iPadなどのICT機器をディスレクシア指導にどう生かすかについての事例発表会です。
(マイクロソフトが協賛なので、正確にはiPadではなくSurfaceを使っているようです)
その前に。
2週間ほど前、LD児へのiPadの使い方について、ご質問を頂いていました。
届いていないことを案じ、お返事を以下にコピーします。
届いていたらごめんなさい…。
私自身は、iPadの使い方を、今の時点では次のように考えています。
☆ ☆ ☆
結論から申しますと、現状では学校でiPadを使わせるのは、 研究校以外ではかなり困難だろうと思います
(こんな結論で申し訳ありません)
・タブレットを学校の授業に取り入れるには、教師(または大人)の誘導が不可欠
・だが現場の教師は、 学習障害向けのタブレットの使用方法はもちろん、 学習障害についても知識がない場合がほとんどである
・また、高学年になれば、周囲の目もあるし、 子供自身も周囲と違うものを使うことに抵抗が出てくる
・・・あたりがその理由です。
もちろん、これらをすべてクリアできれば、 問題はないのでしょうが。。
家庭学習用にいくつかアプリはあります。
ブログに書いたものでは:
レデックス社のメルマガ、こども脳機能バランサーfor iPad
iPadアプリ「ゆびドリル」を9ヶ月使ってみて
チャレンジ教室で使ってる(&使ったことのある)アプリリスト( 再)
( 村上先生は神戸でこうしたアプリも使って指導をする塾をされてい ます。)
実はうちでは、現在ではiPadの学習アプリは使っていません。
漢字カードや視写のほうが効果があがっているのが、 その理由です。
iPadは、社会の勉強で何か出てきたときに、 画像検索や動画検索して実物の絵を見せるのに使っています。
ディスレクシアだと、映像や画像があると、 記憶に非常によく定着するようです。
今週末に、東大先端研で、ディスレクシア児へのICT(→ タブレット)使用プロジェクトの成果報告会があります
すでに満席ですが、時々キャンセルが出るようなので、 うまく行けば申し込めるかもしれません
(私もキャンセルの隙をねらって今日申し込みました)
めぼしい情報があったら、ブログで報告したいと思います。
☆ ☆ ☆
というわけで、
当日1週間前にキャンセルが出た隙に申し込んで、行ってきました。
当日1週間前にキャンセルが出た隙に申し込んで、行ってきました。
当日は数百人のホールが超満員!
全国の特別支援学校から教員が集結しているようです。
肢体障害の子もいます。大変な熱気です。
書籍を物色しているうちに会場が満席になってしまい、
サテライト会場で映像で発表を視聴しました。
サテライト会場で映像で発表を視聴しました。
そして、結論はやはり、くつがえりませんでした。
iPadは教師力(教材準備力、授業構成力)が、より一層問われるツールである。本気で導入するには、教える側の強力なイニシアチブが必要である。
授業(要は指導要領)を超える・変えるくらいの勢いで臨まなければならない。
現状では、普通学級にLD児が単にiPadを持ち込んでも、現実的な解決策にはならない。
教師や親は、「毎日こつこつ」といった基本訓練に辛抱強く付き合う度量が必要だ。
(ディスレクシアならなおのこと)
・・・という、やや厳しい結論に至りました。
ディスレクシアに関する発表はこちら。
午前10時00分 「ディスレクシア プログラム」 実践研究事例紹介
奈良県 生駒市立生駒小学校 高橋 順治(発表資料
鳥取県 大山町立名和小学校 内田 利幸(発表資料
島根県 安来市立赤江小学校 井上 賞子(発表資料
この発表の中に出てくる、ディスレクシア検査ツールを買ってみました。奈良県 生駒市立生駒小学校 高橋 順治(発表資料
鳥取県 大山町立名和小学校 内田 利幸(発表資料
島根県 安来市立赤江小学校 井上 賞子(発表資料
朝日新聞13/06/01の回で紹介した河野俊寛先生らが、作成した検査です。
あ~非語文は全然書けないんだろうな~、
普通の子の半分くらいのスピードしか出ないんだろうな・・・
と思いながら、さっそく試してみました。
すると、驚くべきことに、
すべての項目でA評価(ディスレクシアでない)が出ました(! ̄д ̄)
非語文のほうが普通の視写よりもたくさん書けましたし、
黙読は全部読め、質問も全問正解してしまいました。(! ̄д ̄)
意表をつく結果です。
「なんだかこの1ヵ月で、読むのがずいぶん早くなったような?」
と伝えると、「最近マンガをいっぱい読んでるからね。ってブログに書いといて」と言われましたorz。
彼がこのテストに取り組む様子は、明らかにゲーム感覚です。
非語文のテストは普通の視写のテストで感触をつかんだので、
ゲームで敵を倒す感覚でガンガン書いてます。
彼が一番できなかったのは、「ページを開けたら、手を膝の上において、先生に教えて下さい」という指示です。
膝を思いっきり上げてみたり下げてみたりして、真面目な「手を膝の上に置く」をなかなかやってくれません。
どうやら彼は、ディスレクシア的な成長を、着々と遂げているようです。
読むのも書くのも相変わらず大変なことですが、読みの「正攻法」(1文字1文字、きちんと読む)でない技術によって独自の読み戦略を編み出しつつあり、それによって一見読めているように見える状態になりつつあります。
本人は、読めているとさえ思っているかもしれません。
だってこの検査の問題を解ける程度には読めているわけですから。。
(何をもって「読めている」と言えるのかは、なかなか難しい問題です。
これについては改めます)
普通学級で、知的に遅れがないディスレクシアなら、
高学年になる頃にはこんな感じになるのは、珍しくないように思います。
なんだか初めて、私が予備校で知るディスレクシアの生徒たちと、つながった気がしました・・・。
☆ ☆ ☆
中邑先生は、ちょっとしたコメントにも、困っている子をどうにかしたい、後進も育てたい、できることからどんどん社会を変えたい、という意欲がびしびし感じられる、謙虚でパワフルな方でした。
自分の特別講演の時間を削って事例発表の紹介にあてるあたりには、現場の先生を励ましたいという思いを感じました。
「モバイル技術を自分の一部にすることで、こういうところ(東大)にだって入れるようになるべき。
もうそろそろ、学校にツールを入れるべきか否かというレベルではなく、教育はどうあるべきかという能力観の議論が学校で行われるべきなのに、まったく行われていない」
というのはまったくその通りです。
残念ながら、そんな議論が公立小の普通学級の教育現場で起きるのは、もう少し先になると思います。少なくとも来年度はないでしょう。
でも、うちの子が親になったときには、ディスレクシア教育が日本でも確立しているといいな・・・いや、確立させようじゃないの(笑)などと考えました。