ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2015-11-28

大人ディスレクシアのチェックテスト[ベータ版]

隠れディスレクシア」で当ブログではおなじみのエイデ博士から、
「大人用のディスレクシア・チェックテストのベータ版を作ったので、
試してほしい」とのニュースレターが来ました。

両博士は今年の夏、このチェックテストの元になる大規模なネット調査を行い
7000人近くのディスレクシアや非ディスレクシアの回答を得て、
それをもとに以下の項目に絞り込んだようです。

「和訳して、日本のディスレクシアやその周囲の人にも回答してもらうこともできますよ?!
と、先方に聞いてみたところ、
「ありがとう、日本語が読めないので、今はまだいいわ。
でも近いうちにお願いするかも」と言われました。
(#これを機に3月にお預かりした質問を転送することにも成功!(遅い!!)
#いましばらくお待ち下さい!!)


とりあえず、「大人ディスレクシアのチェックテスト、ベータ版」
と題して訳してみました。
全部で44項目あります。
何点ならディスレクシアかは、これから決めるようなので、明記できませんが、
以下に「非常にあてはまる」なら、ディスレクシア度が高いのでしょう。

昨夜、「ディスレクシアのチェックテスト」に
素晴らしいコメント→を下さった方は、
驚くほど、下と同じ内容を語られていると思います。
[#コメントへのお返事2件、少々お待ち下さい]

~ ~ ~ ~

この調査の目的は、大人ディスレクシアを判別する簡単で手軽なチェックテストを作成することにあります。このチェックテストが従来の大人用ディスレクシア・チェックテストと異なるのは、大人ディスレクシアの苦手な部分と得意な部分を洗い出す質問項目にあります。これまでの研究で、大人ディスレクシアの判別に役立つことが明らかになったものです。

18歳以上の方のためのチェックテストです。
・これはベータ版です。この結果をもとに、さらに質問項目を絞り込む予定です。
・回答に必要な時間は15分以下です。

1. 声に出して読むのは難しい。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


2. 本を1ページ読むのに、必要以上に時間がかかってしまう。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


3. 整理整頓や、時間の管理を、難しく感じる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


4. 英語を始めてこの方、スペリングはずっと苦手だった。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


5. 申込書などに記入するのは、混乱するし難しい。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


6. 自分の言いたいことを探し出すのが、難しいことが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


7. アルファベット順/50音順に何かを並べたり、アルファベット順/50音順に並んだものから何かを見つけ出したりするのは難しい。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


8. 読むのは簡単だし、速く読める。
ものによっては、とても速く読むことができるし、簡単に読める。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


9. 職場や学校でうまくやるには、工夫をしたり、ITの力を借りたり、各種対応を受けないといけないことが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


10. 自分の考えを、書いて整理・表現するのは、難しいことが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


11. 九九を覚えるのは難しかった。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


12. 新しい単語、長い単語、見慣れない単語を読むのは難しい。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


13. 領収書を書こうとすると、よく書き間違う。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


14. 読む時、字面が似ている単語(catcotspotstopなど)を見間違う。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


15. 読む時、「どこを読んでいるか分からなくなる」「単語や行を飛ばす」ことがよくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


16. 長い単語を言おうとする時、「音の順番を正しく言う」のによく苦労する(例:「とうもろこし」が「とうもころし」になる)。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


17. 読む時は、段落のはじめから読み直さないと、意味が分からないことがよくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


18. 右と左が分からなくなることが、よくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


19. 電話でメモをとる時、間違えることがよくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


20. 言おうとしているのとは違う言葉を、ついうっかり言ってしまうことがよくある。または、ものの名前を間違って言ってしまうことがよくある(「あつい」と言うつもりで「さむい」と言うなど)
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


21. 電話をかけるとき、番号を間違って押してしまうことがよくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


22. いくつもの指示を、一度にまとめてされると、混乱してしまうことが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


23. 人の名前をなかなか思い出せないことが、よくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


24.  頭の中に、何かのイメージを立体で描くことができる。そのイメージを、頭の中で自由にいじったり、いろんな角度から眺めたりできる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


25. 何かの機械の中を頭の中でイメージできるし、その機械がはたらく仕組みもイメージできる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


26. 家具やプラモデルなどを組み立てる時、自分はマニュアルは読まなくても大丈夫。説明の絵だけ見れば、どのように組み立てればいいかが分かる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


27. 字で説明されるより、絵、図、流れ図で説明される方が分かりやすい。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


28. 青写真を"読む"のが非常に得意だ。(=図面をもとに、立体としての構造を頭の中にイメージするのが、非常に得意だ。)
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


29. ある問題があって、それをどう解決したらいいかを考えている時、頭の中で言葉はどちらかというと使っていない。(=視覚的なイメージや、視覚以外の感覚のイメージや、動きなどで考えている。)
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


30. 何かがない/抜けているのを、見抜くことがよくある。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


31. 細部(ディテール)を考えるより、全体像を把握する方が得意だ。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


32. 新しい分野の勉強をする時は、最初のうちは細かいことが気になって混乱する(「これはいったい重要なのか」と思ってしまう)。だが、ある所まで来ると、急にすべてが「かちっとはまる」ような感覚があり、全体像が見えるようになる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


33. 何かを勉強する時は、最初はなかなか定着が進まないのだが、「なぜ自分はそれを勉強しなくてはいけないのか」が分かれば、覚えられるようになる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


34. いろんなモノの、新しい用途(=本来の意図とは異なる使い方)を思いつくのが得意だ。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


35. 歴史上の出来事について考える時は、その出来事についての「言葉での説明」を思い出すというよりは、その出来事の「情景やイメージ」が見える。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


36. 「"木"や"車"とは何か、説明してほしい」と言われたら、まず木や車をたくさん思い浮かべるのが、自分のやり方。木や車の、言葉での抽象的な定義がいきなり頭の中に出てくることはない。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


37. 「学生時代に、暗記しようと必死に努力したこと」よりも、「たまたま経験したこと」の方が、よく覚えていることが多い気がする。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


38. 決まった形式にのっとった指導を受ける(=本を読む、講義を聞く、読んだり書いたりする宿題をする)よりも、実際に体験するほうが、自分にとってははるかに身につく。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


39. 何か問題を解決する時や、何かを決めたりしなければならない時、自分は論理立てて理詰めに考えるというよりも、「突然のひらめき・直観・予感」に頼るほうが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


40. 周りから、「あなたの考え方は『線形的でない』(=順序立っていない、飛躍している)」とよく言われる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


41. 「どうやってその答えにたどり着いたの?」と聞かれても、説明に困ることが多い。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


42. ・複雑やシステムを見るだけで、「それがどんな仕組みで動くのか」を、頭の中でシミュレーションする(または想像する)のが得意だ。
・「もし、そのシステムの条件や一部を変えたら、結果がどう変わるのか」をイメージするのが得意だ。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


43. 白昼夢(ぼうっとしている)時や、心が勝手にいろいろさまよっている時こそ、成果が出せる。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


44. 「自分が何を考えているか」を説明する時は、まずは自分が考えていることを言葉に"翻訳"しなければならない(=言葉にしようと思うまでは、あまり言葉では考えていない)。
非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる あてはまらない


45. あなた自身について
確かにディスレクシアだ(正式な検査を受け、専門家からディスレクシアだと言われている)

おそらくディスレクシアだ(正式な検査を受けていないが、字以外の分野では能力があるのに、読み書きに限っては人並みにこなすのに人よりはるかに苦労したので、自分はディスレクシアだと思っている)

ディスレクシアかもしれない(ディスレクシアのいくつかの特徴にあてはまるが、正式に特定されたことはなく、自分がディスレクシアと言えるかどうか自信がない)

明らかに非ディスレクシア

項目の内容や訳について、ご意見があればお願いします~

2015-11-09

「ディスレクシアとイノベーションの会議報告」の翻訳

ああ。書きたいことがたまっているのですが奴隷仕事が…

リハビリに、Dyslexic Advantageのエイデ博士が毎年主催している
「第3回・ディスレクシアとイノベーションの会議」の報告を訳しました。
書いたのは、ダン・ピーターズというディスレクシアに詳しい心理学者です。

この会議は、成功したディスレクシアの人たちが集い、自分の仕事を紹介し、
それを通じて「ディスレクシア的な才能開花」とは何かを共有するものです。
行ってみたい~(笑)

以前、第1回の講演を訳しました

長い動画ですが、ディスレクシアの才能に関心のある方には本当にお勧めです。
(今、久しぶりに見返して、6分すぎから涙が止まらない(笑))
ディスレクシア的な才能発揮って、こういうことなんだ…と実感できます。

さて、以下の記事では、
アメリカの教育現場では最近、「ディスレクシア」という言葉を
あえて使わなくなっているという"退歩"についても、ちらっと書いてあります。
「海外のディスレクシア的状況は日本より30年進んでいる」と言われますが、
日本にその部分だけ先走って入ってくることのないよう祈ります…。

☆  ☆  ☆

今こそディスレクシア革命を!
The Dyslexic Advantage: Our Hidden Revolution
原文→

ニューアーク空港で搭乗を待ちながら「ディスレクシアの才能に関する第1回会議」で見聞きしたことをどうしても書きたいと思ってから、2年半の月日が流れた。
1回会議の目的は、Dyslexic Advantageで示された概念を探ることにあった。

当時、Dyslexic Advantageが示す考え方はまったく新しいものだった。
ディスレクシアは脳の仕組みが異なるがゆえに、人と違った仕事やタスクを得意とする。ディスレクシア脳はパターンを認識すること、つながりを生み出すこと、ユニークなデザインや構造物を作ること、そして、複雑な問題に新たな解決策を編み出すこと--そういったことを、普通の脳とはちがう方法で行うことができるのだ。

この会議は、私の何十年もの仕事人生で経験した数々の会議とは、まったく雰囲気を異にするものだった。

まず、講演で話す人――成功している起業家、ピューリッツァー賞を受賞した作家、アカデミー賞を受賞した映画監督、ハーバードやMITなどの科学者や研究者、そして聴衆のほとんどが、ディスレクシアだという点。
このため、会場内には受容と共感の、なんとも言葉にしがたい雰囲気に満ちていた。
ほとんどのディスレクシア(自分も含め)は、初めて我が家に帰ってきたような気分だった。
ある講演者の言葉を借りれば「私たちは、自分の種族についにめぐり会ったのだ」。


時は進んで2015年。私はいま、「ディスレクシアとイノベーション」と名称を変更した第3回の年次会議に参加し、西海岸に戻る飛行機の中でこれを書いている。主催はDyslexic Advantage(著者が設立したNPO)、後援はEmily Hall Tremaine基金。
今年のテーマは、学校、制度、職場、そしてイメージといった様々な場で、ディスレクシアがどれほど認知されているか、その現状を評価すること、そしてディスレクシアの一生の経験をよりよいものへと前進させるための戦略や行動計画を立てることだ。

この会議に初めて参加する人は、これまで同様、心と心が響き合い、人と人のつながりが出来ていく空気感に圧倒されたことだろう――
自分の種族に初めて出会う、あの感覚だ。
2回目3回目の人は、我が家に戻る気持ちだった。

ほとんどの参加者は、日程や時間、書くこと、人の名前を覚えること、耳からの大量の情報についていくこと…こうしたことに多少の不安を覚えるのをいつものこととして、日々を送っている。
でもここでは、リラックスしていられる。ディスレクシア同士で話をしたり、非ディスレクシアが「自分はマイノリティーのような気がする」と話しているのを聞くと、この会議中はディスレクシア文化が多数派なのだと改めて知る。

この会議の参加者のほとんどは、人の名前や部屋の番号を覚えられない。
しょっちゅう迷子になるし、書き間違いも言い間違いも多いし、言おうとしている言葉にたどりつけない。
この会議ではそういうことが起きると――これがよく起きるのだ――私たちは一緒に笑い、互いを受け入れ、認め合う。
私たちが通常経験すること――笑われ、からかわれ、恥ずかしい思いをすること――とはずいぶん違う。
現実世界では私たちは20%だ。ここでは80%。私たちの方が普通なのだ。

これまで同様、この会議では様々な分野から大きな成功を収めた、非常に独創的なディスレクシアの人たちが登壇し、議論のリード役を務めた。
ハーバードで訓練を受けたビジネス・ネゴシエーター、MITの研究者、クマの専門家(!)、コメディアン、詩人、ビジュアル/グラフィックデザイナーなど。
全員、自分の分野で新しい道をひらき、成功した人たちだ。

全員が、普通と違うやり方をしている。全員が、学校では苦労し、たび重なる失敗をし、ディスレクシアとそれに関係する弱点を(隠せる時は)隠し、そして逆境に耐えた、そんな経験の持ち主だ。

会議では「リスクをとること」が共通テーマの一つとなった。
「あまりに失敗が多いので、失敗に慣れてしまった。失うものなど何もなかった」
正しいやり方に失敗することはやがて、独創的な問題解決方法を編み出すこと、物事を人とは違った方法で取り組むというディスレクシアの長所を生かすこと、そして、失敗に慣れ、恐れないこと--につながった。

この会議で知ったのだが、シンガポールでは教員養成課程でディスレクシアを扱っているほか、ディスレクシア教育の国家プログラムが存在するそうだ。
すべての生徒が一人残らず、国の未来を担う貴重な宝であり、力を発揮しきれない生徒が一人もいてはならない、という考え方らしい。

訳注:シンガポール建国の父、リー・クアンユーがディスレクシアなこともあり、シンガポールはディスレクシア教育が盛んなようです。

また残念ながら確認できたのは、アメリカのディスレクシアの生徒をめぐる状況がほとんど進歩していないということだ。
グループディスカッションで、「ディスレクシアの長所が介入プログラムに取り入れられつつあるか」という問いが出たとき、「ない」という悲しい結論に至っただけでなく、ディスレクシアと特定された生徒に対しても、介入プログラムの基盤となる読みのRBI(research based intervention)が行われていないケースが多いらしいことも明らかとなった。

訳注:RBI:ざっくり言うと、アメリカ版の特別支援教育
さらにひどいことに、私が住むカリフォルニア州同様、多くの州では「ディスレクシア」という言葉を使わず(使ってはならず)、多くの親が教師から「ディスレクシアは今の時代はもう使わない言い方です」「ディスレクシアは今後は認められない」などと言われている


この世界は何百年にもわたり、ディスレクシア脳が変革を引き起こし、また娯楽を与えてきた。
そうした偉人の一覧は拡大するばかりだ。
声を上げ、「私のディスレクシアはこんな風に人生を形作った」と語るディスレクシアは増える一方だ――映画監督のスティーブン・スピルバーグ、NBA選手のコービー・ブライアント、マジック・ジョンソン、ジュエル・ロイド(女子NBA年間最優秀新人賞)、俳優のジョージ・クルーニー、ジェニファー・アニストン。
ビジネス界の女王バーバラ・コーコラン、FUBU創設者のデイモンド・ジョン。
ノーベル医学生理学賞を受賞したキャロル・グライダー、ケイシー・ドレナンMIT教授、マッカーサー賞受賞の海洋科学者、ミミ・ケールなど。
世界の人工物の七不思議のすべてはディスレクシアの建築家によって設計され(訳注:マチュピチュ、ローマのコロッセオ、万里の長城など。本当?!)、成功した起業家の3人に1人はディスレクシアで、MITではディスレクシアは「MIT病」と呼ばれる。
ここに規則性が見いだせないだろうか。つまり、著名人が続々とディスレクシアをカミングアウトし、自身のディスレクシアについて語り始めるなか、メディアはディスレクシアの認知度向上を後押ししようとしているのだ。

成功し、認められているなら、カミングアウトの敷居は低くなる。
だが苦しみ、失敗を続けている時には、それは難しい。
ディスレクシアという概念は少しずつ知られつつあるが、学校や職場に変化が起きているとは到底言いがたい。
ディスレクシア脳が貴重な資源だとはまだ認められていないし、ディスレクシアの子供も大人も、まだ隅に追いやられた存在だ。


世界には解決しなければならない複雑な問題がたくさんある。そして、ディスレクシア脳はこうした問題を解決するよう作られているとわたしは信じている。
この世界を維持し前進させるためには、ディスレクシアも非ディスレクシアも含め、全員の"脳力"を結集する必要がある。
シンガポールの経験が私たちに教えてくれるように、私たちの社会は生徒を一人たりとも落ちこぼれさせる余裕などない。一人残らず、ポテンシャルを開花させる必要があるのだ。
今こそ、ディスレクシア革命を起こさなければならない。

2015-10-22

LD学会にて:道村式漢字カードの長所、ジョリーの浸透度

福岡で行われたLD学会に、道村式漢字カードの売り子として行ってきました。

道村先生のパワフルさには、私の中のがん患者の常識が覆されました!
漢字カード普及活動が薬になっているとお見受けしました。
とはいえ、まだ治療継続中の身の上。どうかお大事に、、

今回、売り込みを繰り返すなかで、
道村式漢字カードの長所を改めてまとめることができた気がします:

道村式漢字カードのポイントは、

1)書かずに、部品(パーツ)を唱えて覚える
(道村先生流に言うと「書くことからあの子達を解放してあげて!」)

2)部品の単位が細かすぎず大きすぎず、ほどよくまとまっている
(同じく、道村流に言うと「たてたてよこよこだと線構成になるからね!
それじゃあ1日たつと忘れちゃう!」
「よろこぶは十・豆・口!これだけ!!」)

3)部品が初登場の時には事細かに説明し、次からは部品に名前をつける
(『「イ・なべぶた・たて・三」、次からは「ふるとり」!!』)
(『3年生までにほとんどの部品は出てきちゃうのよ、
4年からは部品の組み合わせでずっと楽になる!』)

ディスレクシア的には、
「部品を唱えることで、
うじゃ~っとしたかたまりだった漢字が分解・整理され、
おのずと正しい書き順で入っていく」と言えます。
このあたり、ジョリーとすごく共通点があります。

4)初出時に、音訓をセットで覚える。
かつ、道村式漢字カードには、同音異義語は一つもない。
(「音と訓を別々に教えるのは光村図書の重大な欠点!」)

ディスレクシア的には、
「道村式漢字カードは、(1)目で漢字を見ながら、
(2)教える側が音訓を読んでは、(3)生徒が部品を言うのを繰り返すことで、
漢字の(1)ビジュアル・(2)音訓・(3)書き方を覚える、多感覚式の教材です」

あと2つ、使い方において盲点になりがちな点を:

a)テンポ良く、ほめながら使う
押し売りかというくらい(笑)熱く語って人を引き込み、最終的には笑わせる、
そんな道村先生の話術に接していると、
道村式漢字カードを教える際は、教師がリードして生徒をひっぱる、
終始快活なテンポ、できたら力一杯ほめる、
毎日ちょっとずつ楽しく取り組んでぱっとやめる、
といった教師力も不可欠だと、改めて思いました。
道村式漢字カードはすばらしい教材ですが、
×だらだら教える、×懲罰と組み合わせる、×ほめない
ようでは、効果は半減してしまいます。

「漢字を見て絵として覚えられるディスレクシアよりも、
耳からのインプットが得意なタイプに向いているかも」
との指摘も受けました。その通りだと思います。
そして、耳が得意なタイプは、テンポ良い教え方がより一層重要です。

b)しつこいですが、「書かせない」
道村式漢字カードは、「部品を唱えて漢字を覚える」という教材です。
ここを勘違いして、カードを見ながら何度も書き取りをしている人もいるかも。
それでは、道村式の意味がまったくありません!

~ ~ ~

LD学会には、宮崎大学や熊本大学などから、教育学部の学生さんたちが友達同士で、リクルートスーツで来ていました。
何人か、道村式カードに非常に関心を持ってくれた学生もいました。(財布のひもが固いようで、残念ながら買ってはくれなかったのですが(^^;))
先生の卵たちが、学生時代からすでにディスレクシアの知識も関心もあるというのは、大変心強かったですし、そのなかから道村式漢字カードの精神を受け継ぐ人が出てきてほしいな…と思いました。

☆  ☆  ☆

道村式漢字カードの売り子と同時に、ジョリーのチラシも配ってきました↓


お申し込みは以下(外部サイトに飛びます)
名古屋→ 大阪→
東京は今週末です→

発表は2つだけ行ってきました。
そのうちのひとつ、ディスレクシア英語教育に関する発表では、
「ディスレクシアにはフォニックスが不可欠」と当然のように語られ、
4人中2人が、ジョリーとおぼしき教材の画像を示していたのでびっくり!

他の方から「別の発表ではアナリティック・フォニックスを使っているようだった」との報告もありましたが、
…ともかく、ジョリーを含むフォニックスは、少しずつではありますが着実に日本の学校英語に浸透しつつあるようです。
2年前、初めてLD学会に行ったときは→ディスレクシア英語教育についての発表はほぼ皆無でがっかりしましたが、ずいぶん進歩しつつあるようです。

ただ、日本の中学校でフォニックスをやるとしても、
現状では割けるのはせいぜい2~3時間[実質1時間半]とも言っていました。
ディスレクシアにはその10倍は必要ですが、
おそらく、そのような形に教科書が改訂される望みは薄い気がします。
ディスレクシアとしては、
小学生のうちからから少しずつアルファベットの先取りをしておくか、
中1の夏休みに覚悟を決めて集中特訓が必要になることでしょう…

ジョリーについては、会場でお話した方々から
「ジョリー単独では、ディスレクシアになかなか難しいものがある、
うちはジョリーは非常に効果的だったが、その前に音声教材(ディズニーなど)
をたくさん聞かせており、その下地があったのが大きかった気がする」
とのご指摘を受けました。
そうなのかもしれません。これについてはもう少し意見を集めたいです。

あと、発表では、フォニックスの"次"の話は出ませんでした。

~ ~ ~

もう一つ聞いた、都内最難関私大の発達障害学生支援センターの発表では、
これまで相談に訪れた学生のうちディスレクシアは2人だけ、
しかも2人とも本国で診断を受けた留学生、とのことでした(゜Д゜)
私が直接知っているだけでも、その大学にはディスレクシアの学生がこの人を含めて→5人は入学したのに。。
ディスレクシアだと自分でも分かっていないのでしょうが…

☆  ☆  ☆

福岡では、ここで知り合った九州のサザエさん(と呼ばせて頂きます(笑))と、
新潟からお越しの方と、いろいろお話しすることができました。
お二人ともお子さんのために、ものすごく献身的に動いておられます。
九州のサザエさんはお子さんの中1ショック発覚後、
一日も欠かさず5教科の勉強につきあい、
定期試験前は1日10時間は勉強をみているとのこと。
おかげで、平均点を上回る成績をあげているそうです。
「ワタシ、今が一番勉強してますよ~」とけらけら笑っておられましたが、
頭が下がります・・・

非ディスレクシアな下2人のお子さんに、上の子の手のかかりっぷりをどう納得させるかが難しい、とのことでした。
「夜9時には下の娘と添い寝する、そこは彼女のための時間」とも。
うちは一人っ子ゆえに当ブログでは触れる機会のない「上の子/下の子問題」、
きっといろいろありますよね。

~ ~ ~

身銭を切ってLD学会に参加されているお二人とは
「LD学会の発表はどうして残念か」(失礼!)についても話し合いました。
例外も多々あると思いますが、
「ここには『バカなLDの子に、次のテストでいかにしてまともな点数を取らせるか』という視点しかない」
学校の先生の集まりだから仕方がないのかもしれませんが、
字以外の面では何ら問題のない子たちという考え方はもちろん、
子供の学習や成長を長期的に考える視点がほとんどありません。
隠れディスレクシアもほとんど知られていません。
何かと検査やアセスメントを作りたがるのも、ちょっと気になります。
学校制度を疑う方向にも、基本的には行かないようです。

とはいえ、来年もLD学会にはつい行ってしまうことでしょう。
ジョリーはLD学会に物販のブースを出すべきです!


2015-09-27

ディスレクシアにプログレスで英語を教える(2)プログレスの進め方

すっかり秋ですが、皆様いかがお過ごしですか。
私は雨が降ると眠くて眠くて、、これが更年期というやつでしょうか。

前回の記事には、コメントやメールをたくさん頂き、ありがとうございました。
時にきちんと返事せず申し訳ありません(主に眠さのせいです)。

前回のコメントから、私は自分のディスレクシア英語教育研究への意欲を、改めて確認しました(笑)
子に「ほっといてよ」と言われても「英語だけは実験台になってくれ」と懇願しそうな気がします(笑)。

☆  ☆  ☆

遅くなり申し訳ありません。
プログレスのディスレクシア補習用の取り組み方の例を、書いておきます。
どなたかのお役に立てれば幸いです。
前回記事はこちら→

プログレスのBook 1のセット。
正式名称は「Progress in English 21 Revised Book 1」
ここから買えます→

①プログレスの使用目的をはっきりさせる

ここではプログレスを、ディスレクシアな中学生の補習用という、
本来とは異なる目的で使います。
また、ディスレクシアは"目的"を明確にすることで初めて動き出せる人種です。
そこで、「なぜプログレスを使って英語を勉強するのか」
という目的をはっきりさせておく必要があります。

使用目的の部分は、最初からディスレクシア本人に宣言するには及びませんが、
教える側は明確に持っている必要があります。
くどいようですが、「その教材を使って何を教えるのか」
といった目的部分を把握せずに教えている教師は本当に多いので、
この重要性はいくら強調しても、しすぎることはないようです。

(さらに言うと
「この子にはどういう風に英語が出来るようになってもらいたいか」
という将来像も、教える側がちゃんと見えていないといけませんが、
これはまたの機会に、、)

ディスレクシア補習用教材として使う場合の、プログレスの使用目的は
「英語のしくみ(文法)と音(リズムと発音)を、あるところは緻密に、
あるところは直感的にざっくりと、体感(!)で定着させる」
となろうかと思います。


~プログレスは家庭で教えられるか?~
結論から言うと、
教える側が、上で申した目的や将来像を把握していれば
Book 1までは不可能ではない、
が、外注も視野に入れて良い気がします。
中学に入ると、そろそろ親に教わるのを嫌がる年頃ですし、、

理想は毎日30分ですが、
外注するなら週2回、1時間ずつが妥当かなと思います。

その際、教えてくれる人に、上の目標と、
「ディスレクシアは次の単元に進むと、前の単元が定着する」(俯瞰できるから)
ことを踏まえ、だいたいできたらどんどん次に行くようお願いするといいかもです。


②プログレスのどこに取り組むか、取捨選択する

ディスレクシア的補習用にプログレスを使うということは、
・学校の授業で定着しない部分を補う
・ディスレクシアの特性に沿って、できることから苦手なことにアプローチする
ということです。
この点を念頭において、どこを扱うか/扱わないか、取捨選択します。
以下にモデルケースを示してみます。

■1日目(60分):
(0)
「今日はWhatの勉強をするよ」
「これとこれが覚えられたらおしまい」
「20分たったら休もう」などと見通しを示します。
(「できるまで終わらない」は禁句です。
かつてうちも、漢字学習でやりがちでしたが…)

(1)(15分~)
左ページのダイアログ(会話)を、リピーターを聞きながら字を目で追ってもらう。
文法的な分析、単語レベルの解説は最小限に。
リピーターとほぼ同じスピードで、自力で読めたらゴール。

後に書きますが、ディスレクシアにとって、ここはすごく簡単です。
ほとんど説明しなくても、なぜか意味もだいたい分かっています。

<休憩>

(2)(15分~)
左ページ下の例文を、リピーターを聞きながら読み、暗誦。
このときはじめて、文法事項を説明する。
訳も言わせ、SVOの概念や修飾関係が正しくとれていることを確認する。
あまりがちがちに文法用語を使わずに、得意なこと(リズムなど)を使って覚えさせる。
例文を、リピーターの後に続けて、すらすら読めたらゴール。

これも、ディスレクシアにとっては、そんなに難しくありません。

楽しく進んでいるこの段階で、文法の仕組みをさらっと教えます。

<休憩>

(3)(15分~)
右ページ上、チャート(絵)を見て繰り返すなどの問題を1周。
(2)を音やリズムで定着させるのが目的です。

ディスレクシア的には、フレーズをリピートするのも、難しくありません。
この点、非ディスレクシアよりも簡単にこなせているかもしれません。

ここでのディスレクシア特有の間違いは、音韻認識の混乱が起こることです。
(例:spotをstopと言い間違える、など)

「ディスレクシアは音韻認識の障害」とも言われます。
なので、ここが最大のハードルと心得て、
さりげなく、でもその都度、正しい言い方に直します。

発音は、ネイティブと見まごうような美しさは要求しませんが、
あまりに間違っていると正しくスペルできなくなるので、
それができる程度には直します。
(例:beryと言っているのをveryと言わせるとか)

こうした言い間違いは、さらっと直すのが大事なようで、
怒ることはもちろん、笑いのねたにするのも×です。

外注する場合、
(1)~(3)を繰り返して完全に覚えることを、宿題にするとよいと思います。


■2時間目(60分):

(1)(3分)
ダイヤログの復習。自信をつけるのが目的。
「読める」と言うなら、いきなり読んでもらい、
無理そうなら、リピーターの後に続けて読んでもらいます。

 (2)(15分)
ワークブックに取り組みます。
ここからは、ディスレクシア的には難所になります。

ワークブックは、本来は宿題にして自習するのでしょうが
ディスレクシアの場合、ワークブックは教師と一緒に解きます。

基本的には、問題文を教師が読み上げて、
生徒には口頭で答えてもらいます。
書くのはディクテーションと、穴埋めで記入する問題にとどめ、
文を全部書かせる問題は、口頭で確認します。

単語の穴埋め問題。まだstudiesは間違えます。

一度、「疑問文に書き換えなさい」という問題を書かせたら、燃え尽きてしまったので
以来、書き換え問題はもっぱら口頭で行っています。

~単語について~
プログレスをディスレクシア的補習に使う場合、
プログレスの単語の設問は原則として扱わない」のがよさそうです。
単語の暗記は、学校のテストに沿って行うというスタンスです。

プログレスは新出単語が、検定教科書よりもかなり多いようです。
ワークブックには単語の意味を確認する問題がたくさんついています。
これらは、よほど時間が余ったときや、自信になりそうな時以外は、
基本的には扱いません。


少し話がずれますが、
ディスレクシアの場合、ダイヤログを覚えるのはわけないことです。
特に、ダイヤログや例文の内容に納得感があれば、簡単に覚えられます。

#(納得感とは…
「ちょwwこの2人、Shall we meet after school?だって、リア充じゃんww」)
「ジョンがマイクに声をかけたのは、テニスの技を自慢したかったんでしょ」
と、ダイヤログの状況を具体的にイメージし、
登場人物の人間関係を批評さえすることです∑( ̄0 ̄
非ディスレクシアはそういうことはあまりしないと思いますが、
ディスレクシアな子は、驚くくらい、まずここから入ります)

単語は、ダイヤログから部分的に切り出すという形で思い出すようです。
子を見ていると、ことばの意味の単位が「語」ではなく
「フレーズ」「文」下手したら「ダイヤログ全体」なのかもと思わされます。
「語」は、意味の単位としては、彼には細かすぎる(?!)ようです。

それでも、ダイヤログや例文を納得感をもって覚えていれば、
今のところは、その課の新出単語の確認テストなら、それほど苦労しません。

問題は、文章の中で、少し前に出会った単語が再び出てきたときです。
そんなときは、単語の意味を思い出すのに、大変苦労しています。
これまで会ったディスレクシアな生徒たちと、同じ経過をたどりつつあります。

だからといって、単語だけ取り出して暗記させるのは、
ディスレクシア的には、よほどの目的意識がない限りは無理です。
テストが明日に迫っているとか、どうしても合格したい試験であるとか…

この点では、今後もますます苦労しそうです。


■7時間目(60分)

いきなり7時間目に話が飛びます。
プログレスは、1つのLessonが3つのScene(シーン)に分かれており、
最後に読み物がついています。
1つのSceneを各2時間かけて取り組んでいき、7時間目に読み物に取り組みます。

この読み物は、
文法項目はすべて、単語もほとんどが、Lessonの内容に限定されており、
とてもスモールステップに出来ています。

ディスレクシアでも、やがては初見の文を自力で読めるようになりたいので
これにチャレンジするわけですが、
言うまでもなく、この7時間目がディスレクシア的には最大の難所です。

どうやら、実力うんぬんよりも、
その日の体調や疲労度によって、読む力が大きく変動するように思います。
先日、部活を終えて雨のラッシュのなか帰宅後、下の読み物を読ませたら
1行読んで胸をかきむしって苦しみだしたので、中止しました(- -;) 
読み物は、体力気力が充実しているとき限定のようです。

読み物にも、リピーターを使います。
使い方:
・リピーターに続けて、文を言ってみる
・1文を自力で読んでから、リピーターを聞いて正しく読めているか確認する
・自分の音声を録音する(→急にノリノリになって盛り上がります(笑))

この文で一番苦労したのは、Spotをstopと言わないようにすること、
backyardを「バックドア」「バックコート」と言わないようにすることでした…

~和訳について~
ディスレクシアの子は、状況を把握した上で読んでいるので、
訳は本当に自然でうまいです。

例えば、Spot lives in the backyard and sleeps in the doghouseを
「ストップが普段いるのは裏庭で、寝るのは犬小屋です」
と訳すのがディスレクシアです。

これを「liveは「住む」と訳しなさい」「inもちゃんと訳しなさい」
とは、言わないほうがいい気がします。
ただし、in the doghouseがsleepにかかっていることを分かっているかどうかだけ、さりげなく確認すべきだと思います。


~~~~

そうこうしているうちに、トレジャーが手に入りました。
次は、検定教科書・プログレス・トレジャーを比較してみます。
結論だけ先に書いておくと、
トレジャーはディスレクシアにはとても大変です…



2015-09-02

プログレスでディスレクシアに英語を教える(1)プログレスのディスレクシア的長所

なかなか書けず申し訳ありません。やっと夏休みが終わりました。

ディスレクシアな中1男子の夏休みは、
8月31日夜9時に数学のレポートに気付くというエンディング(苦笑)
さすがの私もキレて、通信簿の保護者通信欄に
「2学期の中間試験までに提出物の不提出があったら、
期末まではバスケ部を休部させます」
と書いたところ、子は風呂で号泣。その後したり顔で出てきて・・・
「俺からバスケを取ったら引きこもりになるよ?バスケする以外は」
「どうやって先生をだまして提出物を出したように見せかけよう」
「部活はダメでも朝練はいいよね。じゃあ7時、いや6時半に学校に行くから」
と、裏をかくようなことばかり考えていますorz

規則で縛ると"抜け道"を全力で考えようとするディスレクシアの子に、
勉強とバスケを交換条件にするのは、何の意味もなかったようです。はぁ。

とはいえ、バスケが彼に良い影響を与えていることは明らかです。
まっすぐ上にジャンプする練習を、毎日何時間もするうちに、
ずいぶん体幹が整ったのも、そのひとつです。

☆  ☆  ☆

さて。プログレスのことを書いていきます。

夏休みに入ってから、プログレスという教科書を使って英語を教えています。

結論から先に申しますと、
プログレスは、ディスレクシアにかなり適した作りの教科書です!!

今回は、プログレスとはどんな教科書か、
そして、プログレスのディスレクシア的長所を紹介します。

~ ~ ~

プログレスことプログレス・イン・イングリッシュ(Progress In English)は、
イエズス会が作っている、中高向けの英語教科書です。
キリスト教系の中高一貫校で多く採用されています。検定外です。

初版は1964年。
ロバート・フリン神父という、神戸と福岡のカトリック男子校で教鞭をとっておられた方が書かれたそうです。
そのあたりのエピソードはこちら→。現代のザビエルです。

私の卒業したミッション系では6年間、英語の教材はほぼこれだけでした。
昔は、いかにも教会関係者が書いた感じの、手作り感満載の教科書でした。

現在の版の正式名称は、Progress In English 21 Revisedで、
(今まで取り組んだ感じでは)宗教色は特にありません。


Book 1の奥付。Book 5まであります。

購入方法は、版元からの直接取り寄せのみです。→
アマゾンでも一般書店でも取り扱っていません。
そのことが、謎めいた雰囲気を高めています。

でも、使ってみると、閉鎖的な雰囲気はまったくありません。

~ ~ ~

プログレスの一番の特徴は、とにかく音から入ることです。
単に「音声が付属している」ではなく、「まず英語の音から入る」なのです。

左から:テキスト、ワーク(いわゆる文法問題)、
自習用ワーク(ディクテーションや単語テストなど)
中央にあるのが専用再生機「SDリピーター」

ディスレクシアには、教科書の読み上げだけでも、大変ありがたいことです。

#子が通う中学は自作教材を使っており、音源が全くありません。
#音声教材のない英語学習はディスレクシアにとって、
#船で山を登るようなものだと知りました。
#とにかく進まない。そして定着しません。

しかし、プログレスにおける音声の位置づけは、
ただ単に、教科書を読み上げることではありません。


「聴く」→「話す」→「読む」→「書く」の順序で作られています、
と1ページ目で宣言

「聴く→話す→読む→書く」
ディスレクシア英語学習は、この手順が唯一の道だと私は思っていますが、
プログレスは、この順番で学習が進むように作られた教科書なのです!
すべての新出事項を「聴く→話す→読む→書く」の順番で学習します。
(少なくともBook 1では)。
なんとありがたい!!

中はこんな感じ。
基本的には、見開き1ページに1つのレッスン。
3レッスンごとに、まとめがあります。





左側の番号をSDリーダーに入力して、頭出しします

読み上げてくれる機械はこちら「SDリピーター」。
90年代にソニーからリピーターが出ていましたが、
その開発者が、退職してこれを作ったそうです。
頭出しがサクサクできるのと、自分の声を録音できる(30秒)のがポイント


1) 「聴く→話す→読む→書く」という順番で編集されている

これなら、書かなくても、学習事項を覚えることができます。
プログレスを使う最大のメリットは、この点でしょう。


プログレスには他にも、ディスレクシアに適したポイントがあります:

2) スモールステップである
普通の教科書よりも、はるかにスモールステップです。
その課で学ぶべきことがものすごく明確なので、
ディスレクシア的には、苦手な暗記に集中できるのがありがたいです。

また、けっこう多くの教科書では、未習ポイントをこそっと混ぜ込んできますが
ディスレクシアだとそこで確実につまづくので、とても困ります。

プログレスの書かせる設問は、すでに耳から入っている単語だけで構成されています。
これなら、ディスレクシアでも比較的つまづかずに書けます。

目次。
例えば6.では、1 命令文だけ、2 Let'sだけ、3 Shall weだけで、
レッスンが作られています。


3) 各単元の教え方が、「大→小」になっている
各レッスンは、
(1)新出事項を含む会話文を、すらすら言えるようにする
(2)会話文に含まれる文法事項を学ぶ
 →(3)単語を覚える
という順番に組まれています。
「文法事項を学んでから、会話で応用しましょう」ではありません。
ディスレクシア的には、大変ありがたい順番です。

4) ゲーム感覚。いたずら心に満ちている
「Where is the clock?」という音声を聞き、絵の中から時計を探す問題で、
実はどこを探してもclockが描かれていないなど・・・
(正解は「I don't know」)∑( ̄0 ̄

中学生男子のいたずら心をくすぐる仕掛けがちょこちょこあります。
ディスレクシア中1男子は、これにめちゃくちゃ食いついてます。
「全部 I don't knowでいいじゃん!!」と(笑)

会話文の音声は容赦ないナチュラルスピード、
しかも声変わり前の男子が出演。
「同じスピードで言ってやろう」と、闘争心がかき立てられるようです。

5) 反復が非常に多い
プログレスの隠れた特徴のひとつ。
忘れた頃に「昔の話題を蒸し返すようですが…」と復習問題が登場します。
(登場人物も以前と同じなので、遊び心があります。)
「しつこいw」と笑いながら、学習事項が定着します。

あるいは、同じフレーズが、
穴埋め・ディクテーション・名詞だけ変えて・疑問文に・否定文に…
と、いろんなかたちに変形して問われます。

ディスレクシア英語学習は、普通の子の何倍も反復が必要です。
その点で、反復が多いのは、非常にありがたい作りです。

ワークブック。
先に暗記している(=音で入っている)と、まあ書けます。
この順番が大事だとつくづく感じます

6)教材に愛情が感じられる
これは実際にその教材を使っている最中に感じられることで
具体的な例を示すのが難しいのですが・・・
でも、設問の配列ひとつとっても、教材から愛が感じられます。
ここを外さなかったフリン先生はすばらしいです。

当ブログが推奨する教材(道村式漢字カード、ジョリー)に共通することですが
ディスレクシアは、こういうことにひときわ敏感だと私は感じます。

#ちまたには愛のない教材が多すぎます。具体的な名は控えますが。
#もしかしたら、ディスレクシアの"学習障害"の原因のひとつは、
#愛のない教材への拒絶反応なのかもしれないと思うほどです。

~ ~ ~

次回は、家庭学習でのプログレスの取り入れ方について、書くつもりです。