ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2013-10-28

ジョリーフォニックスその2・「音→動作→文字」の回路をつくる

「ジョリーフォニックスを試してみる・その1」の続きです。

ジョリーフォニックスは、8月末から始め、週1~2回行っています。
2ヵ月で14の音を教えました。


ここまでのところ、子はかなり積極的に取り組んでくれています。

もっと速いペースで進めたいのですが、
漢字カードもあるし他の勉強もあるので、
現時点ではこれが精一杯です。

家庭教師やそろばんと同じように、曜日と時間を決めてやっています。
「木曜の5時半からはLet's Study Englishだよね」というふうに。
(それ以外にも毎日、何かと単語や表現は言わせています。)


現時点では、
○音を聞いて、対応する文字を選ぶ
○文字を見て、対応する音を言う
ことができます。
×音を聞いて、対応する文字を書く
ことはできません。

タッチペンで、tから始まる語にタッチすると、単語を読み上げてくれます。
(tennis racketとか)
左下にはaction(音と関連づける動作)があります。
tの場合は、「テニスの試合を見ているときのように、首を左右に振りながら、tと言う」
この動作をしたり、大きく空書きしたりしながら、音と文字を覚えます。

文字の音を覚えたら、短い単語を読んでもらいます。
まだ瞬時には読めません。
「c(正解)・・・えーと・・・u(正解)、t(正解)、(c、u、t、合わせて?)・・・cut(正解)くらいのペースです。
子音+母音+子音が言いやすいですが、少しずつそうでないものも入れていきます。
子音+子音は、ノンネイティブのディスレクシアが初見で読むのは、かなり難しいです。
言ってあげても、音を真似するのに苦労しています。

「rocket」という音を聞かせて、作らせてみました。
こちらが作ったものを読み上げてもらうより、かなり難しいです。
本人によると「これを書く?ムリムリ」。

bとdはやっぱり難関。これだけは消しゴム版画で彫ってみました。
この直後に彼は親指をちょっと切りました(;゚△゚)
しかし、そのことがdのループの向きの定着にちょっと役立ちました。


気づいた点を3つほど・・・

1.
フォニックスと言うからには、
それなりに正しい英語の発音を定着させるべきだろうと思うのですが、
子は、a(antのa)とu(umbrellaのu)、rとlなどの区別にかなり苦労しています。
特にrとlは「聞いても違いが分からない」と言います。

rとlが正しく言える臨界期(9~10歳とも言われます)を過ぎてしまったからなのか、
それともディスレクシアだからなのか・・・はよくわかりません。
個人的には、後者のように見えます。
日本語に引きずられてはいないものの、聞き分けにくいように見えます。

(もともと、日本語でも聞き間違い・言い間違いがかなり多いです。)

これが「音韻認識が不足している」ということなのかもしれません?

2.
まぎらわしい文字が増えてくると、やはり思い出すのが大変になります。
bとd、rとl、oとu、nとmがごっちゃになるので、
定着をはかるためにも、ペースを落としました。


3.
音と文字の間に「動作」を入れて覚えるのが、
ジョリーフォニックスの大きな特徴です。
そして、ディスレクシア的には、この「動作」こそが、
非常に重要な「想起のカギ」になっているようです。

文字を見ても「なんだっけ・・・」というときに、
動作を示してあげると「ああ!」とすぐに思い出したり、
文字を見て「それはこれだから・・・」と動作をしてから、音を思い出したり、
音を聞いて、動作をしてから、文字を選んだりしています。



http://www.amara.org/ja/videos/jcOCL1aVIIi5/info/today-tonight-jolly-phonics-at-osullivans-beach-school/


山下先生のブログで紹介されていたTV特集に、字幕をつけてみました。
ジョリーフォニックスをオーストラリアの学力不振校に導入したところ、特にディスレクシアの子に目覚ましい効果をあげた!という話です。

1:00-03あたりで、ディスレクシアの男の子が
「綴りを思い出せないときは、音を思い出すと、動作を思い出すことができる
(そうして綴りを思い出せる)」
と言っています。
この点が、ノンネイティブの子でもまったく同じなので、びっくりしました。
ディスレクシアには、この「音→動作→文字」という回路が、
まずは必要みたいです。

#それにしても、この動画に登場するディスレクシアの子供たちの、
分かる喜びでぴっかぴかに輝いている様子(特に5:09-)は感動的です!!


続き
口で言えればアルファベットも書ける?!






2013-10-22

のび太はきっとディスレクシア/藤子・F・不二雄の字を検証

13/10/21、NHK「プロフェッショナル」で、藤子・F・不二雄を特集していました。

ディスレクシアの証拠を求めて、子供と食い入るように見ました(笑)


藤子・F・不二雄は「のび太は僕だ」と明言していました。
番組では、病弱で学校を休みがちで、
ひとりで絵を描いていた小学校時代を引き合いに出して、
「孤独な点がのび太に重なる」と言っていましたが。
いえいえ違うでしょう!

のび太はディスレクシアなのです。
字は苦手で、学校の勉強はできないけれど、
好奇心がめちゃくちゃ旺盛で独創的な子です。
そういう点で「のび太は僕」なのです。


画面に藤子・F・不二雄の肉筆が登場したら、iPadで撮りまくりました。
番組終了後、1枚1枚検証してみました。




下から5行目、「呼ぶ」が「読ぶ」になっています



「作」が違う!と思いましたが、
これは書き順が違うだけですね。

縮小

晩年のメモとのこと。あんなにきれいな画風の人の字とは思えません。
左右どちらに曲がるかの判断がつらそうに見えます

私には、この独特な字体がすでにディスレクシアの典型のひとつのように見えます。

ドラえもんはディスレクシア文学の最高峰、とここで宣言しちゃいます!


関連記事:
のび太はディスレクシア(かも)

のび太は(きっと)ディスレクシア



追記

この記事を書いたあと、子が「これ見て~」と言ってきました。












2013-10-18

LD学会3日目

LD学会は、この世界で活発に発言している研究者が全員集合し、
さらには、熱心な教員(特別支援関係の方が中心?)、行政関係者も集って、大変な熱気でした。
自主シンポジウムは、満席で会場に入れないこともしばしばでした。

いまいちな発表もありましたが、
この人は!と思う人もたくさん目の当たりにすることができました。
気づき力の超絶な教師、
心ある行政職、特に教育委員会や文科省などの要職にあって心ある人、
そんな行政職の人を動かせる研究者やNPOの人、
自分自身の発達障害の傾向を自覚する研究者や実践家、
LD児の保護者という立場も持つ研究者、、などなど・・・
一流の研究者は人を動かす力を持ち、また人が集まってくることも分かりました。

そんな熱気を感じる一方で、
じゃあ、来週会うディスレクシアの子に、どうやって教えたらいいの?
ということの具体的な答え、特に教科指導に関することについては、
答えをガツンと提示できる人はほとんどいない、
ということも分かりました。
受験英語に関しては、まったくいない、と言って差し支えないでしょう。

あと、今回のLD学会ではASD(=自閉症スペクトラム。アスペルガーはこう呼ぶようになったようです)やADHDが、LDに並ぶレベルで取り上げられていました。
私は、LDとは主にディスレクシアのことだと思っていたのですが…。


☆  ☆  ☆


道村先生にも直接お目にかかりました。
本から予想された通りのスーパーティーチャー!
ポジティブな押しの強さが素晴らしいです。

もし道村先生がうちの子の担任だったら、
きっと漢字学習がだいぶ楽になっていたに違いありません(T T)
こういう先生がもっともっと増えてほしい!

「盲学校にも発達障害の子はたくさんいた。
そういう子にも、『これを覚えるしかないんだから』と、
相当厳しく、頑張って覚えさせてきた。
とにかく字を覚えないことには、自立はないのだから。
そういう部分が発達障害教育でもあっていいのかもと思う。
今は厳しい指導は流行らない、「ありのままを受け入れて」が主流だけれど・・・」
という趣旨のことを、非常に言いにくそうに、話されていました。

いや、いいと思いますよ!ポジティブな押しの強い指導。
子供の将来の姿を見据えた上で、生徒に本気で関わる、
そんな押しの強さは、生徒に絶対伝わります!
体罰や管理教育とは違うと、生徒はちゃんと分かります。
生徒も保護者も、そういう指導を待ち望んでいます。

ちなみに、盲学校では教師:生徒は1:2だそうです。
このくらいが、字が苦手な子に徹底的に字を教える際の、
人数的限界かもしれません。


☆  ☆  ☆


自分自身が今後どのような方向で、
ディスレクシア教育について考え実践していくかについても、
いろいろと考えるところがありました。
この問題は、脳科学でも、教育学でも、
特別支援教育でも、心理学でもない方向からも、
切り込んでいく必要があるのではないか?
などという大それたことを考えています。





2013-10-14

LD学会2日目

バーゲン会場のような人出!3000人は来場しているとのこと。

今日も印象的な言葉を書いておきます。



日本におけるディスレクシア英語指導法研究は、まだこれから。

→そういうことらしいです。
個々の教員・講師が手探りで個別対応しているにとどまっており、
日本語ネイティブへのディスレクシア英語指導研究は、
小・中・高どのレベルにおいても、まだまとまったものはないようです。
私が知らないだけじゃなかったとは!


ディスレクシアの子が中~高の英語学習で直面する困難さから逆算すると、
小学校の外国語指導では「音韻認識」※を積極的に教えるべき。
(※音をつなげて語にする・語を分解して音にする)
文字を教えるのは後回しでいい。

でも、音韻認識という概念がまだ教育現場に浸透していない。
(私も試行錯誤中です…)


一方で、
単語を部品(stem)に分けて教えると入る、
本人の希望進路・興味がある分野に関係する語彙から教えるとすとんと入る子もいる、
電子辞書やSiri(音声入力)をどんどん使うべき、
という指摘もありました。




大学入試センター試験で、発達障害・学習障害の生徒を対象に、
1.3倍の時間延長が認められるようになった。
ただし、医師の診断書と、在籍高校の意見書が必要。

→現在、高校が意見書を作成するためのベースとなる、
「高校生向けLDスクリーニング」を開発中なのだそうです。

その素案に対し、当事者という青年が質問に立ち、
「自分のできなさの感覚とずれている」といった趣旨の発言をしていました。
また、別の人から「高校生になると、いろんな問題が混ざってくる」という意見も出ていました。

私は・・・ディスレクシアかもと思う生徒達を思い浮かべながら、聞いていました。
「なんか英語が読めなくてつらい」と感じているあの生徒たちは、
スクリーニングを受けたいと思うだろうか?と。
何か、よほどうまい説得方法が必要な気がします。
高校生にもなれば、「苦手を隠したい」「何らかの方法で苦手をカバーできるなら検査は回避したい」「その検査は就活に不利にならないのか」くらいのことは考えるでしょう。
「受験勉強で忙しくてそんな検査を受けているひまはない」
「自分は単なる努力不足であって学習障害ではない」
と言い張る子もいそうです。
確かに、小学生のように素直にはいかなさそうです。

また、私の生徒には「隠れディスレクシア」、
つまり高度な推測力で字の苦手をカバーしていそうな子がかなりいます。
(この言葉はLD界ではあまり知られていない概念のようです。)
そういう子たちは、この検査に引っかからないだろうとも思いました。
もし配慮を受けられれば、1~2ランク上の大学に入れるでしょうが・・・

あと、小学生の頃からディスレクシア的特性を踏まえた学習を続けてきた場合も、
この検査に引っかからないかもしれません。




高校生向けの簡便なディスレクシア検査によって、
ディスレクシアだと明らかになる人もいるとは思います。が、
やっぱり小学生とは違って高校生に関しては、
検査がディスレクシアを洗い出す唯一の手段だと期待してはいけないと思います。

(検査を絶対視する傾向は検査作成者よりもむしろ、教師や親に多そうです。)






2013-10-13

LD学会1日目

この三連休は、日本LD学会に潜入しています!
(ちなみに、9000円を払えば誰でも会場内に入れます。
私は、所属欄が空白の名札で潜入してます。)

本日は偉い先生方の講演のみ。
印象的な言葉をまとめておきます。



「特別支援教育という味付けにより、教育が変わりつつある。
予想を越える大きな変革を、教育全体に及ぼしつつあるのかもしれない」
(大会会長講演より)

→ちょっと驚きました。
私にとっては、ディスレクシア問題は最初からずっと、
「子の学力不振をどうするか」ではなく、
「教育や社会をどう変えるべきか」という問題でした。
野心的すぎるかもしれませんが。

実は、教育学者や教員にとって、
教育の前提を疑うのは一番難しいことかもしれません。
自分たちの存在理由を否定することになりかねないので。



「LD学会は教師・親・専門家の団体。設立当初から親を入れてきた。
設立当初は、学術会議?から
『親を入れることは学会のレベルを下げることになる』
という批判もあった。
だが米国では、すべてのLD研究は親が先頭に立ってきた。
親の必死の願いに専門家はどう応えるか。これを忘れてはならない。
だからこそLD学会には必ず親の発表がある」
(理事長講演・上野一彦先生)

→「親を入れることは学会のレベルを下げる」
で一瞬会場がしんとなりました。
でもほんとにそうです。親をなめちゃいけません。

これまでいくつかの研究会に潜入しましたが、
論文の数合わせのような研究、
データをこねくりまわしただけの研究もけっこうありました。

そういう研究に対しては、
「ディスレクシアの子を何だと思ってるんだ」と言いたいです。

ディスレクシア児は論文のためのモルモットではありません。
1年でも1学期でも早く、学校や教師に変わってほしいと切実に願っています。
そんな親の気持ちに応えられない研究はだめです。



「我々(会場にいる研究者・官僚は)は産業化モデルの学校の成功者。
そこを根底から見据えないと、学校を根底から直すことはできない」
(特別講演・Naoko Richters先生)

→ここでも、会場の空気が一瞬しんとなりました。

「教育はどう変わるべきか」を問わず、
ただ「学校の勉強にどうしたらついていけるか」
しか考えないディスレクシア教育は無意味。
上から目線のディスレクシア対応はいらない。
心の底からそう思います。


かつて、学校の目的は均質な国民(納税者や兵士)を作ることでしたが、
「脱産業化」により、学校に求められるものは変わりつつあります。
ディスレクシアの子は、古い学校制度からいち早く「おりる」ことのできた
ラッキーな存在とも言えます。


----

ディスレクシア界の主な研究者が全員集合しているので、
明日からの発表も楽しみです。

2013-10-11

ディスレクシアは受刑者の41%?!/「彼をつぶさないで」

LD.orgのメルマガにこんな発言が。原文→こちら

「全人口の10人に1人がディスレクシア。
起業家の35%がディスレクシア。
そして受刑者の41%がディスレクシア」


!!

41%が本当かはさておき、
ディスレクシアさらには発達障害者と犯罪は、
きちんと考えなければならない、奥の深い問題だと思います。

発達障害=犯罪者、とするのはもちろん短絡的すぎます。
でも、発達の凹凸をポジティブに理解してもらえなかった子が
「自分には居場所がない」と感じたとき、
犯罪に走る展開もあることは、十分に心得ておかなければなりません。

ディスレクシア/発達障害と犯罪に関する本をまとめてみました・・・

『心からのごめんなさいへ』

まずはこの本でしょう。
少年院での矯正教育は、LD/発達障害児のソーシャルスキルトレーニングとして絶大な効果があった!
という話です。
読んだ当時、目からぼろぼろうろこが落ちました。

著者の品川裕香氏は、LDや発達障害という言葉を使うときは
「LDや発達障害のような症状を見せる子が」
(原文は「のような」に傍点つき)といった具合に、
発達障害イコール少年犯罪と決めつけないよう、
あるいは触法少年たちを発達障害だと決めつけないよう、
非常に注意しています。

私語禁止・スモールステップ・即時フィードバックなどの教育が、
少年達に絶大な効果を挙げていくこと、
さらには、矯正教育がLD研究の新たな可能性を拓いていくことなどが語られます。


『累犯障害者』

神奈川LD協会の研究会の販売コーナーで買いましたが、
ディスレクシアは出てきません。
でも、とても衝撃的な内容です。
日本の福祉政策がお役所仕事のため、本当に福祉を必要としている人を救えず、
結果、刑務所が知的障害者・精神障害者(そしておそらく発達障害者)の最終的な収容所となっている現実が暴かれます。

お役所は「でも制度はありますし」とは言うものの、
本当に困っている人はその制度では救われていない。
これは、現在の文科省教育におけるディスレクシアの子の扱いに重なります。




『朗読者』
とても美しくて哀しい話。ベストセラーになりました。
ネタばれになってしまうのであまり書けませんが、
主人公ハンナは「字が読めない」ことで、少年との恋を失い、刑務所に入り…と、人生を狂わされていきます。


☆  ☆  ☆

上の本に登場するほどは強烈でもないし、オチもないのですが、
このあたりのことについて、生徒を通して考えるところがあったので、書いてみます。


最近、いろいろ話している元教え子の大学生君がいます。
(※ディスレクシアではありません。)
非常に頭の回転が早く、語彙も豊富です。
この子が、とにかく落ち着きがない。人の言うことを聞かない。
演習中はずっとびんぼうゆすりをしてるし、
イライラしながら授業の場にいるのが伝わってくる、そんな子でした。
(のちにそれが、ニコチン依存のせいでもあると知るのですが。)

高校生とは思えないほど、思想系の本を読み込んでいました。
最難関大の現代文で出題されるような文章も、すでに自分で読んでいます。
でも、それが問題文という形になると、真正面からとらえることができません。
つい、斜に構えてしまったり、「この手の話題ならこういう結論に持っていくはず」と勝手に推測したり。自分の読みたいように読んでしまいます。
「本文に書かれていないことは答えない」「とっちらかった答案を書かない」という点で非常に苦労しました。


大学生になってから、自分のことを話してくれるようになりました。

「僕は指紋をとられてるので、まともな就職は無理っすよ」。
なんで警察の世話になったのかは、教えてくれません。
「先生、指紋をとられる時の気分って分かりますか?」

高校入試は素行不良で第一志望の某国立大付属に入れず、男子校に。
高校はあまりきちんと行かず。補導歴は複数回あり。
喫煙は13から。同時に軽犯罪を覚える。
小学校では教室にいられず、校庭で遊んでいた。
(ちなみに、高校は超有名エリート校、大学もそうです。
本人は否定するでしょうが、学歴スペックが彼を守っていることは確かです。)

「予備校に来て先生のクラスをとって、はじめてまともに英語の授業を受けましたよ。それまで授業なんか出てなかったから」
ありがとう、でも授業に出てもこっちの話なんか聞いてなかったでしょう…?
だから、どうしてもこっち(私)の意見を聞きたいと言ってくるまで、ほうっておこうと思って。
でも、「真正面から文章と向き合わないと」だけは、それだけは改めないと落ちると思ったので、言ったけどね。
と言うと、「その言葉はこたえましたよ。でも、そんなに一人ひとりに合わせてたんですね?」と驚かれ、
それから、いろいろ話してくれるようになりました。


本人の口から聞く本人の経歴は相当ワルです。
が、答案からはとても真摯で高潔な性格が見えて、
根っからの悪人とは到底思えません。


あくまで私の推測ですが、
彼は多動のあまり、犯罪やタバコに手を出したように見えます。

多動を外から厳しく抑えられたり、否定されたりすると、
鬱っぽくなる人もいますが(高校生の頃の私のように)、
犯罪に走る人もいる気がします。
理解されない辛さが自分の内側に向かうか、外側に向かうかが違うだけで、
根っこにある「自分の凹凸が周囲の大人に理解されない不満」は同じなのです。




そんな彼に、うちの子を会わせる機会がありました。
キミにはそんな一面があったの?とびっくりするような、
優しいお兄さんとして接してくれました。


帰り際に、こう言われました。
「字が読めないというから知的に問題があるのかと思ったら、違うじゃないですか。
僕と同じ匂いがしますね(笑)。彼をつぶさないで」



つぶさないで・・・?

結論は出ていないのですが、
以来、彼がそう言ったことの意味を、考え続けています。


2013-10-03

『脳の個性を才能にかえる』

ポジティブなディスレクシアの概説書。おすすめです!


『脳の個性を才能にかえる 子どもの発達障害との向き合い方』

「脳の多様性(ニューロダイバーシティー)」という観点に立つと、ディスレクシアはもちろん、ADHDもアスペルガーも、さらにはうつ(気分障害)、不安障害、統合失調症、知的発達の遅れも、プラス面が見えてくるのです。

(ニューロダイバーシティーは、What is Dyslexia?の動画でも紹介されていた概念です。)


「学び方のちがう人---ディスレクシア」と題した4章の見出しは:
ディスレクシアの脳/右脳人間/新しい時代の先駆者/型破りな起業家/脳の配線を言葉用に変える/ディスレクシアの脳を活用する

『読み書き障害のすべて』のサリー・シェイウィッツ、
『天才たちは学校がきらいだった』のトマス・G・ウェスト、
当ブログでは「いちごのショートケーキ」として紹介したロナルド・デイヴィス
など、英米のポジティブ・ディスレクシアの論者がそろいぶみ。
この人たちの主張をまとめて読めるので、お得感があります
(上2冊は絶版なので特に)


ディスレクシアの人は、脳が単語の「音」を処理するのが遅い、
右脳を使って読んでいる、
視空間能力や起業家能力に富んでいる、
多感覚式学習が効果的である、

といった、このブログでも書いてきたこと(←偉そうだ(笑))がまとめてあります。

ディスレクシアの有名人、適した職業の一覧もあります。


そして、ディスレクシアのニッチ作り(=自分の得意を生かして、自分の居場所を作ること)のためには、
「適切な職業だけでなく、正しい方向に導いてくれるメンター(よき師)を見つけることも必要だ」 
「手伝いをしてくれる人、特に苦手な分野で手助けしてくれる人の人材ネットワークを築くこと」 
「読書は、最も関心のある分野から始めるのがいちばんだ」 
「情報を取り入れたり伝えたりするときには、言葉より絵や視覚化を利用する方が便利だ」


メンター。これが見つかれば、かなり楽になることは間違いありません。
うちの子にとっては、ディスレクシアの家庭教師君がメンターです。
心優しく聡明で、漢字が苦手だけど楽しく学生生活を送っている彼の存在に、子はどれだけ救われているか、はかりしれません。
(家庭教師君にも同じようなディスレクシアのメンターが必要だと、常々感じています。)

これはあくまで個人的観察ですが、
ディスレクシアの人は、自分の心を開くことで他人の心に入り込む能力があると感じます。
心を開き開かせる能力に、独特のものがあります。
ディスレクシアの子供は早くから(それこそ、字の苦手さが現れる頃から)この能力を発揮します。
その能力に応えて心を開いてくれる先輩の存在が、ディスレクシアの場合は特に重要なのだろうと思います。



本の話に戻ると、
どの発達障害についても、はっとする指摘があります。
ADHDの人は人類の進歩を先導したとか、
気分障害(うつ)は「幸福でなければならない」という社会通念が生んだ病だとか、
不安障害は創造の原動力だとか。

ニューロダイバーシティー的には、
発達障害は、治したり、抑圧したりすべき「病」ではなく、
人類の進歩のために不可欠な「特質」なのです。

発達障害のポジティブな全体像をとらえるのにお勧めです。



2013-10-01

漢字カードの進捗

漢字カードの進捗です。

・週に2~3回取り組んでます
(毎日取り組むつもりだったのですが、
フォニックスもあるし他の勉強もあるし、
私の仕事も忙しかったりで、どうしても間があいてしまいました)

・2年生の漢字は1回で50字、漢字を見ずに書いてもらってから、部品を一緒に言う。

・5年生の漢字は1回につき10字。漢字を見ながら部品を言ってもらう。
漢字を見ずに言えたら、一度だけ書く。

・本人も、まだ「言えれば書ける」ことを覚えてなくて、ついうっかり、
言わずに書いてしまいます。
言うのが面倒そうな時もあります。
言えなくても書ける漢字については特に面倒そうです。


・言えれば定着率はかなりいいです。
「弓は、カギに角張った5だよね」と、何かの話のついでに言えます。
こういうふうに言えれば、鏡文字ではもう書かないことでしょう。


・もちろん、何回も書いて覚えるより、部品を言って覚えるほうが、定着が早く、しかも確実です。


家庭教師君に、カードを見てもらいました。
「これは覚えられそうですね。僕もしょっちゅう言いながら書いてますよ。弓にムに虫で強とか」(!)




漢字のタイトルは、言って聞かせてますが、
本人の記憶に残っているか、自信はありません。




下には同じ音読みをする漢字が書いてありますが、ノータッチです。





道村先生からは
>「なるほど~、おもしろいね~、そうか~」というオーバーアクションが必要ですよ。
>お母さんが楽しんでいると、息子さんも自然とその気になってくるものです。

というご忠告も頂いています。
効果を期待してつい私のほうが力んでしまうのが、今の課題かもしれません(苦笑)


漢字カードは道村先生主宰「点字学習を支援する会」から買えます。→こちら