on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
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知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
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独創的で、​​対人能力が高い。
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全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力
に長ける。
- ​音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- ​読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから​
- ​細​​​​かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される-
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10人に1人程度いるというのが通説
​。アメリカの調査では3人に1人とも
- 家族性であり、遺伝による​。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい



当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2013-08-17

【翻訳】ディスレクシアのインスピレーション

ブレンダン・オ・キャロル「The Inspiration of Dyslexia」の翻訳です。

amazon.ukで買ったforgotten letters: an anthology of literature by dyslexic writers所収、ブレンダン・オ・キャロル「The Inspiration of Dyslexia」を訳してみました。
本に掲載された文章を勝手に訳してはいけないのかもしれないですが・・・うちの子に読ませてあげたい一心でつい訳してしまいました。



上の本について紹介しておきます。
著者のブレンダン・オ・キャロルはアイルランドのコメディアンで、ディスレクシアだそうです。以下の原文はネットでは見つけることはできませんでした。

この文章が収められた本は、ディスレクシア作家のアンソロジーです。
『天才たちは学校がきらいだった』の著者、トマス・G・ウェストが編纂に関わっています。
トマス・G・ウェストのブログは、このブログの左下でもフォローしていますが、この人は「ディスレクシアの持つ独創的性質はネット社会に最も不可欠な資質である」という観点に立った論考を進めています。ディスレクシアとクリエイティビティの関連性について語らせたら、この人の右に出る人はいないでしょう。ちなみにこの人自身はたぶんディスレクシアではありません。ディスレクシアだそうです。

同氏の『天才たちは学校がきらいだった(原題In the Mind's Eye)』は最近Second Editionが上梓されました。
ウェスト氏はほかに、Thinking Like Einsteinという本も出しています。


☆  ☆  ☆

ディスレクシアのインスピレーション



「昔ディスレクシアだったけど、あるいは今もディスレクシアだけど、偉大なことを成し遂げたり大成功を収めたりした。」
そんな人の話はたくさん転がっている。
最近そういう話が実に多いので、
「ディスレクシアでないと、人生で何かを成し遂げることはできない」
と思ってしまう人もいるかもしれない。

でも違うんだな!
僕が思うに、そういう人たちは、ディスレクシアであろうがなかろうが、成功していたはずだ。
ただ、ディスレクシアだったことで、人とは違う方法でいろんなことを学ぶ羽目になったはずで、その点ではディスレクシアはその人の人生を変えただろうとは思う。
幼い頃から人とは違う方法で物事を学んでいると、それが習慣というかクセになる。
そして、何でもかんでも「人とは違った」方法で見る人生になる。

アメリカ人はこういうことを表す
thinking outside the box」(箱の外に出て考える、決まった考え方にとらわれない)
という表現まで作ってしまった。
「箱の外に出て考える」話はたくさんある。
正直に言うと僕もそういう話を読みあさった時期がある。
僕は深いところでそういう話の影響を受けている。

その中でも僕が一番好きな話は、読んだのではなく、ある人から聞いたものだ。
もしよかったらこの話につき合ってほしい。



アメリカのボストンという町の、半地下のアパートの部屋に、1人で暮らしている男の人がいた。
ジョニーと呼ぶことにしよう。
狭いけど安い部屋だった。
ジョニーは「都市廃棄物管理作業員」、つまりゴミを集める、市の係の人だった。

1960年代のボストンでは市の支出を減らせという運動が激しかったので、そのあおりを受けてジョニーはクビになってしまった。
ョニーは収入がゼロになったので、アパートの家賃が払えなくなってしまった。

大家さんは親切な人だったけど、家賃をあてにしていた。
だから、クビになって2ヶ月たっても、まだジョニーが新しい仕事を見つけてないとなると、ジョニーの部屋まで様子を見にやってきた。
ジョニーは「一生懸命探しているけど見つからない」と答えた。
そこで大家さんはボストン・グローブという新聞の求人欄をチェックしてくれて、ジョニーに切り抜きをくれた。
そのなかで、ある大学の事務室が「掃除係募集中」という求人を出していた。
ジョニーは「これだ!」と思って、その日のうちに大学に電話した。
すぐ面接に呼ばれて、行ってみると事務の下っぱの人と面接をすることになった。

この人をデイブとしよう。
面接はうまくいって、ジョニーはあとちょっとで仕事がもらえることになった、その瞬間、デイブからこう言われた。
「では、この用紙に記入してもらえますか。
記入が終わったら呼んで下さい、仕事を始める日を決めましょう」。

ジョニーにとっては急にピンチが来た。
ジョニーは字が苦手だったのだ。

そのことをデイブに言ったところ、デイブはとても残念そうにこう言った。
「本当にお気の毒ですが、あなたを雇うことはできません。
この紙に記入して保険に入ってもらわないと、大学としては雇うことができないのです」。



ジョニーはがっくり落ち込んで、建物を後にした。
ところが、大学の中を歩きながら、ジョニーは気がついた。
ゴミ箱というゴミ箱にゴミがあふれていることに。しかも、そのほとんどはジュースの空き缶だった。

次の日、ジョニーはもう一度大学に出かけて、空き缶を拾いはじめた。

そうして……
もうお分かりだろうが、ジョニーは毎日毎日、大学に行っては空き缶を集め続けた。
そして10年後には、ボストンだけでなくアメリカの東海岸全体で一番大きな、金属ゴミ収集会社の社長になっていた。



運命は不思議ないたずらをするもので、これほど大成功を収めたジョニーを称えるため、ジョニーに名誉博士号が与えられることになった。
しかも、10年前に彼を雇ってくれなかったあの大学が、名誉博士号をくれるというのだ。

大きなパーティーが開かれた。
そして、いまや部長になったデイブから、名誉博士号の賞状が手渡された。



式典の後、ふと気がつくと、ジョニーはデイブと二人だけで、テーブルをさしはさんで座っていた。
そこでジョニーは
10年前、あなたの面接を受けたんですよ」
と切り出した。

実はデイブはそう言われるまで、その日のことをすっかり忘れていた。
でも、たぶん話を合わせるために、
「ああ!覚えてますよ」
と答えた。

二人は乾杯した。
デイブはワインをひと口飲むと、ジョニーをまじまじと見ながら、感慨深そうにこう言った。

「ジョニーさん、あなたは本当にすばらしい偉業を成し遂げましたね。
字が読めないのにこれだけの成功を収めるなんて。
もしも字が読めたら、どれだけの大成功を収めたことでしょうね……」。

ジョニーはふっと笑ってこう言った。
「あのねデイブさん、もし字が読めていたら、僕は掃除係になって、あなたの下で働いてましたよ」



落ち込んだとき、物事がうまくいかないなと思うとき、僕はこの話を自分に言い聞かせる。




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追記 
子供にこの話を読んであげました。
「ジョニーはふっと笑ってこう言った」で止めて、「この後何て言ったと思う?」と聞いたら、
不敵な笑みを浮かべながら
「『字が読めないからって、どうってことないんだよ』かな」と言いました。

2 件のコメント:

  1. 神戸でお世話になりました、児童英語教師です。
    この訳文に、感動してしまいました。
    日本語訳発売の予定、あれば教えてくださいm(_ _)m

    突然失礼しましたm(_ _)m

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  2. あやみさん!ご連絡頂けて嬉しいです。
    最終日いかがでしたか。出られなくて本当に本当に残念でした。

    感動していただけて嬉しいです。私も感動して訳したものなので。
    とはいえ、私が勝手に訳したものなので、出版する予定などはございません(このやりとりを見た誰かが依頼して下されば話は別ですが!)。

    あのあと、あやみさんがお話されていた悩みに効くかも・・・?と思うものに遭遇したので近いうちに書いてみます。
    今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!

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