ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2014-05-30

ディスレクシアの「本の読み方」:園善博『頭がよくなる魔法の速習法』

少し前になりますが、大学の恩師(→ディスレクシアの言語学者)が、
下の記事を私にfaxしてきました:

講談社「本」2014年3月号、
園善博「読字障害の私が、「本の読み方」を教えている理由」

・本は「気になったところ」だけを読むようにして、残りは読み飛ばす。
・目次をしっかり読む。
・自分の声を録音して、聴いて覚える。
・図書館やカフェなど、まわりに人がいる場所で勉強する。
・勉強する目的を明確にする。
・夜ではなく、朝の時間に勉強する。
・読んだ内容を必ず人に話してみる。

とあります。
『とつぜん記憶力がアップする 4日で脳が変わる習慣』
オカルトっぽい(?!)題名ですが、
内容は、意識の持ち方や集中の仕方などの地道な話です

この著者の本を2冊読みました。


『頭がよくなる魔法の速習法』
特にこちらは、カギ括弧や太字の使い方、タブ使いが独特で
とにかく一目で見て内容が分かるつくりで
「ディスレクシアはこういう風にしてもらうと分かりやすいんだな」と思う紙面です。


ディスレクシアの人はこうやって本を読むのかと、
つくづく思い知らされました。


著者は、本からは多くを学べるから、読書すべきだと力説した上で、
本の読み方として

・「なぜその本を読むのか」という目的を明確にする
・全体をぱらぱら見て、キーワードを拾う
・目次を見る/作るなどして、常に全体像を把握する
・細かい部分を読むときは、すでに持っている知識に関連付けて読む
・書いてある内容をエピソード記憶につなげて記憶する
(体を使う、別のストーリーに関連づけるなど)

を勧めます。

常に全体像の中での自分の立ち位置を意識すること、
関連性やストーリー性を重視すること、
目的=モチベーションが非常に重要であること。
これまで当ブログで展開してきたディスレクシアの性質そのままですね。



ディスレクシアにとっては、
本は最初から全部、一言一句通読するものではないようです。
目的意識と全体の中での立ち位置を明確にすることで
自分から情報を取捨選択しに行くという、
非常に能動的な読書の仕方をしていると分かります。

そういえば、研究者でディスレクシアという別の方からも、
以前に同じようなことを伺いました。

研究者は普通の人の何倍も読まなければならないので、
ディスレクシアで研究者というのは、一見不思議なことです。
そんなサンプルがいま2人いるわけですが。。

ディスレクシアでも人一倍本を読む人たちはきっと、
読むのが苦手だからこそ、
目的意識を持って取捨選択する"能動的な読み方"に到達したのでしょう。

逆説的なようですが、
一言一句読まない(読めない)ことで、人一倍深く内容を理解できるし、
読んだ内容を活用しやすいように見受けられます。

☆  ☆  ☆

ところで、言われてみればこれは、
実務翻訳者である私が原文や資料を読むときの方法そのものです。

依頼者がなぜこの文を訳してほしいのかを、全力で察する(目的意識)
文章全体の構造を把握し、そのなかで個々の訳語を決める(関連付け)
今知りたいことに関係する情報に絞って読む(目的意識)、
締切というモチベーションがないと、急にやる気がなくなる(笑)など・・・

翻訳者も、ディスレクシアも、
短時間で概要を理解し、アウトプットまで持っていこうとすると、
このような読み方に行き着くのかもしれません・・・?


☆  ☆  ☆

上の本を読んで思ったこと。

(1)
このような読み方を、ディスレクシア児に教えるのは、
何歳くらいからが適しているのか?

小6を境に読み方が変わる」とある勉強会で聞きましたが→参考こちら
最近、うちの子(小6)も、逐字読みから、
内容理解をもとにした推測読みに少しずつ変わってきたふしがあります。

どのタイミングで、ディスレクシア的な能動的な読み方を教えるべきなのか、
それとも勝手に身につけるのを待つべきか。
迷います。。

(2)
外国人への日本語教育とディスレクシア日本語学習の共通性。

知り合いの日本語教師からたまたま聞いたのですが、
「全体像をざっくり把握する」「キーワードを拾う」といった読み方は、
実は、日本語中級・上級で教えるテクニックらしいです→例えばこちら

日本語が母語のディスレクシアの人に効果的な読み方と、
外国人の日本語教育には、共通点がけっこうありそうです。




2 件のコメント:

  1. もじこさん、こんにちは。
    ご無沙汰しております、komariです。
    もしや登場?と思いましたので、コメントします(笑)

    お会いしたときも伺いましたが、ディスレクシアでない人たちは最初から本を読むものなのでしょうか。
    ストーリーのある小説などはもちろん最初から読みます(正確には視覚的に見て理解します)が、専門書や論文はほとんど拾い読みです。目的とする単語をやはり視覚的に探し、その前後を読む、というかんじです。

    論文については学生の時、1日1本読む訓練はしましたが、あれは苦痛でした。そういえばこの時も、ほかも頭を使う仕事は朝やることが多いですね。夕方以降は頭が疲れて思考能力が著しく低下しますから。

    私にとって漢字は強いイメージを与えてくれます。象形文字だからだと思いますが、漢字と絵を結びつけて、その漢字の意味や成り立ちを理解すると覚えやすい気がします。

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  2. 本人登場して下さりありがとうございます(笑)

    >ディスレクシアでない人たちは最初から本を読むものなのでしょうか。

    そうなのです、私もその話が出て以来、このことについてつらつらと考えていたのですが、

    これは私だけかもしれませんが、本気で情報を得たい場合は、目次を見てそこから自分が得たい情報の節を中心に読みます。
    節内でも最初から読まず、行ったり来たりしたほうが頭に入りやすい気がします。

    もう少しリラックスして読むときは、最初から読みますね、やっぱり。
    でも実は、 最後まで読み通せず挫折することもけっこうあります。
    途中で放棄した本がいっぱいあります。。。

    書き手は(読みに強弱をつけながらも)最初から最後まで読んでもらうことを想定してると思うのですが、でも、実は、全部読まずに拾い読みするほうが、書き手の意図を理解できることがある。
    という結論に今のところ至ってます。。

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