ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2012-04-18

スポーツはディスレクシアの人にとって生産的な道であるとの裏付けが増えている

The Independent誌の
Evidence grows that sports is a productive path for dyslexics
を訳してみました。


・スポーツは、ディスレクシアが才能を開花する分野のひとつ

・その理由のひとつは、学業で認められない分、自分をスポーツで証明したいという思いが強くなるから

・ディスレクシアのスポーツ選手は、普通の選手とは違う感覚を持つ

・特に視覚など、文字ではないものをきっかけにして、非常に精密に状況を思い出せる

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若きアマチュアのトム・ルイスが先週、全英オープン初日の話題を独占するなか、ほとんど取り上げられなかった彼の一面があった----それは彼がディスレクシアということである。

初日の「65」は全英オープン151年の歴史上、アマチュアとしては最小でのラウンドだ。そんな一日を終えた後の記者会見で、彼はこう認めた。「学校は面白くなかった。僕はディスレクシアなので学校が合わなかった。16歳で学校に行かなくてよくなってハッピーだった」

ディスレクシアは一般に「学習困難」や「発達障害」と説明される。特に読み書き能力に影響し、人口の約10%がこれに悩まされると言われる。

対して、あまり知られていないのが、ディスレクシアには読み書き能力を補う長所を持つ可能性があるという意見があることだ。教室では苦労するかもしれないが、別の環境では才能を伸ばすかもしれないのだ。

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例えば実業界は、一般人口と比べてディスレクシアの割合が高い分野といわれる。ヴァージングループのリチャード・ブランソン会長もディスレクシアだ。

2007年にロンドンのカス・ビジネススクールが発表した調査結果によると、アメリカの起業家の35%がディスレクシアの兆候を示すという。

また今週、The Apprentice*起業家を発掘するTV番組)の優勝者、Tom Pellereauは、自身がディスレクシアであることを「圧倒的なプラス」と表現した。

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多くのディスレクシアの人にとってスポーツの道に進むことは生産的になりうる----そのことを示す証拠は数多い。モハメド・アリ、マジック・ジョンソン、スティーブ・レッドグレイブ卿、ジャッキー・スチュワート卿、カール・ルイスなど、同時代人のなかでも最も偉大で才能あふれるスポーツ選手が、自分たちに寄せられた喝采の言葉を読むのに苦労していた。

1に、スポーツはディスレクシアの子がクラスメートと同じ土俵の上で戦える分野である。ある種目に自分は長けていると発見できれば、自分に自信が芽生える。そうなると「もっとうまくなりたい」さらには「周囲に認められたい」という思いにつながっていく。

スチュアートは、F1ドライバーを引退後何年もたって初めて、ディスレクシアの診断を受けた。ディスレクシアとスポーツには明らかな関連があると言う。「自分は学校では劣等生のレッテルを貼られていたが、スポーツが人生を救ってくれた。自分はあの状況から逃れるため、アルコールやドラッグに手を出すことだってありえた。でも自分は得意なものを見つけることができた」

何年もの間、かなりの劣等感を抱えて生きた後だったので、得意なことがあるのは最高の気分だった。だからこそ、誰よりもうまくなりたいという強い決意が生まれた。誰より本気で取り組んだのは間違いない。自分を証明したいという決意も勢いもあった。それに、負けるのが怖かった。負けるとはどういう気分か、骨身にしみていたから

ラグビーの元スコットランド代表、ケニー・ローガンもまた、自身のディスレクシアについてすすんで話してくれる一人だ。「自分にとってラグビーは居心地の良さに関係があった。教室に放り込まれて作文の一つも書かされようものなら、逃げ出したい気分だった。でもラグビーをしていると居心地が良かった。学校では落ちこぼれだ、バカだと言われていた。だから自分は何かしらの価値があると証明したいという、強い決意につながった

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しかし、相手を見返したいだけではないらしい。トップ選手たちは、視覚化能力、空間認識、独創性、記憶力の点で有利といった趣旨のことを指摘する。どうやら彼らには、自身の選んだ種目に対する一種独特の感覚を持っているらしい。また、他の選手と比べて自分の直感を信じる傾向が強いようだ。

教育関係者は、ディスレクシアには違う教え方が必要だという。グランプリを27回獲得、世界ドライバーズチャンピオンシップで3回優勝したスチュワートも、輝かしいキャリアを通じてそのことを知ったという。

「昔のニュルブルクリンクは1ラップにつき187ヶ所のコーナーがあった。僕は今でも187ヶ所のコーナーについて1つ残らず、ギアチェンジとブレーキをかける位置を言うことができる。でもアルファベットは言えない。すべてのレーストラックについて同じことができる。一度走ったコースは、1年ぶりであっても、23ラップも走れば、どこに手が加わったのか、小さな点でも指摘できた」

スチュワートがすべてのコーナーの曲がり方を覚えているのは、視覚的記憶が優れていることを示している。ディスレクシアによく見られる特徴のひとつだ。また、フロリダ・マーリーンズの名捕手でディスレクシアのジョン・バックも、何百人ものバッターとその弱点を完璧に覚えているという。彼が記憶を呼び起こすのに使うのは名前ではなく、シューズやバット、そして立ち方だという。ローガンも、対戦したさまざまな選手を、立ち方や動き方で覚えているという。

「僕はゲームが他の人とは違って見える。他のプレーヤーよりも良く見えていると言ってもいい。あと、他の人とは違うやり方を試す力もあった。持って生まれた才能だと思う。変えようとは思わない。ディスレクシアの人はアイデアがどんどんわいてくる、とても独創性の高い人たちなんだ」(ローガン)

ゴルフも視覚的能力が大きなアドバンテージとなるスポーツだ。トム・ルイスにとっては幸運なことだろう。ライダーカップの米国代表であるJB Holmes(大学1年でディスレクシアの診断を受けている)は、ゴルフコースに足を踏み入れた瞬間から役に立つ記憶が堰を切ったようにあふれ出てくると、2009年に語っている。
「コース上に立った瞬間から、すべてのホールについて、前にプレーした時はどこにピンを置いたか、自分のショットはどこに飛んだかまで、全部思い出せる」

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「ディスレクシアが長所になり得る」という経験則を裏付ける科学的証拠はまだ少ない。しかし脳神経の研究者のなかには、ディスレクシアの人の脳は発達が進んでいるため独創性に富んでおり、また全体像を俯瞰する能力が高いとする人もいる。

オックスフォード大学で生理学を教え、ディスレクシア研究基金の理事長も務めるジョン・スタイン教授は、ディスレクシアにポジティブな面もあるという考え方は有効だと言う。ディスレクシアに関する2001年の論文で同氏は「芸術家、発明家、政治家、起業家の才能がディスレクシアに見られる割合は、一般に思われるより高い可能性がある」と述べている。

全英オープンでは65でラウンドするという素晴らしい成績を残したトム・ルイス。「ニック・ファルド卿によるメジャー優勝6回の記録を塗り替えます」とさらりと語る様子からは、途方もないポテンシャルの高さが感じられた。学校では何年もディスレクシアのせいで嫌な思いをしてきた今、弱みが強みになることに気づきつつあるのかもしれない。

ディスレクシアの有名スポーツ選手

ポール・マーソン(サッカー)
ポール・ニクソン(クリケット)
ケニー・ローガン、スコット・クインネル(ラグビー)
サンディ・ライル、JBホームズ(ゴルフ)
カール・ルイス、ブルース・ジェンナー(陸上)
ジャッキー・スチュワート、ジョニー・ハーバート(F1)
モハメド・アリ(ボクシング)
ダンカン・グットヒュー(水泳)
マジック・ジョンソン(バスケット)
グレッグ・ローガニス(飛び込み)
スティーブ・レッドグレイブ(ボート)


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私も人の名前がほんっと~に覚えられないのですが、訳を見ればその生徒のことをありありと思い出せます(笑)まあこれはディスレクシアとは関係ありませんが。

子に「文字が苦手な人のなかには、自分が上から見える人もいるらしいけど、あんたどう?」
と聞いてみたところ、
「サッカーでボールをもらうと自分が上から見える。ドッジボールでは後ろから見える」(; ̄Д ̄)
(なんでもっと早く言わないの!!)
「だって誰にも聞かれたことないし。当たり前すぎて言ったことない」
と言ってます。