16/06/18 1ヵ所訂正しました。難波先生、ありがとうございます。
BBカードの考案者、難波悦子先生(セルム児童英語研究会)をお迎えして、ディスレクシア英語指導にBBカードをどう取り入れたらよいかを考える、スペシャルなセミナーを行いました!
難波先生、もじこ塾のセミナーにご登場下さり、本当にありがとうございます。
BBカードとその理念をしっかりと学び、ディスレクシア英語指導に生かしていくことが、感謝の気持ちをお伝えすることになると思っています。
今回は、参加者のY. I.さんが、講演録を作って下さいましたー!!
ありがとうございます!!
こちらで取っていたメモから少し補足して、ご紹介します:
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冒頭、もじこさんより以下の紹介がありました。
「本セミナーが開催されるきっかけは、2016年3月に東京で開催された英語教育UD研究会で、難波先生ともじこがそれぞれプレゼンテーションを行い、難波先生から、「ディスレクシア英語教育は大から小であるべき」がBBカードの理念に一致しているとのご指摘を頂いたこと。今日は、難波先生に、3月のプレゼンと同じ内容をお話していただき、ディスレクシアの子供の英語教育について悩みを抱えている参加者の皆さんと共に、私(もじこ)自身も多くのことを学びたいと考えている。
本セミナーの準備として、参加者の皆さんが抱えている悩みなどについて難波先生にメールでお伝えし、お返事もいただいている。難波先生のメールには、深い言葉が溢れているので、読みあげる形でご紹介したい。『これまでの日本の語学学習法は、易から難へ、そしてspoon feeding(スプーンで口に入れてあげるような方法)で、やってきた。その結果として、教師が子供たちを見て言うことは、英語が聞き取れない、言えない、読めない、書けない、といったないない尽くし。しかし、これは教師の側から見ただけのこと。教師が教えれば教えようとするほど、子供は学習の緊張から逃れられない。子供を学習の緊張から解放させてやることが重要。』
また、戦後の英語教育は、Jack and Betty以降、70年間変わっていない。なぜなら、ALTが入っても、オールイングリッシュ形式になっても、"教える"という点は変わっていないから…とも。
ご紹介はここまでにして、難波先生、よろしくお願いします。」
☆ ☆ ☆
難波先生のご講演の趣旨は次のとおり。
1.BBカードメソッドの基本は「教えない」
「教えない」とは、「生徒がすでに持っているものを基に、気づかせる」ということ。
「生徒がすでに持っているもの」とは、英語の知識ではない。わからないことの意味を推察する力とか、羅列されたことばの中から自分なりに規則性を見つける力など、その子がすでに持っている能力のこと。
子供を観察していると、それぞれ強い力が異なる。Visual(視覚能力)が優れた子、Auditory(聴覚能力)が優れた子、Kinesthetic(身体能力)が優れた子など、それぞれ異なる。その子が得意な力を生かしてやることが大切。
2.BBカード誕生のきっかけ、理念
もともと、BBカードが誕生したきっかけは、私(難波)の英語教室にいた、言い方は悪いが、箸にも棒にも引っかからないような子供たちが楽しんでできるようにと考えたこと。
教師が教えようとすればするほど引いてしまい、自分の殻に閉じこもろうとする生徒がいる。このような子に対し、どうするか。
「サ・シ・ミの法則」というのがある。50年前に石神井中学の先生が言ったこと。
学校の1つのクラスのうち、上位3割(「サ」)は、教えなくても自分で規則性を発見して学んでいく子供、
その次の4割は、教えられて何度も練習すれば身についていく子供(「シ」)、
残り3割は教えられて何度も練習しても、残らない子供(「ミ」)となる。
言語学者のクラッシェン(Krashen)が言っているように、ことば(言語)というものは意識的な学習によっては身につかない。特に、EFL環境(英語が外国語である環境)にいる日本の子供たちは、学習によって英語を身につけるのではなく、自然に気が付いたらできていた!となるのが良い。そのためには、現在、学校で教えているような文法事項などの明示的知識をいくら教え込んでも、自分から発話する瞬発力は出てこない。
反対に、BBカードで遊んで、はじめからセンテンスを言えるようになっていれば、子供は必死に覚えなくていい。ただ言うだけで良い。「おまじない」も、カードの「センテンス」も、言えるところだけで良い。
3.実際にBBカードで遊んでみる
それでは、実際に、本日の参加者の皆さんに4人一組でチームになって、BBカードで遊んでもらいたい。
まずはダイヤのカード16枚を使った「基本ビンゴ」。
(「shuffle your cards」と声かけし、4×4にカードを並べてもらう。
カードを配り、並べてもらっている間、「おまじない」として、不規則動詞の活用を先生が言い、生徒にリピートさせる。take-took-taken-takingなど。
配り終わったら「おまじない」も終了。「おまじない」の意味は一切解説しない。)
私(難波)がセンテンスを言ったら、まねして、子供の気持ちで、どのカードか考えてほしい。
(先生が"Lucy Locket lost her letter."と字札を読み、生徒役は絵札をあてる)
子供がわからなくても「どれかな?」と言って考えさせる。
全部はわからなくても、letter
という言葉で推測できて、あてられる子がいる。あたったら「ピンポーン!」「あたり!天才」、外れたら「ブッブー!」、それだけ。「できた/できない」ではなく「あたり/はずれ」だけ。楽しめばよい。
その過程で、「Lucy Locketちゃんは、何をなくしたって?」(「手紙」)「そうだね、letterをなくしたんだね」というような「意味をとるための質問」をすることで、letter
という単語を知らない子でも、音と絵を見て、「letter =手紙」というのが、その子の中で結びつく。
自分からピックアップするように持っていく。
1つのセンテンスの中のすべての語を、最初からわかる必要はない。あいまいさに慣れていってほしい。
「あいまいさ」に耐えられる力をつけていくことが大切。
あいまいな状態でもセンテンスを言えることが、後々、文法を学ぶ時に、帰納法的に納得できることにつながっていく。
このあいまいさに慣れさせるため、B.B.カードは、いちばんやさしいダイヤのカードからでも、機能語(前置詞など)を多用したセンテンスや、過去形、未来形、現在完了形などいろいろな時制のセンテンスを入れている。
B.B.カードは全部で64枚あるが、これで英検3級レベル(中学校終了程度)の文法事項をすべてカバーしている。意味がわからなくても、言えるようになればよい。
(ここで会場から質問。「カードの意味を教えてほしいと言われたら?」
難波先生の答え「『わかったら教えて』と言います」)
文法を気付かせるとは:
Ken keeps me waiting.
Kate keeps me waiting.
Ken and Kate keep me waiting.
と言えば、子供たちは気付く。
Happy Henry has gone to Hawaii.で、
「Happy Henryちゃん、どこ行ったかね?」(「ハワイー」)
「じゃあ、Happy Henry が北海道に行ったら?」
「(Happy Henry has gone to Hokkaido)」
はじめから、子供がすらすら英語のセンテンスを言えるわけがない。何度も、ビンゴやゲームなどの遊びを通じて、絵と音に触れていき、反復を自然な形で繰り返すことで、潜在意識の中に、絵と音を内在化させることができていく。
そのためには、手間暇をかけていかなければならない。ことばを覚えさせたいなら、手間暇をかけないと無理。
特定のグループが勝てるよう、読む字札を調整することも。これはほめるため。
こういうことのできるゲームなら、できる子とできない子の垣根を作らない。
さらに遊び方の紹介。
・神経衰弱
(例文を聞いて、対応する絵札を表にする。正解した人、つまり対応する絵札を表にすることができた人が、次は例文を読みあげる役になれる)
大人はテキトウな札を選ぶが、子供は自分がビンゴになるような絵が返せる札を読む。このとき、子供は右脳と左脳を使っている。
・ただ言えるだけの例文をもとにした遊び。
(子供が64文をすべて言えるが、意味はわかっていない状態で、
例えば、Gentle Giraffe looks at George.に対し、
先生が、Gentle Giraffe likes to look at George.と言い、生徒も繰り返す)
2~3枚繰り返すと、likes toが入る。何をやっているか分からないまま、言えてしまう。
教えることに熱中すると、「覚えた/覚えていない」で判断してしまう。
だが「言えればいい」なら、いつの間にか覚えてしまう。
子供が言えるようになった時点で、意味を聞く。
「わかって、納得して、覚える」だと、わからないものは覚えられない。
スプーンフィーディングの弊害。通常の反復では、I amばかり反復して、次にYou areばかり反復するという方法をとる。そうではなく全体で入れる、つまり、is/are/wasを同時に入れる。未来形などもこの方法で入る。手間暇はかかるが。
「なんだか分からないができる」は英語嫌いをなくす。
4.BBメソッドの基本三原則
BBメソッドの基本三原則は、
(1)全体から個へ、
(2)基本は遊んで学ぶ(学習ではない)、
(3)いい加減が好い加減(言葉の曖昧性に耐えられる力が生徒自身の「気づき」につながる)、というもの。
これによって、特に小学校段階でBBメソッドを取り入れると、
(1)反復というルーティンワークを子供に悟られずに行える、
(2) 「遊び」という形式をとるため、できる子とできない子の垣根を作らない、間違いを恐れない、
(3)英検3級レベルの64センテンスが身体にしみこんでいることが、中学以降の英語学習のよりどころとなる、
(4)文法については中学校で帰納法によって気づける、
というメリットが生まれる。
5.BBカードの学習段階
BBカードの学習段階は、
第1段階が「絵と音の一致」
第2段階が「音と意味、音と文字の一致」
(先生の言葉の模倣と反復を繰り返すことにより、いつのまにか記憶に定着する)、
第3段階が「置換(substitute)と変換・転換(recast)」
(転換とはlikes toを加えることなど。recastでは訂正を大げさに行わないことが大切。子供の発言をそのまま受け止めてからさりげなく言い換えれば(「takedね、took」)、子供はこっそりと正解を学ぶ。
難波先生から、訂正のご依頼がありました。
たいへん勉強になるので、そのままの形で掲載いたします。
recastでは子どもの間違えた表現を先生が繰り返すことはしません。
ですから、「そうね。」といったん引き受けて、間違えた子に向けてではなく、全員に「took」とリピートを促します。
こうすると、間違えた子は自分の間違えたことに気づきつつ、先生が聞き間違えてくれたことで恥をかかなくて済みます。
しかし、過去には「先生、○○ちゃんは間違ったこと言ってたよ」などと小さな親切(?)を発揮してくれる子もいたりしましたが・・・。そんな時でも「あら、そう?」で済ませます。
「子どもの間違えを先生が繰り返さない」はrecastの鉄則(?)と言ってもいいかもしれません。
第4段階が「選択(類推による作文)」。
第3段階の置換とは、主語や目的語を置き換えることにより作文の練習となる。変換は時制を変えること、転換は基本文をもとに違った意味の文に変えていけること(例:Betty Botter wants to buy some butter. She likes to buy
some butter.)である。
この段階ができたら、第4段階の「選択」が可能となる。
ここでは「BB作文」を行う。(2枚のカードの、主部と述部を合成した文章。Betty Botter has gone to Hawaii、The flying rabbit will get to the forest to buy a cake.など。)そこから文型練習、自由作文、会話など変形練習を含む文法練習が可能となり、自分で発話、作文することができるようになる。
BBの反復と学校の反復の違い。学校とBBでは、反復の回数は同じだが、BBの方が
広範。学校では、I likeならI likeばかり反復し、その後二度とI likeの反復に戻ることはない。
インプットの重要性。BBの後は本読みと、先生とのインタラクションが大事。そしてインタラクションのためには、核になるものが必要。それが64文。
外国語環境になくとも、この核があれば、そこから広がっていける。
小学校でBBカードを導入する利点。
(1)ばらつきのない小学校英語教育が可能(学校外での学習歴に関係なく、みんなで一緒に楽しめる)
(2)英語の専任でなくても使える。CDがあるから。学校の先生もCDを聞いているうちに覚える。
(3)帰国生の子に読み手になってもらうなど、できる子も退屈させない。
(4)英語の素地を作れる。リズム、イントネーション、アクセント、リエゾン。文字。準動詞までの文法。そして作文まで。
BBカードは遊びだから、間違いも許される。間違えたくない環境だと挑戦しなくなる。その姿勢だと英語は苦手になる。いいかげんでOK。それでも、だんだんもやもやがはっきりしてくるもの。
多読vs.訳読。
多読によって本が読めると、英語が好きになり、自力で英語力を高めていける。つまり自己教育力がつく。
BBカードの目標。
難波先生の目指す、BBカードで遊びまくった子供の小学校卒業段階での目標。
最低段階は、64のBBセンテンスを自分で言えて、意味がわかること。
その次の第2段階は、センテンスの変換、転換ができること。
最終目標である第3段階が、センテンスを自分で作れること(自発的な作文と発語ができること)。
6.ビデオ鑑賞:
最後に、実際の子供たちの様子をビデオで見てほしい。(ビデオ鑑賞で、講演は終了。)
☆ ☆ ☆
質疑応答(主なもの)
Q. ディスレクシアや学習障害のある子でも、BBカードを通じてセンテンスを言えるようになったとしても、どこかの段階で、言えるようになったセンテンスを「読む」という段階が必要になると思うが、どのようにしたら読めるようになるのだろうか。(もじこ)
A. 自分(難波)は、これまで、ディスレクシアのお子さんを指導した経験はないので、ある北海道の先生の手記(LDやディスレクシアのお子さんの指導に関するもの)を参考として配布した。
ただ、BBカードに遊びを通じてセンテンスを諳んじられるようになった子どもでも、字カードを見て、すぐに読めるわけではない。最初は絵カードと字カードの番号でどの文が分かり、語を図形的に捉えて、全体語形的に読んでいる。ただ、それを繰り返していくことで、子供自身が「読める!」という自信をつけていく(途中で番号をシールで隠すことも)。
Q. 文字学習を始めるタイミングは、いつになるのか?
A. BBメソッドでは、最初にアルファベットは教えない。ただ、例えば1時間のレッスン全部がBBカードというわけではなく、最初は英語の歌を歌ったり、Simon Saysのゲームなどをやったり、英語の音やリズムに慣れる時間はとる。その中で、自然にABCソングなどを覚えていく。BBカードの64センテンスを完全でなくても覚えて、言えていたら、フォニックス的な遊びをやって、音と字の一致を図っていく。たとえば、Betty Botterのセンテンスに”b”の音がいくつ入っているかな?と聞くゲーム等を行う。
Q. BBメソッドでは、フォニックスをやるタイミングがかなり遅い、というかアンチ・フォニックス的な立場だなと感じたが、どの段階でフォニックス的な指導をするのか?(もじこ)
A. 実は、フォニックスはいつから、どこから、入れてもよい。フォニックスの規則性を教えたとして、自発的な発語につながるわけではない。ことばは規則ではないから。まず、音を入れておいて、音の認識ができなければ、ダイヤのカードのセンテンスの韻を踏んでいることの規則性に気づくことはできない。
Betty Botter bought some butterに対し、How many B sounds are there?(いくつBの音が入っている?)と聞くが、正解するには年月を省いてはならない。せっかちはいけない。
BBカードを説明するにあたり使っている枕詞がある。それは「だまされたと思ってやってみて下さい」(会場笑い)。
覚えられる子はすぐに覚える。座っていられない子、飽きっぽい子は、ただ教室にいればいい。そこにいれば、そのうち覚えるから。
Q. 難波先生の著書(下記、参考文献1.)によると、10週間で64全てのセンテンスを入れる必要があると書いてあるが、実際に、レッスンで使っていると、とてもそのスピードで入れることは難しいと感じるが、どうすればよいか。
A. 最初の10週間で、64のセンテンスを完璧に覚える必要はない。あくまで、64のセンテンスに「触れさせる」のが大切ということ。
64のセンテンスに、英検3級レベルまでの基本文のエッセンスが詰まっているので、早い時期に触れておくことで、英文のあいまいさに耐えうる力をつけさせることが可能となる。
BBカードは、ダイヤは頭韻で、ハート、クローバー、スペードと、だんだん言いにくくなっていく。だが、これが易→難の順だと考えるのは思い込み。4種類、すべて同じように扱ってよい。
順々に扱っていく途中で教室に新しく入会する子もいる。それもかまわない。たいていの子は、自分が入会したときに扱っていた種類(ハートなど)が一番好きになる。
Q. BBカードは、ビデオに出てきた通り、下は3歳から可能だと分かったが、上は何歳くらいまでを想定しているか?
A. BBカードを製作したときは、小5の子を念頭に置いていたが、広まるにつれ、だまされた人(笑)の中には、下は3歳くらいから使う人も出てきた。この年齢の場合は、字カードの使用は想定していない。また、BBカード以外の読み聞かせや歌などもたくさん行う。字は学童期から。
Q. 中1ショック対策として、BBカードをどう使えるか、何か提案はあるか。
A. BBカードの使い方は、年齢を問わず同じ。まずオトを聞かせ、言えるようにすること。
授業を捨てる覚悟が必要かもしれない。
もじこ:学校のテストでは習熟度がはかられるわけだが、ディスレクシアだと、どうしてもそのペースに合わない。だが、目の前のテストができるようになりたいのか、それとも英語の運用力を身に付けたいのか。BBカードは後者を可能にしてくれるのだから、学校のテストは割り切る覚悟が必要、なのかもしれない。
(参考文献)
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難波先生、ありがとうございました!!
出席者の感想より:
◆先生のやることは「教えない!」そのかわりに「
考えるきっかけを仕込む」ということがとても勉強になりました。
◆
「つみあげない」「教えない」にまず衝撃を覚えました(汗)。英語は勿論、他の教科も基礎からやって、コツコツと覚えてきましたから…
他の教科はともかく、英語に関しては、結局聞くのも話すのもできないし、従来の英語学習ではまず親である私が挫折感を抱いています。挫折感の理由も、今回腑に落ちました。
「英語のあいまいさを許容する」は自分はとても苦手だし、「間違えたらはずかしい」もとても根強くあります。英語が苦手な理由はその辺りなんだとわかり、ディスレクシア要素のある子供には、BBカードで、覚えない英語のスタートをさせてあげたいと思いました。
◆ディスレクシアかも?な生徒さんが何人かいて、悩んで参加させて頂きました。教えずに
"あいまいさ"を残したままゲームをするというのは目からウロコでした。
BBカードは、正直ハードルが高いかな…どうかなと迷い中ですが、今日のセミナーはたくさんのヒントを頂け、とても勉強になりました。ありがとうございました。
◆マニュアルありきのレッスンを、渋々ながら受け入れて指導する身には、素晴らしく目新しく新鮮な内容でした。"だまされて"みようかしらと思いました。
◆
教えないで遊びのなかで、身につけさせる。全体を覚え、部分にうつる。定型の子たちにも、もちろん大切なことだと思いますが、ディスレクシアの子たちにも非常に助けになるメソッドだと思いました。
ただ、やはりディスレクシアの子にとって、一番の難関は、正確に読んで書くこと。この部分は、BBカードのその先で、これから考えていかないといけないのかなと思いました。とりあえず導入としては非常に有効だと思いますし、定型、ディスレクシア関係なく、みんなで楽しんで遊べるところが、すばらしいですね。
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もじこの感想
「ディスレクシア英語指導は"スモールステップ"が鉄則と言われるが、BBカードはその真逆のアプローチ。この2つにどう折り合いをつけるのか」という質問を事前に頂いており、私もずっとそのことを考えながら拝聴しておりました。
語学学習は、全体像・・・その言語の音が響いている様子を目の当たりにして、その言語の音楽(と私は呼びますが、リズムやイントネーションを含めたリアルな会話の世界)に少しでもひたることがすごく重要で、スモールステップはその後に行うべきものだと、今は考えています。
ジョリーフォニックスにしても、道村式漢字カードにしても、言葉の音楽に触れていることが前提で(前者は英語、後者は日本語)、それなしでいきなり取り組むと、ディスレクシア的にはいくらスモールステップでも、苦しいものになるようです。
そういう意味で、BBカードは、"言葉の音楽"を教室に作り出すことができるという点で、画期的な教材だと感じました。
難波先生の生徒への声かけ自体は、とても、とてもスモールステップです。
正解を全部与えず、本当にちょっとした訂正だけで、そこから生徒自身に考えさせます。この声かけの仕方は私も、もじこ塾春期講習や予備校の授業ですでに取り入れており、生徒がすごく主体的になると感じています。
一方、やはりディスレクシア的には、ある種のことをスモールステップで"教える"ことは不可欠だろうとも、今回の講演を聴きながら思いました。ディスレクシアは「サ・シ・ミ」の「ミ」のさらにどん底の子たち、中学3年間英語の授業を受けても、theが読めないこともある子たちです(実際にいました)。こういう子には、ある部分は"気付かせる"のではなく"教える"ことが不可欠で、この部分にいつまでたっても自力では気付けないことが、学習障害と呼ばれるゆえんかも、、と思いました。
数人のディスレクシアの中学生を教えた経験では、「今から私が教えることが分かれば、こういうことができるようになるよ」と見通しを示せば、ディスレクシアなら理詰めでの文法説明も、なかなか覚えられないフォニックスも、"教える"ことに頑張ってついてきますし、むしろ教わることを望んでいるように思います。
・・・と質疑応答で申したところ、「もじこ先生は努力できない子を見たことがないのでしょう」と難波先生からご指摘を頂きました。
これは深い!!以来、ず~っと考えています。で、今思うことは・・・
「はい、私がこれまで出会ってきたディスレクシアの生徒は全員、努力できる子たちです」
ディスレクシアの子は、誤解を恐れずに言えば、原則として努力家だと思います。小学校入学と同時に「なんでみんなそんなに読めるの?」と密かに焦ったり、「書き取りの宿題が終わるまで居残り」といった仕打ちを受けたりしていれば、自然とそうなるでしょう(ノД`)。天然や多動のせいで努力家に見えないケース(笑)もあり、また努力の到達点は知能によって異なるでしょうが、少なくとも純粋なディスレクシアは努力する人種だと私は思っています。
ごく少数、10代前半で、勉強する姿勢(→文字通りの)ができていない子はいましたが、それは体幹が整えばずいぶん変わると思います(しかしこれは、非ディスレクシアにも言えることかもしれません)。