ボストンからバスで2時間のカジノリゾートで、今年のIDAは開催されました。
ボストンは車越しの夜景だけでも素敵でした☆。でも夜明け前のバスターミナルあたりから素敵じゃない雰囲気に・・・そして予想通り、カジノリゾートの周辺は見事に何もありません。360度原野、ニューイングランドの秋の紅葉です。
カジノリゾートの中は退廃的な雰囲気です。妙にぎらぎらした老人とか、地味~な中国人夫婦とか、平日の昼間からなぜこんなところに?と言いたくなるあやしい人たちがうろうろしてます・・・
そんな会場の一角で開催されているIDA。こちらは見事に白人女性が95%を占めてます。会場の挙手を見ると、教師、ディスレクシア専用チューター[個別指導教師]、アドミニストレーター[行政担当者]が多いです。
参加者は2000人と昨年並より少し少なく、半分が初参加とのこと。
雰囲気はLD学会に近いです。教師の出すオーラって万国共通なんですね(笑)。
・どうやら、去年のレターボックスの講演はIDA的にもよほど衝撃だったらしく、今年の発表で去年のその発表に言及しているケースに2件遭遇しました。たぶんみなさん、私と同じように、この1年間はあの講演を宿題として持ち帰っていたわけですね・・・
残念ながら、今年のIDAの発表は、これまでのところ、去年ほどの根底的な衝撃はありません。もっと細かい、具体的な話で収穫が多いです。
◆音韻認識について
・読めるようになるためは、まず音韻認識(phonological awareness,
phonemic awarenessなど、いくつかの言い方あり)の訓練を徹底すること、その上でフォニックス(音と文字の対応)を教えるべき・・・が、この1~2年で業界の共通認識になったようです。
Phonemic awarenessについての新刊も出ていましたし、教材も新しく出ていたので買ってみました。中1クラスで試してみたいです。
| ガチャガチャのおまけみたいなものが、多感覚らしいです |
※音韻認識とは、「単語がいくつの音韻でできているかを、認識する能力」です。
たとえば、satは3つ、stepは4つ、starは3つ(arは1つと数えるので)、
sharkは3つ(sh、ar、k)、thisは3つ(th、i、s)、thirdは3つ、
thereは2つ、rainは3つ、candyは5つの音韻からなります。
日本人からすると、「そこって1つにまとめるの?」という反論も出てきますね・・・
その通り。どの音をもって音韻とみなすかは言語によって異なるので、すでに別の音韻体系が確立している場合は、ある程度理詰めで理解する必要もあります。
音韻は人工的な概念なのです。
不思議なことに、定型だと4~5歳で母語の音韻認識は獲得されています
(「stopは4つのオトでできていて、tは2番目だね!」と言えます)。
一方、ディスレクシア(の多く)は音韻認識の発達が遅れますし、程度の差はありますが長期的・定期的・反復的・明示的な訓練をしないと定着しません(ひらたく言えば、毎日5~10分、訓練が必要です)。
グッドニュースは、音韻認識の定着は、年齢が上がるにつれ短期間で定着する傾向が強いということです。
もじこ塾で見る限り、中学生は小学校低学年よりも音韻認識の定着は早いです。
また、音韻認識が定着するまで足踏みする必要はなくて、文法など先に進みながら音韻認識定着の練習を続けることもできます。このことに言及している発表もいくつかありました。
◆ディスレクシアの原因は音韻だけではない
筑波大の宇野先生とワイデル先生がシンポジウムを行ったので、最後だけですが顔を出しました。両先生と直接お話できる役得に預かりました(^^)。地球の裏側のカジノリゾートまで足を運んだかいがあったというもの。
宇野先生からは釘を刺されました。今の私にはとてもありがたかったです。
「アジア系言語のディスレクシアの出方は英語圏とは異なる。
IDAではディスレクシアはもっぱら音韻処理の障害とされているが、日本語ディスレクシアを見ればそうでないことは明らか。
音韻障害だけが原因のことは少なく、視覚認知障害、自動化の障害、それ以上にこれらの混合型が60%を占める。
そのことを英語圏のディスレクシア研究者はわかっていない」。
・・・本当にその通りです。
日本語のディスレクシア、特に漢字が覚えられないのは、形の認識の困難によるものです。ディスレクシア英語教育に意識が向きすぎて、ついそのことを忘れがちになっていました。
日本語(特に漢字の困難)からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは主に字の形をめぐる困難ですが、英語からディスレクシア教育に入ると、ディスレクシアは音韻を認識し処理することの困難だと分かります。
日本のディスレクシアの生徒はほとんどの場合、この2種類の異なる困難に直面していて、その両方に対処しなくてはならない大変さがあります。
◆筆記体の本の版元社長に直談判
・筆記体の練習帳には本当に感動したので、お礼が言いたくて版元の社長さんの発表を聞きに行き、発表後、話をすることができました。
生徒の字をいくつか見せると、たいそう感動してくれました(TT)
「遠い日本の地でこの本がこんなに愛されていると知ったら、著者はきっと喜んだだろう。彼女は外国語として英語を学ぶ生徒のことを、とりわけ気にかけていたから」。
著者とは故Diana Hanbury King女史、ディスレクシア教育界のレジェンドのこと。
もう一年早かったら直接お礼が言えたのに、本当に残念でした。
「この本はすばらしいです!すごく効果があります。日本には同じものが本当にありません。わたし訳しますけど、日本で出版しませんか?」
と言ってみたところ、マシンガントークで
「超いいね!!僕はADDだから忘れちゃうんで、帰国後ここにメールしてくれるかな、Let’s see what we can do」とあっさりOKしてもらえました!
しかし社長はこっちもADHDだとは理解していない(原稿になかなか取りかかれないorz)。
だからここに書いて宣言しておきます。
筆記体の本の日本語版を出すために、版元のOKはもらえました!日本語版を出したい!!


