ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2024-12-31

どの入試が一番きついか?

ディスレクシア的に、どの入試がいちばんきついか、もじこ塾の経験をもとに、独断と偏見でまとめてみました。


1位 高校入試

【総評】
高校入試は、ディスレクシアには中学入試よりも大学入試よりも辛い戦いという印象。主な要因は、入試形式の点で大学入試より多様性が少ないこと、かつ書字量が多いこと。また英語という科目からほぼ逃れられない点で、中学入試よりも厳しい。
親から精神的に自立する時期(反抗期)と入試が重なるのもつらいところ。

【良くない点】
×英語という科目から逃げる方法が大学入試より少ない
×内申という存在があることで、入試における中学の教師の裁量が大きく、普段の学校生活が学校に人質に取られている感覚に近い。点数を稼ぐために同調圧力にさらされており、これがディスレクシア的には辛い。
ノート提出など、書字負担の重い課題が課される。そのための配慮をとる戦いもとてもハード。
×単一のピラミッド型評価(それも、ディスレクシア的に非常に分が悪いもの)に押し込められる。これに耐えられるほどの視野の広さ、体力、経験値が15歳だとまだないため、本人にとって苦しい戦いに。

【良い点】
◎受験勉強が特性理解のきっかけになって、高校生活を通じて自分にあった勉強方法を試行錯誤できた場合は、長い目で見ると最良の展開となる。ハードモードですが。
◎セーフティネットの存在。高校の場合、どこかしら入れるところはある。通信制、チャレンジ校、エンカレッジスクール、山村留学、さらには海外留学もある。
◎中学で配慮を受けていれば、公立入試では法律上は同様の配慮を受けられる。同様の私立も増えつつある。
◎単願推薦など、学力試験を回避する方法もある。



2位 中学入試(ガチ勢)

【総評】
進学校を目指すハードな中学受験を指します。ディスレクシアでなくても進学校を目指す中学入試は、何年も勉強漬けになる厳しい戦いです。そんな中学入試のディスレクシア的辛さの最たるものは、他人を蹴落とすのをよしとするメンタリティ(「人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか」by太宰治)が身についてしまい、それが英語で「蹴落とされる」側になったときに本人を苦しめることだと、個人的には思っています。
また、ガチ勢の中学受験はディスレクシアに気づかずに戦われることも少なくないため、「10回書いて覚えないなら100回書きなさい」的な根性論を周囲が、そして本人が正しいと信じることが多いのも、本人を苦しめます。
要は、中学受験の困難はディスレクシアをハッピーにしない種類の洗脳がかかってしまうことにあります。

【良い点】
◎入試科目に英語がない
◎自由を重んじる最難関中の多くは、生徒の多様性を尊重しているため、ディスレクシアの存在を認めてくれる。

【悪い点】
総評のほかには
×書字の負担が重い。
×配慮入試はほぼない(もじこ塾の知る限り、中学入試で配慮を受けての合格例は非常に少ない)

【英語について】
・進学校の英語の授業はもともとハイペースのため、ディスレクシアにはハード。他の生徒の何倍も時間と労力を投じて、ようやく平均点に届くかという感じ。
・文法事項の徹底がメインという点では、授業内容はディスレクシアに合っている
・中学の間はフォニックスを徹底すると、大学受験に役立つ
×普段の授業はともかく、テストでPC利用可という進学校は少ない(2024年現在)
・英検要件がないかは要チェック。「中学卒業までに全員が英検○級合格」とうたう学校は、目標達成できない生徒を退学させている可能性もある。


3位 大学受験(一般入試)

【総評】
2025年の大学受験英語界隈では共テか英検かという、なんとも気の進まない選択を迫られている。共通テストは文字量が膨大であることがディスレクシアを苦しめる。一方、英検の存在感が増していることで、英語が苦手なディスレクシアは対策に時間も取られるし、心も削られる。いずれにしても、短時間で大量の英文を正確に読んで答えるのは、ディスレクシアにとっては非常に不利な戦い。

【良くない点】
×英語が足を引っ張る。特に共通テストの超長文化は、心を病む人が出るレベル。
×マーチ以上の一般入試の英語は超長文化が進んでおり、ディスレクシアにはきつい。

【良い点】
◎配慮入試がおそらくいちばん進んでいるのは大学入試。特に大学入試センターが配慮メニューの拡充という点で果たしている役割は大きい。


「令和7年度 受験上の配慮案内」より


◎大学はこの数年で支援室の充実が進んだ。修学上の配慮申請の仕組みが整っている大学が多く、どの大学でも手続きは粛々と進む印象。(これを知っていると、多くの大学付属校が修学上の配慮に消極的なのは不思議な感じがします)
◎どんなに悪筆でも、答案の字を読んでもらえる(字が汚いだけでは減点理由にならない)
◎マークシートなど、書字の少ない入試も多い

【英語について】
・大学受験を一般入試で突破できれば、大学の英語の授業にはついていける。
・旧帝大以上の大学入試対策は、いまも本当の英語力につながる。



4位 中学受験(ゆる)

【総評】
ゆるい一貫校に中学から入学することを指します。
もじこ塾が小学生の保護者の方から学習相談を受けた際に、首都圏の方に最も推すのはこの道です。

【良い点】
◎入試に英語がない
◎得意科目で評価してくれるような「特色入試」を設けていることが多い。このような学校の多くは入学後も探求学習が多く、総合型選抜を戦いやすいカリキュラムになっている
◎小さい学校や新設校の場合、配慮やツール利用に理解があることが多い。前例がなくても学校側が勉強熱心で、対応しようとする

【英語について】
フォニックス、会話、文法を行わない場合、英語がまったく身につかない可能性もある



5位 大学受験(年内入試)

【総評】
総合型選抜、公募推薦、高大連携、そして昔ながらの指定校推薦を総称して、最近は「年内入試」と呼ぶ。ディスレクシアの困難のかなりを回避しながら戦える入試形態。ディスレクシアが難関大以外の大学を目指す場合、基本的にはこうした一般入試以外の方法を考えるべき。

【良い点】
◎入試科目に英語がない
◎プレゼンや探求活動など、ディスレクシア的に得意なことで戦える
◎書類作成にPCを使えることが多い
◎ディスレクシアを克服しようとするストーリーを書けると評価は高い
2024年の入試では、「ディスレクシアの苦労を通じて気づいた社会課題に取り組むには、貴学で○○を学ぶ必要がある」と語って合格した人が複数出ました。

【注意点】
・高校に入ったらすぐに動き始める必要がある。なんなら、高校選びの段階から総合型選抜対策は始まっている
・小論文の練習は、高校に入ったらすぐに始めるくらいでちょうどいい
・特性ゆえの苦労がある場合も。言語化能力が低い、自閉傾向が強い(他人にわかるように自分の考えを提示できない)、多動が強い(逆張り思考が強すぎる)と苦労する。(純粋ディスレクシアは戦略的であり、常識を理解しているので、上手に戦える)

【英語について】
・2024年現在、年内入試には英語資格要件がある場合も多いが、探せば、ないところもたくさんある。一方、生徒のなかには年内入試の要件を満たすため、青春のすべてを英検に捧げているケースも(犠牲が多いし、ディスレクシア的にはこの方面で有利な条件下を引き出すのは険しいので、あまりお勧めはしませんが)。
・入学後、英語の単位取得がどのくらい大変かはチェックすべき。これが本当に大変な場合、配慮をうけることよりも、進学先を再考したほうがよいケースも


番外:小学校入試
ディスレクシアにとって、いちばんきついのは小学校受験だと思います。その厳しさは入試そのものではなく、私立小学校特有の事情、すなわち学校側からの同調圧力が高い点にあります。

・私立小の多くはは2024年現在、「当校にディスレクシアの前例はない」(そんなはずはないのですが)「うちの方針に合わない人はよそに行ってください」と言うようです。
・配慮を受けるのも非常に大変。「前例がない」と言われるなか、気を遣いながら丁重にお願いして、ようやく施してもらえる種類のもの。内部進学せず、ゆる中学入試を経て別の私立中に行き「学校との関係がこんなに楽になるとは」と語るケースも。
・他人を蹴落とすメンタリティや選民意識が植え付けられると、合理的配慮の背後にある多様性やインクルーシブといった価値観と相容れず(親が)苦しむ。

【英語について】
私立小は英語教育を低学年から行っている場合が多い。フォニックスを体系的にしてくれるなら◎だが、それがなければ誤学習を重ねることになるため、辛いだけでなくおそらく有害ですらある。

1 件のコメント:

  1. 学歴はすごく低くなってしまいますが、英語系以外の専門学校に進学し、専門を卒業した後で(在学中でも単位の取得は可能)放送大学に行き学士を取る事が考えられます。と言うか、私はそうしました。

    英語を避けて避けて避けまくって、それでも学士が欲しい場合にはお勧めします。

    放送大学は今は単位認定試験が在宅なので、教科書を見て試験を受ける事ができます。

    放送大学は理系〜文系、心理系まで揃っているので、私は放送大学にハマってしまいました。

    放送大学卒でも立派な大卒だと言う事を強調しておきます。

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