Dyslexia Isn't a Matter of IQ, Brain Imaging Study Shows(fMRIにより、ディスレクシアはIQの問題ではないことが明らかに)
の翻訳です。
・ディスレクシア=「IQが高い」ではない。
・逆に、ディスレクシア=「IQが低い」でもない。
・アメリカのディスレクシア教育は、「賢いディスレクシアの子が本来の力を発揮できるように」という趣旨になっているが、IQが低い子にも同じ教育方法が役に立つ。
2011年9月28日、Science Daily
アメリカでは子供の5~10%がディスレクシアと診断されている。これまでは、「賢くて話し言葉の能力が高いが、読みに苦労しているような子」がディスレクシアだとされてきた。つまりIQの高さと読みの点数の低さがミスマッチを起こしているような子である。だがあまり賢くない子の場合、読みの問題は知的能力全般の限界に起因させられていた。
このようなディスレクシアの理解が、脳画像を使った新たな研究により、いま問い直しを迫られている。「読むことが苦手な子供は、言語に含まれる音の処理に脳が困難を感じており、このこととIQの高さ低さは関係ないことを私たちは発見した」と、MITの神経科学者、John D.E. Gabrieli等は言う。「読みの困難は他の認知能力とは無関係である」。
この研究結果はPsychological Science誌に近く発表される。読みが苦手な生徒に対する教師のサポート方法を変える可能性がある。
研究は7~17歳の生徒131人を対象に行われた。簡単なリーディングの試験とIQテストによって、「通常の読み能力と通常のIQのグループ」「低い読み能力と通常のIQのグループ」「低い読み能力と低いIQのグループ」の3つのグループに131人を分けた。2つの単語を見せ、韻を踏んでいると思うかどうか訊ねた。このとき、2つの音の類似性はスペリングからは分からないような単語を用いた。fMRIを使い、音と文字をつなぐのに重要な役割を持つ脳の6つの部位の活動を観察した。
その結果、読み能力が低い2つのグループは、IQの高いグループも低いグループも、通常の読み能力のグループと比べて、観察部位の脳の活動が大幅に低いことが示された。しかし、「低い読み能力と通常のIQのグループ」と「低い読み能力と低いIQのグループ」の脳には違いがなかった。「この結果から、脳全体の認知能力が高くても低くても、読みに限定された問題については同じであることが示唆される」(Gabrieli氏)
この研究結果は、読みが苦手な人の診断と教育の両方に重要な影響を与える可能性がある。近日発表予定の精神医学の診断のバイブル、DSM-V(「精神障害の診断と統計の手引き」第V版)用に提案されているディスレクシアの定義の改定は「[IQと読み能力の間の]「深刻な差」の除去に関する神経生物学的証拠が現在のところ欠けている。われわれの研究はこうした面での証拠を提供する初めてのものとなるだろう」(共同研究者Fumiko Hoeft氏)
現在、教育関係者はディスレクシアの中でも賢い子供を対象に、読みと言語に焦点を当てた介入を提供することが多い。つまり、賢いディスレクシアの子の読み能力を本来期待されるレベルにまで引き上げることが目的とされることが多い。反面、その介入方法は「賢さ」が足りない子には無意味だと見なされることが少なくないようだ。読みが苦手な子の脳の中では(IQに関わらず)同じことが起きていると教師が理解すれば、読みが苦手な子なら誰に対しても、同じ介入方法が有益だと分かるだろう。字が読めないと多くを学ぶことは難しいため、これは多くの子にとって朗報と言える。