ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。
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2018-10-28

IDA日記その1:音韻認識の熱狂に釘を刺される/筆記体の本の版元社長に直談判


ボストンからバスで2時間のカジノリゾートで、今年のIDAは開催されました。
ボストンは車越しの夜景だけでも素敵でした☆。でも夜明け前のバスターミナルあたりから素敵じゃない雰囲気に・・・そして予想通り、カジノリゾートの周辺は見事に何もありません。360度原野、ニューイングランドの秋の紅葉です。
カジノリゾートの中は退廃的な雰囲気です。妙にぎらぎらした老人とか、地味~な中国人夫婦とか、平日の昼間からなぜこんなところに?と言いたくなるあやしい人たちがうろうろしてます・・・

そんな会場の一角で開催されているIDA。こちらは見事に白人女性が95%を占めてます。会場の挙手を見ると、教師、ディスレクシア専用チューター[個別指導教師]、アドミニストレーター[行政担当者]が多いです。
参加者は2000人と昨年並より少し少なく、半分が初参加とのこと。
雰囲気はLD学会に近いです。教師の出すオーラって万国共通なんですね(笑)。

・どうやら、去年のレターボックスの講演はIDA的にもよほど衝撃だったらしく、今年の発表で去年のその発表に言及しているケースに2件遭遇しました。たぶんみなさん、私と同じように、この1年間はあの講演を宿題として持ち帰っていたわけですね・・・
残念ながら、今年のIDAの発表は、これまでのところ、去年ほどの根底的な衝撃はありません。もっと細かい、具体的な話で収穫が多いです。

◆音韻認識について
・読めるようになるためは、まず音韻認識(phonological awareness, phonemic awarenessなど、いくつかの言い方あり)の訓練を徹底すること、その上でフォニックス(音と文字の対応)を教えるべき・・・が、この1~2年で業界の共通認識になったようです。
Phonemic awarenessについての新刊も出ていましたし、教材も新しく出ていたので買ってみました。中1クラスで試してみたいです。

ガチャガチャのおまけみたいなものが、多感覚らしいです

※音韻認識とは、「単語がいくつの音韻でできているかを、認識する能力」です。
たとえば、satは3つ、stepは4つ、starは3つ(arは1つと数えるので)、
sharkは3つ(sh、ar、k)、thisは3つ(th、i、s)、thirdは3つ、
thereは2つ、rainは3つ、candyは5つの音韻からなります。

日本人からすると、「そこって1つにまとめるの?」という反論も出てきますね・・・
その通り。どの音をもって音韻とみなすかは言語によって異なるので、すでに別の音韻体系が確立している場合は、ある程度理詰めで理解する必要もあります。
音韻は人工的な概念なのです。

不思議なことに、定型だと4~5歳で母語の音韻認識は獲得されています
(「stopは4つのオトでできていて、tは2番目だね!」と言えます)。
一方、ディスレクシア(の多く)は音韻認識の発達が遅れますし、程度の差はありますが長期的・定期的・反復的・明示的な訓練をしないと定着しません(ひらたく言えば、毎日5~10分、訓練が必要です)。

グッドニュースは、音韻認識の定着は、年齢が上がるにつれ短期間で定着する傾向が強いということです。
もじこ塾で見る限り、中学生は小学校低学年よりも音韻認識の定着は早いです。
また、音韻認識が定着するまで足踏みする必要はなくて、文法など先に進みながら音韻認識定着の練習を続けることもできます。このことに言及している発表もいくつかありました。


◆ディスレクシアの原因は音韻だけではない
筑波大の宇野先生とワイデル先生がシンポジウムを行ったので、最後だけですが顔を出しました。両先生と直接お話できる役得に預かりました(^^)。地球の裏側のカジノリゾートまで足を運んだかいがあったというもの。

宇野先生からは釘を刺されました。今の私にはとてもありがたかったです。

「アジア系言語のディスレクシアの出方は英語圏とは異なる。
IDAではディスレクシアはもっぱら音韻処理の障害とされているが、日本語ディスレクシアを見ればそうでないことは明らか。
音韻障害だけが原因のことは少なく、視覚認知障害、自動化の障害、それ以上にこれらの混合型が60%を占める。
そのことを英語圏のディスレクシア研究者はわかっていない」。

・・・本当にその通りです。
日本語のディスレクシア、特に漢字が覚えられないのは、形の認識の困難によるものです。ディスレクシア英語教育に意識が向きすぎて、ついそのことを忘れがちになっていました。
日本語(特に漢字の困難)からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは主に字の形をめぐる困難ですが、英語からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは音韻を認識し処理することの困難だと分かります。
日本のディスレクシアの生徒はほとんどの場合、この2種類の異なる困難に直面していて、その両方に対処しなくてはならない大変さがあります。


◆筆記体の本の版元社長に直談判
・筆記体の練習帳には本当に感動したので、お礼が言いたくて版元の社長さんの発表を聞きに行き、発表後、話をすることができました。
生徒の字をいくつか見せると、たいそう感動してくれました(TT)
「遠い日本の地でこの本がこんなに愛されていると知ったら、著者はきっと喜んだだろう。彼女は外国語として英語を学ぶ生徒のことを、とりわけ気にかけていたから」。






著者とは故Diana Hanbury King女史、ディスレクシア教育界のレジェンドのこと。
もう一年早かったら直接お礼が言えたのに、本当に残念でした。

「この本はすばらしいです!すごく効果があります。日本には同じものが本当にありません。わたし訳しますけど、日本で出版しませんか?」
と言ってみたところ、マシンガントークで
「超いいね!!僕はADDだから忘れちゃうんで、帰国後ここにメールしてくれるかな、Let’s see what we can do」とあっさりOKしてもらえました!

しかし社長はこっちもADHDだとは理解していない(原稿になかなか取りかかれないorz)。

だからここに書いて宣言しておきます。
筆記体の本の日本語版を出すために、版元のOKはもらえました!日本語版を出したい!!

2017-11-13

IDA@アトランタ報告(その4)~スタニスラス・ドゥアンヌ教授講演~




「New Studies on How Literacy Transforms the Brain
(読み能力はいかに脳を変えるか:新しい研究)」

アトランタまで行った最大の目的は,フランスの脳科学者,スタニスラス・ドゥアンヌ教授の講演を聞くことでした。 結論から言うと,(今の私にとって)非常~に驚きの指摘を得ることができました。今日から私の授業はさらに変わります(笑)

この講演は「ノーマン・ガシュウィン・メモリアル・レクチャー」と位置づけられています。ディスレクシア脳研究界の早世したスーパースターを記念し,読みの脳科学の最先端研究を一般人に伝えるのが目的だそうです。
「私たちは先人の肩に乗っている」の言葉とともに,オートンにはじまる過去100年弱のさまざまなディスレクシア研究者や教育者を紹介する映像が流れ,会場の熱気が最高潮に達したところで教授登場。こういう流れを作るのはアメリカ人は本当に上手です。

導入で「"Book"(本),それは非常によくできたツール」と,Macの新製品カンファレンス風?な動画で笑いをとりながら,講演は始まりました。フランス語なまりの強い英語で,画像が満載のスライドをばんばん見せながら,すごいスピードで話は進みます(+_+)。

☆    ☆    ☆
「読めるようになると脳は変わる(Reading transforms the brain)。先生たちが子供に働きかけることで,生徒の脳は変わる。今日はそれについて語りたい。」

★ここで言うReadingは,読解力以前の,文字列を読む能力,
おそらくは1つの単語から短い1文を読む能力と思われます。

「話し言葉は努力なしで獲得できるし,脳には話すための専用の部位もある。しかし,読むという行為は後年になって発明されたもの。専用の脳の部位はなく,読字能力は,本来はその目的のためにでなく存在している部位が,リサイクルされて形成される。」

★別の脳科学者から聞いた話では,話す能力は10万年前の人類の祖先から原型がみられる一方,人類が読むようになった歴史はせいぜい5~6000年。人類はまだ読むための脳の部位を進化させるに至っていないのです。

左脳にあるこの部位を,教授は「レターボックス」(文字の箱)または「VWFA(Visual Word Form Area:視覚的に単語の形を認識する部位)」と呼び,いよいよ本題に入ります。
#ここで改めて注意喚起。
この研究では,「単語あるいは文字列の形の認識」を見ていきます。

「レターボックスは6~9歳の間に完成する。ハイパーレクシアだと5歳にはもうできている。」 
「この時に犠牲になるのは,顔を識別する部位。レターボックスが形成されるのに伴い,右脳に移行する」

★ちょw。顔認識ができないハイパーレクシアだったもじこは,きっとレターボックスができたときに,顔を認識する部位が右脳に形成されなかったんでしょうね。

「ディスレクシアの9歳児にはレターボックスがなく,顔を認識する部位も左脳のまま。だがこれはディスレクシアの結果であり,原因ではない。視覚的な困難はディスレクシアの結果であり,原因ではないことが少なくない。脳の可塑性を考えると,早く正すべきと思うが」

★脳の「可塑性(かそせい)」(plasticity)とは,平たく言えば脳が変われる性質を指します。

 「レターボックスは,形を認識する脳の部位を,読字能力に再利用することで形成される。これを「ニューロ・リサイクリング」(neurorecycling,神経の再利用)と言う」

★ここからは,さらにたくさんの画像を見せながら,話が進みます。
「レターボックスは,どのような過程を経て形成されるのか。就学直後の,読むことを学び始めたばかりの子供は(☆フランスの話です),レターボックスだけでなく,脳のあちこちの部位が,程度の差はあれ,一時的に激しく活性化する。その後落ち着き,2年生の終わりごろには努力なしで読めるようになっている。この頃には,音韻と文字の対応,音韻認識,そして流暢性を獲得している」 
「特に重要なのは”自動化(automaticity)”。読むことが自動化していないと,数の認識や読解など,他のことに脳のリソースを回す余裕ができない」
★生まれた時点では,ヒトの脳は読むための部位を持っていない。就学年齢の頃に,書き言葉という刺激を与えると,文字に対して脳のあちこちが反応する時期を経て,2年ほどでレターボックスだけが活性化するような脳へと変化を遂げている。
以降は,読むという作業は自動化され,とても楽になる(少なくとも定型の場合は)・・・という流れです。
この「自動化」という概念が,このあと重要になってきます。

「レターボックスは,脳の可塑性の高い部位に発生し,そこに定着する。読字能力を鍛えない場合,レターボックスができるはずだった場所には,他の視覚認知(道具,家,顔など)が進出する。大人の場合は可塑性が低下し,子供の脳よりも固まっているので,脳を変えるのは難しい。例えば,2年にわたる読み訓練をしても,文字列の認識に努力を要する,つまり自動化に至らない」

★音楽家や数学者,さらには脳卒中でレターボックスの部位がやられた人の脳画像を見せながら,音楽家は楽譜を,数学者は数式を「かたち」として認識する力が高く,レターボックスをおいやっていることを,笑い話として紹介していました。”あちらを立てればこちらが立たず” 的な。

★だんだん時間がなくなり,話がものすごく速くなって,メモも切れ切れに。

「音韻に関係する部位はレターボックスとは別にある。レターボックスが発達すると,話し言葉の認識力も向上する」つまり,音韻認識とレターボックスは相互に関連しながら発達していくようです。あと左右盲の話もしていました★


そして最後に,超駆け足で,驚くべき言葉が!!

「レターボックスとは別に,脳には「音韻に関係する部位」と,「意味理解に関係する部位」がある。 
子供においては,『文字→音』の回路,つまり「文字を見て,音を想起するつながり」 を開発する必要がある。この部分は難しく,教師はここを明示的に教える必要がある。 
子供の脳は『文字→意味』の回路を勝手に開発する。これが自動化だ」

★( ゚Д゚)!!( ゚Д゚)!!
つまりこれは,「アルファベット言語でも,ある種の視読の域に達するのが理想形」ということのようです!!この発言を講演最後の3分で聞いたときは,足腰立たないほどたまげました。アトランタまで行って本当によかった(笑)

しかも,もう一言,続きがありまして・・・

「だが,最初から『文字→意味』の回路だけを,直接開発しようとしてはいけない。 
教師が教えるべきはあくまでも『文字→音』の対応」。

★( ゚Д゚)!!( ゚Д゚)!!
つまり,
・教師がホールワード*で読めているからといって,生徒にもそれを最初から要求してはならない。
(*ホールワード(whole word):stopをまるごと「ストップ」と読み,それ以上分解しない読み方。今なお根強い,反フォニックスの最大勢力)
あるいは,
・結果として生徒が視読の域に達するのはかまわないが,教師が最初から「いいよいいよ,音にできなくても。意味だけわかればいいよ」と言ってはならない。
さらには,
・ある程度熟達するまでは,英語の音を伴わない状態でのサイトラは有害。
(*サイトラ(sight translation):英文を見て日本語の訳を言わせる,つまりThis is a penという文を生徒に見せて,教師も生徒もこれを読み上げない状態で,生徒に「これはペンです」と言わせる。通訳における重要なスキルの一つ)
・・・ということを,この発言は示唆しています。


★家庭の役割は別にあるのでしょうか。これについては
「『家庭内における本の存在』は自動化を加速するので,読み能力獲得の成功に役立つ要素」とのことでした。加えて「『就学前にたくさん話をして,話し言葉の語彙を増やすこと』『音韻の知識』」を挙げていました。

☆    ☆    ☆

終了後,サイン会があったので,持っていた日本語版『意識と脳』をプレゼントしながら少し質問してきました。
私は「脳」という文字を指さしながら
「これは音にしなくても,brainという意味だとわかります。漢字は「文字→意味」ルートを非常に作りやすい性質があります,漢字文化圏の読み戦略はアルファベットのそれとはとても違います」と力説したところ,

「アルファベット言語でも,自動化がカギなんだよ(automaticity is the key.)」

と改めて念押しされました( ゚Д゚)そうなんですね~~~

もう一つ,こんな質問をしてみました。炎上しないといいのですが…

「脳の可塑性が止まってしまい,レターボックスはそれ以降は形成されないという,年齢的な限界はありますか?」

これに対しては「可塑性は減るだけで,完全にはなくならない」と言っていましたが,なおも食い下がったところ「思春期は大きな役割を果たす気がする(I think puberty plays a big role.)」と言っていました…。
思春期(+_+)女子は超不利ぢゃないですか。

最後に,
「超一流の人は知っていることを(少なくとも一般人には)出し惜しみせず,オープンであり,ユーモアがある」は私がディスレクシア・ジャーニーで知ったことの一つですが,ドゥアンヌ教授もそんな一人でした。

~~~

昨夜,無事帰国しました。
アトランタは遠かったですが,むちゃくちゃ勉強になりました!
教材を爆買いしてきたので,次回はそれらを紹介したいです。 

2016-10-21

ディスレクシアの寝落ち問題。

いま、もじこ塾で最もホットな話題(?!)、それは「寝落ち」です。

少なからぬ割合の子が、読んでいる最中、一瞬意識が飛びます。
中学生は少ない(まだそこまでの量を読んでいないので)が、
学年が上がり、読む量が増えると、寝落ち率も増える気がします。
現時点の実感では、ディスレクシアの生徒の3割が、
英語を読んでいて(または字を目で追いながら聞いていて)寝落ちします。

個人的意見ですが、ディスレクシアと寝落ちは関係があり、
脳の使い方の違いによる過労が原因だと、私は思ってます。

ディスレクシアで寝落ちする生徒への対策としては・・・

まず、寝落ちがディスレクシアに関係があるものだと認識することが、
第一段階だと感じます。
寝落ちは、気のゆるみややる気のなさに由来するものではない、
読むというのはそれだけの大変な労力を要することなのだ、
寝落ちは例外的状況ではないと、本人が受け入れることです。

その上で、教師が寝落ちを非難することなく、オープンな話題にすること。
目の前で遠慮なく寝落ちしてもらうこと。
これが第二段階です。
これができれば、生徒は少しずつ心を開いてくれるようになります。
寝落ちする生徒は、寝落ちすることを見せまいと、色々とかたくな※なので
そのバリアを取り払うことが必要だと感じます。

※
教師の目の前で読もうとしない(すぐ諦める、宿題として持ち帰ろうとする)
こちらが勧めたことをしようとしない、など。
雑談をやたら好むのも、読むのを避ける行動の一つかもしれません。


その上で、寝落ちにどう対処するかを考えるのが第三段階ですが、
・・・これがまだ見つかっていません。
誰か良い方法を知っていたら、教えてほしいです。

前の日にしっかり寝ること、食生活を変えること、
(寝落ちする子は、本当に個人的な意見ですが、独特の甘いにおいがします)
などは多少は役立ちそうですが、決定打にはならないようです。

気圧や満月(?)も、関係あるかもしれません。
どんよりした雨の日、満月の日は、特に寝落ちしやすいようです。
「月に1回、特に寝落ちしやすい日がある」と言った子もいます。
男子なのに!∑( ̄0 ̄

☆ ☆ ☆

読みながら寝落ちしそうになる姿は、傍で見ていて本当につらそうです。
眠るというより、意識を失うというか、気絶するような感じに近いです。
そういう生徒は読もうとする時、体全体から気が張った緊張感が出ています。

そんな、寝落ちする生徒の一人に
「なんだか見ていて、雲梯(うんてい)にずっとぶら下がっているとか、
登り棒にずっとつかまっている、みたいな感じがするよ。
あんまり込み入ったことを話しかけてはまずい、みたいな」
と言ってみたところ、
「わかりますか?」と言われ、
以来、彼は寝落ちの時の気分をいろいろ話してくれるようになりました。
「全身がぐったり疲れる。特に足がだるい」
「もう何も考えられないくらい頭が疲れる」など。。

今日は「気が済むまで寝てみて、その後どうなるのか」実験しました。
3時間半近くかけて、某難関大の1年分の問題のうち80%を解きました。

30分解く→30分寝る→30分解く→20分寝る→30分解く→30分寝る→30分解く
という展開になりました。

起きている時間だけ見れば、普通の子と同じくらいのスピード感で読解しますし
正解できるだけの構文把握力と論理的思考力はある(読み上げは必要)のですが、
寝落ちも含めれば、倍くらいの時間が必要です。

彼にとって読むことは、逆風のなか岩場を登るような、大変な格闘です。
もちろん、難関私大の問題なので難しい文章ではあるのですが、
それにしても、普通の子が絶対にしていないレベルの苦労をしています。

こんなに辛い思いをしてまで、読字する必要があるのだろうか・・・
この疑問は、
「こんなに字の解読に苦労している生徒の存在を、大学側は想定していないだろうに。
その大学で学べるだけの論理的思考力を証明する方法を、大学側は他に用意すべきではないか」という方向にも行きますし、
「こんなふうに真っ正面から困難にぶつかっていく方法は間違っていて、
寝落ちを克服できる方法が実はあるのかも」という方向にも行きます。
でも今はとりあえず、入試対策をするしかありません。

~ ~ ~

ネットで英語の文章を検索すると、「ディスレクシアだと睡眠時間が長く必要」という話はかなり出てくるのですが、「読んでいる最中に寝てしまう」という話はほとんど出てきません。
関連記事を、参考のために訳しておきます。

①原文→★
独自なディスレクシア教育を行っているらしいカナダの団体。
この比喩にはとても納得しました。
「どんな子供も、睡眠・食事・運動が必要だが、ディスレクシアの子が教室でインプット/アウトプットするために必要な脳の労力の差は大変なものだ。それは歩くことと走ることの差に相当する。ペース配分をきちんとすれば、一日中だって歩くことは可能だが、全速力で一日中走れと言われても、1時間も持たないだろう。ディスレクシアの人は脳の限界に毎日挑戦している。時には成功し、時には力尽きる。」

と言った上で、ディスレクシアに必要なこととして、
・十分な睡眠
・しっかり朝食をとること(日本の常識と内容が違うようですが)、
・水を十分に飲むこと(「水を十分に飲まないと、頭痛や傾眠に陥ることがある」)
・オメガ3油とビタミンDを摂ること
・砂糖を控えること
・運動すること・・・を挙げています。

水はかなり大事なようですね。もじこ塾ではお茶を出しています^^。


②原文→★
「ディスレクシアの子の睡眠の質は普通の子の睡眠と違う」
「読字障害の子は、ステージ4の睡眠(深い睡眠)が通常と比べかなり多く、レム睡眠が少なく、レム睡眠に移行するまでの時間が長く、最初のノンレム睡眠のサイクルが長いことが明らかになった。
こうした睡眠構造の違いにつながる可能性のある要素のうち、慢性的な睡眠不足と成熟の遅れ(?maturational delay)は特に顕著である。こうした要因は単独でも複合的にも、読字障害の子の情報処理を阻害し、認知の欠陥に加担する可能性がある。」


2016-10-06

ディスレクシアだとIQが実際より低めに出る

「ディスレクシアとIQは無関係」という古い記事を読んだ方から、ディスレクシアとIQの関係についてご質問を受けました。
その方にお答えするために読んだものを、訳しておきます。

とても勉強になる記事なのですが、すごく微妙な話題であることも重々承知しています。。ので、こんな注意書きを最初に書くことをお許し下さい:
もじこは知能検査の専門家ではありません。この記事をきっかけとする個別の相談に答えることはもじこの能力を超えており、お受けしかねます。あらかじめご了承下さい。

内容:
・ディスレクシアの場合、WISCのFSIQ(フルスケールIQ)よりも「GIA」(言語理解と知覚推理の平均)の方が、その子の知能を適切に反映している
・ディスレクシアだと、IQが本来の知的能力より低く出る

「隠れディスレクシア」のdyslexic advantageのサイトからの抄訳です。

ギフテッドかつディスレクシアの子を念頭においた記事ですが、
どんなディスレクシアの子にもあてはまる気がします。

なお、ディスレクシアのIQ(FSIQ)については、
「知的障害に区分されるかどうかの瀬戸際にいない限りは、
そこまで細かい数字にとらわれる必要はない」
というのが当ブログの見解です。

------------------------------------------
①原文→★
ディスレクシア児においては、FSIQよりもGAI(General Abilities Index:一般能力指標)のほうが、高次の論理的思考力の指標として信頼が置ける可能性がある 

FSIQはVCI(言語理解)、PRI(知覚推理)、WMI(ワーキングメモリ)、PSI(処理速度)の4区分の合計から構成されている。
このため、この4区分をすべて合計するFSIQよりも、言語理解と知覚推理のみの合計であるGAI(一般能力指標)が、高次の論理的思考力すなわち知能の推定値としてはより正確である可能性が高い。
GAIはFSIQに相当するものである。当クリニック(訳注:Dyslexic Advantageのエイデ夫妻が開業しているディスレクシア専門クリニック)の典型的なプロフィールは、VCI(言語理解)とPRI(知覚推理)の合計スコアが平均以上、WMI(ワーキングメモリ)が平均または平均よりやや下、PSI(処理速度)がさらに低い、というものだ。
この結果、GAIを使用しないことは、ギフテッドプログラムから除外され能力を過小評価される生徒が出てくるなどの、不適切な展開につながる可能性がある。
(訳注:日本版WISC-IVについて、同じ内容が、ここまではっきりとではないですが、書かれています→★)


IQスコアは完璧ではない  

どんなテストも、すべての能力を評価できるわけではないこと、また疲れ、不安、完璧主義などの理由から、検査結果が不正確になる可能性があることを、認識しておくべきだ。話し始めるのが遅い子供は、IQテストの言語に関する項目で本来より低い成績になるだろう。答えが短すぎて、解答に対しフルスコアがもらえない可能性がある。
幼いディスレクシアの子で、反転が多く起きたり、処理速度が大幅に遅かったりする場合も、反転によるミスや時間のロスゆえに、知覚推理のスコアが能力より低く出る。
それでもなお、IQテストと達成度の両方を見ることが黄金律だと、私たちは考える。
ディスレクシアの科学的研究と教育研究の両方とも、ディスレクシアは能力と達成度が乖離していることを研究のベースとしてきた。
IQテストを行うことには、欠点よりも利点の方が多い。スコアがその子の知識を適切に反映していないように見受けられた場合は、少し待って、一定期間を置いてからの再検査を検討すべきだ。
--------------------------------------------------
②原文→★
ディスレクシア/ディスグラフィア(書字障害)はIQスコアに影響を及ぼすか

結論から言うと答えは「イエス」だ。
児童向け検査の精度に影響を及ぼす要素はたくさんある。生徒の性格(完璧主義、内向的)、話し言葉の流暢さ、忍耐強さ/立ち直りの力、言葉の正確さなど、さまざまな要素が、検査点数に知的能力がどの程度正しく反映されるかに影響を与える。
だがIQテストは、検査の種類によって長所と短所がある。
(訳注:このあと、WISC-Vなど、日本には入っていない検査の比較の話が続くので省略)。
ギフテッドでディスレクシアの場合、GAIを専門家にチェックしてもらうことも重要だ。なぜなら、全検査(FSIQ)だけでは、高度な概念把握力や論理的思考力を表さないからだ。
GAIがFSIQに等しいと見なせるのは、ディスレクシアに起因する各スコアの大きな乖離がみられる場合である。
WISC-Vでは、GAIを構成する4つのスコアは、言語理解(類似・単語)、非言語理解(積木模様・絵の概念・figure weights)である。
重要なことに、GAIは、記号探し、コーディング(書かれた記号を写す)、コーディング(聴覚ワーキングメモリとシークエンシング)を含まない。
このことは、FSIQを児童の論理的思考力・概念的能力・知識の土台の正確な推定とするためには、重要な要件である。
ディスレクシア/ディスグラフィアとも、コーディング、記号探し、符号のスコアが低く出ることに関係している。
当クリニックに来るギフテッドでディスレクシアの生徒の典型的なプロフィールは、言語理解が最も高く、続いて非言語理解が高いというものだ。
ワーキングメモリは、幼い頃は(同年齢と比べて)弱いが、成長とともに平均の範囲に落ち着く傾向がある。
圧倒的に低いのは処理速度で、このことは通常、その子がディスグラフィアも持つことを意味する。
(中略)我々の実践においては、下位検査間の差が20~25ポイント以上あることを、中~重度の「特異的学習障害」つまり読字障害、書字障害、算数障害(どの下位検査に差があるかによって異なる)の指標と考える。
保護者は、ディスレクシアのFSIQが低くなることを認識しておく必要がある。
というのも、もしGAIがギフテッドプログラムのカットオフ条件なら、その生徒は適切な配慮を受けた上でギフテッドプログラムに入るのが、最適な配置である可能性もあるからだ。
☆  ☆  ☆
かつて知的障害者の施設で栄養士として働いていたという方から、
「思えばその施設には、しろうとが見ても『明らかに、あなたはここにいるべきではないでしょう』という、知的に問題のない人が何人かいた。
あれはディスレクシアだったかもしれない」
という話を聞いたことがあります(ノД`)
この記事を訳してここに置いておくのは、 そういう誤診が今後断じてあってはならない、という思いからです。

しつこいですが、
この記事を出すことが、お子さんのWISCやIQの数値への一喜一憂を助長しないことを願っています。

2016-06-16

【翻訳】ディスレクシアの子の音韻認識の育て方

homeschooling with dyslexia(ホームスクーリング・ウィズ・ディスレクシア)
というサイトの翻訳を呼びかけたところ、
音韻認識の教え方と、サイトワードの訳し方の記事を、
「まるはな」さんが訳して下さいました!
ありがとうございます!

音韻認識・・・先日横浜で行われた
「アジア太平洋ディスレクシア・フェスティバル」のシンポジウムでも、
「フォニックス以前の問題として、オトをとらえることのできない子がいる。
多感覚法もフォニックスも効果がない、音韻認識が弱い子たち。
日本ではディスレクシア英語指導法は皆目分かっていない、実態も分かっていない。
こうした音韻認識が弱い子たちへの指導法に至っては、まったく分からない」
と断言されていました。

個人的には、英語についてはざっくりした音韻認識を責めすぎずに、
"言葉の音楽"を重視して、どんどん先に進むべきだと思っていますが、
ことはそんなに簡単ではないのでしょう・・・?

-------------------------------------------------
ディスレクシアの子への音韻認識の教え方
原文はこちら→★

●音韻認識の教え方
ディスレクシアがあってもなくても
音韻認識を学ぶことは、読みの学習の基礎となる。

●音韻認識とは
言葉が小さな音の集まりであることの認識のみならず、
音をバラバラにしたり、入れ替えたりできることを意味する。

●音韻認識の重要性
〇音韻認識は読みの学習が成功するかどうかの指標になるもの
〇音を分割したり合成したりすることは、
文字を音にする能力や読んでいるものを理解する能力を高める。
〇また、フォニックスは音韻認識の上に成り立つ。

話し言葉での音を理解できて、それを操作できるのならば、
書き言葉でも同じようにできる準備が整ったということだ。


●音韻認識を調べる
以下のようにして子供の音韻認識のレベルを調べることができる
①お手本の語と同じ音で終わる語のリストを作らせる
②例示した語を、初めの音、真ん中の音、終わりの音に分けさせる
③語の中にある音節の数を数えさせる

以上の3つのことが自信をもってできれば
フォニックスへの準備ができているということ。

●音韻認識を教えるヒント
○ゲームのように楽しくやること
○1日10分でいいので毎日やること
○子供が嫌がったらやめること
○ディスレクシアの傾向のある子はこの練習に時間がかかることがある。
1年かかることも珍しくない。
○音や語は、子供が聞く必要のある回数繰り返すこと
○折に触れて音で遊べる方法を探すこと

●音韻認識の教え方
○韻
音韻認識を教えるもっとも簡単な方法には、韻を踏む言葉を使うものがある。ゲームのように楽しくやること。子供が嫌だというサインを出したらやめて翌日にまた行うこと。毎日数分でびっくりするほど効果が上がる。

☆韻を聞く
例:「この言葉とこの言葉に同じ音があるね-」などと言って韻が出てくる本を読む。

☆韻を区別する
例:3つの言葉を言って、最後の音が同じでないものをあてる。

☆韻をふんでいる文を作ってみる。
例:「今言った言葉と同じ音で終わる言葉を言ってみて」
  「これから言う文が同じ音で終わるように言葉を足してみて」

○音の合成、分解
音に慣れたら、語の中の1つ1つの音を区別できるようになる。まず初めの音、終わりの音、真ん中の音、とすすむ。音を分解できるようになったら決まった音で始まる(終わる)
名詞に移る。

以下は初めの音についての例だが、終わりの音や、やや難しい真ん中の音にも応用できる。

☆音を認識する
同じ音で始まる語を3つ言う。子供にどんな音で始まっているかたずねてみる。

☆音を区別する
同じ音で始まる2つの語と違う音で始まる1語を言う。どれが仲間外れかたずねてみる。言葉を返してくるのが難しい場合は、初めの音を強調する。

☆音をつくる
例:「/f/で始まる言葉を言ってみて」

○音節の合成と分解
子供が1つ1つの音を意識できるようになったら、言葉を音の塊に分けたりくっつけたりすることに移る。

☆音節の合成
音節で区切った語を言って、それがどんな単語になるか答えさせる。

☆二つに区切った単語をくっつける
語を2つに分けて言い、それがどんな単語になるか答えさせる。

☆音素の合成
語を音素に分けて言い、それが全体でどんな単語になるか答えさせる。

※楽しくやるのを忘れずに。時々子供にも問題を出してもらおう。

○文の分解
短い文を言って、単語の数だけ手をたたく。見本を見せるとわかりやすくなる。

☆音節に分ける
音節ごとに手をたたく。

①見本を見せる
②お手本と同じ単語で同じようにやらせる
③こどもだけでやる

☆単語を前後に分ける
単語を前後2つのパートに分ける。
見本を見せて、子供が簡単にできるようになるまでいろいろな語で試す。

☆音素に分ける
単語を音素に分けて言わせ、いくつの音が聞こえたか子供にたずねてみる。

音韻認識を教えるのに参考にするとよい本: all about reading
(翻訳おわり)
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ところで音韻認識の弱い人と言えば、
私の父(75歳、引退した建築家)は音韻認識の弱いディスレクシアだと思います。

私がもの心ついた頃から、私の家族は
「父(ディスレクシア)の珍妙な受け答えに母(アスペ)がキレる」の繰り返しでした。
今は、うちの子に「おじいちゃんって天然だよね~」と言われています。

父の弱い音韻認識は、成長とともに多少は向上したのでしょうが、
25歳くらいをピークにごくゆるやかに低下を続けており、
自分が聞き間違いが異常に多いことを自覚して、いろんな戦略を立てる以外、
これといった解決策はない気がします。
(父はメモ魔、あとiPhoneで毎日何十枚と写真を撮る写真魔です)
上のようなレッスンは、父にはちょっと無理な気が。。
年齢的なものもあると思いますが、
次々と口頭で指示したところで、それを理解する様子が想像できません(汗)

ところで、異邦人として生きることは、
音韻認識の弱さを悟られずに生きる、有効な手段だと思います。
(父は、仕事人生の全部が海外、それも先進国での仕事はほとんどありません。
なので、珍妙な受け答えをしたとしても、
"外国人だからそんなもの"というスタンスでやってこれたのだと思います。)



メモ魔でディスレクシアな父(よく見ると「材」が「村」に(汗))
大人になって「書いて覚える派」になるディスレクシアは、驚くほど多いです

話がずれました。次の訳です。まるはなさん、引き続きありがとうございます!


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ディスレクシアの子へのサイトワードの教え方

原文:こちら→★
                       
●サイトワードとは、ルールで読めない、見て覚えることが必要な単語
 ディスレクシアの人は正しいやり方で読みを教わるのが良い。
 インターネットで探したが、ディスレクシアの人に効果的な教え方がほとんどなくてショックを受けた。
 以下は多感覚を用いた素晴らしい学習法の例である。 

●ディスレクシアの子どもにサイトワードを教える方法
 この記事の後のほうに、私の子どものBen がどうやってサイトワードを覚えるのかをやって見せているビデオがある→★。Ben はこの方法を見つけるまで何週間やってもサイトワードが1つも覚えられなかった。このやり方を始めてから、彼はサイトワードを簡単に覚えるばかりでなく楽しく学ぶようになった。Dyslexia Training Institute の先生方に感謝。
 
やりかた
① 
サイトワードをフラッシュカードに書く。
子供に単語を読ませる。
わからない単語であれば読み方を教える。

②
鉛筆やペンのおしりでカードの文字をなぞりながら文字の名前を言う。
鉛筆やペンのおしりでアンダーラインを引きながら単語を読む。
これを2回繰り返す。

③
指を使ってテーブルに単語を書く。
2でやったのと同じように文字を書きながら文字の名前を言い、
単語の読みを言いながらアンダーラインを引く。
覚えそうになっていたら記憶をもとに書けるように、カードはひっくり返しておく。
これを2回繰り返す。

④
自分の手で反対側の腕をたたきながら、文字の名前を言う。
腕をなでおろしながら(左利きならなで上げながら)単語を言う。
(訳者注:ビデオを見るとよくわかります→★)

⓹
できるのであれば、ノートにその単語を書く。

⑥
単語を見て読むということが5~6回続けてできるようになるまで、練習する。
 

☆ビデオについて
文字を書くときは正しい書き順で書くのが理想的ですが、このビデオの中でBenは時々逆から書いたりしています。私たちは書き順について取り組んではいますが、サイトワード学習の中では書き順を直すことはしていません。

●サイトワード学習開始にあたって


できれば子供たちに勘で読む習慣をつけさせないため、習っていないサイトワードの出てこない教材を使ったほうが良い。

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サイトワードについては、どこで読んだか忘れましたが
「フォニックス読みと発音通りの読みの両方を覚える」のは、
ディスレクシアには正しい方法だそうです。
(「ウェドネスダイと書いてウェンズデイ」など)
このことと、上の覚え方を併用すると、日本人学習者にとってはよさそうです。

2016-05-05

【翻訳】ディスレクシアへの音楽指導

1年ほど前に、
「楽譜が読めない生徒がいます。実はディスレクシアなのかもしれません。
このような生徒に、どうやってピアノを教えたらよいでしょう?」
という質問を頂きました。
その方のために訳したものを、以下に紹介しておきます:

Music and Dyslexia: A Positive Approach
(音楽とディスレクシア:ポジティブなアプローチ)より

・ディスレクシアの子にピアノを教える際に、一番やってはいけないのは、
楽譜を読んで音名なり階名なりを言わせること

・音符と体の感覚を直接結びつけさせるとよい。
例:ピアノの正面に立ち、両手を脇にだらんとたらした状態から、
ピアノの上に一番自然な状態で置いたときの音を「ホームポジション」として、
五線の上の音符と結びつける。

・少し覚えたら・・・
床にガムテープを貼って巨大な五線をつくり、音を聞かせて、
生徒には自分が五線紙の上の音符になったつもりで移動してもらう

要は、多感覚的に楽譜という記号と音を結びつけ、
その際、階名や音名はディスレクシアにはさらなる負担になるので介在させない。

~ ~ ~

上を訳したときに、当ブログにもいっとき多数登場した
コスモ君(→水を得た魚のように音楽に夢中)のお母様に意見を求めました:
ヘ音記号の音符は覚えて下さいと言っています。覚えやすいそうです。耳コピが得意なので耳でも取ってますが、中級以上は楽譜が複雑になり、音符を読んでると言うか確認しているようです。
楽典も習ったので、調の違い、隣り合う音の関係性などの理屈を
解っているのも助けているように思います。
「音楽を好きならそのうちに読めるようになる、諦めないで」とのことです。

改めて読むと、英語の学習方法とまったく同じですね。
多感覚、聞く→言う(弾く)→読む、文法(楽典)が役に立つ、
そしてモチベーションが原動力になることなど…

----------------------------------

話が低俗になりますが、子(中2、楽譜読めない)の最近のマイブームは
ゲーセンでの太鼓の達人です。myバチまで持ってます。
また、今頃になって日本語の韻が気になるようで、ラップで返事をしようとします。
彼にとっては、ことばはまず「リズム」のようです。
「話す」と「歌う」、「しゃべり」と「ビート」が地続きです。

しかし、ディスレクシアといっても全員がそうというわけでもないようで、
上のコスモ君は「僕はタイタツ(太鼓の達人)はま~ったくできませんよ」
と言い、実際できませんでした。。

~ ~ ~

Dyslexic Advantageの有料メルマガに、最近、
音楽とディスレクシアの記事があったので訳しました。
以下の話は、「ディスレクシアはリズムを把握するのが難しい」
つまりコスモ君タイプがディスレクシアの王道と言っているように見えます・・・


音楽とディスレクシア
多くのディスレクシアの音楽家にとっての大きなハードルは、楽譜を読むことである。
ほとんどのディスレクシアの音楽家は、読譜ではなく、耳で拾って演奏することを好む。1990年代の研究によると、ディスレクシアの音楽家が直面する主な困難は

・楽譜を読むこと
・スピードを処理すること
・左右を区別すること
・時間(time)とリズム
・音符やフレーズをシークエンスにすること(sequencing notes or phrases)
・なめらかに演奏すること
・暗譜をもとに演奏すること
・位置を把握すること(keeping place)
・集中すること

ディスレクシアが音楽を学ぶための戦略
1. まず行う、そのあと話し合う(スズキ、コダーイ)。
2. 弾こうとする前に、まず録音を聞く。
3. タイミング?(time)とリズムは別々に伸ばす。
4. 音楽用語の意味をはっきりさせる。
5. その子に適した楽器を選ぶ。
6. 体の使い方を意識する。最初はゆっくり演奏して、指使いを覚える。それからだんだんスピードをあげていく。さまざまなスピードで演奏してみる。
7. 音階(scales)を学ぶ。音楽のパッセージを体で感じ、もう一度それを見たときに「あれだ」と分かるように。
8. できれば、理解ある先生と一対一で練習する時間を持つ。
9. 弾きたい曲の名演奏を聞く。
10. 自分の進歩を前向きにとらえる。
11. リズムを体にしみこませて覚える。太ももや腹をたたいて、パッセージの感覚をつかむ(クラシックの場合でも)。
12. シンプルなパーツから始め、だんだん加えていき、スピードをあげる。
13. 1曲を学ぶときは、少しずつに分けて。音楽家のなかには、短いフレーズを聞いては演奏することを繰り返しながら、次第に1曲全体をマスターする人もいる。
14. 作曲にはMIDIキーボードを使う。


2015-11-28

大人ディスレクシアのチェックテスト[ベータ版]

「隠れディスレクシア」で当ブログではおなじみのエイデ博士から、
「大人用のディスレクシア・チェックテストのベータ版を作ったので、
試してほしい」とのニュースレターが来ました。

両博士は今年の夏、このチェックテストの元になる大規模なネット調査を行い
7000人近くのディスレクシアや非ディスレクシアの回答を得て、
それをもとに以下の項目に絞り込んだようです。

「和訳して、日本のディスレクシアやその周囲の人にも回答してもらうこともできますよ?!」
と、先方に聞いてみたところ、
「ありがとう、日本語が読めないので、今はまだいいわ。
でも近いうちにお願いするかも」と言われました。
(#これを機に、3月にお預かりした質問を転送することにも成功!(遅い!!)
#いましばらくお待ち下さい!!)


とりあえず、「大人ディスレクシアのチェックテスト、ベータ版」
と題して訳してみました。
全部で44項目あります。
何点ならディスレクシアかは、これから決めるようなので、明記できませんが、
以下に「非常にあてはまる」なら、ディスレクシア度が高いのでしょう。

昨夜、「ディスレクシアのチェックテスト」に
素晴らしいコメント→★を下さった方は、
驚くほど、下と同じ内容を語られていると思います。
[#コメントへのお返事2件、少々お待ち下さい]

~ ~ ~ ~

この調査の目的は、大人ディスレクシアを判別する簡単で手軽なチェックテストを作成することにあります。このチェックテストが従来の大人用ディスレクシア・チェックテストと異なるのは、大人ディスレクシアの苦手な部分と得意な部分を洗い出す質問項目にあります。これまでの研究で、大人ディスレクシアの判別に役立つことが明らかになったものです。

・18歳以上の方のためのチェックテストです。
・これはベータ版です。この結果をもとに、さらに質問項目を絞り込む予定です。
・回答に必要な時間は15分以下です。

1. 声に出して読むのは難しい。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


2. 本を1ページ読むのに、必要以上に時間がかかってしまう。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


3. 整理整頓や、時間の管理を、難しく感じる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


4. 英語を始めてこの方、スペリングはずっと苦手だった。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


5. 申込書などに記入するのは、混乱するし難しい。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


6. 自分の言いたいことを探し出すのが、難しいことが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


7. アルファベット順/50音順に何かを並べたり、アルファベット順/50音順に並んだものから何かを見つけ出したりするのは難しい。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


8. 読むのは簡単だし、速く読める。
ものによっては、とても速く読むことができるし、簡単に読める。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


9. 職場や学校でうまくやるには、工夫をしたり、ITの力を借りたり、各種対応を受けないといけないことが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


10. 自分の考えを、書いて整理・表現するのは、難しいことが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


11. 九九を覚えるのは難しかった。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


12. 新しい単語、長い単語、見慣れない単語を読むのは難しい。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


13. 領収書を書こうとすると、よく書き間違う。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


14. 読む時、字面が似ている単語(catとcot、spotとstopなど)を見間違う。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


15. 読む時、「どこを読んでいるか分からなくなる」「単語や行を飛ばす」ことがよくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


16. 長い単語を言おうとする時、「音の順番を正しく言う」のによく苦労する(例:「とうもろこし」が「とうもころし」になる)。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


17. 読む時は、段落のはじめから読み直さないと、意味が分からないことがよくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


18. 右と左が分からなくなることが、よくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


19. 電話でメモをとる時、間違えることがよくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


20. 言おうとしているのとは違う言葉を、ついうっかり言ってしまうことがよくある。または、ものの名前を間違って言ってしまうことがよくある(「あつい」と言うつもりで「さむい」と言うなど)。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


21. 電話をかけるとき、番号を間違って押してしまうことがよくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


22. いくつもの指示を、一度にまとめてされると、混乱してしまうことが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


23. 人の名前をなかなか思い出せないことが、よくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


24.  頭の中に、何かのイメージを立体で描くことができる。そのイメージを、頭の中で自由にいじったり、いろんな角度から眺めたりできる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


25. 何かの機械の中を頭の中でイメージできるし、その機械がはたらく仕組みもイメージできる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


26. 家具やプラモデルなどを組み立てる時、自分はマニュアルは読まなくても大丈夫。説明の絵だけ見れば、どのように組み立てればいいかが分かる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


27. 字で説明されるより、絵、図、流れ図で説明される方が分かりやすい。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


28. 青写真を"読む"のが非常に得意だ。(=図面をもとに、立体としての構造を頭の中にイメージするのが、非常に得意だ。)
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


29. ある問題があって、それをどう解決したらいいかを考えている時、頭の中で言葉はどちらかというと使っていない。(=視覚的なイメージや、視覚以外の感覚のイメージや、動きなどで考えている。)
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


30. 何かがない/抜けているのを、見抜くことがよくある。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


31. 細部(ディテール)を考えるより、全体像を把握する方が得意だ。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


32. 新しい分野の勉強をする時は、最初のうちは細かいことが気になって混乱する(「これはいったい重要なのか」と思ってしまう)。だが、ある所まで来ると、急にすべてが「かちっとはまる」ような感覚があり、全体像が見えるようになる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


33. 何かを勉強する時は、最初はなかなか定着が進まないのだが、「なぜ自分はそれを勉強しなくてはいけないのか」が分かれば、覚えられるようになる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


34. いろんなモノの、新しい用途(=本来の意図とは異なる使い方)を思いつくのが得意だ。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


35. 歴史上の出来事について考える時は、その出来事についての「言葉での説明」を思い出すというよりは、その出来事の「情景やイメージ」が見える。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


36. 「"木"や"車"とは何か、説明してほしい」と言われたら、まず木や車をたくさん思い浮かべるのが、自分のやり方。木や車の、言葉での抽象的な定義がいきなり頭の中に出てくることはない。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


37. 「学生時代に、暗記しようと必死に努力したこと」よりも、「たまたま経験したこと」の方が、よく覚えていることが多い気がする。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


38. 決まった形式にのっとった指導を受ける(=本を読む、講義を聞く、読んだり書いたりする宿題をする)よりも、実際に体験するほうが、自分にとってははるかに身につく。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


39. 何か問題を解決する時や、何かを決めたりしなければならない時、自分は論理立てて理詰めに考えるというよりも、「突然のひらめき・直観・予感」に頼るほうが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


40. 周りから、「あなたの考え方は『線形的でない』(=順序立っていない、飛躍している)」とよく言われる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


41. 「どうやってその答えにたどり着いたの?」と聞かれても、説明に困ることが多い。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


42. ・複雑やシステムを見るだけで、「それがどんな仕組みで動くのか」を、頭の中でシミュレーションする(または想像する)のが得意だ。
・「もし、そのシステムの条件や一部を変えたら、結果がどう変わるのか」をイメージするのが得意だ。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


43. 白昼夢(ぼうっとしている)時や、心が勝手にいろいろさまよっている時こそ、成果が出せる。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


44. 「自分が何を考えているか」を説明する時は、まずは自分が考えていることを言葉に"翻訳"しなければならない(=言葉にしようと思うまでは、あまり言葉では考えていない)。
□非常にあてはまる □あてはまる □ややあてはまる □あてはまらない


45. あなた自身について
□確かにディスレクシアだ(正式な検査を受け、専門家からディスレクシアだと言われている)

□おそらくディスレクシアだ(正式な検査を受けていないが、字以外の分野では能力があるのに、読み書きに限っては人並みにこなすのに人よりはるかに苦労したので、自分はディスレクシアだと思っている)

□ディスレクシアかもしれない(ディスレクシアのいくつかの特徴にあてはまるが、正式に特定されたことはなく、自分がディスレクシアと言えるかどうか自信がない)

□明らかに非ディスレクシア

項目の内容や訳について、ご意見があればお願いします~