアの生徒が自信を失ったり頑張りすぎて燃え尽きたりして、精神的にズタボロになる件については、本当にどうにかすべきです・・・日本の英語教育界は、早期英語教育以上に、こういう生徒たちについて考えるべきです。


またナツさんは、日本語の読みに関してはお父さんの猛特訓を受けたとも言っていました。
「今でも勉強中に父親に背後に立たれると、涙がぶわっと出てくる」と語るほど、過酷を極めた特訓だったようです(「だから父親には後ろに立たせないw」とも言ってました)
こんなところからも、万事において激しく取り組んできたことがわかります。。。




Q:もじこ塾に通っている生徒に、激励のことばを。
これからもコツコツと地道に努力するだけで、大きく変わりますよ٩( ‘ω’ )وがんばって!


Q:将来の夢を1行でどうぞ
 食品に携わる職につけたらいいなと思っています。


~~~

ナツさんは英語こそ読めませんが、料理は上手だし、気は利くし、発言は鋭いですが相手思いだし、人のために動くことをいとわないので、きっと職業人生は順調なことでしょう!

もじこ塾は常に「納税者を育てること」を目標にしてきました。
もじこ塾はバリバリの英語塾ですが、英語力以上に大事なことはたくさんあると思ってます。・・・自分ができることで稼ぐ力をつけて、まっとうな社会人になり、税金を納められる人になる。これはとても大事なことです。
英語ができるようになるのは、そのための手段であれこそすれ、まっとうな社会人になることを阻害するものであっては、断じていけません。

ナツさんは数年内には、立派な納税者になっていることと思います!
むしろ、仕事かメインの生活になったときに、ナツさんの良さが大いに発揮されて、一目置かれる存在になることうけあいです。
英語にはだいぶ、いじめられたナツさんですが、それでももじこ塾の目標を体現しているのは、実にすばらしいことです。

今まで不当に苦労した分まで、やりがいのある社会人生活になるよう祈ってます!