ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2013-03-20

「ディスレクシアであることの利点」

The Dyslexic Advantage: Unlocking the Hidden Potential of the Dyslexic Brain
(ディスレクシアの利点・ディスレクシアの脳に秘められた潜在能力を明らかにする)
の一部をまとめてみました。
ディスレクシアについて、とってもポジティブな見方ができる本です。

☆  ☆  ☆


ディスレクシアは脳の違いによって生じる現象。
ディスレクシアの人は次の4つの能力のひとつまたは複数を示す。

1.      空間把握能力
=空間における物体の形、大きさ、動き、位置、位置関係、およびそれらの相互関係を把握する力

<どのような形で表れるか>
・頭の中で、3Dで事物を思い浮かべることができる
・レゴ、工作、プラモデルなどが好き
・親が、空間把握能力を必要とする職業に就いていることが多い(エンジニア、建設・建築関係、生物化学、医療、発明)
・空間情報を正確に記憶し、思い起こして、操作することができる
・ある分野の空間把握は得意だが、他の分野の空間把握はそうでもなかったりする

<この能力が裏目に出ると…>
・鏡文字を書く、文字を反転して読んでしまう
・言語表現に困難を感じる
・遅咲き。その発達度は独自に判断すべき
・幼い頃は学校で苦労するが、教室の外では独創性を示す

<さらに…>
・非常にクリエイティブな人々。

2.      つながりを把握する能力
=異なる物事や概念、出来事の相互関係を見抜く力。さまざまな領域のアプローチやテクニックを使い、物事をさまざまな視点から見る力。

<どのような形で表れるか>
・ある主題に関する細かい情報を組み合わせて壮大な全体像を描き出したり、本質を指摘したりする
・「共通性」と「関連性」の2つの軸でつながりを把握する
・物事を違った角度から眺めることができる
・一つの専門性に特化するのではなく、領域横断的なアプローチを好む
・さまざまな分野にまたがって活躍する人が多い。普通とは違う経歴を持つ。
・全体像の把握を通じて言語情報を理解する
→つっかえながら読んでいるにもかかわらず、内容を深く把握できる

<この能力が裏目に出ると…>
・客観型試験(スピードや細部の正確さが問われる、標準化された試験)に弱い
・学校では、単純な指示や質問の意味をとらえきれなかったり、人とは違う点に着目してしまったりして、出遅れる
・文脈がないと文章の意味を把握しづらいため、客観式試験に弱い
・連想が働きすぎて、音や意味が似た単語と読み間違える
・紙の整理が非常に苦手
・論理立てて、順序立てて論じるのが苦手
・全体像がわからないと暗記もできない
→背景知識をどんどん与えるべき

3.      物語を作る能力
=過去の個人的経験(エピソード記憶、個人的記憶)の「心的場面」をつなぎ合わせて、過去・現在をリアルに思い出したり、未来をリアルに思い描いたり、その中で新しい概念を試してみたりする力

<どのような形で表れるか>
・記憶が場面に結びついており、描写や例の形をとる。
・(言葉として)抽象化して取り出した記憶は弱い
・エピソード記憶が意味的記憶より強いため、独創的である。
・物語の形で考え、伝える。
ちょっとした刺激をきっかけに記憶がありありとよみがえる

<この能力が裏目に出ると…>
・丸暗記に弱い。学校で出された単純な指示が覚えられない
問われたこと「だけ」に答えるのが難しい

<さらに…>
・この能力ゆえに、ディスレクシアとはどういう状態を指すか、正しくかつ適切な希望を持てる物語を最初から伝えなければならない。

・抽象的な情報は例や物語の形で伝えれば記憶できる
・字を書くのが苦手でも創作は好きである場合が少なくない。

4.      未来を予測する能力
=エピソードのシミュレーションを使い、過去や未来の状態を正確に予測する力
3.の能力と重なる部分もあるが、その中でも特に、独創的なシミュレーションを行ったり、想像の産物を構築する能力を指す

<どのような形で表れるか>
・単なる自由な空想ではなく、「正確」な予測を目指すところがポイント
・まず洞察に至り、そこから(時系列などを)さかのぼる。
・観察したパターンをもとに、過去や未来を思い描ける
・「記憶力の悪い、一族の歴史家」
・抽象的論理とは対極にある

<この能力が裏目に出ると…>
・スピードや効率性は落ちる
・直観的な思考プロセスは、端から見るとぼけ~っとしているように見える

・学校ではぼけ~っとするのが難しいため、洞察を得ることが難しい

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関連記事(Eide博士の文章の翻訳):
隠れディスレクシア
ディスレクシアは例外から学ぶ

8 件のコメント:

  1. すごい!
    全部あてはまります。 
    でも小学校時代は裏目にばかり出て、だだのバカあつかい。
    いい高校にも、いい就職もできず・・・
    もっと美術や技術を学んで、新しい未来を考える仕事がしたかった。
    だから子供たちには同じ思いをさせたくない、学校や先生方にも広く理解していただいて、子供たちの芽を摘んでしまわないようにディスレクシアというものを理解し、受け入れていただきたいですね。

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  2. 当てはまりすぎてて驚きました。正式に診断されたいです。
    友人や親にすら理解されず、バカで怠け者と思われてたので
    ディスレクシアという盾があれば少しは気が楽になるかも。
    まず世間にもっと認知してもらわなきゃいけませんけど。

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    1. 2件のコメント、ありがとうございます。ようこそお越し下さいました。

      もし匿名さんが学生なら、学校に相談した上で検査(16歳以下ならWISC、16歳以上ならWAIS)を受けることをお勧めします。
      もしすでに大人なら、もちろん診断を受けるのもありだと思いますが、
      診断を受けたところで普通の病気のように治療できるものではないですし、
      診断書を会社に出して何か配慮を受けられるものでもないですし、
      ここは、匿名さんがご自身のディスレクシア的特性を理解すると同時に、自分のことを少しずつ周りに伝えていくのはいかがでしょう?
      何も「私はディスレクシアです!!」と堂々カミングアウトする必要はないようです。
      でも、自分が分かっているだけでも、いろんなことがかなり楽になるはずです。
      「これもそうなのか!!」と数ヵ月単位で目からうろこ状態が続くようです。
      ここまで大変なご苦労があったと思います。私も世間にどうにかしてディスレクシアのことがもっと知られてほしいと思っています。こうしたらよいという方法があったら、ぜひ教えてほしいです。

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  3. こんにちは!昨夜こちらに辿り着いてから夢中で読んでおります。

    中1の長男が四年生中頃から不登校です。
    小さな頃から頭の良い子でしたが、小学生になってから宿題が出来ない。
    教えても泣いてしまう。
    算数は答えは分かるのに式が書けない。

    4年生に発達の検査を受けました。
    結果は発達障害なし。グレーゾーンでもなし。
    でも耳からの情報が異常に弱い。
    精神科の先生と臨床心理士の先生が不思議な程に悪かったそうです。
    これは大人になっても変わらないので困難を伴うでしょう。出来ることは何もないです。
    と言われて途方に暮れてしまいました。

    最近はこの子の良いところ伸ばしてあげたいと思い、本人希望のパソコンを購入して楽しんでいます。

    この子を受け入れてくれる学校を探しています。
    勉強は今はたまにしかしていません。
    本人は学校に行っても意味がないと言っています。

    もじこさんの文に救われました。
    こちらのブログで勉強をして何とか子供の力になりたいと思います。

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    1. ゆっきーさん、もしここをご覧でしたら、一度mojiko222アットgmail.comまでご連絡頂けますか?直接ご連絡差し上げたい読者の方がおられます。ご連絡お待ちしています。

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    2. こんにちは、三年前のゆっきーさんのコメントを見て、驚いています。うちの息子も、算数の答えを書いた後に、こんなの意味がないと言いながら、式を書いています。字を書きたくないので、いつも暗算しているようです。学校は意味がないことばかりさせる、行きたくないと言い、本人も周りも困っています。
      特に、書字が苦手で、なんとか出来ないものか、情報収集していたところ、このサイトを発見しました。
      受け入れてくれる学校は見つかったのでしょうか。
      何か情報があれば、よろしくお願いします。m(_ _)m

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    3. こんにちは。
      いまは当時と違い,合理的配慮という概念がだいぶ浸透しつつありますので,LD(学習障害)の生徒を受け入れてくれる学校は,当時よりも増えていると思います。公立は合理的配慮は法律で義務づけられていますし,東京都のように私学でも義務化されている自治体もあります。
      私学の場合,入学前にはLDであることをあまり前面に出しすぎないほうが賢明なようです。

      LDはあらゆる学力層にいますので,超進学校から最底辺校まで,LDの生徒はいます。個人的には,特進クラスなどを設け大量の課題を出して生徒を縛り上げる学校よりも,個性尊重型で規則の少ない学校のほうが,LDの生徒にとって過ごしやすいように思います。


      ディスレクシア的には,学習困難に対して取れるアプローチは1)訓練する,2)配慮を受ける,3)支援機器を学校and/or家庭で使う の3つがあります。1)2)3)のすべてが,程度の差はあれ必要です。2)3)は本人の希望があれば,義務教育中は保護者が動き,次第に本人が頼めるようになっていくべきものだと思います。もじこ塾は1)訓練 の場です。

      途中式を書きたくないのは,書字困難も理由になりますが,頭の回転がものすごく速い,直観的に答えを理解している・・・なども理由になりうると思います。理由はともあれ,もじこ塾では,相当の書字困難であっても純粋書字練習を行ってもらっています。考えながら書くのではなく,純粋に書く練習をすると,微細運動能力が伸びて少しずつ書けるようになるケースが多いように思います。

      散漫にすみません。何かしらお役に立てれば幸いです。

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  4. はじめまして、こんにちは。
    娘がアーレンシンドロームの可能性があり(おそらく親である自分も)、カラーレンズやカラーフィルム、デジタル教科書で支援しています。
    こちらの翻訳が非常に前向きで参考になりました。

    アーレンとディスレクシアが別物だとしても、娘や自分、そして息子(視覚過敏はあるが読みの困難はない)にも非常によく当てはまりました。今後「得意」をより伸ばすための参考にさせていただきます。

    ありがとうございます。

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