on dyslexia

ディスレクシア
(読字障害、読み書き障害、失読症、難読症、学習障害、読み書きのLD)について、調べて分かったこと/実践したこと/英語から訳した文章をアップしています。

ディスレクシアとは:
-
​​
知能は普通だが、読み書きが苦手(誤字が多い、読み書きが遅い、読み間違いが多い)。
-勉強しているにもかかわらず、読み書きがなかなかできない状態を指す。知的障害ではなく、普通~ギフテッドのあらゆるIQにみられる。
-
​​
独創的で、​​対人能力が高い。
​​
全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力
に長ける。
- ​音と文字の脳内での結びつきが弱いことから起こるらしい
- ​読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい。その理由は、英語のほうが日本語よりも"音の粒"が小さいから​
- ​細​​​​かい聞き間違いがみられるが、音声情報の処理能力は高い
- エピソード記憶が得意。固有名詞などの細かい丸暗記は苦手
- 適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される-
​ ​
10人に1人程度いるというのが通説
​。アメリカの調査では3人に1人とも
- 家族性であり、遺伝による​。ただしディスレクシアの表れ方は個人差が大きい



当ブログは、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能である、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要--という立場です。


2015-03-22

ディスレクシアでADHDなコスモ君の合格体験記(2)「彼にとって受験勉強は、自分への自信を取り戻す一歩だった」

前回のコメントでは、センター試験の配慮の話について、さまざまな角度からの指摘を頂き、ありがとうございました。
16年春からは障害者差別解消法が施行され、教育場面での合理的配慮の提供が義務づけられる(読売新聞より引用→)とのご指摘もメールで頂きました。


まったく何の合理的配慮も受けずに大学入試に挑んだ
コスモ君の合格体験記の続きです。前回はこちら→

今回は、かなり具体的なディスレクシア英語指導の話です。


☆  ☆  ☆

8月下旬に集中的に指導を行い、
受験業界で「構文」と呼ばれる、読解用の文法事項の確認を行いました。
(高2の3学期に予備校で使っているプリントを使用)
その結果、8月末には、SVO、主節と従属節、関係代名詞節、前置詞+名詞、
受動と能動、節の範囲について理解しました。
この頃の進みは本当に早かったです。
一気に高3の始めあたりまで来ました。

9月に入ると、大手予備校の授業を数コマ切り、英語は私と週2時間、
理系科目はご両親が知り合いに勧められたという
片道1時間半かかる個別指導塾に通い始めました。
英語は、大手予備校のテキストも使いながら、引き続き構文の確認。
この頃のことはこちら→
ガンダムの単語帳を作り、少しずつ文章を読み始めたのもこの頃です→

この頃、「個別と大手、どちらが良いか?」と聞いてみたところ
大手は説明のうまい講師がいる点が良い。
高校の授業は全然分からなかったので、もっと早く行きたかった」。
大手を否定すると思っていたのでこれにはびっくり!
耳からの理解力が高いディスレクシアらしい指摘だと思いました。

この頃から最後までは、2時間の英語の指導以外に、
おやつを食べながら自由に話す時間を小一時間取っていて
親の話、好きな音楽や楽器の話、ゲームや部活や友達のこと、将来のこと
ディスレクシア感覚やADHDのこと…実にいろんなことを話してもらいました。
彼はとても能弁です。
話が暴走すると、主語がなくなって「いま何の話してる?」になったり
時系列がよくわからなくなったりするのですが(笑)、
ガンダムワールドが現実と地続きと思わせるような話しぶりだったり、
すごく独創的な分析をしたり
(デジャビュについて語ってくれたのもこんな時でした)
思い返しても、時間が歪むようなインスピレーションに満ちたものでした。

後にも書く通り、彼にはこの時間が、合格するために必要だったと思います。

あと、コスモ君は「ボキャ貧」を自称していますが、
和訳や話しぶりからみた彼の言語感覚は、人並み以上に繊細でした。
おそらく、頭の中にある絵に言葉が追いついていないんだと思います。
圧倒的な脳内映像のごく一部しか話し言葉にできず、
そのまたごく一部しか書き言葉にはできないようです。


~ ~ ~

私が彼の真の困難をようやく分かったのは、9月末のことです。
もっと早く気付いていればと、申し訳なく思います。
それは・・・彼の英語に関する最大の問題は、構文ではなく、
単語がとにかく覚えられない点だったのです→★

イメージ化できない単語は覚えられない」ことは本人も自覚していました。
なかでも抽象概念にまつわるものは、品詞を問わず大変です。
relation、improveなどは20回はテストしましたが、覚えてもまたすぐ忘れたり。
結局は良い方法が見つからないまま、入試に突入することに…

ディスレクシアは、エピソード記憶が強いと言います。
もし、高2くらいまで時間を戻せたなら、
覚えられない単語をひとつひとつ「体験」したらよかったのかもしれません。
(粘土で作ったり、演じてみたり、その単語を含む例文か絵を作ったり?)
でも、浪人の11月に、そんなことをする余裕はありませんでした。

~ ~ ~

もう一つの反省点は…
彼は転導に苦労していました。すごく気が散りやすいのです。
また、転導を抑えようとすると過集中になり、
その結果、彼の言葉によると「ぷっつんする」のにも苦労していました。
ぷっつんしてしまうと、授業中でもしばらく心ここにあらずになり、
気付いたら黒板がいっぱいに埋まっていることが、よくあるそうです。

なので指導中も、休憩や上のおやつタイムを入れたりして、
燃え尽きそうになる前に休むようにしていました。
信頼関係ができ、新しい薬(ADHD用)の効果が出てきてからは
転導しそうになったら「今は戻っておいで!」と注意できるようになりました。
これらは正しかったと思います。

しかし、転導の激しさゆえに宿題ができないというのは、盲点でした。

課題が途中までしかできなくても「いいよいいよ」と言ってきたのですが、
だんだん課題をこなさなくなってきました…。
「ここまでやっておいで」と言われたことができないと、
他の受験生と比べて、どうしても伸びは鈍ってしまいます。

(我が身を振り返っても、
途中でやらなくなってしまうのはADHDの問題だと思います。
ADHDのない純粋な(?)ディスレクシアだと、
やると決めたらとことんやり遂げる人が多い気がします)

視写も、12月に入ってフェードアウトしてしまいました。
視写はうちの子含め、複数の人で効果を確認している→だけに、
その効果の第一発見者が最後まで取り組まなかったのは、残念でした。

強く言わなかったこちらが悪いのですが、
「もう一つの個別塾が夜遅くまである」「予習復習に時間がかかる」
「最近食欲もないし、夜は眠れない…」(彼はとっても細くて白い)
と言われると、
「それでも決めたところまで解いてきなさい」とは言えませんでした。
年末にかけては、体力も低下して大変そうでした。

宿題をきちんと出してもらえるような別のアプローチがなかったか、
悔やまれます。

~ ~ ~

一方、12月に入ってからセンターや志望校の過去問を読み始めると、
コスモの驚くべきディスレクシア的読み方が明らかになりました。
それは「単語の覚えられなさと表裏一体の高い文脈推測力
とでも言うべきものです。

単語が覚えられないなりに演習をするにはどうすればいいか考え、
単語の意味を書き込んだ問題文を用意し、目の前で取り組んでもらいました。

単語の意味を書き込んだセンターの過去問。
12月末の時点で、これが解けるようになりました(時間と単語力さえあれば)。
浪人決定時と比べれば格段に力がつきました

このような形の問題文を作ると、
彼が普通とはまったく違う読み方・解き方をしていることが、明らかになりました。 

本文の前に設問を読みます(これは非ディスレクシアでも同じです)
違うのはそれからです。
設問のキーワードを本文中をスキャンするように探し、
見つけたら、本文はその前後だけを頑張ってじ~っくり読みます
下線部があれば、下線部とその前の一文だけをじっくり読みます。
それだけで、問題に正解してしまうのはもちろん、
読んでいない部分の内容も、ほぼ正確に推測できるのです(!)

15秒の映像を10本見て2時間ドラマの内容を理解するようだと思いましたが
本人も「一瞬を見せられれば流れは分かる」と説明してくれました。
断片から全体が分かるらしいです。

内容一致問題では、
この流れで、こんなこと言うわけないでしょう(プゲラ)
「さっき○○と言ってたのと矛盾する。サヨナラ!」
みたいな調子で、とても直観的で的確な根拠を挙げていきます。

それに、一度読んだ内容はとてもよく覚えています。
私「そんなこと書いてあったっけ?」(一生懸命上から読む)
コスモ「ありましたよ。たしかこのへん」(視覚的に覚えている)
ということが、何回かありました。

ある単語の意味が分からないときに、別の大問の中にその単語を見つけて
そこから意味をあててしまうことも、たびたびありました。
暗号解読的な読み方ができるらしいのです→

彼は文章を線形的なものとしてとらえていません。
語やフレーズを断片的に見ていて、その間を縦横無尽に飛び回ります。
だから細かい抜けはいろいろあります。
でも、全体として言いたいことは、非常に正確に把握しています。

~ ~ ~

もし、普通の人の2倍くらいの試験時間が与えられたら、
大学側の想定しない解き方で、かなりの高得点を出すことでしょう。

でも実際には時間切れで完答できず、合格点にはなかなか達しません
(´・ω・`)

それでもなお、彼は「学力が足りない」のではなく
実力があるのに、それを学力として評価してもらえていない
のだと、私は断言できます。
何しろ、文脈は非常に深く正確に、把握しているのですから。。

~ ~ ~

現行の中堅以下の私大入試では、
読解問題であっても、設問は一字一句レベルを問うものが中心です。
ディスレクシア的には最も不利なタイプの問題です。
(滑り止めが全敗だったのは、このあたりのことも関係していると思います)

実は難関大になればなるほど、全体理解を問う問題が増えるので、
その点ではディスレクシア的には適していると言えます。

または、推薦を狙うのも手だと思います。
(この話をコスモ君に振ったら「提出物が出せなかったので評定でムリ」
と言われてしまいましたが(- -;))


本人には言いませんでしたが、12月くらいには
「もう一年頑張って、あらゆる手を使って単語さえ覚えれば、
第一志望はもちろん、その上も狙えるのでは?
辞書持ち込み可で文章が超難しい大学(例:慶應文学部)などは
実はかなり有利に戦えるのでは」と思うほどでした。

でも、第一志望でなくても大学生になれてほっとしているコスモ君を見ると
「もう一年頑張って実力を正当に評価してもらおうよ」とは、全く思いません。
それに、「単語さえ覚えれば」と言うのは簡単ですが、
実際はこれが、本当に本当に大変なので…

~ ~ ~

以上の勉強は、コスモ君にとってすごくハードで辛いことでした。

しかも彼は、受験勉強にモチベーションを持ちにくい状況でした。
というのも、もともと勉強面での自信を失っていたのに加え、
彼は弦楽器に並々ならず傾倒していた(いる)のですが、
私と会った頃は、それを職業にすることを諦めたところだったからです。
私が目にしているコスモは、音楽を諦めた「抜け殻」なんだと
感じることもよくありました。

では、どうやってモチベーションを作ったのか?
ここがうまくまとまらないので、とりあえず箇条書きにしておきます。

・ ディスレクシア向けの勉強をすることで、
英語が少しずつ読めるようになると、
モチベーションも上がった。
→つまり、目的と手段がいつの間にか逆転していました(?!)

・徹底的に自分語りすることは、自信を回復するには
どうしても通らなければならない道であった。
→それまで「そろそろ戻ろうか」と言ってようやく勉強に戻っていた彼が
(あるいは、そう言っても戻って来れないことも多々あった彼が)
2月に入り、ついに自分から「そろそろ勉強に戻りましょう」と言ったとき、
ようやく勉強する体勢になったんだ・・・と感慨深かったです。

・11月・12月と進むにつれ、不思議と表情が明るくなっていった
(言うまでもないですが、普通は逆です)
模試の数字は第一志望に届くまでは結局はいきませんでしたが
「この調子なら、まるで現役のように、前日まで伸び続けるだろう」
と思わせるものがありました。



コスモ君の英語の受験勉強は、
単語力や速さの点では道半ばで終わりましたが
自分への自信を取り戻す手段としては、それなりに効果があったと思います。
音楽以外に目指したい職業も見えてきました。
大学生活を通じて、さらに自分への自信を深めていくと思います。

☆  ☆  ☆

コスモ君本人に、受験と今後について、話を聞きました。
次回はその内容を紹介します。→

4 件のコメント:

  1. 私も自信を取り戻す一歩だったかもしれません。

    1年、2年生と先生との相性が合わず反抗ばかりして、みずさんは頭悪いよねという事を遠回しに言われていました。

    ところが3年生になって先生が変わり、ひとつの教科でまぐれでいい点数を取ったらあなたは出来るんだからとずっと言ってくれていました。そのおかげで生物や理系科目がすごいことに。

    結局専門学校に進学する事になりましたが、理系科目だけなら早慶上理に負けない自信と、どこの学校に行っても大丈夫という自信はあります。

    私も英単語の壁を越えられず受験は終わりました。が、その後に教えてもらった辞書に付箋をつけるというのはかなりいいです。新生活の準備であまり出来ていませんが。


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  2. 感動的なレポートです。コスモ君,本当に頑張ったんだね!そして貴方にあった専制に出会えて良かったね。

    また,リンクの読売の記事ですが,「このプログラムにかかわる近藤武夫・東大准教授によると、発達障害の生徒の場合、学校の試験や高校、大学入試で配慮を認められないケースが多いという。(略)それなのに、他の生徒との公平性などの理由で許可されないケースが多い」と指摘する。」

    まさしく,ここです。そして,こどもが通っている公立中学では,「もっと大変な子どもがいる」と言われてしまいます。また,周りの生徒の理解を得られるかどうかとも言われてしまいます(涙)

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  3. お久しぶりです、こんばんは。
    視覚的に文章の場所を覚えている。というのは私も日常で学生時代からルーズリーフのような、ページの増減が自由にできるものを全く使いこなせませんでした。
    ノートの内容も前後の情報で覚えてるので「これのまとめを書いた後に、たしかメモしてそのままだったはず…」といった感じです。
    同じものをまとめ直す、などすると記憶の上書きが機能しづらいみたいで…映像記憶は選んで覚えることが難しい?のか小さい映像の記憶をつなぐものが時系記憶(エピソード)のためなのかは謎ですが「今欲しいのはどっちの記憶だったかな…」と新旧の記憶で混乱することも多く、ノート類は同じ内容は書き直さず、必要なら汚くてもそのままに残します。混乱を防ぐための自衛ですね。
    内容自体は「要る要らない」決断は迷いがないです。
    ノートのような一定方向に使い続けるものには、1冊の中にも時間の流れとしての記憶もあるので、大学ノートは分厚い80枚綴りなどを愛用するようになりました。頻繁に探さなくても済むし。
    中学の頃、音楽ノートを3年間全て1冊のノートに収まっていて、それを見た先生が(3年間同じ方だったんで)授業中に私のノートを手にとって「懐かしいぞ!ほら!」と嬉しそうに言って前に掲げ、みんなに見せてました(爆)
    ヒィw汚いからやめてwと思いつつ、厳しいことで有名な先生が嬉しそうだったのでまぁいいかwと思いつつ、様子をみてました。
    コスモくんの記事を最後までみてから返そうかなーと思ったのですが、視覚的に覚えてるというのは強い共感だったので思わず。コメント少ない最近ですが、毎日覗いて楽しみにしております^^

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  4. 登場が遅くなり申し訳ありません!!

    みずさん、
    芯の強いみずさんはきっと初志貫徹すると思います。進学先でも頑張って下さいね。また何かあったら質問して下さいね。

    もんきちママさん、明日お目にかかれるのを楽しみにしています^^
    今日、ジョリーのセミナーで、まさに「もっと大変な子がいる」と言われて配慮を認めてもらえない(泣)という方がいました。何と言って説得すればいいんでしょうね。

    紺さん、ごぶさたしてすみません。
    「視覚的に文章の場所を覚えている」そこですか。
    ディスレクシアにはルーズリーフは向いていないと。なるほど、ありがとうございますφ(・ω・ )

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