ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2016-06-11

もじこ塾特別セミナー「出来るが先、知るは後、B.B.メソッド」

16/06/18 1ヵ所訂正しました。難波先生、ありがとうございます。

BBカードの考案者、難波悦子先生(セルム児童英語研究会)をお迎えして、ディスレクシア英語指導にBBカードをどう取り入れたらよいかを考える、スペシャルなセミナーを行いました!

難波先生、もじこ塾のセミナーにご登場下さり、本当にありがとうございます。
BBカードとその理念をしっかりと学び、ディスレクシア英語指導に生かしていくことが、感謝の気持ちをお伝えすることになると思っています。

今回は、参加者のY. I.さんが、講演録を作って下さいましたー!!
ありがとうございます!!
こちらで取っていたメモから少し補足して、ご紹介します:

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冒頭、もじこさんより以下の紹介がありました。
「本セミナーが開催されるきっかけは、20163月に東京で開催された英語教育UD研究会で、難波先生ともじこがそれぞれプレゼンテーションを行い、難波先生から、「ディスレクシア英語教育は大から小であるべき」がBBカードの理念に一致しているとのご指摘を頂いたこと。今日は、難波先生に、3月のプレゼンと同じ内容をお話していただき、ディスレクシアの子供の英語教育について悩みを抱えている参加者の皆さんと共に、私(もじこ)自身も多くのことを学びたいと考えている。

 本セミナーの準備として、参加者の皆さんが抱えている悩みなどについて難波先生にメールでお伝えし、お返事もいただいている。難波先生のメールには、深い言葉が溢れているので、読みあげる形でご紹介したい。『これまでの日本の語学学習法は、易から難へ、そしてspoon feeding(スプーンで口に入れてあげるような方法)で、やってきた。その結果として、教師が子供たちを見て言うことは、英語が聞き取れない、言えない、読めない、書けない、といったないない尽くし。しかし、これは教師の側から見ただけのこと。教師が教えれば教えようとするほど、子供は学習の緊張から逃れられない。子供を学習の緊張から解放させてやることが重要。』 
また、戦後の英語教育は、Jack and Betty以降、70年間変わっていない。なぜなら、ALTが入っても、オールイングリッシュ形式になっても、"教える"という点は変わっていないから…とも。
ご紹介はここまでにして、難波先生、よろしくお願いします。」

☆  ☆  ☆

難波先生のご講演の趣旨は次のとおり。

1.BBカードメソッドの基本は「教えない」
「教えない」とは、「生徒がすでに持っているものを基に、気づかせる」ということ。
「生徒がすでに持っているもの」とは、英語の知識ではない。わからないことの意味を推察する力とか、羅列されたことばの中から自分なりに規則性を見つける力など、その子がすでに持っている能力のこと。
子供を観察していると、それぞれ強い力が異なる。Visual(視覚能力)が優れた子、Auditory(聴覚能力)が優れた子、Kinesthetic(身体能力)が優れた子など、それぞれ異なる。その子が得意な力を生かしてやることが大切。

2.BBカード誕生のきっかけ、理念
もともと、BBカードが誕生したきっかけは、私(難波)の英語教室にいた、言い方は悪いが、箸にも棒にも引っかからないような子供たちが楽しんでできるようにと考えたこと。
教師が教えようとすればするほど引いてしまい、自分の殻に閉じこもろうとする生徒がいる。このような子に対し、どうするか。

「サ・シ・ミの法則」というのがある。50年前に石神井中学の先生が言ったこと。
学校の1つのクラスのうち、上位3割(「サ」)は、教えなくても自分で規則性を発見して学んでいく子供、
その次の4割は、教えられて何度も練習すれば身についていく子供(「シ」)、
残り3割は教えられて何度も練習しても、残らない子供(「ミ」)となる。

言語学者のクラッシェン(Krashen)が言っているように、ことば(言語)というものは意識的な学習によっては身につかない。特に、EFL環境(英語が外国語である環境)にいる日本の子供たちは、学習によって英語を身につけるのではなく、自然に気が付いたらできていた!となるのが良い。そのためには、現在、学校で教えているような文法事項などの明示的知識をいくら教え込んでも、自分から発話する瞬発力は出てこない
反対に、BBカードで遊んで、はじめからセンテンスを言えるようになっていれば、子供は必死に覚えなくていい。ただ言うだけで良い。「おまじない」も、カードの「センテンス」も、言えるところだけで良い。

3.実際にBBカードで遊んでみる
それでは、実際に、本日の参加者の皆さんに4人一組でチームになって、BBカードで遊んでもらいたい。
まずはダイヤのカード16枚を使った「基本ビンゴ」。
(「shuffle your cards」と声かけし、4×4にカードを並べてもらう。
カードを配り、並べてもらっている間、「おまじない」として、不規則動詞の活用を先生が言い、生徒にリピートさせる。take-took-taken-takingなど。
配り終わったら「おまじない」も終了。「おまじない」の意味は一切解説しない。)

私(難波)がセンテンスを言ったら、まねして、子供の気持ちで、どのカードか考えてほしい。
(先生が"Lucy Locket lost her letter."と字札を読み、生徒役は絵札をあてる)

子供がわからなくても「どれかな?」と言って考えさせる
全部はわからなくても、letter という言葉で推測できて、あてられる子がいる。あたったら「ピンポーン!」「あたり!天才」、外れたら「ブッブー!」、それだけ。「できた/できない」ではなく「あたり/はずれ」だけ。楽しめばよい。
その過程で、「Lucy Locketちゃんは、何をなくしたって?」(「手紙」)「そうだね、letterをなくしたんだね」というような「意味をとるための質問」をすることで、letter という単語を知らない子でも、音と絵を見て、「letter =手紙」というのが、その子の中で結びつく。
自分からピックアップするように持っていく。

 1つのセンテンスの中のすべての語を、最初からわかる必要はない。あいまいさに慣れていってほしい。
「あいまいさ」に耐えられる力をつけていくことが大切。
あいまいな状態でもセンテンスを言えることが、後々、文法を学ぶ時に、帰納法的に納得できることにつながっていく
このあいまいさに慣れさせるため、B.B.カードは、いちばんやさしいダイヤのカードからでも、機能語(前置詞など)を多用したセンテンスや、過去形、未来形、現在完了形などいろいろな時制のセンテンスを入れている。
B.B.カードは全部で64枚あるが、これで英検3級レベル(中学校終了程度)の文法事項をすべてカバーしている。意味がわからなくても、言えるようになればよい。

(ここで会場から質問。「カードの意味を教えてほしいと言われたら?」
難波先生の答え「『わかったら教えて』と言います」)

文法を気付かせるとは:
Ken  keeps me waiting.
Kate keeps me waiting.
Ken and Kate keep me waiting.
と言えば、子供たちは気付く。

Happy Henry has gone to Hawaii.で、
「Happy Henryちゃん、どこ行ったかね?」(「ハワイー」)
「じゃあ、Happy Henry が北海道に行ったら?」
「(Happy Henry has gone to Hokkaido)」

 はじめから、子供がすらすら英語のセンテンスを言えるわけがない。何度も、ビンゴやゲームなどの遊びを通じて、絵と音に触れていき、反復を自然な形で繰り返すことで、潜在意識の中に、絵と音を内在化させることができていく。
そのためには、手間暇をかけていかなければならない。ことばを覚えさせたいなら、手間暇をかけないと無理。

特定のグループが勝てるよう、読む字札を調整することも。これはほめるため。
こういうことのできるゲームなら、できる子とできない子の垣根を作らない。

さらに遊び方の紹介。
・神経衰弱
(例文を聞いて、対応する絵札を表にする。正解した人、つまり対応する絵札を表にすることができた人が、次は例文を読みあげる役になれる)
大人はテキトウな札を選ぶが、子供は自分がビンゴになるような絵が返せる札を読む。このとき、子供は右脳と左脳を使っている。

・ただ言えるだけの例文をもとにした遊び。
(子供が64文をすべて言えるが、意味はわかっていない状態で、
例えば、Gentle Giraffe looks at George.に対し、
先生が、Gentle Giraffe likes to look at George.と言い、生徒も繰り返す)
2~3枚繰り返すと、likes toが入る。何をやっているか分からないまま、言えてしまう。

教えることに熱中すると、「覚えた/覚えていない」で判断してしまう。
だが「言えればいい」なら、いつの間にか覚えてしまう。

子供が言えるようになった時点で、意味を聞く。
「わかって、納得して、覚える」だと、わからないものは覚えられない。

スプーンフィーディングの弊害。通常の反復では、I amばかり反復して、次にYou areばかり反復するという方法をとる。そうではなく全体で入れる、つまり、is/are/wasを同時に入れる。未来形などもこの方法で入る。手間暇はかかるが。

「なんだか分からないができる」は英語嫌いをなくす。

4.BBメソッドの基本三原則
BBメソッドの基本三原則は、
(1)全体から個へ、
(2)基本は遊んで学ぶ(学習ではない)、
(3)いい加減が好い加減(言葉の曖昧性に耐えられる力が生徒自身の「気づき」につながる)、というもの。
これによって、特に小学校段階でBBメソッドを取り入れると、
(1)反復というルーティンワークを子供に悟られずに行える、
(2) 「遊び」という形式をとるため、できる子とできない子の垣根を作らない、間違いを恐れない、
(3)英検3級レベルの64センテンスが身体にしみこんでいることが、中学以降の英語学習のよりどころとなる、
(4)文法については中学校で帰納法によって気づける、
というメリットが生まれる。

5.BBカードの学習段階
BBカードの学習段階は、
1段階が「絵と音の一致」
2段階が「音と意味、音と文字の一致」
(先生の言葉の模倣と反復を繰り返すことにより、いつのまにか記憶に定着する)、
3段階が「置換(substitute)と変換・転換(recast)」
(転換とはlikes toを加えることなど。recastでは訂正を大げさに行わないことが大切。子供の発言をそのまま受け止めてからさりげなく言い換えれば(「takedね、took」)、子供はこっそりと正解を学ぶ。
難波先生から、訂正のご依頼がありました。
たいへん勉強になるので、そのままの形で掲載いたします。
recastでは子どもの間違えた表現を先生が繰り返すことはしません。
ですから、「そうね。」といったん引き受けて、間違えた子に向けてではなく、全員に「took」とリピートを促します。

こうすると、間違えた子は自分の間違えたことに気づきつつ、先生が聞き間違えてくれたことで恥をかかなくて済みます。

しかし、過去には「先生、○○ちゃんは間違ったこと言ってたよ」などと小さな親切(?)を発揮してくれる子もいたりしましたが・・・。そんな時でも「あら、そう?」で済ませます。

「子どもの間違えを先生が繰り返さない」はrecastの鉄則(?)と言ってもいいかもしれません。


4段階が「選択(類推による作文)」。

 第3段階の置換とは、主語や目的語を置き換えることにより作文の練習となる。変換は時制を変えること、転換は基本文をもとに違った意味の文に変えていけること(例:Betty Botter wants to buy some butter. She likes to buy some butter.)である。

 この段階ができたら、第4段階の「選択」が可能となる。
ここでは「BB作文」を行う。(2枚のカードの、主部と述部を合成した文章。Betty Botter has gone to Hawaii、The flying rabbit will get to the forest to buy a cake.など。)そこから文型練習、自由作文、会話など変形練習を含む文法練習が可能となり、自分で発話、作文することができるようになる。

 BBの反復と学校の反復の違い。学校とBBでは、反復の回数は同じだが、BBの方が広範。学校では、I likeならI likeばかり反復し、その後二度とI likeの反復に戻ることはない。

インプットの重要性。BBの後は本読みと、先生とのインタラクションが大事。そしてインタラクションのためには、核になるものが必要。それが64文。
外国語環境になくとも、この核があれば、そこから広がっていける。

小学校でBBカードを導入する利点。
(1)ばらつきのない小学校英語教育が可能(学校外での学習歴に関係なく、みんなで一緒に楽しめる)
(2)英語の専任でなくても使える。CDがあるから。学校の先生もCDを聞いているうちに覚える。
(3)帰国生の子に読み手になってもらうなど、できる子も退屈させない。
(4)英語の素地を作れる。リズム、イントネーション、アクセント、リエゾン。文字。準動詞までの文法。そして作文まで。
BBカードは遊びだから、間違いも許される。間違えたくない環境だと挑戦しなくなる。その姿勢だと英語は苦手になる。いいかげんでOK。それでも、だんだんもやもやがはっきりしてくるもの。

多読vs.訳読。
多読によって本が読めると、英語が好きになり、自力で英語力を高めていける。つまり自己教育力がつく。

BBカードの目標。
難波先生の目指す、BBカードで遊びまくった子供の小学校卒業段階での目標。
最低段階は、64のBBセンテンスを自分で言えて、意味がわかること。
その次の第2段階は、センテンスの変換、転換ができること。
最終目標である第3段階が、センテンスを自分で作れること(自発的な作文と発語ができること)。

6.ビデオ鑑賞:
最後に、実際の子供たちの様子をビデオで見てほしい。(ビデオ鑑賞で、講演は終了。)

☆ ☆ ☆

質疑応答(主なもの)
Q. ディスレクシアや学習障害のある子でも、BBカードを通じてセンテンスを言えるようになったとしても、どこかの段階で、言えるようになったセンテンスを「読む」という段階が必要になると思うが、どのようにしたら読めるようになるのだろうか。(もじこ)

A. 自分(難波)は、これまで、ディスレクシアのお子さんを指導した経験はないので、ある北海道の先生の手記(LDやディスレクシアのお子さんの指導に関するもの)を参考として配布した。
ただ、BBカードに遊びを通じてセンテンスを諳んじられるようになった子どもでも、字カードを見て、すぐに読めるわけではない。最初は絵カードと字カードの番号でどの文が分かり、語を図形的に捉えて、全体語形的に読んでいる。ただ、それを繰り返していくことで、子供自身が「読める!」という自信をつけていく(途中で番号をシールで隠すことも)。


Q. 文字学習を始めるタイミングは、いつになるのか?

A. BBメソッドでは、最初にアルファベットは教えない。ただ、例えば1時間のレッスン全部がBBカードというわけではなく、最初は英語の歌を歌ったり、Simon Saysのゲームなどをやったり、英語の音やリズムに慣れる時間はとる。その中で、自然にABCソングなどを覚えていく。BBカードの64センテンスを完全でなくても覚えて、言えていたら、フォニックス的な遊びをやって、音と字の一致を図っていく。たとえば、Betty Botterのセンテンスに”b”の音がいくつ入っているかな?と聞くゲーム等を行う。


Q. BBメソッドでは、フォニックスをやるタイミングがかなり遅い、というかアンチ・フォニックス的な立場だなと感じたが、どの段階でフォニックス的な指導をするのか?(もじこ)

A. 実は、フォニックスはいつから、どこから、入れてもよい。フォニックスの規則性を教えたとして、自発的な発語につながるわけではない。ことばは規則ではないから。まず、音を入れておいて、音の認識ができなければ、ダイヤのカードのセンテンスの韻を踏んでいることの規則性に気づくことはできない。
Betty Botter bought some butterに対し、How many B sounds are there?(いくつBの音が入っている?)と聞くが、正解するには年月を省いてはならない。せっかちはいけない。

BBカードを説明するにあたり使っている枕詞がある。それは「だまされたと思ってやってみて下さい」(会場笑い)。
覚えられる子はすぐに覚える。座っていられない子、飽きっぽい子は、ただ教室にいればいい。そこにいれば、そのうち覚えるから。


Q. 難波先生の著書(下記、参考文献1.)によると、10週間で64全てのセンテンスを入れる必要があると書いてあるが、実際に、レッスンで使っていると、とてもそのスピードで入れることは難しいと感じるが、どうすればよいか。

A. 最初の10週間で、64のセンテンスを完璧に覚える必要はない。あくまで、64のセンテンスに「触れさせる」のが大切ということ。
64のセンテンスに、英検3級レベルまでの基本文のエッセンスが詰まっているので、早い時期に触れておくことで、英文のあいまいさに耐えうる力をつけさせることが可能となる。
BBカードは、ダイヤは頭韻で、ハート、クローバー、スペードと、だんだん言いにくくなっていく。だが、これが易→難の順だと考えるのは思い込み。4種類、すべて同じように扱ってよい。
順々に扱っていく途中で教室に新しく入会する子もいる。それもかまわない。たいていの子は、自分が入会したときに扱っていた種類(ハートなど)が一番好きになる。


Q. BBカードは、ビデオに出てきた通り、下は3歳から可能だと分かったが、上は何歳くらいまでを想定しているか?

A. BBカードを製作したときは、小5の子を念頭に置いていたが、広まるにつれ、だまされた人(笑)の中には、下は3歳くらいから使う人も出てきた。この年齢の場合は、字カードの使用は想定していない。また、BBカード以外の読み聞かせや歌などもたくさん行う。字は学童期から。


Q. 中1ショック対策として、BBカードをどう使えるか、何か提案はあるか。

A. BBカードの使い方は、年齢を問わず同じ。まずオトを聞かせ、言えるようにすること。
授業を捨てる覚悟が必要かもしれない。

もじこ:学校のテストでは習熟度がはかられるわけだが、ディスレクシアだと、どうしてもそのペースに合わない。だが、目の前のテストができるようになりたいのか、それとも英語の運用力を身に付けたいのか。BBカードは後者を可能にしてくれるのだから、学校のテストは割り切る覚悟が必要、なのかもしれない。

(参考文献)
1.難波悦子『続・カードで遊んで英語大好き!―「B.B.カード」活動集』(東京図書出版会、2007年)
2.和泉伸一『「「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育』(大修館書店、2009年)

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難波先生、ありがとうございました!!

出席者の感想より:

◆先生のやることは「教えない!」そのかわりに「考えるきっかけを仕込む」ということがとても勉強になりました。

「つみあげない」「教えない」にまず衝撃を覚えました(汗)。英語は勿論、他の教科も基礎からやって、コツコツと覚えてきましたから…
他の教科はともかく、英語に関しては、結局聞くのも話すのもできないし、従来の英語学習ではまず親である私が挫折感を抱いています。挫折感の理由も、今回腑に落ちました。「英語のあいまいさを許容する」は自分はとても苦手だし、「間違えたらはずかしい」もとても根強くあります。英語が苦手な理由はその辺りなんだとわかり、ディスレクシア要素のある子供には、BBカードで、覚えない英語のスタートをさせてあげたいと思いました。

◆ディスレクシアかも?な生徒さんが何人かいて、悩んで参加させて頂きました。教えずに"あいまいさ"を残したままゲームをするというのは目からウロコでした。
BBカードは、正直ハードルが高いかな…どうかなと迷い中ですが、今日のセミナーはたくさんのヒントを頂け、とても勉強になりました。ありがとうございました。

◆マニュアルありきのレッスンを、渋々ながら受け入れて指導する身には、素晴らしく目新しく新鮮な内容でした。"だまされて"みようかしらと思いました。

教えないで遊びのなかで、身につけさせる。全体を覚え、部分にうつる。定型の子たちにも、もちろん大切なことだと思いますが、ディスレクシアの子たちにも非常に助けになるメソッドだと思いました。
ただ、やはりディスレクシアの子にとって、一番の難関は、正確に読んで書くこと。この部分は、BBカードのその先で、これから考えていかないといけないのかなと思いました。とりあえず導入としては非常に有効だと思いますし、定型、ディスレクシア関係なく、みんなで楽しんで遊べるところが、すばらしいですね。

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もじこの感想

「ディスレクシア英語指導は"スモールステップ"が鉄則と言われるが、BBカードはその真逆のアプローチ。この2つにどう折り合いをつけるのか」という質問を事前に頂いており、私もずっとそのことを考えながら拝聴しておりました。

語学学習は、全体像・・・その言語の音が響いている様子を目の当たりにして、その言語の音楽(と私は呼びますが、リズムやイントネーションを含めたリアルな会話の世界)に少しでもひたることがすごく重要で、スモールステップはその後に行うべきものだと、今は考えています。
ジョリーフォニックスにしても、道村式漢字カードにしても、言葉の音楽に触れていることが前提で(前者は英語、後者は日本語)、それなしでいきなり取り組むと、ディスレクシア的にはいくらスモールステップでも、苦しいものになるようです。
そういう意味で、BBカードは、"言葉の音楽"を教室に作り出すことができるという点で、画期的な教材だと感じました。

難波先生の生徒への声かけ自体は、とても、とてもスモールステップです。
正解を全部与えず、本当にちょっとした訂正だけで、そこから生徒自身に考えさせます。この声かけの仕方は私も、もじこ塾春期講習や予備校の授業ですでに取り入れており、生徒がすごく主体的になると感じています。

一方、やはりディスレクシア的には、ある種のことをスモールステップで"教える"ことは不可欠だろうとも、今回の講演を聴きながら思いました。ディスレクシアは「サ・シ・ミ」の「ミ」のさらにどん底の子たち、中学3年間英語の授業を受けても、theが読めないこともある子たちです(実際にいました)。こういう子には、ある部分は"気付かせる"のではなく"教える"ことが不可欠で、この部分にいつまでたっても自力では気付けないことが、学習障害と呼ばれるゆえんかも、、と思いました。

数人のディスレクシアの中学生を教えた経験では、「今から私が教えることが分かれば、こういうことができるようになるよ」と見通しを示せば、ディスレクシアなら理詰めでの文法説明も、なかなか覚えられないフォニックスも、"教える"ことに頑張ってついてきますし、むしろ教わることを望んでいるように思います。
・・・と質疑応答で申したところ、「もじこ先生は努力できない子を見たことがないのでしょう」と難波先生からご指摘を頂きました。
これは深い!!以来、ず~っと考えています。で、今思うことは・・・
「はい、私がこれまで出会ってきたディスレクシアの生徒は全員、努力できる子たちです」
ディスレクシアの子は、誤解を恐れずに言えば、原則として努力家だと思います。小学校入学と同時に「なんでみんなそんなに読めるの?」と密かに焦ったり、「書き取りの宿題が終わるまで居残り」といった仕打ちを受けたりしていれば、自然とそうなるでしょう(ノД`)。天然や多動のせいで努力家に見えないケース(笑)もあり、また努力の到達点は知能によって異なるでしょうが、少なくとも純粋なディスレクシアは努力する人種だと私は思っています。
ごく少数、10代前半で、勉強する姿勢(→文字通りの)ができていない子はいましたが、それは体幹が整えばずいぶん変わると思います(しかしこれは、非ディスレクシアにも言えることかもしれません)。

7 件のコメント:

  1. 渾身のレポートをありがとうございます!
    すっかりませてきたうちの息子がBBカードを使うことは無いと思いますが、非常に参考になりました。
    もじこさんの「言葉の音楽」という表現に激しく同意します!
    かつてここで紹介された「言葉のデフォルトは文字ではなく音」という峯松先生の言葉は、聴覚優位(音楽好き)なわが家の前提になっていました。
    ちょっと極端ですが、うちは子が小さい頃、図らずもCSのカートゥン・ネットワークという海外アニメに子守りをさせてしまっていた時期があり、そのとき日本語吹き替え嫌いな夫が「これは外国のアニメやから英語しかないねん」と子を騙して(笑)英語のまま見せていました。疑うことを知らない子は、まさに「リズムやイントネーションを含めたリアルな会話の世界」+映像からざっくりと理解し、それなりに楽しんでいました。
     (ちなみに、これが後々映画のスジや伏線を正確に捉える力につながりました)
    当時は子が読み書き困難を抱えるとは予想もしていませんでしたが、学校英語から完全に脱落して家で英語をやっている今、小さい頃から音としての英語の蓄積をしておいて本当に良かったと思っています。

    たとえば音楽ではじめての曲を歌ったり演奏したりするとき、いくら音符などの基礎知識を教わってあっても、知らない曲の楽譜を見て歌おう、弾こうとするのは大変です。一小節ずつ区切ってやるとぜんぜん楽しくない。まず楽譜ではなく実際の音楽を聴いて、先に全体のイメージをつかむのが正しいやり方ですよね。音源があるなら絶対にそうするはずです。

    語学についても、まず音の感覚が自分の中に入っていること、読むにしても、できればすでに知っている内容のものを選び、全体をわかったうえで「これはあの部分」と理解してもらうと方向を見失わなくていいのかなと思います。
    ただし、うちの場合は学校英語による学習ができていないので、全体は理解できても細部になるとちょっと想像もつかないような基本的なヌケがあって「!」と焦ったりするのですが……(笑)今後の課題です。

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  2. もじこ様、講演録への追加分を早速アップしていただき、ありがとうございます。

    以下、皆様とのシェアの意味で、メールでお送りしたことを転載させていただきます。

    もじこ様が書かれていたように、音が充分に入った段階で、ジョリーフォニックスを上手く使いながら、音と文字の規則性の補足をやると、更に良いと思います。

    BBとジョリーは、対極的な考え方をとっていますが、実は、それぞれの弱い部分を「補完し合える」関係にあるのかも⁉︎と感じています。

    どちらも、使い方次第で子供の学ぶ力を引き出せるというのは同じだと思います。ディスレクシアのお子さんにも、非ディスレクシアのお子さんにも!

    BBとジョリーの補完関係または共存関係を目指した使い方、というのも、今後の勉強会のテーマとなりうるかと思います。

    徒然なるままに書きました。
    今後とも、よろしくお願いします。

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  3. てぷさん
    言葉の音楽の部分に同意して下さり、ありがとうございます。
    cartoon network、すごく息子さんのためになっていたはず。特に聴覚優位の子には。
    ふと思ったのですが、一世代前の英語学習法の王道に、洋画や洋楽を覚えるくらい観る(聴く)というのがあったと思うのですが(洋画も洋楽もいまや死語)あれは言葉の音楽を把握するのに実に有益な学習法だったと、今になって思います。憧れの感情がもれなくついてきている点も実に学習効果が高かった(笑)。私はそんな洋楽女子高生だったことも、超久しぶりに思い出しましたよ・・・・

    Y.I.さん、講演録の作成と補足、本当にありがとうございました。
    私も補足として・・・難波先生の実演はとてもスピーディーでテンポが良かったこと、発音はニュートラルで品格のあるジャパニーズイングリッシュであったこと(たとえるなら美智子様の英語!日本人が目指すべき理想の発音だと思ってます)、「ディスレクシアの生徒に出会ったことはない」とセミナーではおっしゃっていましたが、おそらくは実は出会っていらして、書かせない範囲では対応できていたと推察できたこと、を付け加えておきます。

    返信削除
  4. もじこさん、新潟ディスレクシアの会のさきです。
    もじこさんのブログにいつも勇気づけられ、励まされています!
    こうやって勉強会の情報をupして頂けると、遠方でも勉強会の様子を知ることができるのでとても助かります。本当にありがとうございます。
    そして、6/26(日)の新潟(長岡)での勉強会開催依頼に快く応えて下さって本当にありがとうございます!!
    今からワクワクしています♪
    まだ空きがありますので、こちらで少し宣伝させて下さい_(._.)_

    【指導者向け】読み書きに困り感のある中高生に適した英語アプローチ法勉強会;詳細・お申込みこちら http://www.kokuchpro.com/event/nagaoka626a/ 
    【保護者向け】読み書きに困り感のある子を持つ保護者向け勉強会;詳細・お申込みこちら http://www.kokuchpro.com/event/8d2e75213524df85e807aa41440f0df5/ 
    【オフ会】お申込みこちら http://www.kokuchpro.com/event/nagaoka626c/ 

    今の所(6/16現在)、【指導者向け】15名、【保護者向け】5名の方からお申込み頂いています。
    【指導者向け】15名の内訳は、高校教師(4名)、民間の英語講師(家庭教師、塾、英語教室等;4名)支援学校教師(2名)、中学通級教師(1名)、その他(教育委員会英語科担当者、英語教師を目指している大学4年生、言語聴覚士、大人当事者)と、多職種の先生方に興味を持って頂けて、ニーズのある子の保護者としましては本当にありがたく嬉しく思っています!
    (まだ空きがあります。もじこ先生は多くの実践を積んでこられている先生なので、子どもの困り感を受け止めつつ前向きに対応を考えようとして下さる先生方の期待を裏切らない勉強会になると思います!こんなときはどうしたら…と言ったお悩み解決の糸口が見つかるかもしれません。)
    【保護者向け】は、小1~中3の保護者の皆さまからお申し込み頂いています。
    ピンポイントで同じようなお悩みをお持ちの保護者さんと知り合う機会がなかなかないので、こちらも楽しみです(ブログ読者の保護者さん、おしゃべりしに来ませんか?もじこさんに会えるチャンスです^^)
    【オフ会】は大人当事者、保護者の皆さまからお申込み頂いています。こちらもまだ空きがあります^^
    皆さまからのお申込みお待ちしております!

    もじこさん、この場をお借りして宣伝させて頂きました。
    6/26よろしくお願いします。お会いできるのを楽しみにしています♪

    返信削除
  5. こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。
    新潟はほぼ初めてですが、当ブログに英語の勉強方法を質問してきた最初の受験生は新潟の女子高校生でしたし、当ブログのかなり早い時期からここに来て当事者感覚を教えてくださっている読者の方も新潟の方です。なので新潟は当ブログ的には特別な場所です。

    さきさんのビジョンと行動力には感服ですよー。自ら教えようと思うのでなく、ディスレクシアに理解のある教育関係者を地域に増やそうという、その発想がさすがディスレクシアです!!
    もじこ塾で分かったこと、そして4月から行ってきた勉強会やセミナーで得たことを、全部放出すべく、頑張ります!
    (ここをお読みの地方在住の方、場所確保と告知をして頂き、交通費を捻出して頂ければ、もじこは出張しますよ。さきさんにはメイキング・オブ・ディスレクシア勉強会を公開してもらわなくっちゃですねー。)

    返信削除
  6. もじこさーん、いえいえ、それ褒めすぎですよー(〃▽〃)(って褒めていませんでしたか?(^^ゞ)
    当初は私も子に教えようとチャレンジしてみたのですが、できませんでした(T_T)。
    子がディスレクシアだと気づいていなかった時の私の関わりの悪さ(書きが必須のドリル系の宿題を何時間かかっても範囲が終わるまでやらせようとする…などなど)が尾を引いています。
    今となっては家庭学習に私が関わることは極力控えています。さじ加減がわからなくて熱がこもりすぎてしまって、親子関係が悪くなってしまうので…(=_=)

    そんな中でジョリーの山下先生やもじこさんは、何者かもわからない新潟ディスレクシアの会の呼びかけに快く答えて下さって、本当に言葉では言い尽くせないほど感謝しています!
    こういった勉強会を開くことで地元の先生方との新たな繋がりができて、少しずつですが理解して下さる先生方が増えているのを感じます。本当にありがたいです。
    メイキング・オブ・ディスレクシア勉強会、はい、興味のある方がいらっしゃいましたら公開します(^^)

    返信削除
  7. もじこさん 新潟ディスレクシアの会のさきです。
    お礼が大変遅くなってしまいまして申し訳ございません!
    6/26ははるばる新潟まで来ていただき、【英語指導者向け】、【保護者向け】、【オフ会】までお付き合い頂きまして、大変ありがとうございました!
    お陰様で、【指導者向け】には英語指導に関わっておいでの17名の先生方にご参加いただくことができました。
    参加の先生方からのご感想の一部をこの場を借りてご紹介します。
    ・ ディスレクシアが何を困難に思っているのかと言うのを知れてよかった。ディスレクシアの学生さん(Aさん)の話は大変貴重でした(英語教室講師)
    ・ディスレクシアの特徴について分かりやすくまとめていただきありがたかったです。また例外的な顕在の仕方も教えていただき、LDを抱えている子どもの多くがディスレクシアも持っている可能性があることも知れてよかったです。今までは全く別の物として考えていましたが、考えてみれば当てはまる生徒がたくさんいました。別物と考えていたからこそ対応に苦慮していましたが、これからは応用ができそうです。(大人当事者の)Aさんのお話を聞けたことも、大変貴重でした。いわば、ディスレクシアを克服しつつある例ですから、今、私の目の前にいる生徒にも応用ができそうです(高校教師)
    ・とてもよく分かりました。今後もぜひよろしくお願いいたします(特別支援学校教師)
    ・ディスレクシアの事について詳しく勉強できたことはもちろんですが、実際にもじこ先生と一緒に頑張っていられる学生さん(Aさん)のお話が聞けたこと、(保護者向け勉強会の時に)Bさんともじこ先生とのジョリーフォニックスから始まったお話の中で、「文字と音がつながらないというのは、こういうことなのか…。」と衝撃を受けました。自分なりに調べてみたり、生徒さんから話をきいていたものの、私自身は英語の単語の読みや音に対して何の引っ掛かりもなくすっと入り、理解できてきたタイプだと思うので、読みづらい、よくわかないというのはこういうことなのか!…と目からうろこが落ちたようでした。ようやくスタートラインに立てたような気がしました(家庭教師)
    ・ 読み書き困難の子たちに、様々なタイプがあること、それを具体的な例とともに教えてもらったのが参考になりました。 また、「医学的にではなく、教育的に」配慮が必要な生徒・・・という表現が非常にしっくりきました。 医学的に、専門的にどうかは私には言えないけれど、教える立場としてしっかり認識する必要があるのだと納得できる言葉でした(塾講師)


    【保護者向け】にご参加下さった方からのご感想の一部です。
    ・ 私の場合、ディスレクシアについての知識も余りありません。ブログの存在も知りませんでした。 そんな事も有り、午前の部の【指導者向け】も見学出来て勉強になりました。午後の部の【保護者向け】は、指導者の方が見学されていて嬉しかったです。 色々な情報を得る事が出来ました。今回、参加出来てとても良かったと思って います(高2保護者)
    ・参加された方々のお子さんが、どの様に困りどの様に対応されどうなっているのか、様々な話が 聞けて良かった(高1保護者)
    等、

    指導者向け、保護者向け、ともに、多くの前向きなご感想を頂きました。
    私個人的には、今回もじこ先生に来て頂いたことで、地元の17名もの英語指導者(教育関係者)の先生方に、『英語の習得が難しい生徒さん達の困り感の本質や、また、そういった生徒さん達への英語指導法のヒントを沢山知って頂けたこと』が本当に嬉しく、心強く感じます。
    お礼が遅くなってしまいまして申し訳ございません。
    お忙しいところお時間を捻出して遠方まで来ていただいた事に、深く感謝いたします。
    ありがとうございました!!

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