ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2017-05-03

4/30受験報告会

4月30日、もじこ塾から今春進学した生徒による、受験報告会を行いました。
お越し下さった皆様、ありがとうございました。

個人的な話が多かったので、それを抜かしてまとめると:

  • 合理的配慮申請には、診断書が必須である。
  • 合理的配慮申請は、準備が大変。親のサポートがないと難しい。
  • 学校で配慮を受けていなくても、申請は可能。
  • 申請する配慮の内容は、できるだけ具体的に言える必要がある。
  • 合理的配慮を、受ける選択もできるし、受けない選択もできる。
  • 配慮を受ける場合、"障害"を自分の中で受け入れる苦労と、進学後に何か不利益を被るかもしれないという心配がある一方、入試での点数が(かなり)上がるというメリットがある。
  • 「特にカミングアウトせず、支援を受けない」という自由もある。
  • 高校在学中からディスレクシアに気付いている場合、AO入試や推薦入試なども、視野に入れるべき。
  • 一般入試[=時間制限の厳しい、ペーパーテスト一発勝負]は、ディスレクシアにとっては、非常に厳しい戦い。


【皆様のご感想より】
◆子どもたちが自分と向き合い、歩み方をしっかりと、自分で決めようとしてる、これは本当にすばらしいことだと思いました。…

◆…大学入試に関して、又はそれ以外のことについても具体的で、実感を持って発表して頂き、その大変さや対策がよく伝わりました。発表者さんおふたりの学習に対する姿勢や、後進の方に対してサポートしたいという尊い気持ちが本当に貴重で、今日、おふたりの生き方を拝見できたことも、大きな力を頂いたと感じます。

◆…どんな質問にも真摯にお答えいただくみなさまに本当に感動しました。話の本質をとらえる能力はものすごく高いのでは。すばらしいです。

→私も、生徒たちが受験を総括する様子が、実に感慨深かったです。
皆さまが熱心に聞き入る様子そのものが、2人の力になったと思います。
ありがとうございます。

◆…ディスレクシア・LDというものへの配慮は難しいのだなと思いました。お二人ともディスレクシアについては今後はカミングアウトするつもりがないということが印象的でした。「そういう自由も認めたい」というもじこ先生のコメントもいいなーと思いました。あと「ハッピー」ということが大切というのが目からウロコでした。…

→受験報告会で言おうと思ってて、言い忘れたのですが、
ディスレクシアというのは元来、勝手に工夫したり、決まり事の裏をかいたりするのが大好きな人種です。なので、がちがちに道を決めて「さあ!黙って従いなさい」と言われるのは、ものすごく嫌がるはず。「こういう制度がある、使うも使わないも好きにしなさい」と工夫の余地を残すのが、ディスレクシアを動かすコツだと思います^^。

◆…お二人とも、大変優秀であっても、大学受験がいかに厳しいかわかりました。
子どもは小学校の頃からスピードが遅いというのが悩みなのですが、解決してません。本日、当事者の方から「時間的配慮が助かる」と聞いて、子どもの悩みも深刻なのがわかりました。

→教室で見ていると、ディスレクシアには「速いけどちょいちょい間違う」タイプと、「正しいけど遅い」タイプ、(さらには「遅く、かつ間違う」という、より一層大変なタイプ)がいます。できる部分をまず認めてから、できない部分は地道に反復すること。意識を高くもって場数を踏むことが、大切だと思っています。

◆…お二人の、学歴がほしい・・・という切々な思いが伝わってきて、学歴社会を思い知らされました。中1息子がいますが、本人にしっかり、将来について考えさせる所から始めたいです。…将来、まだ色々な道もある事、英語を使わないで受験できる事、技術を身に付ける道もある事、等、選択肢が広がりました。

→「実技系や専門学校のなかには、英語が受験科目に含まれない場合がある」という話です。とても少ないですが・・・

◆点字受験の合理的配慮は30年以上の歴史があるので、現在は当事者や家族が奔走しなくてもいいシステムが出来上がっている。入試センター事業部の中にそういう部署が出来ているが、初期の頃はその体制を作るのに学校や関係団体は大変だった。
発達障害(LD、ディスレクシア含)は一律の合理的配慮事項として明確化できるかどうかわからないが、そういうシステムを作ることを国or文科省などへ公的に働きかける手段はないかを模索したらよいと思う。今回のもじこさんたちの動きが先駆者なんですね。視覚障害の世界にもそういう先駆者がいました。

→道村先生。ありがとうございます。
先生の上のご発言は、会に深みを与えて下さりました。
おっしゃる通り、LDの大学受験は、点字受験の合理的配慮から、学ぶべきことがたくさんありそうです。
また「どうしても出来ないことというのはある。それを認めた上で、自立した大人になるために、絶対に習得しなければならないことは何か/学校に何を求めるか」という姿勢は、視覚障害の世界のほうがはるかに進んでいます。

一方で、LDは外見上はわからない特性です。また、文字重視の近代社会ゆえに、この特性が"障害"と呼ばれている面もあります。
こうしたことが、一枚岩となって公的機関に働きかけることを、難しくしているかもしれません。

もじこは当分は一介の英語講師であり続ける予定なので、公的機関に声をあげる部分は、これをお読みの方々にぜひお願いしたいです!
できる人ができることから、です。。

◆もじこ塾では「いたって普通の学習をやっている」といわれたことにびっくりしました。目指すところが点数だけではないのだと知りました。もっと深い所も聞いてみたいと思いました。実際の状況など・・・

→「もじこ塾では至って普通のことをしている」こんな言葉が出たことに、自分自身、びっくりしています。
でも、生徒の顔を思い浮かべたら、きっと「普通のことをしている」と言うような気がしたのです。「ただひたすら、読む(書く)練習をしています」と。
しかしながら、「ただひたすら、読む(書く)練習をしています」は、世間一般の"普通"とはかけ離れているかもしれません。ため込む前に、少しずつここで披露していきたいです。







2017-04-16

4/30:もじこ塾 受験報告会のお知らせ

昨年度のもじこ塾に、浪人生として通い、合理的配慮を受けて入試に挑み、
この春、進学した生徒2名(男女1名ずつ)が、受験報告会を行います。

詳しいご案内はこちらでお読み下さい→★

今日、発表者のふたりと打ち合わせを行いました。
新生活の最初の1週間で、ふたりとも大きく成長し、
受験の日々を振り返る新たな視点を持つようになっていて
その指摘のひとつひとつが、実に洞察に満ちあふれたものでした。

もちろん、このような抽象的な話だけでなく、
合理的配慮入試に関する非常に具体的な話もする予定です。

ほかでは聞けない話になることうけあいです。
関心のある方、ぜひお越し下さい。

2017-03-07

「読み書き困難の子への英語の教え方をシェアする指導者の会」/ブログ開設5周年

ご報告が遅くなり申し訳ありません。
先週、3回目となる指導者向けの勉強会を行いました。
ご参加下さった皆様、発表して下さった方、ありがとうございました。

☆  ☆  ☆

1人目の発表は、教育ママから、LD児をも対象とする能力開発講師へと転身を遂げた方。
教材や心の持ちようについて、渾身の発表でした。

感想より:
・「考えない子」を育てる今の教育システムに、NGを体で表現できるLD児たちに感謝なんですね。
・私の教室に来ている読み書き困難の子は、みんな耳が良く、発音もよいです。わからない問題も多いのですが、自分の知識を使ってなんとか答えを出そうとする力は、他の子よりも強いように思います。LDの子たちのよいところをうまく利用した英語学習の可能性について学んでみたいです。 
・学校の先生にも聞かせたい!と思いました。息子のプリント、ノートに大きくつけられた、沢山の×を思いだし、心が痛かったです。(「×を大きくつけてはならない」という話に対して)

発表者の方より:
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「能力あそび」の時間についてご質問頂いた方、
イメージがつかみにくかったかもしれません。
京王線・千歳烏山でやっている英語クラス(金曜日)は会場もひろく
見学可能ですので、いつでもどうぞ、とお伝えください。


教室のFBページをご覧いただくのも参考になるかもしれません。
ご質問などもFBページから受け付けてます。
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☆  ☆  ☆

2人目は、予定していた方が急病につき、
ピンチヒッターでわたくし(もじこ)が発表を行いました。
「日本の中学1年生用の「シンセティック・フォニックス」の構築に向けた一提案」

いま私は、予備校で、新中1(中学受験直後の小6)に、シンセティック・フォニックスを教えています。
ジョリーは素晴らしい教材ですが、未就学児用に作られていますし、私には予備校ならではの制約があります(他社商品は使えない、教科書[特にNew Treasure]につなげなければならない)
そこで、知的好奇心旺盛な日本語ネイティブの新中1用の、さらにはディスレクシア・フレンドリーであることを念頭においたシンセティック・フォニックスの案を発表し、皆様の意見を伺いました。
感想はおおむね好評でした。が、

シンセティック・フォニックスは非常に学習効果が高く、生徒はすぐに「できる自分」を確認できる。このため、吸収力の高い子があっという間にのび、LDの子との差が開く。

という点については、参加者の方からも同じ指摘を申し込み時に受けていたのですが、答えが出ませんでした。

この発表内容については、もう少し練り上げてから、公開します。


☆  ☆  ☆

この会は、現場の声をシェアすることにこだわる、また保護者が指導者になるケースも多々あるので(今回の発表者は二人ともそうです)、両者の垣根を作らない・・・という趣旨で始まりました。
3回目の今回は(も)、平日昼間の開催にもかかわらず、さまざまな立場で学校現場に関わる方、さらには当事者の方まで、多彩な方にご参加いただくようになりました。
ありがとうございます。

・保護者の方たちの声を生で聞くことができたのが今日の一番の収穫でした。また、指導者の方たちの知識や熱意に触れ、大変勉強になりました。学校現場で、どんなことができるのか、真剣に考えていきたいとあらためて感じました。

☆  ☆  ☆

もじこの個人的感想は、あいかわらず飛躍が多いのですが
「気付いた人が、それぞれの場所で、できることをする」
これが、変化に不可欠な一歩だと、
そして、自分の直観で「これはディスレクシアの子に響いている」と思えたことは、たとえ一般に"良い"とされることとは違っていても、勇気をもって実行すべきだと、改めて実感しました。

さらに、次の段階として、「気付いた人同士がゆるやかにつながると、変化がさらに加速する」があるようですが、私にとってはここが難しい。
せっかく多彩な方をお迎えしているのに・・・大きな課題です。



当ブログは3月3日をもって、開設からまる5年が経過しました。
この勉強会もそうですが、ディスレクシア・ジャーニー最大の教訓のひとつは「情報は、出せば出すほど入ってくる」。
情報というのは、ため込んだり、一方的にもらおうとするだけだと、手に入らない種類のものらしいです(少なくとも良い情報は)。本当です。

この5年、ずいぶんいろんなことが変わった気もしますし、特に英語教育の現場は何も変わっていない気もします。
今後とも、ディスレクシア・ムーブメントを加速させていきたいです。
皆様のお力添えを、どうぞよろしくお願いいたします。



(次回の指導者向け勉強会の開催は未定です。発表してみたいという方が1名いれば、開催が決定します。私でよければ・・・という方、ぜひお知らせ下さい!!)



2017-02-02

もじこ塾の新体制につきまして(その2)

いよいよ大学入試のシーズンが始まり、もじこ塾の1年目は一区切りを迎えました。
1年間がんばった生徒たちには、(月並みな表現ですが)全力を出し切ってほしいです。

さて。
偶然にもこの区切りのタイミングで、もじこ塾は常設の教室を持つことになりました。


新宿駅・新南口を出て、少し直進して、右を見たところ。
新しいもじこ塾の教室は、この歩道橋を渡りきった所にある茶色いマンションの一室です

新しい教室は、新宿と代々木の中間、代ゼミタワーのとなりの巨大なワンルームマンションの一室です。

これまでもじこ塾は、とても雰囲気のよい2ヵ所の教室を、時間単位で借りていました。
貸して下さる方々はいずれも、ディスレクシア英語教育にとても理解があり、生徒たちを何かと気にかけて下さっていました。いずれも、ディスレクシアの個別指導には最高と思える場所でした。

しかしその一方で、生徒同士が交流し、お互いから学び合えるような"場"を作りたい・・・とも思うようになりました。
そういう"場"がほしい、ほかの生徒と話してみたい、と言う生徒が何人かいたことに、とても後押しされました。

そして年末以来いくつもの偶然が重なり、新しい教室を作ることになりました。

新しい場所は、新宿駅から徒歩圏ですが、繁華街は通らず、むしろ予備校街と言えるエリア(なにせ代ゼミの隣り)のため、新宿駅との往復に治安上の不安は一切なく、
「その1」の予備校からも徒歩3~4分と、偶然にも土地勘がある場所で、
さらにはバスタ新宿が出来て以来、外国人観光客がますます増えており、世界を肌で感じられる場所でもあります。
マンション自体も、24時間守衛さんがいる、非常に管理の行き届いたところで、
これだけの好立地にありながら、家賃は現在払っている教室使用料とほぼ同額。
部屋の雰囲気も、感覚の鋭いディスレクシアな生徒のおめがねにかなうものだと信じています。
よくぞこれほどの場所が見つかったという物件です。

来年度のもじこ塾新宿教室は、ここに大学受験生をお迎えします。


これまで、当ブログを通じて共にディスレクシア・ジャーニーを歩んで下さった方々、もじこ塾を物心両面で支えて下さった方々、そして何より、もじこ塾に通った(いる)生徒のみなさん。本当にありがとうございます。
皆様の存在に支えられて、2年目のもじこ塾は進化します。

新しい教室に生徒の皆さんをお迎えするのが、今から楽しみです。

2017-01-10

ディスレクシアを知る(知ってもらう)ための本

2016年は、ディスレクシア関連の良書がたくさん出版されました。
定番書とあわせて、まとめてみました。★は2016年に出た本です。

★①わたしのそばできいていて
【!号泣注意!】

学校にディスレクシアのことを伝えるのに、実に最適な絵本が登場しました!!
読めない子供の気持ちが痛切に分かるだけでなく、教師はディスレクシアの子にどう接するのがよいのかまで教えてくれる一冊。あと、犬の素晴らしさも分かります(泣き笑い)

「ディスレクシア」という単語は出てこないので、子ども本人にディスレクシアのことを伝えるのにもいいかも。

②読めなくても、書けなくても、勉強したい

ディスレクシアを、日本でほぼ最初にカミングアウトされた方による手記。
ブログを書籍化したものです→★【ブログ号泣注意!】
この本を担任の先生に渡しているという親御さんも、かなりいるようです。

1点だけあえて釘を刺すと・・・
この著者の方は不運な境遇と、ディスレクシアをひた隠しにできた時代的状況があって、今も驚くほど読み書きが困難です、が、「この方ほど読み書きが困難でないとディスレクシアではない」わけではない(=この方より読み書きができても、ディスレクシアの可能性は十分にある)ということです。



★③発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由

2016年に出版された、発達障害(特にADD)を知るための、新たな必読書。
本人の当事者感覚の話も良いですが、お母さんの文章がとても勉強になります。

自分の特性を早いうちからきちんと理解し、親子で話題にすること、
できないことも諦めず、地道に努力すること、
助けてくれる人で周囲を固めること・・・
「ディスレクシアには温室が必要」を改めて実感する一冊です。




当ブログでもいまもアクセスの多い翻訳記事「ADHDにはグルテン除去が効果的」の内容について、日本語で書かれた本がついに出ました!
発達障害と腸の関係、酵素や代謝の重要性について、全部書いてあります。
この方面の話には賛否両論あると思いますが、腸内細菌不足が発達障害の悪い表れ方を助長している可能性が高いということは、知っていて損はありません。






合理的配慮の教科書とも言える1冊が、Do-IT Japanの方々の手によってまとめられました。
お子さんがディスレクシアと知って途方に暮れている人が、いろんな手立てがあるということを知るために、また学校にそれを知らせるために最適。
②の著者、井上さんの"その後の話"も読めます。


④がDo-IT Japanなら、こちらは加藤醇子先生率いるJDAの主力メンバーの方々による、その名の通り"ディスレクシアの入門書"。
ディスレクシアの定義、検査、診断、(主に小学校での)支援…といったことが包括的に分かります。
こちらも、すでに学校でいろんな支援が行われていることを知るために、また学校に働きかけるために適しています。


★⑦人間脳を育てる

ディスレクシアは脳の配線が違うので、ディスレクシアの困難を和らげるには「脳の配線をよくする」ことも、ひとつのアプローチになります。
ブレインジム、感覚統合など、いろんな本を読み実践しておりますが、この方面について最初に読む一冊としてお勧め。
読者の方からご紹介頂きました。てぷさん、ありがとうございますm(_ _)m


★当事者感覚を知るための本★

★⑧ぼくが発達障害だからできたこと


この方は「過度激動」の当事者であり、かつ書字に困難があるそうです。
感覚がものすごく鋭敏で感動しやすく、過集中(倒れるまで走ったり)の傾向があるようです。
そんな方が作家的視点から、発達障害の思考法を語り尽くします。
当事者感覚が、圧倒的な密度で語られます。発達障害の突出した部分と欠落した部分は裏表であることがよくわかる一冊。

そしてこの本には、下の著者がかかりつけ医として登場します…
著者はたくさんの発達障害本を書いていますが、そのなかで1冊と言われれば私はこれを挙げます。ADHDの当事者感覚がよくわかります。

ところでこの方は、ガンのサバイバーでもあり、その経験をもとに「腸活でガンを治す」というテーマの本も書いています→★。発達障害と腸との関係を、そんなところからも感じます…


長見良くんは中2でディスレクシア、漢字はほぼまったく読めないという設定。
今回改めて途中まで読み直しましたが、本当に驚くほど細部まで、ディスレクシアの子の行動や考え方、間違い方、学校のこと、家族のことまでもが、リアルに描かれています。作者の観察力に脱帽です。物語としても、とても切ない。
筑波大の宇野先生が監修しています。




アメリカ人の詩人による、ディスレクシアの当事者感覚の本。
不安、孤独、少しずつ再起、子供と同時に自分もディスレクシアだと知ったことによる自己発見など…を詩的な言葉で語っていて、大人ディスレクシア本人に刺さる本かなと思います。
何人かの大人の、ディスレクシアに理解を示す非ディスレクシアの人から、この本は感動した、ディスレクシアの人の気持ちがよくわかったという感想が届いています。
私は英語で読み、具体的なこの言葉というよりも、著者の子供の頃の心象風景が、強く印象に残っています。きっとディスレクシアの子はこういう思いを抱えているのだなと…
上の原書

題名を直訳すると「ディスレクシア的アドバンテージ」

当ブログ最大推しの1冊。英語が読めるならぜひぜひご一読を!
もじこ自身がディスレクシアについて最初に読んだ本。
おかげで、ディスレクシアについて、最初からポジティブで俯瞰的な見方ができました。これ以上のことは長くなるので、ここでは語りません。要旨はこちら→★

「ニューロダイバーシティー」(神経多様性)の基本書。ディスレクシアについて、学問的見地からも知りたいという人には、私はまずこの一冊を推します。詳しい内容はこちら→★

2016-12-31

2016年を振り返って。

みなさま、今年も色々教えて下さり、ありがとうございました。
お返事が滞っている方、申し訳ありません。
これにこりず、気が向いたらまたご連絡下さい。

☆  ☆  ☆

当ブログの2016年は、元旦未明に届いた学習相談メールから始まりました。
なかなか暗示的です…

この新しい生徒に後押しされて、3月にはディスレクシア英語塾「もじこ塾」がスタート。
春期講習、夏期講習、レギュラー合わせて、のべ50人以上の、字が苦手な中高浪人生に出会うことができました。

たくさんのディスレクシアの生徒を見ることで、色々なことが分かりました。









☆   ☆   ☆


もじこ塾奨学金にも、たくさんの方にご賛同頂き、ありがとうございました。
(後日、ここに収支を掲載します)
現在、月1回、無料で通う生徒をお迎えしています。

また、当初と少し趣旨が違うのですが、集まったお金にこちらでも加算した額を、夏期講習にお越しになったある方の、往復交通費に充てさせて頂きました。

地方からお越しのこの方は、控え室でお待ちの間に、お母さまと言い争いになり、会場を飛び出してしまいました。授業時間は炎天下のなかの捜索活動に…
小一時間後、靖国神社前をふらふらになって歩いているところを警察に保護され、点滴を打つため病院に搬送されました。警官の多い場所に向かってくれてよかったです。
その間、お母さまはずっと、気丈に振る舞っておられました。

授業が終わって病院に向かうと、その生徒さんには

「世界には学びたいことが満ちあふれている。私は勉強したい。でも一人ではどうしてもできない。。。英語もできると思ったけど、やっぱり一人では無理だった」

と訴えられました。

LDや自閉症には、ヨーロッパの貴族がつけていた家庭教師のような人による、オーダーメイドの教育が必要(例:サリバン先生)
でも現代日本ではそのためのリソースが、どうしても足りないのです。
どこで折り合いをつけるのか、どんな優先順位をつけて学ぶのか。
そんなことも、人一倍しっかりと考えないといけないようです。

もじこ塾は、今は彼女のサリバン先生になることができません。
というか、誰か一人のためのサリバン先生になることは、どうしても難しいのが現状です。
申し訳ありません・・・という思いから、東京までの往復新幹線代を援助させていただきました。

この方は、今は、親に連れられてではなく自分の意志で動くための、さなぎの期間に入っているそうです。
また縁があったとき、再会したいです。

☆   ☆   ☆

年末にかけてショックだったのは、google翻訳が急にうまくなったこと(苦笑)。
英日に関しては、大学入試で生徒がする訳並みのレベルまで来ています。つまり、まあまあ意味が分かる、悪くないんじゃない? というレベルです。
もちろん、google翻訳には文芸翻訳家レベルの訳は(まだ)できません。でも、無料で、しかも瞬時に訳を返してきます。この2点において、人力翻訳者は、全く歯が立ちません。
私が30分かかる分量を、数秒で訳すのです…
定型的な翻訳(契約書、マニュアル、特許)そして「ざっくり分かる程度に訳してくれればいい」というニーズは、数年内にgoogle翻訳にとって変わるのではないかと思います。

私はそれを目の当たりにして以来、実務翻訳者を廃業することを、真剣に検討しています。
実務翻訳者歴17年目に入る私は予測します、
20年後、翻訳とは「かつてこの作業を全部人力でしていた時代があってね」「人の手でするのもいいけど、時間もコストもかかりすぎるしね」と言われる、・・・例えば、肖像画家が写真術の登場によって職業として成立しなくなったのと、同じ展開をたどると。

この波は確実に、英語教育にも影響を与えるでしょう。
すでに、もじこ塾の生徒の発言にも、その影響は感じられます。


・・・・というわけで、2017年、もじこ塾はgoogle翻訳の影響を受けて(?!)、新たな展開を迎えます。
どうかご期待下さい!!

2016-11-23

「英語力=英単語のデコーディング能力」ではない

発達性ディスレクシア研究会の研修会に行ってきました。
久しぶりに、目が覚めるような話を聞けました!

◆マックス・コルトハート教授★は、二重経路理論という、この業界では有名な読みのモデルを提唱した方。
今日のお話は、発達性ディスレクシア(=生まれつきのディスレクシア)には7つのタイプ(!)がある、というもの。

ディスレクシアにさまざまなタイプがあることは、今日の雰囲気だと研究者の間では既定路線のようでしたが、一般にはそこまで知られていない気がします。

・「音韻性ディスレクシア」(phonological dyslexia):9割を占める。
音韻処理の苦手と関係している。

・「表層性ディスレクシア」(surface dyslexia:surfaceという言い方は、チョムスキーの「表層構造」に由来するとのこと)というタイプもある。

音韻性ディスレクシアは、漢字よりもひらがな/カタカナ(の非語)の読みが困難。
日本語は大丈夫でも、英語になると問題が出るタイプはこちら。

表層性ディスレクシアは、ひらがな・カタカナに問題がないものの、
漢字に困難を覚えるタイプとのこと。
あとで「この原因は何ですか?」と質問したところ、It's a mystery(謎です)と言っていました(!!)
漢字が覚えられない悩みは当ブログの一大テーマですが、その原因が謎だとは。。

そして、大半のディスレクシアは、複数のタイプが組み合わさっており、1つのタイプだけを持っていることはほとんどない、とのことでした。

個人的に一番驚きだったのは、ハイパーレクシアがディスレクシアの7つのタイプの1つに分類されていたこと∑( ̄0 ̄;。
ハイパーレクシアは、「読字はできても意味につなげられない人たち」と説明されていました。この人たちの治療方法は解明されていないとも。
もじこもディスレクシアらしいです!なんか嬉しい(笑)
(より正確には、これも本日何度か登場していたcompensated dyslexic=ディスレクシアゆえの不足が補完されるに至ったディスレクシアなのでしょうが)


もう一つ、はっとしたのが、
「英語力=単語を読む能力(or単語を想起する能力)」とする点について。
研究者が、ひとつの単語を見せてそれを読む能力に注目するのは、研究目的でやっていることであると、明言されていました。構文力や読解力にはあえて立ち入らないと。

アセスメント(読み能力の調査)においても、1つの単語を示してそれが読めるかを見るのは、有効なことでしょう。

でも、だからといって、ディスレクシアに英語を教えるときにも、同じアプローチを使う必要はないはずです。
研究目的でのディスレクシアへのアプローチと、ディスレクシア英語教育のためのアプローチは、違うのが当然なのです。

すごく多くの教師、さらには親が、英語力=単語想起力であるかのように考えているらしいのは、本当におかしいと私は思ってます。
要は、単語テストでひどい点数をとってきたと言って悲観的になりすぎる親や教師は多いわけですが、これは間違ってます。
英語力をのばすには、ひとつの単語をぱっと見せられて、それを声に出して読む力以外にも、ディスレクシアのタイプ分けの研究においてあえて避けているという構文や読解力などいろんな能力が関わっていて、それらを強化するアプローチは(人により到達点に差はありますが)とても有効です。

そこから、タイトルの「英語力=英単語のデコーディング能力ではない」に至るわけですが、、
もちろん、構文力や読解力を先に身につけたディスレクシアは、いよいよ本丸であるデコーディング(文字を見て音にする)力の強化と向き合うことになるわけですが。
しかしその順番は、文字/音を結びつける能力→文法→読解ではなく、同時、または逆であったっていいのではないか、というのが、わたくしの立場です。



そのほか、驚いたことを箇条書きにしておくと・・・

・「音韻性ディスレクシアには、シンセティック・フォニックス、なかでもジョリー・フォニックスが効くことが明らかになっている」と、名指しで明言されていた。
ええそうですとも~

・「フォニックスを自力で学ぶことはできない。whole word(単語をまるっと暗記)のみ学ばされていると、音韻性ディスレクシアが出る。このタイプには、シンセティック・フォニックスの効果が非常に高く出る。」

・「ブレンディングは、子供にとっては難しいことである。ブレンディングに困難を覚えること(「c/a/tを足して」と指示して「キャット」と言えるか)を、ディスレクシアの指標にするほど」
よく分かります。以前わたくし、これがすらすらとできた子を、ディスレクシアでなくてアーレンと疑ったことがありました。

・「ディスレクシアは、音韻認識の障害に限ったものではない、たしかに音韻認識の困難がもっとも一般的な症状ではあるが。それを認めない人は何かを無視している。」


・全体の要旨としては、
読むという行為にはさまざまな能力(文字を認識する、単語全体を認識する、文字を音に変換する、など)が関わっていて、どの段階でつまづいても読み困難が生まれる。一口にディスレクシアといっても、どこでつまづいているかは異なる。どの段階でつまづいているかを観察することが重要である。
また、英語を/日本語を読むというのはどのようなメカニズムで行われるのか、単純であってもモデルがなければ、読み困難を理解することは不可能だ・・・と強調しておられました。



◆タエコ・ワイデル教授のお話は、先日のLD学会の特別講演とほぼ同じでした。

ご自身が提唱されている、こちらもこの業界の専門家には有名な「粒度と透明性の仮説」★(文字⇔音対応が規則的な言語ほど、ディスレクシアの出現率は低い)、
また、日本語・英語・中国語では、脳の活性化している部位が異なることを説明して下さいました。

「音韻性ディスレクシアと表層性ディスレクシアの区別と、粒度と透明性の仮説は、どうつながりますか?」と質問したところ、「粒度/透明性の図は音韻性ディスレクシアについてのもの」とお答えいただきました。

「空書きは、日本語と中国語のネイティブに特有の現象。
イギリスの子供たち(非ディスレクシア)は、単語を何度も書いて覚えることはしない。
なぜなら、フォニックスルールを学んでいるのと、イレギュラーな単語があるということを学んでいるから」という話をされたときは、LD学会のときもそうでしたが、会場全体が「ほほ~」という雰囲気になっていました。
→ここを読んでいる英語教師と親のみなさん、英単語を覚えさせるためと言って、生徒や子供に何度も書かせるのはやめましょう!それよりもフォニックスルールと、それにあてはまらない単語があるんだと教えるほうが、よほど有益なことです。
(なお、今日の話によると、英語の1音節語の17%はフォニックスルールがあてはまらない、とのこと)

また、英語ネイティブの両親のもとに生まれ、日本の進学校に通い、
日本語の読み書きにはまったく問題がない(むしろ読書家)であるものの、英語の読み書きには激しい困難を覚え、学校で「英語を怠けている」と言われたAS君の話もされていました→★
彼は今は立派に社会人としてやっているとのことでした。
もじこ塾にも、日本語ネイティブですが、こういう英語だけ激しくできない子は複数来ています。。。


今日お話されたお二人とも、「超一流は惜しみなく与える」を体現する方々でした!