「隠れディスレクシア」の著者は、
アメリカで「ディスレクシアの長所」(Dyslexic Advantage)を推進している
エイデ夫妻とおっしゃる方々です。
エイデ夫妻に、「日本では『隠れディスレクシア』への反応が大きい」
と伝えたところ、大変興味を示し、
「日本の読者からの質問があればぜひ受けたい」と言っておられます。
そこで、Dyslexic Advantageが出版された時のインタビューを訳しました。
以下の内容につきまして、あるいは「隠れディスレクシア」につきまして、
著者に直接聞きたいことがありましたら、ぜひお知らせ下さい!
質問は、日本語でも英語でもOKです。
こちらもあわせてどうぞ:「ディスレクシアであることの利点」
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<まとめ>
ディスレクシアは、脳の配線が違う。
「全体像を描く力」「大きな流れを見抜く力」
「あるプロセスが今後どうなっていくかを想像する力」を持つ。
その分、細かいディテールの処理が弱い。
ここから導かれる、ディスレクシアの4つの能力:
1)空間的理解力
(三次元的に認識したものを組み立てる能力)
2)相互関連的な理解力
(他の人に見えないつながりを見抜く能力
3)ストーリー的理解力
(事実を抽象化せず、経験や例として理解する能力)
4)事実関係が不完全または変わり続けるような不安定な状況で、筋道立てて考える能力
ディスレクシアだと、小学校の低学年の時に、得意なことと学校教育が要求することの間に大きなミスマッチが生じる
(これは日本では、小学校低学年に加え、「英語学習が始まる中1の時に」と読み替えられると思います)
得意を見抜き、それを伸ばすことに注力すべき。
苦手を底上げする対策については、その子にあわせた方法を模索する必要がある。
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ディスレクシアは普通、障害と見なされている。読み、割り算の筆算、あるいは文字や数字の正しい向きがなかなか覚えられないといった心的欠陥だというのが一般的な考え方だ。
この見方に異議を唱える学習障害の専門家、ブロック&ファネット・エイデ博士夫妻は、ディスレクシアは脳の配線の違いであり、それは数多くの有利な点をもたらすと主張する。
学習障害の専門家であるエイデ博士夫妻は、The Dyslexic Advantage:
Unlocking the Hidden Potential of the Dyslexic Brainの著者。ディスレクシアの利点についてのブログを運営しているほか、シアトル近郊でクリニックを開設している。
ディスレクシアの子は小学校低学年の頃は非常に苦労することが少なくないが、才能豊かなストーリーテラー、発明家、起業家になることも少なくない。
夫妻の近著、The Dyslexic Advantageは、ディスレクシアの本人とその家族が、ディスレクシア脳の利点を認識し育てる助けとなる。Wiredへのインタビューでは、ディスレクシアの利点について語ってくれた。
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--ディスレクシアを、実際に則して定義すると?
| エイデ夫妻 |
ディスレクシアで言語性IQが140や145あり、読解力も非常に高いため、ディスレクシアと診断されない子もいます。[訳注:隠れディスレクシアですね。] そんな子は、ギフテッドクラスの他の生徒に比べれば、読みの速度は相対的に遅いですし、読みの遅さゆえに成績も伸びません。
さらに、ディスレクシアの学生の中には、読みの問題はそれほどでもないですが、他の分野、例えば書きや作文、暗記、計算作業などの問題の方が大きいケースもあります。実はこうした問題も、ディスレクシア的な読みや綴りの問題の原因となっている「脳の配線の違い」に起因しているのですが、従来のディスレクシアの定義は、音や言語の処理だけに焦点をあてていて、脳の配線の違いがもたらす広範な影響をとらえ切れていないのです。
--ディスレクシアをめぐる主な誤解は?
ファネット:大きな誤解に「ディスレクシアの脳は、紙に書かれた文字の処理方法だけが異なる」というものがあります。実際は、あらゆる情報処理に影響を及ぼす、普通とは異なる処理パターンを示しているのですが。
ディスレクシア脳は、全体像としてのつながりを見抜く点に強みを発揮する分、細かいディテールの処理が弱い配線になっています。
ディスレクシアの子の脳が、「普通の子と同じ発達過程をたどっているが、あまりうまくいっていない」と考えるのは、大きな間違いです。実際には、ディスレクシア的な処理方法を持つ子の脳は、普通とはまったく異なる方法で発達を遂げているのです。異なる接続や回路のパターンを確立し、普通とは違う種類の問題解決の方法を身につけます。その違いは脳の特定の部位にとどまらず、全体に及びます。
ディスレクシア的に通常の発達とは、7~8歳の頃には他の子供よりも読み方を学ぶのが当然のことながら大変になる、そんな発達過程のことです。そしてこの発達の違いゆえに、子供が学ばなければならないことと、従来の低学年の教育のあり方との間に大きなミスマッチが生まれます。教室で求められることと、その年齢で得意なことの間にギャップが激しすぎる。そのため、従来の教室では実力を発揮するのがとても困難なのです。
-- ディスレクシア脳の主な強みとは?
ブロック:近著では、ディスレクシアの利点を4点にまとめました。いずれも、ディスレクシア脳が得意な「全体像を描く力」「大きな流れを見抜く力」「あるプロセスが今後どうなっていくかを想像する力」が違う形で、でも相互に関連し合いながら発揮されたものです:
ディスレクシアのなかには、空間的理解力が非常に高い人がいます。三次元的に認識したものを簡単に組み立てる人たちです。デザイン、3Dアート、建築の世界に進んだり、エンジニア、発明家、有機化学者になったり、あるいは買ったものをレジ袋の中に非常に上手に詰めたりします。
相互関連的な理解力も、ディスレクシアの強みです。ここで言う相互関連とは、共通性(アナロジーなど)のこともありますし、因果関係のこともあります。物事をさまざまな角度から眺めたり、ある出来事や概念を取り巻く全体像や大きな流れを把握する力です。ディスレクシアには、領域横断的な分野で活躍する人や、複数の異なる分野や背景で得た視点や技術を組み合わせることが要求される分野で頭角を現す人がたくさんいます。複数分野のスペシャリスト、普通と異なる職業的経歴をたどってきた人も少なくありません。こうした人たちは「他の人にはこれまで見えてこなかったつながりが自分には見える」と言うことが多いのも特徴です。
ディスレクシアは、事実を経験や例、ストーリーとして理解する傾向があり、抽象化しない傾向があります。私たちはこれが第3のディスレクシア的長所、「ストーリー的理解」だと考えています。
家族のなかで「昔のことをよく覚えている人」という位置付けであることが少なくありません。2年前のお姉ちゃんの誕生日に誰が何をプレゼントしたかを知りたいとき、ディスレクシアの子が覚えているのです。いわば家族の中の歴史家。でも、九九は覚えられない。それがディスレクシアです。
このような人たちは、ストーリーを語り理解する能力が重要な分野で頭角を現します。営業、カウンセラー、弁護士、教職につく場合もあります。
作家にもディスレクシアは少なくありません。ピュリッツァー賞を受賞した詩人のフィリップ・シュルツは、近刊My Dyslexia(『私のディスレクシア
』)についてニューヨーク・タイムズに寄稿した文章のなかで、子供時代についての非常に鮮やかな記憶を披露しています。こうした記憶力は、ディスレクシアにはごく幼い頃からよく見られます。
ディスレクシアの第4の長所は、事実関係が不完全または変わり続けるような不安定な状況で、筋道立てて考える能力です。この能力が高いディスレクシアは、実業界や金融市場で活躍したり、サイエンスのなかでも過去の出来事を再構築するような分野、例えば地質学や恐竜学などに進みます。刻々と変化するようなプロセスを相手に仕事をし、予測を立てることを得意とします。
--ディスレクシアの人は、そのような長所がひとつだけ見られるのでしょうか、それとも一人が複数のディスレクシア的長所を示すのでしょうか。
ブロック:ほとんどのディスレクシアの人は、これらの長所を複数持っています。私たちが知っているディスレクシアの80~90%は、物事を物語的に理解し、かつその多くが変化する状況での判断を得意とします。空間把握能力はディスレクシアの本質的能力とされることが多いのですが、意外なことにそこまで多くありません。近著にはダグラス・メリルという、GoogleのCIO[最高情報責任者]を何年か勤めた、非常に個性的で印象的な人へのインタビューが載っていますが、彼は「いま目を閉じたら、どちらの方向にドアがあるか分からない」と言っています。でも、それ以外のディスレクシア的長所はすべて持ち合わせていました。
--ディスレクシアには、苦手な種類の脳内処理があり、そのせいで得意な種類の脳内処理が見えにくくなっているとのことですが。
ファネット:小学校低学年の授業は暗記--それも耳や目からの情報を緻密に認識できる能力が前提になるような種類の暗記に偏っています。
機械的な暗記、そして緻密なディテールに焦点をあてる技術は、ディスレクシアの子なら習得に苦労することです。
しかし、小学校低学年では、まさにそういう種類の学習に力点が置かれているため、ディスレクシアに得意な、大きな視点で物事を処理する力や、経験を記憶する力が、見過ごされてしまう傾向があります。
ディスレクシアは「あることを反復学習することでそれを考えずにできるようになる」能力が欠けています。しかしそれゆえに、自分が関わった学習事項や仕事により深く関わったり、常に心に留めておいたりします。その結果、そのあちこちをいじっては改良していくことが非ディスレクシアより多いのです。
--Dyslexic Advantageには、「ディスレクシア脳は配線が違う」とあります。
ブロック:それについてはDr. Manuel Casanovaが大変興味深いデータを示しています。博士は何千人もの脳を分析した結果、「ミニ円柱構造」と呼ばれる脳内処理を行う部位の間隔が、釣鐘型の分布をしていることを明らかにしました。
ミニ円柱はニューロンの束で、まとまって一つの単位として機能します。ミニ円柱が密集している人と、間隔の開いている人がいます。
ミニ円柱の隙間に軸索が伸び、軸索同士がつながってより大きな回路になりますが、ミニ円柱が密集して隙間がないと、似た機能を持つ近隣のミニ円柱が密につながります。結果、高速処理や微細な処理を行う回路が出来上がります。類似するシグナルの微差を識別するような回路です。
そんな回路を持つ脳は、脳の離れた部位同士のつながりが形成されにくい傾向があります。そうすると、背景・文脈、アナロジー(類推)、意義など、より高次の機能が育ちにくくなります。
博士によると、ミニ円柱の密度が最も高い集団には、自閉症の診断を受けた人が多く含まれていました。
一方、その対極にある、ミニ円柱の密度が低い集団の人たちは、脳の中でも異なる機能を持つ部位のつながりが強い傾向が見られました。そういう人は、昔の出来事を生き生きと記憶したり、複雑なシミュレーションや比較を頭の中で行ったりすることが得意になります。
博士によると、この集団にはディスレクシアの人たちが多い傾向があったのです。
--ディスレクシアの子を持つ親へのアドバイスを。
得意を見抜き、それを伸ばすことに力を注いで下さい。「うまくいっていない点を正す」ことに重点が置かれ、うまくいっている点をほめて伸ばすことが、あまりにないがしろにされがちです。
その一方で、苦労している分野のパフォーマンスを高める手助けについては、その子に合わせて変える必要があります。
ディスレクシアの子のなかには、自分と同じくらい賢いクラスメートより苦労していても、そのことにあまり悩まないケースもあります。学校で友達といるのが大好き、そんな子たちです。こういう子は、通常学級で勉強し、苦労する分野だけ通常学級の外で支援を受けるのがよいでしょう。
しかし、他の子があっという間に学習内容を習得する様子を目の当たりにしたり、教師にみんなの前で注意されたり、笑われたり、圧力をかけられたり…そんなことに堪えられない子もたくさんいます。
そういう子供たちが、自己イメージをどんどん低下させたり、不眠になったり、ものごとをこなす力がどんどん低下するのを見るのは、本当に悲しいことです。発達の仕方に合った教育をしてくれる場所に移す必要があります。具体的な方法はDyslexic Advantageの本に書きました。とにかく、こういう子供達は、なぜ苦しんでいるのかを理解できないまま辛い学習環境にあまり長くいすぎると、壊れてしまうこともある。そう認識することが重要です。
--もし選べるなら、ディスレクシアになりたいですか。
もちろんです!特殊ですごい脳の配線ですよ。
