on dyslexia

ディスレクシアとは:

- 知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
-独創的で、対人能力が高い。
全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける。
- 音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- 読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから
- 細かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い場合が多い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される
- 10人に1人程度いるというのが通説
- 家族性であり、遺伝による。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい

当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。

2017年、当ブログで分かったことをもとに、東京・新宿にディスレクシア英語塾「もじこ塾」を開設。以来、このブログももじこ塾の話題が中心になっています。

2018-10-28

IDA日記その1:音韻認識の熱狂に釘を刺される/筆記体の本の版元社長に直談判


ボストンからバスで2時間のカジノリゾートで、今年のIDAは開催されました。
ボストンは車越しの夜景だけでも素敵でした☆。でも夜明け前のバスターミナルあたりから素敵じゃない雰囲気に・・・そして予想通り、カジノリゾートの周辺は見事に何もありません。360度原野、ニューイングランドの秋の紅葉です。
カジノリゾートの中は退廃的な雰囲気です。妙にぎらぎらした老人とか、地味~な中国人夫婦とか、平日の昼間からなぜこんなところに?と言いたくなるあやしい人たちがうろうろしてます・・・

そんな会場の一角で開催されているIDA。こちらは見事に白人女性が95%を占めてます。会場の挙手を見ると、教師、ディスレクシア専用チューター[個別指導教師]、アドミニストレーター[行政担当者]が多いです。
参加者は2000人と昨年並より少し少なく、半分が初参加とのこと。
雰囲気はLD学会に近いです。教師の出すオーラって万国共通なんですね()

・どうやら、去年のレターボックスの講演はIDA的にもよほど衝撃だったらしく、今年の発表で去年のその発表に言及しているケースに2件遭遇しました。たぶんみなさん、私と同じように、この1年間はあの講演を宿題として持ち帰っていたわけですね・・・
残念ながら、今年のIDAの発表は、これまでのところ、去年ほどの根底的な衝撃はありません。もっと細かい、具体的な話で収穫が多いです。

◆音韻認識について
・読めるようになるためは、まず音韻認識(phonological awareness, phonemic awarenessなど、いくつかの言い方あり)の訓練を徹底すること、その上でフォニックス(音と文字の対応)を教えるべき・・・が、この12年で業界の共通認識になったようです。
Phonemic awarenessについての新刊も出ていましたし、教材も新しく出ていたので買ってみました。中1クラスで試してみたいです。

ガチャガチャのおまけみたいなものが、多感覚らしいです

音韻認識とは、「単語がいくつの音韻でできているかを、認識する能力」です。
たとえば、sat3つ、step4つ、star3(ar1つと数えるので)
shark3(shark)this3(this)third3つ、
there2つ、rain3つ、candyは5つの音韻からなります。

日本人からすると、「そこって1つにまとめるの?」という反論も出てきますね・・・
その通り。どの音をもって音韻とみなすかは言語によって異なるので、すでに別の音韻体系が確立している場合は、ある程度理詰めで理解する必要もあります。
音韻は人工的な概念なのです。

不思議なことに、定型だと45歳で母語の音韻認識は獲得されています
(stop4つのオトでできていて、t2番目だね!」と言えます)
一方、ディスレクシア(の多く)は音韻認識の発達が遅れますし、程度の差はありますが長期的・定期的・反復的・明示的な訓練をしないと定着しません(ひらたく言えば、毎日510分、訓練が必要です)

グッドニュースは、音韻認識の定着は、年齢が上がるにつれ短期間で定着する傾向が強いということです。
もじこ塾で見る限り、中学生は小学校低学年よりも音韻認識の定着は早いです。
また、音韻認識が定着するまで足踏みする必要はなくて、文法など先に進みながら音韻認識定着の練習を続けることもできます。このことに言及している発表もいくつかありました。


◆ディスレクシアの原因は音韻だけではない
筑波大の宇野先生とワイデル先生がシンポジウムを行ったので、最後だけですが顔を出しました。両先生と直接お話できる役得に預かりました(^^)。地球の裏側のカジノリゾートまで足を運んだかいがあったというもの。

宇野先生からは釘を刺されました。今の私にはとてもありがたかったです。

「アジア系言語のディスレクシアの出方は英語圏とは異なる。
IDAではディスレクシアはもっぱら音韻処理の障害とされているが、日本語ディスレクシアを見ればそうでないことは明らか。
音韻障害だけが原因のことは少なく、視覚認知障害、自動化の障害、それ以上にこれらの混合型が60%を占める。
そのことを英語圏のディスレクシア研究者はわかっていない」。

・・・本当にその通りです。
日本語のディスレクシア、特に漢字が覚えられないのは、形の認識の困難によるものです。ディスレクシア英語教育に意識が向きすぎて、ついそのことを忘れがちになっていました。
日本語(特に漢字の困難)からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは主に字の形をめぐる困難ですが、英語からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは音韻を認識し処理することの困難だと分かります。
日本のディスレクシアの生徒はほとんどの場合、この2種類の異なる困難に直面していて、その両方に対処しなくてはならない大変さがあります。


◆筆記体の本の版元社長に直談判
・筆記体の練習帳には本当に感動したので、お礼が言いたくて版元の社長さんの発表を聞きに行き、発表後、話をすることができました。
生徒の字をいくつか見せると、たいそう感動してくれました(TT)
「遠い日本の地でこの本がこんなに愛されていると知ったら、著者はきっと喜んだだろう。彼女は外国語として英語を学ぶ生徒のことを、とりわけ気にかけていたから」。






著者とは故Diana Hanbury King女史、ディスレクシア教育界のレジェンドのこと。
もう一年早かったら直接お礼が言えたのに、本当に残念でした。

「この本はすばらしいです!すごく効果があります。日本には同じものが本当にありません。わたし訳しますけど、日本で出版しませんか?」
と言ってみたところ、マシンガントークで
「超いいね!!僕はADDだから忘れちゃうんで、帰国後ここにメールしてくれるかな、Let’s see what we can do」とあっさりOKしてもらえました!

しかし社長はこっちもADHDだとは理解していない(原稿になかなか取りかかれないorz)

だからここに書いて宣言しておきます。
筆記体の本の日本語版を出すために、版元のOKはもらえました!日本語版を出したい!!

3 件のコメント:

  1. もじこ先生、お疲れ様です。
    若干怪しそうな(失礼!)カジノリゾートでの開催、
    少々心配しておりましたが、無事に帰国されて何よりです。

    そして、筆記体の練習帳の日本語訳許可取得、おめでとうございます!!
    どなたかに、受験生も抱えて頑張るもじこ先生をサポートをしてほしいです。
    (自分は力量不足なので、お役には立てない……(涙)
    日本語版の完成を今から待っていますね!!


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  2. 初めて投稿させて頂きます。
    dyslexiaと思われる小学校低学年の子供がおり、いつももじこさんのブログを参考にさせて頂いてます。

    帰国後の一番お疲れの時に、IDAとは関係のない内容で大変恐縮ですが、ずっと気になっていたことを質問させて下さい。

    もじこさんのブログでは音韻認識に関する記事がたくさんありますが、日本のライトハウス英和辞典に記載されているような「発音記号」は全く使用されないのでしょうか。

    私自身は中学入学前に、ライトハウス英和辞典に付属している「つづり字と発音解説」で、まず発音記号を勉強し、次にその発音記号になりうるつづり字のパターンを勉強をしたので、丸暗記は苦手なのに英語のつづり字には全く苦労せしませんでした。
    単語を丸暗記している方が多いことを最近知りびっくりしています。

    丸暗記にならずに済んだのは、辞書を引くときも、単語を書くときも頭の中で必ず、スペル⇒発音記号の変換をし、必ずここのつづり字はルールに通り、ここはイレギュラー等と考えるステップを踏んでいたからだと思います。

    またライトハウスの発音記号の素晴らしい点は、1つの音素記号で1音を表していることです。starのar、sharkのsh、thisのth、thirdのthはそれぞれ該当する1文字の音素記号で表されるため、音韻認識を向上させるのには最も適しているのではと感じています。
    (発音記号自体はパソコンで変換できないようなので表示できず申し訳ありません)

    年齢やその子が持つ苦手さの種類によってはJolly Phonicsが合う子、ライトハウスの「つづり字と発音解説」が合う子など、人によって自分に合う教材が違うのでは、誰かの役に立つ情報なのではと思い投稿してみました。

    ライトハウスの「つづり字と発音解説」は、単独で購入する場合は「ルミナス英和辞典-つづり字と発音解説」ですが、ライトハウス英和辞典を購入すると無料で同じ冊子が付いてくるようです。

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  3. 発音記号についてのご意見,ありがとうございます。
    結論から申せば,「発音記号は有効だと思いますが,今の生徒は発音記号を覚えるモチベーションがわきにくい」です・・・


    私がいろいろ教えてもらっている老言語学者(ディスレクシア。漢字だけに困難が出て,アルファベットはOKというタイプ)は,「英語は発音記号を教えるべき」と常々言っています。
    理由もみのママさんがおっしゃっていることと同じです。英語のオト(音韻)をしっかり視覚化し,そこにイレギュラーなスペルを乗せていくほうが,いろんなことが明確になると。


    で,ディスレクシアに発音記号を教えるかですが・・・
    今の時点では分が悪いかなという気がします。いまの時代,電子辞書やスマホは単語を発音してくれますし,ディスレクシアにとって新たな文字体系を学ぶのは「えー,さらに…?」という感じがあるようです。
    でも上手に,あるいはポイントを絞って教える(母音やthだけなど)ことで,効果的に使えると思います。

    なお,いまは学校では発音記号を教えないので,残念ながら教えても学校の勉強には直接の役には立ちません・・・このあたりは筆記体と同じです。

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