ディスレクシア専用英語塾「もじこ塾」のブログです。 ●ディスレクシアとは:知能は普通だが、読み書きが苦手(読み間違いが多い、読むのが遅い、書き間違いが多い、読むと疲れやすい)という脳の特性 ●全体像の把握、物事の関係性・ストーリーの把握、空間把握、ifを考えるシミュレーション能力に長ける ●読み書きの困難は、日本語より英語に出やすい ●適切に対処すれば、読みの問題は表面上は克服される ●10人に1人程度いるというのが通説 ●家族性とされるが、ディスレクシアの表れ方は個人差が大きい もじこ塾は、ディスレクシアはこれからの社会に不可欠な才能、でも日々の学習では普通と違うアプローチが必要、という立場です。

2014-09-23

道村式漢字カードで勉強して1年。大きな成果と、漢字学習の次なる課題

道村式漢字カードで漢字の勉強をするようになって、1年たちました。
(これまでのことは→こちら
道村先生、本当にありがとうございます!

このカードに出会ったおかげで初めて、
漢字以外の勉強にも手が回るようになったのです。
それまでは、漢字練習に家庭学習の時間と労力を全て注いでいました…
国語学習=漢字練習であっていいはずがないと思いながら。

結局うちは、5年と6年のカードだけ、しっかり取り組んでいます。
2~4年生のカードは少し復習しましたが、
2年生から戻って積み上げることは、結局していません。

現在は、学校より少しだけ先取りする形で、
毎日2つの新しい漢字を、道村式漢字カードを使って学んでいます。
先取りはお勧めです!
学校での漢字学習に(心理的に)ついていけるようになります。

新しい漢字は
1日目:
(1)おもて面の漢字を見ながら、「部品」(おもて面の下)を言えるようにする
(2)カードを見ずに、「タイトル」(裏面)を聞いて「部品」が言えるようにする
(3)1回だけ、ホワイトボードに書く

2日目以降:
(1)「タイトル」を見て、書けるか試す

という方法で使っています。

裏面の下には、同音の漢字が書いてありますが、
ディスレクシア的には、そこまで手が回りません。。。

「タイトル」を見て、書けるか試す。
まず今日の分の新しい漢字を2つ覚えてから、
2学期のこれまで学んだカードをトランプの神経衰弱のように全部並べて、
好きなものから順に書いてもらいます。
出題順番をこっちが決めると「げ~無理~」と言います。
正しく書けたものと書けなかったものを分けて、
書けなかったものだけ部品を言ってもらってからもう一度書く。

学校で漢字テストがあるまでは、その漢字の反復練習を続ける。

というサイクルが完成しました。

カードがない時代はどうやって新出漢字の勉強をしていたか、
もはや思い出せないほどです!



予備校でも言うことですが、サイクル化は大事です。
(サイクル:学習事項を定着させるまでの具体的な手順。
上の場合は「先取り・授業・反復・テスト」)
学習のサイクルが完成し、それを淡々と回す状態になると、
定着度は格段に上がります。

道村式カードは、一人ひとりの苦手にあわせてサイクル化しやすい点も
大きな長所だと感じます。



サイクルの見直し時は、
・定着度が落ちてきた時、
・本人が手応えを感じていない時、などです。

・節目で結果を出せた時(テストなど)
は、サイクルを見直し、ちょっと負荷を上げることを検討できるチャンスです。

本当にサイクル化できれば、進歩の実感も含まれているはずなので、
おのずと、ある程度の成果は出ると思うのですが、
・まだ成果が出ていない時
というのは、別のことをする前に、むしろサイクルの強化に励むべきと思います。

サイクル強化の方法は、
毎日決まった時間に取り組む、
復習と新出事項の両方を取り入れる、
5分から始めて少しずつ増やしていく、、、あたりでしょうか。

あと、疲れているように見えたら「よくがんばったね」と言って、
その日はぱっとやめるのも大事だと思います。
予備校でもそうですが、難しい問題に取り組んだときは
生徒をねぎらったらぱっと終わりにして、生徒があっけに取られるくらいが良いのです(笑)。
その方が、長い目で見ると、サイクルを崩さないことになります。

(ディスレクシアだと、「書けるようになるまで夕食はおあずけ!」と何時間も反復しているケースがあると思いますが、[うちも2年生の頃はやってました]、この方法での反復は効果がないばかりか、トラウマにしかなりません。
1回だけ書くのを1週間、2週間と続けるべきです。)

そうして臨んだ1学期のまとめテストは、なかなか頑張りました:




しかし、これには後日談がありまして。。

本人は「ついに自分も通知表の国語の『書く』で『できる』、
あわよくば『よくできる』がもらえる」 (0゚・∀・) と思ったようなのですが、
残念ながら1学期も「もう少し」でした。

(よく読むと評価基準が「文章全体の構成を考えて書く」なのでした。
彼は書き取り以上に、作文が大の苦手です)

このことがよほどこたえたようで、
夏休みの最後の日、子は通知表に2学期の決意を書きながら、涙を流しました:




☆  ☆  ☆

最近は、漢字カード以外の漢字学習にも挑戦しています。

最初は、教えて頂いたサイト→の読み・書き問題を使っていました。
良い問題がそろってます。

が、私が紙の管理にストレスを感じる(←ADHD)ので、
今は市販の問題集を使っています。

出題範囲が「これまで習った漢字全部」だと、正解率はがくっと落ちます。
これをどうやって上げていくかが、次なる課題です。



(1)まず書き取りの正解を子に示し、その読みをしてもらう。
(2)しばらく漢字を眺めてもらった後、正解を隠して、書き取りに挑戦。

(ちなみに、この字は家庭教師君が最大の気合で書いたもの)

その後、(0)自力で書けるものは書いてもらってから、
残りについて(1)(2)をするようになりました。


突然、ある音読みを示されて、その読み方の漢字をいくつか思い出すのは
非常に難しいことのようです。
隠れディスレクシア」にも、まったく同じことが書いてあります:
毎週一回のスペリングテストでも(そのために一生懸命勉強して)人並みの成績がとれる場合さえある。だがこうした子たちに対し記憶から語を呼び起こしてスペルしてもらうと、基本的には常に、驚くほど激しく間違う。

「ゼンアクのアクはアクニンのアクだよ」と言ってもぴんと来ず、
「ワルイだよ」と言うと、ようやく「ああ!」となります。

現状では、とにかく毎日、短時間の反復によって、
書ける熟語を一つひとつ増やしていくしかない状況です。。


☆  ☆  ☆

道村先生も書いていらっしゃいますが→こちら
漢字は訓読みよりも、音読みのほうが、定着しづらいようです。
道村先生はこの原因として、現在の国語の教科書が、
訓読みと音読みを初出時に一緒に教えない、
場合によっては何学年も離れて教えることにあるとして、
音読みと訓読みをセットで同時に教えるべき、と言っておられます。

まったくその通りです。ルールの後出しはよくありません。

漢字の音読みには数々の例外があるとはいえ、
「まずはこの読み方を」というのを1つ教えることで、
学習者の負担を大きく減らせます。
(この考え方は、ジョリーフォニックスにも共通しています)。

またディスレクシア的には、音読みが難しいのは、
訓読みのほうが、その漢字の意味と、密接に結びついているから
というのもあると思います。

例えば、「危」は「あぶない」という意味なので、「あぶな・い」は覚えやすい。
一方、「き」は、抽象度が高いので、ちょっと覚えにくくなります。

とはいえ、道村式カードは、この点にも配慮があるのが素晴らしい。
裏面には、すべての漢字の「タイトル」
(その漢字の訓読みと、代表的な音読みを含む熟語)
が載っています。
ここが単なる「音読み」ではなく、「熟語」になっている点がポイントです。
「キ」だと抽象的ですが、「危険」になっていれば、だいぶ具体的なイメージがわきやすくなります。
(しかも「漢字のタイトル」には、同音異義語がひとつもないそうです!
それについては→こちら


うちは、個々の漢字の意味のうち、音読みしかない漢字については、
漢字の「タイトル」をベースにして、教えるようにしています。


☆  ☆  ☆

以下は意味不明なおまけです。

一応、子供にも聞いてみました。
母「音読みと訓読み、どっちが簡単?」
子「訓読み!!!」
母「どうしてか言える?」
子「えっとね~・・・」

なんでも、訓読みはほわほわしてるので入っていきやすく、
音読みはがっちりしてるそうです( ゚д゚)???

「あぶな」はほわほわしてて、「き」はがっちりしてる、のだそうです?




☆道村式漢字カードは、こちらから買えます→
一般の書店では取り扱いがありません。



5 件のコメント:

  1. 素晴らしい成果ですね。テストのマルの付きぐあいから見たら、まるっきり優等生ではないですか。お母さんとお子さんとの、二人三脚での努力のたまものですね。このカードも、ここまで活用してもらえると、作者の方も本望かと思います。

    ところで、子どもの学校で「漢字検定」を推奨しているようで、うちの子も受けるようです。それ用のドリルで学習しているのですが、漢字の音訓を問う問題が出るそうです。それも例えば「肉(ニク)」「菊(キク)」「絵(エ)」など、ちょっと見は訓読みのようで音読みだとか、その逆だとか、そういった問題に正解しないと受からないようです。
    子どもは、難しいながらも頑張っているようなので、私も「頑張れ!」と励ましましたが、心の中では「あまり意味ないよなあ」と、複雑な思いでした。妻も「音だろうが訓だろうが、読めればいいのにねえ」、と。まったく、おっしゃる通り。

    子どもにこんな学習を強いたり、外国人にはさらなる厳しい学習を強いたりして、日本語習得のハードルを上げる「漢字」って、本当に日本語の為に役に立っているのでしょうかねえ...。

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    1. ありがとうございます。でもこれは自他共に認める瞬間最大風速でして…

      漢検に限らず英検やTOEICなども、小中学生の励みになるという点では一定の評価ができると思うのですが、漢字なり英語なりの運用能力に直結するかというと。。ですよね。大人が目指すに至っては害の方が多い気がします。

      ところがですね、
      >「漢字」って、本当に日本語の為に役に立っているのでしょうか
      これに関しては、ディスレクシアの人といえども、ない方がいいとは一概に思ってないようなのです(!)。あった方が読みやすいと言います。
      日本語の為になっていないのは、漢字そのものではなく、「漢字が書けない人に日本でまともな仕事ができるはずがない」という漢字崇拝らしいです。

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  2. もじこさま、返信ありがとうございます。
    瞬間最大でも、実績は実績。立派だと思います。

    漢字の件、小生の見方はやや一面的でしたね。ご指摘ありがとうございます。
    無闇な漢字崇拝を脱し、一方で、漢字が苦労なく使いこなせる人と、そうでない人(でも、別の能力を持っている人)がうまく協業できるような工夫が必要、ということですよね。

    漢字と離れますが(でも近いと思いますが)、最近、入社試験や登用試験でTOEICを課す会社が増えています。それは、英語以外の評価軸が無いために、得難い能力をみすみす捨てているかも知れないということにもなりますね。ま、英語の価値はビジネスにおいてはかなり高いですから、そこを捨てても、「英語ができる」という即戦力を取りたいということなのでしょうが...。

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  3. ここにコメントを書くのは初めてですが、愛読者となっております。ちょっと面白い話題なので初乱入です。平社員先輩(!)、ご無沙汰しております。
    大学生たちが必死でTOEICの点数を上げようとしつつも、どこか冷めた態度でTOEICの結果を受けとめている(点数があがっても全然英語ができない、という実感)のを観察するに、「漢字」や「TOEICの点数」は、日本語や英語の能力をはかっているのではなく、ある「枠」にはめられる従順さと忍耐力を試しているのだな、とよく思います(私は人生一度だけTOEICを受けたときは、途中で寝落ちしました。忍耐力ないです)。また、本来はかれるはずのない「コミュ力」とやらが重視されている中で、「目に見える」「はかれる」ような気がするがゆえに、漢字テストとTOEICの数値にすがりつくのだろうな、と。
     日本語がわからない子どもが日本の学校に来て、特別クラスに入れられて補習を受ける、となったとき、ひたすら漢字の書き取りをやらせているなんてこともあるようです。作業量が膨大なので教師が「やらせている」気分になれること、そして、何よりも、教師が子どもに「日本語」「言語」「コミュニケーション」を教える基準も能力も自信も時間もないということでしょう。
     もじこさんのお子さんは訓読みの方がわかりやすいのか、なるほどー。大人になってからの日本語習得で苦労するのは訓読みらしいですね。音が文字の形から想像つかないから。

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  4. 平社員さん、Sさん、ありがとうございます。
    TOEICは、日本で真面目に勉強してきた人を愚弄するような問題(→受けるのは学生が主体なのに、英米圏での生活経験が前提の出題)、試験会場も「仕方なく受けてます」という雰囲気が満ちてて、実に不毛な試験だなと思います。
    企業はTOEICで「英語ができる」即戦力を問うているつもりなのでしょうが、そんなものが分かる試験とはとても・・・

    >ひたすら漢字の書き取り
    実は善意の押し売りだったりして?!「日本では漢字が書けることがまともな社会人へのパスポートなんだから」と。

    TOEIC、漢検、書き取り、どれも採用する側にとっては、人の本当の能力を見なくてももっともらしい評価の体裁が整う、思考停止の道具なのですね。なんだか御大の主張に近づいてまいりました(笑)

    平社員さんのおっしゃる通り「みんな何かが欠落している「ディス○○/ハイパー○○」なのだという前提に立って協業」ができたら、人的資源の活用度は何倍にも高まるかもしれませんよね。そういう企業や社会になってほしいです。

    Sさん、ハイパーレクシアIII型じゃないですか?今後も乱入お待ちしてます~

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