ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2023-06-22

Ron君の受験体験記「いつ来るともわからないその日を夢見て」

Ron君は、もじこ塾で中2から浪人までの6年にもわたって、もじこ塾の集団クラスで英語を学んだ、集団組の第1世代です。
彼が、合格体験記を書いてくれました。

Ron君は、発言が基本的にあまのじゃく。
こちらが言ったことに対し、ひとひねりした切り返しをしてきます。明るく知的にとぼけるといいますか。。
(ただし、今回は彼にしては珍しく、素直な回答もあります。)

幼少期から漢詩や古典に親しむような、文化資本豊かな家庭に育ちました。勉強は好きです。中高はサッカー部。
ADHDというほどではありませんが、多動です。ひねった切り返しは、そんな多動とも関係がある気がします。
中高時代は、青年将校のようにりりしく制服を着こなしていました。
本人いわく聴覚過敏があり、物音に気をとられやすいとのこと。この手の生徒に多い、ふわっとしたソフトな声で話します。

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・新御三家レベルの一貫校卒

・某マーチで仮面浪人後、慶應義塾大学へ。東大を二度受験するも不合格

・中学時代に、ディスレクシアの診断あり

・合理的配慮は大学受験までは受けず。大学では中国語の授業のみ、配慮を検討中

・文系。志望学部は特になし。興味の幅が広く深いとも言えますし、ひとつに絞れない(←多動的)とも言える気がします。現在は、地政学、飛行機や船の設計、海外サッカー、気象予報士、世界遺産検定、魚を釣ってさばいて料理すること・・・などなどに興味あり。


それではどうぞ:

☆  ☆  ☆

お久しぶりです。RONです。一応受験が終わったので受験体験記を書くことと相成りました。

結果から言えば僕は慶應に通っていますが、私立の英語は重過ぎると考えて東大を想定した勉強がほとんどだったので、東大中心の話になると思われますがご容赦ください。

かなり長いですが、書くのも難儀だっただろうと慮って最後まで読んで頂けたら幸いです。


Q:もじこ塾をどうやって知ったか。入塾の決め手は?

そもそも僕は蒲田のMaru先生にフォニックスを習っており、もじこ塾を知ったのは、Maru先生に塾では受験英語はやらないからと言って紹介されたからです。

Ron君は、ジョリーフォニックスが日本に上陸してすぐくらいの時期に学んだ、日本シンセティック・フォニックス史初期の生徒のひとりです。

中学に入ってから読めなさに気づくまでのことは、こちら→

彼を6年のあいだ見続けた今、ディスレクシアとフォニックスに関して言えることは:

  • フォニックスを最初に正しく習うことは、ディスレクシアが英語を習得するには不可欠と言っていい。
  • ディスレクシアの生徒は、大学受験を前にしても、「自分はフォニックスを使っている」と実感している。
  • フォニックスは初見の単語を読むこと、スペリング、そしてリスニングを助ける。


Q:他の塾との兼ね合いは。英語はもじこ塾以外でも勉強したか?

僕は浪人した半年間駿台に通った以外は塾に行っておらず、英語は学校と、もじこ塾のみで済ませていました。

Ron君は最初の緊急事態宣言の頃以外、もじこ塾を皆勤しています。定期試験前後でも、欠かさず授業に出席してくれました。

多少わちゃわちゃしているものの、テンションも明るく穏やかで一定していました。ハードな遠足の後、どろどろに疲れているはずなのに授業に来たこともありましたし、クラスメートがぴりぴりしようが激高しようが、終始穏やかでひょうきんなノリを崩しませんでした。


Q:もじこ塾はどんなところと説明するか?

もじこ塾では、ディスレクシアなど生徒個人個人の特性に合わせて教え方を変えたりするので、授業形式もかなり自由で、英語力が向上しやすいと思います。

また、生徒間の交流も盛んで、授業を一緒に受ける友達だけでなく、先輩からも助言を受けやすい環境でした。

ありがとう、これからはRon君が助言を与える立場になるのですね。


Q:ディスレクシア的に、英語の勉強において特に大変だったことは?

ディスレクシア的に英語の勉強において特に大変なことは、僕個人の私見ですが英単語が覚えにくいこと、そして文章を読むスピードが遅いことです。

まず、英単語の話ですが、これは特に英語を習いたてのときに顕著であると思われます。英語を習い始めた直後に英単語を覚えようとすると、一つの単語につきスペルと意味と発音との三つを覚える必要があり、僕の場合はスペルと発音を関連付けることができなかったので、とても覚えきれず、テストがある日はいつも最終下校時刻まで学校に残って間違えた一単語に対して50回ないし100回ずつ書き連ねる補習課題(!!!)をこなしておりました。50回書いても覚えられない単語も多くありましたので翌日の追試にも引っ掛かり、たいてい課題に追われておりました。

そこで僕は約一年かけてフォニックスを固め、特殊な綴りをする単語を除けば発音を聞いたらそのまま綴りを書けるようにしました。

ディスレクシアにとってのフォニックスの意味を語ってくれています。特にの部分が。

ディスレクシアはスペルを覚えるのが苦手です。よほど頑張らないと、聞いた通りにしか書けません。なので「発音を聞いたらそのまま綴りを書けるようにする」の精度を高める作戦が効果的なのです。これが、フォニックスのしようとしていることです


ついで根幹となる単語をその語源から覚えて脳に印象付け、派生語は類推するというかたちで覚える総量を減らす作戦に出ました。

さらに鉄壁(鉄緑会が出している単語帳のことです)を愛用することで、普通の受験生よりは単語量は少ないはずですが、東大の問題に解答できるくらいの単語量を身につけました。



僕は音を使うと覚えやすいようでしたので、鉄壁のCDを買い一年ほど毎日三章ずつ1.3倍速くらいで聞いて発音をしておりました。

Ron君には高3の夏から本格的にシャドーイングを自習するようになり、これが効いたようです。この後に出てくる「急に読めるようになった」を支えたのだと思います。

・・・以上、さらっと言っていますが、英単語を覚えることに費やした努力の量は、並大抵のものではありませんでした。



次に英文を読むスピードについてですが、ディスレクシアの人は普通の人に比べてはるかに遅いようです。

僕は国語のテストで時間に困ったことはほぼないですし、半年ほど駿台のEX東大文系演習コースにいたのですが、その中でも日本語を読むのは早い方でした。

もじこ塾の生徒にはこのように、「日本語を読むのはむしろ速い」と語る生徒が多いです。どうやら、日本語(特に漢字)は、読むときに頭のなかで音にしないで読めるからのようです。

しかし、英文を読むスピードには中学一年生のころから悩まされ、定期テストの英文を時間内に読み終えることは高校二年生になるまでありませんでした

3の夏に東大オープンを受けた時には、半分も読み終わりませんでした。

東大の問題にすべて目を通せるようになったのは、早稲田大学法学部の入試翌日、つまり216日でした。先生に言われるままに大量の英文を読んでいたら、いつの間にかスピードが上がっていたようです。

つまり、二度目の東大入試の1週間前です。。

【追記。本人から「一度目の東大入試の1週間前です」との指摘がありました。】

進学校で読めなさを抱えながらも、このように英語の勉強を続けられたのは、特性理解があったからだと思います。「言われるがままに大量に読む」といっても、本当にがむしゃらに読んではいけません。何をミスしたか、何がうまくいったかを確認しながらの作業が重要です。


Q:逆に、ディスレクシア的に、大学入試や受験勉強において有利に働いた点はあるか?

ディスレクシアが原因かどうか分かりませんが、僕はなぜか世界史と地理が得意だったので、社会に回す時間を数学に充てることができました。

というのも、世界史と地理に関しては先生が一度言及したり、自分で見たりすればたいてい覚えられたからです。

Ron君は地理がずば抜けて得意です。私には、ディスレクシア的な得意さだと感じられます。歴史と地理、さらには地学にまで、さまざまなストーリーやトリビアや因果関係がからみあった壮大な知識体系を、着々と拡張しています。「一度知識がつながり始めると、どんどんつながっていく」とも言っています。



世界史の用語は、書いて確認していました


ディスレクシアを持つ人は得意科目はとびぬけてできる傾向があるようなので、社会は主要教科ではありませんでしたが、主要科目の数学等が得意な人は受験に有利なはずです。


Q:在籍校は特性持ちに寛容でしたか?

在籍校が特性持ちに寛容だったかどうかは分かりませんが、努力をしていれば温かい目で見られ、放課後は部活があると言えば、追試の時間を昼休みに融通するなどはしてもらえました。

Ron君らしい、あまのじゃくな発言ですね( ´_ゝ`)

「学校の東大クラスの誰よりも、勉強量は多かったと自負している」と、しんみりと本音を語ったこともありました。

努力しっぱなしの6年間でした。


Q:自分がディスレクシアだと知ってどう思ったか? 現在はそのことをどう捉えているか?

僕が自身にディスレクシアの可能性があると知ったとき、幸か不幸かその場にディスレクシアの代表例としてレオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタインのポスターが貼ってあったので、ショックを受けるどころか、むしろうれしく思いました。

現在では、ディスレクシアの人はたしかに定型の人に比べると不得手な分野も多いですが、それこそアインシュタインなどのように自分の得意分野においては圧倒的な能力を示すことができ、その得意分野を生かすことができるような環境にいることができれば、そこらの人より輝けるのではないかと思っています。


Q:中学のとき(入塾時)の英語力について語ってください。/もじこ塾に来て,英語は読めるようになりましたか?(正直,どのくらい英語ができますか。)

入塾時、つまり中学二年生のときの英語力は、英文を作るときは名詞や動詞等を並べるのに手いっぱいで、冠詞や三単現のSなどを考える余裕もないほどでした。 

最終的に英語力は一般的な東大受験生レベルになりました。

Ron君がもじこ塾に来たときは、「英検3級に合格したら、もうもじこ塾では面倒を見れないので卒業ね」と申していましたが、結局は二度の東大受験まで見届ける展開に。

いっぱいいっぱいだった中2時代から、東大受験まで戦えるようになるとは。。(T T)

「英語(だけ)ディスレクシア」の成長過程を見せてもらいました。


Q:もじこ塾に通っている生徒に、激励のことばを。

僕の経験では、学力とはいくら努力してもすぐには結果は出ず、ある日急に上がるものでした。

特に特性持ちの人に関しては、八割がた電気回路を完成させても電気が通らないように、完全に理解するまでその分野の成績は上がらないので、普通の人よりも時間がかかるようです。

しかし、できるようになったら最後急速に伸びるので、いつ来るともわからないその日を夢見て頑張って欲しいです。

ちなみに僕は本気で受験数学を勉強し始めてから、その伸びを実感するまで一年半以上要しました。

英語に関しては数えることが難しいので、割愛します。

あまのじゃくですね(笑)。
割愛されちゃったので補足しますと、
浪人の【→現役の】2月中旬に伸びを実感するまでには、フォニックスの定着(中学時代すべて)、構文把握(高2)、その後の圧倒的な多読(高3~浪人)、シャドーイング(高3~浪人)、鉄壁(高1~浪人)という長い長い下積み時代があったというわけですね。

現在は、大学の課題でペーパーバックを読んだりしているようなので、英語力は維持orのびているようです。一方、びっくりするような読み間違いを生徒の前ですることもあり(Ron君のことなので、生徒の気を楽にするために、わざとしているのかもしれませんが)、一般基準からみたらもう十分に英語が出来る人の域に達していても、読みの苦労はずっと続いているらしいと知る瞬間があります。

それはそうと、比喩で語るあたりが、すでにディスレクシアですね。


Q:将来の夢を1行でどうぞ。

僕の夢は、自分の能力を理解してもらえる職場で、自分の才能を生かして自由にやりたいように働くことです。

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いまは気象予報士になるための勉強と、海釣りに熱中しているRon君。
「努力が実を結ぶとは限らないが、後悔しないように腹をくくって努力するしかない」だったら明るくいきましょう、というのが彼のスタンス。
もじこ塾の新人助手として、中1から高2さらには浪人生まで至る、非常に幅広い学年の生徒たちにとって、良き先輩となってくれています。


Ron君とともに、もじこ塾のコミュニティは成長を続けます!